【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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【前回のあらすじ】
・ルリナさんは亀(ポケモン)の扱いが上手♡



No.0030 うまるよ!! 大誤算

「マサル、あんたねえ……やり過ぎよ。や・り・す・ぎ!」

「ソニアちゃんにそう言われるとエロい意味にしか聞こえないんだけど」

「なんでよ!?」

 

 ルリナさんとのバトルを終え、着替えてロビーに戻ってくると開口一番ソニアちゃんにお説教をされてしまう。俺だってルリナさんがあんなになるなんて想定外だったから仕方ないじゃん。それにさぁ、やり過ぎって言ったらユウリだってやべーだろ。

 

 ルリナさんにほぼ何もさせずにパルスワンで全抜きしたからな。相変わらずの塩試合だったわ。あいつほんとに強過ぎだろ。ユウリもすごいけど、ユウリの期待に100%応えるポケモン達もやばいわ。次のユウリVSカブさんがめちゃくちゃ楽しみになってきたな。

 

「とはいえ、バウスタジアム突破おめでとう。記念にこれをあげるね」

「何これ?」

「『かたきうち』のわざマシンよ」

「こっわ。え? ソニアちゃんってちょっとヤンヤン入ってる子だったの? ……今後の付き合い方を考え直すわ~」

「ネタで渡したのに真に受けないでよ!」

 

 やめてよね。「私がルリナの仇を取る!」とか言われても、今の俺じゃソニアちゃんのガチパには勝てないから。ガチバトルするならジムチャレンジが終わってからにしてください。

 

 そんな風にソニアちゃんからお説教をされていると、着替え終わったユウリが無言で俺に突撃してきた。ジムミッションのことについては散々謝ったのにまーだ機嫌が直っとらんのか?

 

「むー……」

 

 そのまま俺に抱き着いているユウリは俺を見上げてほっぺたを膨らませたまま「私、不機嫌ですよ?」アピールをしている。あざといあざとい。

 

「悪かったって。エンジンシティに着いたらバトルカフェで甘い物奢ってやるから」

「ちーがーうーっ! そうじゃなーいーのーっ!」

 

 ユウリは小さな子供の様にイヤイヤと首を横に振って俺の胸にギューッと顔を押し付けている。なんぞ? それ以上になんか貢がんといかんのか? と、思ったけどこいつのこの感じは違うよな。多分、そもそも俺が根本的なところを勘違いしてるっぽい。

 

 根本的なところ……ユウリが不機嫌な理由はジムミッションじゃないってことか? んー……だとすると他に心当たりは……バトルは別に普通にやったし、今だってソニアちゃんに説教されてかたきうちのわざマシンを押し付けられそうになったし。

 

 あれ? ユウリが不機嫌になる要素なんてなくね? それとも知らない間に怒らせてたか?

 

 不思議に思ってソニアちゃんを見るも、ソニアちゃんもわからないようで首をかしげている。うーん……そうすると……。あ、もしかしてこいつ……。

 

「ユウリ、お前もしかして……バトルが終わった後に俺とルリナさんが仲良く話してるのに嫉妬したのか?」

 

 俺がそう言うと、ユウリは目を見開いて口をパクパクとさせた後、カジッチュのように顔を真っ赤にしてしまった。

 

「はぁ!? はぁぁ!!?? はぁぁぁぁぁぁ!!!??? そ、そそそそんなわけないじゃん!! 私がそのくらいで嫉妬なんかするわけないじゃん!! ま、マサルったらなんて自意識過剰な自惚れ屋さんなの!? マサルがルリナさんみたいな美人さんと仲良くしてたところで私には別に関係ないしなんとも思ってないしそんなのマサルの自由だし嫉妬ちゃんなんかするわけないんですけどぉー!? 調子に乗らないでほしいんですけどぉー!? 自惚れないでほしいんですけどぉー!?」

 

 ……こいつってほんとにこういうところが可愛いよな。

 

 俺は思わずユウリの頭をわしゃわしゃと撫でてしまった。そういやイーブイばっかりかまってたらヒトモシもこんな風に嫉妬してたよなぁ……

 

「こ、このくらいで誤魔化され……誤魔化されにゃいんだからぁ……ふへへぇ~」

 

 途端にユウリはだらしない笑顔になって「もっと撫でて」アピールをしてくる。うーん、ウチのわたぱちと同じ反応。我が幼馴染ながらちょろ過ぎて不安になるわ。ほんとに変な男に騙されんなよ? 俺の目の届く範囲に居たら守ってはやれるけどな。

 

「あ、いたいた。二人ともー! 渡したいものがあるから待ってくれるー?」

 

ちょろかわユウリちゃんの機嫌が直ったところでルリナさんが俺達の方へ歩いてくると、再びユウリが警戒モードなって俺の背中に隠れながらじーっとルリナさんを見ている。まんま猫だなこいつ。

 

「どうしたの? マサルの後ろに隠れちゃって……」

 

 ルリナさんが首をかしげながら尋ねた。うん、さっきまでバチバチにやり合ってた相手がこんな風になってたら意味わからんよな。

 

「こいつ、俺とルリナさんが仲良く話してたから嫉妬して───」

「あーっ! あーっ! あーっ! ぎゃおーん!! ぎゃおーん!! あぎゃっす!! あぎゃっす!!」

 

 俺が事情をブッパするとユウリが奇声を上げながら後ろから俺の口を手で塞いでくる。お前だんだん野生に帰ってないか? ワイルドエリアにいた時より酷くなってんぞ?

