【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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【前回のあらすじ】
・ヒロインはヒトモシちゃん♂



No.0029 あらぶる!! ルリナさん

「やあ、若人諸君。ターフタウン突破おめでとう!」

「あ、ソニアちゃ~ん!」

 

 バウタウンに到着し、ポケモンセンターでポケモン達を回復させているとソニアちゃんがやってきた。ユウリはご主人様が帰ってきた飼い犬のように満面の笑顔でソニアちゃんに抱き着いている。ユウリに尻尾が生えてたらブンブン振ってたな。

 

「ソニアちゃん、俺のジムミッション観た?」

「マサル。あんたもうちょっとまともに攻略しなさいよ。あんなやり方したのあんただけよ」

「興行的には大成功だよ。みんな同じようなやり方だと観てる側も飽きるしな」

「そのせいで私のハードルが上がって変に盛り下がったんだからね!」

「ユウリはユウリであの塩試合だったものね……いや、強いのはすごく喜ばしいことなのよ?」

 

 色々話していると、ソニアちゃんも例の調査でバウタウンの周辺を色々と散策していたらしいんだけど、成果は芳しくなかったようだ。ちなみにホップとマリィは先にジムを攻略してすでにエンジンシティに向けて出発しているらしい。はえーなあいつら。俺とユウリがルリナさん対策でポケモン達を鍛えていたとはいえ、あっさりジムをクリアし過ぎだろ。

 

「二人ともどうする? さっそくジムに挑むのなら案内するよ」

「マサル、どうしようか?」

「ん~、やるべきことはやってきたし行くとするか。あ、でもその前にブティックに寄って新しい服を買うのも……」

「あ、バウタウンにもエンジンシティにあるようなブティックはないのよ」

「モデルのルリナさん管轄の町なのに!?」

 

 ブラッシータウンですらあったのにバウタウンにないってどういうこと!? きっと服とかお洒落アイテムは列車に乗ってエンジンシティまで買いに行ってるんだろうな……どんまいルリナさん。

 

 心の中でルリナさんに同情しながら、ソニアちゃんに案内のもとバウスタジアムへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

「え? ルリナ、いないんですか?」

「ええ。()()()ジムチャレンジャー達が来るまで少し散歩をしてくると言って出て行かれましたね」

 

 バウスタジアムに到着し、中に入ろうとするとリーグスタッフにルリナさんが不在であることを告げられた。まーた俺達が最後のジムチャレンジャーなのかよ。みんな挑むの早すぎない? ……俺達が遅いだけか。すんません。

 

「どうする二人とも。ルリナが帰ってくるまで待ってる?」

「バウタウンを探検しながらルリナさんを探そう! 私、色々見て回りたい!」

 

 ユウリがぐっと拳を握って力強くそう言った。探検って……あ、でもソニアちゃんはルリナさんと友達だからルリナさんが好きな場所とか知ってるかもしれないな。

 

「ルリナさんが行きそうな場所に心当たりはある?」

「あるけど……そこにいる保証はないよ」

「とりあえずそこに行ってみて、いなかったらソニアちゃんから連絡すればいいんじゃない?」

「そうねぇ。ユウリもお散歩したいみたいだし……」

 

 犬みたいに言うんだな。まあ確かに、ユウリは誰にでもすぐに腹を見せて媚を売る人懐っこい犬みたいなもんだからな。

 

「じゃあ、灯台に行ってみましょう。ルリナはそこでよく海を眺めていたから」

「灯台……行きたい行きたーい!」

 

 というわけで、ルリナさんを探す旅に出ることにします。

 

 

 

 

 

 

 バウタウンを出て東に進むと灯台が見えてきた。灯台……金銀のアカリちゃんのイベントを思い出すな。灯台のポケモンを元気にするためにタンバシティまで「ひでんのくすり」を取りに行くイベント。子供の時は何も思わなかったけど、冷静になって考えたら会ったばかりの主人公、しかも子供にそんな大事な薬を取りに行かせるってなかなかロックなことしてるよな。

 

 まあ、ゲームにそんなツッコミを入れてたらキリがないけど。

 

「わぁ~。潮の匂いだ~! 潮風って髪がべとついちゃうけど、この匂いはテンション上がるな~」

「泳がなくても海って眺めてるだけで楽しいんだよな。こういうところでのんびり釣りがしたい」

「あら。あなた達、よくわかってるじゃない」

 

 灯台に到着して俺とユウリがそんな話をしていると、海を眺めていた高身長の褐色美人さんが笑顔で俺達の方へ振り返った。

 

 開会式でも思ったけどめちゃくちゃ美人だな。顔小さいし足長いし……何頭身ですか?

 

「す、すごい美人さんだ……き、綺麗になる秘訣を教えてください!」

「いきなり何言ってんだお前」

「ふふ、ありがとう。あなたもとっても可愛いわよ、ジムチャレンジャーさん」

「マサルっ! マサルっ! ルリナさんが……現役のモデルさんが私のこと可愛いって!」

「そーだな、よかったな」

「綺麗になる秘訣はバランスの良い食事と適度な運動と……ストレス発散ね!」

「どうしようマサル。私、全部完璧だよ。これはユウリちゃんが激かわスーパーモデルになる日も近いのでは?」

「好き嫌い激しいくせに何言ってんだ。自惚れんな」

 

 ユウリがぺしぺし叩いてきたのでほっぺたをムニムニしてやると、俺達のじゃれ合いを見ていたルリナさんが口元を上品に押さえて笑っていた。

 

「あなた達がダンデとサイトウの推薦ね。ソニアから色々と話は聞いてるわ」

「色々と話……俺達の武勇伝を?」

「黒歴史にきまってんでしょ」

 

 ソニアちゃんにデコピンされてしまう。おいおい、俺にそんな黒歴史なんて……いや現在進行形で鋭意製作中だったわ。

 

「どこに出しても恥ずかしくない幼馴染になんて言い草なんだ」

「どこに出しても恥ずかしい幼馴染の間違いでしょ?」

「ほーん? 俺にそんな態度取っていいの? ルリナさんに『昔ソニアちゃんが森で迷って大泣きしてお漏らしした話』してもいいの?」

「なにそれなにそれ!? すっごく聞きたい!」

「だからお漏らしはしてないでしょうが!! ルリナ! マサルの言うことは話半分どころか三分の一でいいからね! 口ばっかり達者になりやがってこいつは本当に!!」

 

 今度はソニアちゃんにほっぺたを思い切り引っ張られてしまう。おい、助けろユウリ。大事な幼馴染のほっぺたがはんぺんみたいになってもいいんか? そう思ってユウリを見ると俺を指差して笑っていやがった。覚えとけよこいつ。ジムミッションでまたハードル上げてやるからな。

 

「それにしても、あなたはよくそんなTシャツを着る気になったわね」

「ばあちゃんがプレゼントしてくれたんで」

「それは……うん。大事にしないといけないわね」

「それに、これめっちゃ着心地いいんですよ。30000円もするだけあって使ってる素材は最高級だし体温は自動で最適になるよう調整してくれるし、速乾性あるし頑丈だし肌触り良いしインナーとしては最強だと思います」

「デザイン以外はね」

「……ルリナさんも着てみます? このブランドがスポンサーになってくれるかもしれませんよ?」

「ごめんね。そのブランド、もう私のスポンサーになってるのよ」

「あ、そーなんすね」

「それで、私にそれを着てほしいっていう依頼があったんだけど……断固! 断固拒否したわ! たとえそのブランドがスポンサーを降りる事態になっても拒否したわね!」

 

 そこまで拒否しちゃったんだ。俺はもう見慣れたし着慣れちゃったけど、やっぱ最初に着るまでのハードルが恐ろしく高いんだよな。いっそのことボールガイに着せてみるか? いやでもあいつ就活中だしでんせつTシャツを買うだけの金がなさそうだし『でんせつTシャツボールガイ』とかいう制御不能な化け物が爆誕しちゃうからなしだな。

 

「じゃあルリナさん、こうしましょう。バトルで俺が勝ったらルリナさんも()()を着て『でんせつTシャツウーマン』になるって」

「チャンピオンカップ用のポケモンを使うわよ?」

「公開処刑じゃないすか」

 

 そんな風に、スタジアムに戻るまでの道中でルリナさんと色々と雑談して仲良くなりました。ルリナさんってもっとクールで素っ気ない感じのイメージだったけど、話しやすいし面白いし……何より健康的な美人だから最高やな!

 

 

 

 

 

 

「バウタウンのジムミッションはーーー!! 迷路をクリアしてゴールに向かうことです!! ただし迷路は途中で水にルートを阻まれています!! どうすればいいのでしょうか!? まさに、トレーナーの知恵とそれを実践する強さが試されます!!」

「なるほど……つまり、頭脳(ブレーン)肉体(フィジカル)を駆使して迷路を攻略しろと。そういうことですね?」

「その通り!」

 

 バウスタジアムに戻り、チャレンジャー用ユニフォームに着替えてからジムミッションステージにやって来るとダンペイさんが迎えてくれた。なるほどねー、この迷路を攻略かー……なるほど、なるほど。

 

 やることはわかった。だけど……だけど……どうしてもこれだけは言わせてほしい。

 

 どんだけ金かかってんだよ!!

 

 ルートを塞ぐ水が相当な勢いの滝になってるしそもそもステージ自体がバカみたいに広いプールだし水道代とかどうなってんだよ海が近いから海水を使ってんのかもしんないけどこれだけの水を動かすのにどれだけのエネルギーが必要でしかもメンテナンスとかにもアホみたいなコストがかかってそうだな!!

 

 マクロコスモスすげえ!! ローズ委員長すげえ!!

 

 うし、ツッコみたいことは全部ツッコんだ。じゃあ迷路を攻略していこうか。

 

 気持ちを切り替えて俺は通路の端に立ち、プールになっている下のエリアをのぞき込んでみる。高さは七メートルくらいか。

 

 これなら───いけるな。

 

「よーし!」

「『よーし!』じゃない! 何をいきなりプールに飛び込もうとしているんですか!?」

「泳いでゴールのある柱まで行って柱を登ればクリアでは?」

「迷路を!! 攻略しろと!! 言いました!!」

「……だめぇ?」

「そんな目で見てもだめです!!」

 

 だめならしょうがない。他の方法を試そう。というわけで、滝の目の前までやってくる。ほーん? 滝が当たる部分は網状になってて水がそのまま下のプールに流れるようになってんのね。なるほどなるほど。

 

 これなら───いけるな。

 

「よーし!」

「『よーし!』じゃない! 何を通路の端にぶら下がってるんですか!?」

「このまま腕の力だけで通路の端を進んで行けば滝を回避できるのでは?」

「迷路を!! 攻略しろ!!」

「これもだめぇ?」

「だめっ!!」

 

 だめならしょうがない。他の方法を試そう。せっかくSASUKEのクリフハンガーみたいに攻略してやろうと思ったのに。そして俺は再び滝の前に立って、おもむろに水流に手を触れてみる。ほーん? このくらいの勢いか。

 

 これなら───いけるな。

 

「よーし!」

「『よーし!』じゃない! 何をクラウチングスタートの姿勢になっとるか!!」

 

 とうとうダンペイさんは敬語すら使わなくなってしまった。

 

「あのくらいの勢いなら全力疾走で滝を通り抜けられるのでは?」

「この迷路は知恵と強さを試すミッション!! 肉体(フィジカル)しか使ってないでしょうが!! もっと知恵を絞りなさい!!」

 

 どうやらこれもだめらしい。知恵を絞った結果、肉体をフルに使ってゴリ押しすれば攻略できるという結論に至ったのに。

 

「だったらレギュレーションに明記してくださいよ」

「来年からそうするわい!!」

 

 さーて、ゴリ押し戦法がダメなら……仕方ないからもっと知恵を使うか。俺はもう一度滝の前に立ち、モンスターボールを構えた。

 

「ジメレオン」

「きゅわわんっ!」

「『ひかりのかべ』でししおどしを作れ!」

「きゅわーっ!」

 

 俺が指示するとジメレオンが滝に向かってひかりのかべを発動し、ししおどしの要領で滝の水を通路から直接プールに流れ込むように……ししおどしっていうかウォータースライダーみたいな感じだな。いずれにしても、素晴らしい仕事だジメレオン!

 

「なんということでしょう。匠の手によってただ大量の水が上から下へドバドバ流れていただけの空間がウォータースライダーに……」

「なんということをしてくれたんでしょう!!」

「知恵を絞った結果ですよ?」

「だとしてもポケモンの技を使うな!!」

「ほんとは飛行タイプのポケモンがいたらゴールまで飛んでいこうと思ってたんですよね」

「ミッションのコンセプトガン無視!!」

「……またレギュレーションが変更になりますねぇ」

「やかましいわ!!」

「ルリナさん的にはどうですかー? ありですかー? なしですかー?」

「なしに決まっとろうが!!」

『バラエティ的にはありね』

「ジムリーダー!?」

 

 意外や意外。俺が撮影用ロトムに向かって問いかけると返答があった。ルリナさん曰く、「発想は面白いからその場所だけはその方法で通過することを認めるけど、他の場所はちゃんとスイッチを切り替えて攻略しなさい」とのこと。

 

 なので俺は言われた通り、スイッチを切り替えつつ(俺にドン引きしていた)ジムトレーナーをレアコイルで蹴散らしてジムミッションをクリアするのだった。

 

 

 

 

 

 

「ソニアちゃん見た!? マサルはね!! ああいうことするんだよ!! 『次はもっとまともにクリアする』って言ってたのにぃ!! 言ってたのにぃ!! この空気の後でね!! ジムミッションに挑戦する私の気持ちがわかる!?」

「……ダンデくんの推薦じゃなくてよかったわ」

 

 ちなみにユウリは正攻法でクリアした。そして案の定、選手控え室でユウリがぎゃおんぎゃおんと大暴れしていたので、次のジムからは先にユウリがジムミッションを受けるということと、これから三日間はユウリの好物だけを作るというということで示談が成立するのだった。

 

 

 

 

 

 

「あんな方法でジムミッションを攻略しようとするチャレンジャーなんて初めて見たわよ」

「でもルリナさんも割と面白がってましたよね?」

「確かに面白かったけど、あんなやり方を完全に認めたらジムミッションが成立しなくなるでしょう?」

「こう……『ルールにはこんな穴がありますよ』っていうのを遠回しに指摘してさらに洗練されたレギュレーションにしようっていう意図があったりなかったり?」

「最後がふわっとし過ぎだし全然遠回しじゃなかったでしょ!?」

 

 スタジアムの中へ入り、フィールドの中心へやって来ると呆れながらも笑っているルリナさんがいた。さすがソニアちゃんの親友だけあって良い反応をしてくださる。

 

「とはいえ、考え方自体は非常に新鮮で楽しめました。あなたのその頭脳が───バトルでも存分に発揮されることを期待します」

 

 空気が、変わる。

 

 ヤローさんの時と同じだな。どうやらルリナさんもバトルモードに切り替わったらしい。いいね、こういうピリピリと刺すような緊張感は嫌いじゃないよ。

 

 互いに不敵な笑顔を浮かべながら距離を取り、ボールを構える。

 

 意外と好戦的だな、ルリナさん。

 

 ジムリーダーってのは、そうじゃなくちゃな。

 

「さあ、始めましょうか! トサキント!」

「ジメレオン!」

 

 ルリナさんの初手はトサキント。うん、これは想定通り。それに対して俺の先発がジメレオンだったことにルリナさんは多少なりとも驚いているらしい。当然だ。だってジムトレーナーは全員レアコイル無双で突破してきたんだから。

 

「へえ。私を相手に水タイプで挑むとか……良い度胸してるじゃない」

「ウチのエースがルリナさんの水ポケモン相手にどこまでやれるか試したくなったんですよ」

「うん……いいね。すごくいいわ。私、そういうの好きよ」

 

 好戦的な表情で色っぽく言うのやめーや。美人さんなんだから好きになっちゃうだろ。とはいえ、俺が先発をジメレオンにした理由は、()()()()じゃない。

 

「アクアジェット!」

「こうそくいどう!」

 

 トサキントはどちらかというと物理攻撃が得意なポケモンで耐久はそれほど高くない。素早さもおそらくジメレオンの方が上だろう。それを見越してのアクアジェットだったが、ルリナさんには読まれていたらしくこうそくいどうであっさり回避されてしまう。

 

 すげーな。トサキントってあんなに俊敏に動けるのかよ。

 

「みずのはどう!」

「みずのはどう!」

 

 からの間髪入れずにみずのはどうの打ち合い。出鼻は挫かれたけど、技の威力はこっちが上だ。

 

 ジメレオンのみずのはどうがトサキントのみずのはどうを押し返し、トサキントを飲み込もうとする寸前───

 

「こうそくいどう!」

 

 再びのこうそくいどうで回避され、ジメレオンから距離を取られた。こうそくいどうってこんなに便利な技だったのか! いや、でもトサキントの様子を見るに、限界を超えて無理矢理に素早く動いているから体力の消耗も激しいみたいだ。

 

 今なら、距離があっても畳みかけられる。

 

「ジメレオン───」

 

 が、どうにも罠臭かったというか嫌な予感がしたので俺はルリナさんに聞こえないようにジメレオンに小さな声で指示を出す。ルリナさんとトサキントはそんな俺達の様子を見ても全く動かない。

 

 完全に誘ってやがるな。

 

「どうしたの? 怖気づいちゃったかしら?」

「……美人のお誘いにどう答えようか迷っていたところなんすよ」

「待たせる男は嫌われるわよ?」

「そっすね。なので……これが俺の答えです、ルリナさん。───ジメレオン、アクアジェット!」

 

 おそらく、ルリナさんはジメレオンを誘い込んで何らかの罠にかけるつもりだ。正直、その罠が何かはある程度予想がついてるけど睨み合ったままじゃ埒が明かない。かといって無策で飛び込むわけにもいかないのでジメレオンには()()()()を出していた。

 

「トサキント、ちょうおんぱ!」

 

 そうくるか……!!

 

「飛べっ! ジメレオン!」

 

 あれでジメレオンは相当に運動能力が高いポケモンだ。ちょうおんぱが遠距離から放たれたということもあり、ジメレオンは高くジャンプすることでちょうおんぱの回避に成功する。

 

 だが、ここで気付いた。()()()()がルリナさんのねらいだったということに。

 

「空中じゃ身動きが取れないでしょう! うずしお!」

 

 突如スタジアムのど真ん中に発生した巨大な水の渦にジメレオンが閉じ込められる。なるほどそう来たか。うずしおで徐々にジメレオンの体力を削って疲労が溜まり、うずしおが解除されたと同時に大技をぶち込んでくる───なんて、ジムリーダーの攻撃がそんな甘いわけがないよな?

 

「トサキント、たきのぼり!」

 

 トサキントが渦へ突っ込み、水の流れに逆らわないように渦をどんどん登っていく。おいおい、こんな芸当もできんのかよ。すげーなトサキント。

 

 そして、天辺まで到達したトサキントは渦の中心に閉じ込められてろくに身動きが取れないジメレオンに向けて───

 

「アクアテール!」

 

 尾ひれに莫大な量の水を……周囲の渦の水すらをも纏い、叩きつけた。

 

 ひとたまりもない、強力な一撃。耐久力の低いジメレオンならこの一撃を耐えられないだろう。

 

 完全に、完全にルリナさんの策にハマってしまった。

 

 だが。

 

「───想定内だ」

 

 俺の言葉と同時にうずしおが解除される。その瞬間、俺達の目に飛び込んできた光景は、スタジアムの観客達の目に飛び込んできた光景は……。

 

 アクアテールを叩きつけたトサキント。

 

 アクアテールを叩きつけられスタジアムに倒れ伏すジメレオン。

 

 そして。

 

 トサキントの()()()()技を繰り出そうとしている()()()()()

 

「まさか……!! みがわり!?」

「───アクアブレイク」

 

 ジメレオンはうずしおの残滓である周囲に漂う大量の水を全身に纏い、トサキントの無防備な背中に強力な一撃を叩きこんだ。

 

 大きく吹き飛ばされたトサキントはどうにか起き上がろうと体をぴくぴくと動かしていたが、ついに起き上がることはなかった。

 

 一体目、撃破。

 

「うずしおに閉じ込められていたのがみがわりの方だったなんてね……私の作戦を読んでいたのかしら?」

「お互いのポケモンが高速のアタッカーだから何かしらの方法で身動きを封じてくるとは思っていました。ルリナさんはこれまでチャレンジャーとの戦いでうずしおを何度か使っていましたので……それを使う可能性が高いかなと」

 

 だから、うずしおで閉じ込められて中の様子がわからなくなった瞬間にみがわりを作り、ジメレオン本体はうずしおの水流の中に身を隠させていたんだ。これもジメレオンが水ポケモンだからこそできる荒業だな。事前にルリナさんのバトルをしっかり予習してジメレオンに指示を出しておいてよかった。

 

「私が読み負けたというわけね……でも、勝負はまだまだこれからよ! サシカマス!」

「上出来だジメレオン、()()。レアコイル───後は()()任せる」

「は、あ? え? れ、レアコイル?」

 

 トサキントを倒したところで俺はあっさりとジメレオンを下げてレアコイルを呼び出すとルリナさんは呆気にとられたような表情になる。この人も結構表情豊かだよな。

 

「み、水タイプ使い同士の熱いバトルは……?」

「ジメレオンの役割は元々一体目を倒すところまででした。レアコイルで全抜きはキツイので、少しでも負担を減らすために最初から決めていたことです」

 

 ジメレオンもみがわりとうずしおの中に身をひそめていたから結構消耗したからな。あと二体ならレアコイルで片が付く。

 

「こ、こんな時にクレバーになっちゃって~!」

「『いつ何時たりとも、冷静さを失うな』ダンデくんの教えです」

「許さないわよダンデ!」

 

 ダンデくんとばっちりで草。でもダンデくんってこうやって自分に挑んでくる人のこと大好きだから喜んでそう。

 

 そして、二体目のサシカマスに先制攻撃を許すもレアコイルは10まんボルトでサシカマスをあっさりと沈める。

 

「やるわねマサル! 最後の一匹……とっておきの隠し玉よ! スタジアムを海に変えてやるわ! カジリガメ、ダイマックス!」

「レアコイル、ダイマックス!」

 

 最後の一匹はやっぱりカジリガメか。物理攻撃と物理防御の高い鈍足アタッカー。それでもレアコイルよりは速いけど。

 

 まあ、ここまで来たら互いにできるのはダイマックス技の打ち合いだ。ダイサンダーで終わらせ───

 

「カジリガメ! ダイアース!」

 

 ダイア……え? 待て、待て待て待て! 確かにカジリガメは地面技くらい覚えるだろうなとは思ってたけど……これまでのジムチャレンジャーとのバトルでは一回も使わなかったろ!?

 

「この私が! 電気タイプ対策を何もしていないと思ったの!? 光栄に思いなさい! 本来はジムチャレンジで使うつもりのなかった技なんだから!」

「『スタジアムを海に変えてやるわ!』とか言ってたくせにーっ!!」

 

 どうやら水タイプバトルの梯子を外されたのがそうとう頭にきたらしい。まずい、レアコイルは電気と鋼の複合だから地面技のダメージは……四倍。た、耐えろレアコイル! いくら弱点とはいえ、タイプ不一致技とお前の物理防御力なら……。

 

 お前が勝つ!!

 

 地震のような凄まじい地鳴りと共にスタジアムの地面がせり上がり、鋭利な槍となってレアコイルに襲い掛かる。

 

 大丈夫大丈夫がんばれがんばれがんばれやればできる絶対できるお前ならできる耐えろ耐えろ耐えろレアコイル!!

 

 俺の願いが通じたのか、いつもは無表情のレアコイルがドヤ顔を浮かべているように見えてしまった。

 

 耐え、た……!!

 

(だから言ったでしょうマサルくん。鋼タイプは一番強くてすごくて格好いいんだって)

 

 ええい! やめろやめろ! 脳内に勝手に出て来るなダイゴさん! あんた本当に自由人だな! 今大事なところなんだから引っ込んでてください!!

 

「レアコイル! ダイサンダー!」

 

 そして、ルリナさんの切り札であったダイアースを耐えきったレアコイルの一撃をカジリガメは耐えることができず───俺の勝利が確定した。

 

 

 

 

 

 

「いい? チャンピオンカップのファイナルトーナメントでリベンジするからね! 水タイプのポケモンだけで勝負よ!」

「あの……ジムチャレンジャーにタイプ縛りはハードルが高過ぎるかと……水タイプバトルはジムチャレンジが終わった後でよければ付き合いますから……」

「言質取ったからね! あなたの実家に押しかけるわよ!」

「えぇー……」

「何? 嫌なの?」

「……嫌じゃないっす。嬉しいっす」

 

 押しが強いなこの人!? まじで最初の印象とは全然違ったな。でも多分、これが本来のルリナさんの姿なんだろうな。大人っぽくてクールなのは世間の印象だけで……実は感情的でムキになりやすい子供っぽい性格。

 

 ギャップでファンが急増しそう。俺のおかげやな!

 

「あ、そうだルリナさん」

「何よ?」

「なんでバウタウンにブティックがないんすか?」

「聞いてくれる!? 私が一生懸命誘致しようとしてるのに人口を考慮してとか売り上げが見込めないとか色々難癖付けられてね───」

 

 この後しばらくルリナさんの愚痴に付き合わされてしまった。どうやらブティックの話題は地雷だったらしい。完全に放送事故だな。上手く編集しておいてくださいって思ったけど……これ生放送だったわ。 

 

 ……まあいいや。

 

 何はともあれ、これで二個目のジムバッジをゲットすることができましたとさ。

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

「ジムチャレンジが終わったらルリナさんがマサルの実家に来る? ふーん、ふーん、ふーん……? まあ、その程度でユウリちゃんの勝利は揺らがないんですけどね! ていうか初めから勝負ついてるんですけどね! ちょっと小顔で足が長くておっぱいが大きい褐色美人なモデルさんだとしてもマサルは超絶可愛いユウリちゃんのことが大好きだからね! この程度で焦らないよ? 焦らないっすよ? 焦るわけないでしょっ! ただ! ハロンタウンの風紀を守るためにも夜のポケモンバトルなんて絶対させないからな! そう! ハロンタウンの! 風紀を! 守るために! それはそれとして私はバトルに私情を挟んだりしないスーパーハイパーウルトラパーフェクト淑女ユウリちゃん。みんな、対ルリナさん戦の作戦を伝えるよ! パルスワン───全抜き、いけるよね?」

「イ、イヌヌワンっ!」 




 バウスタジアム攻略完了。

 ジメレオンVSトサキントはツッコミどころ満載かもしれませんが許してください。ああいうバトルって書くのはすごく大変ですけど楽しいので今後もあんなバトルがちょくちょく出てくると思います。

 ジムミッションに関しては、私が初プレイ時に思ってたことを全部マサルにやってもらいました。多分、誰もが「スイッチを押さなくても攻略できるだろ」と思ったことでしょう。

 ルリナは最初の印象はクールで美人なお姉さんでしたが、バトルに負けて「きーっ!」ってなって髪の毛をぐしゃぐしゃにするシーンが可愛くてすごく好きです。ソニアと親友なのもグッド。もっとソニルリいちゃいちゃしろ!

 次回はメタボなおっさんとレストランでお食事会をした後にガラル第二鉱山へと向かいます。

 ガラル第二鉱山……鉱山……もう、何が出てくるかみなさんおわかりですよね?

 次回、話がテンポよく進めば大誤算で穴に埋まってしまったイケメンを助け出します。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!


 ルリナさんが亀のポケモンを使っていることに対していやらしい想像をした人達やルリナさんと夜のポケモンバトルをしたい人はここをぽちぽちしてください!

 
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