 

「あら、そうだったの? バトルの時はあんなに威圧感があったのに、可愛いところあるじゃない」

「ち、違いますっ! 私はそんなんじゃ……ふへへぇ~♪」

「……本当に可愛いわねこの子」

 

 ルリナさんに頭を撫でられて再びユウリはご機嫌な様子でだらしなく笑っていた。感情が忙しいヤツだなまったく。

 

「そうそう、忘れる前に渡しておくわね。はい、バウスタジアムのバトルユニフォームと『うずしお』のわざマシンよ」

「ありがとうございます」

 

 あ、やっぱりジムをクリアしたら貰えるシステムなんですね。こ、これでいよいよ次のエンジンジムをクリアすれば俺もカブさんと同じユニフォームを……ただ、一番の問題は勝てるかどうかなんだよな。カブさんまじでつえーからなぁ……序盤のジムにいていいレベルのトレーナーじゃない気が……いや、あえて三人目として立ちはだかってんのか。序盤の登竜門的立場として。

 

 とにかく、苦戦は必至。カギになるのはジメレオンだな。最悪、ワイルドエリアで鍛え直すことも視野に入れておかないと。

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

「見つけたボルよ! マイフレンド!」

 

 聞きたくない声と視界に入れたくないムキムキマッチョマンが俺の方へどたどたと走り寄ってきている。

 

 うわ~、全力で無視してぇ~。

 

「今回も大活躍だったボルね~! ユウリ選手の強さもドン引きするくらいだったボ……ル……?」

 

 件のムキムキマッチョマン───ボールガイが突然ピタリと立ち止まって俺達四人をぐるりと一瞥した。なんだよ? お前その被り物してるせいで表情が見えないから何考えてるかわかんなくてこえーんだよ。

 

「う、う、う……」

 

 う?

 

「羨ましいボル~!! なんで……なんででんTマンの周りにばっかり女の子が集まるボルか~!? 可愛い幼馴染と旅するだけに飽き足らず!! ジムリーダーのルリナやマグノリア博士のお孫さんであるソニアさんまでたぶらかしているとは!! 男の風上にも置けないボル!! 見損なったボルよでんTマン!! 僕と君との友情はここまで……いや、待つボル。ここはあえてでんTマンと仲良くしておいて僕もおこぼれにあずかる方が賢い選択ボルでは? ふっふっふ。嫉妬にまみれた感情的な行動をして女の子と知り合う機会を損失するなんて愚か者のやる行為ボル~! 知的な僕はこの状況すら利用してやるボルよ~!」

 

 いきなり現れて何をべらべら喋っとるんだお前は。ソニアちゃんもルリナさんも口ぽかーんって開けてるし。

 

「マサル……この変なの、何?」

「よくぞ聞いてくださいました! 僕はでんTマンのソウルフレンドのボールガイ! よろしくボル、ソニアさん!」

「私のこと知ってるの?」

「当然ボルよ~。マグノリア博士のお孫さんで……何より七年前のジムチャレンジであのダンデとセミファイナルトーナメントの決勝戦で名勝負を繰り広げた人を僕が知らないわけないボル~!」

 

 そういやこいつ、ジムチャレンジの熱狂的なファンだったな。それ以外の印象が濃過ぎて忘れてたわ。

 

「ボールガイ……ガラルポケモンリーグの公式マスコットね。ということは、リーグ広報の人間かしら?」

「ルリナさん、違うんすよ。この男? はただのジムチャレンジファンでボールガイのコスプレをしているただの就活生です」

「就活生とコスプレにどんな関係があるの!?」

「ボールガイのコスプレをしてSNSで話題になってポケモンリーグに就職したいとかなんとか……」

「何をどう考えたらコスプレで就職できるって結論になるの!?」

「俺にもわかんねえっす」

「そんな不審者に友達認定されてるなんて……類は友を呼ぶって本当なのね」

「はっはっは。言っておきますけど、逃がしませんからねルリナさん」

「あ、用事思い出したわ。じゃあそろそろこの辺で~」

 

 面倒事の匂いを感じ取ったルリナさんの腕をがっしり掴んで逃がさないようにする。はっはっは。この俺が、この状況で、あっさりあなたを解放すると思いましたか?

 

「おいボールガイ。せっかくだから()()()短い動画撮ってSNSにアップするぞ」

「お~、いい考えボルね~! さすがマイフレンド! 実はキャラ付けのために色々と独特な動きを考えてたボルよ~!」

「待った! マサル、今五人って言った!? ルリナとユウリだけじゃなくて私も!?」

「ちょ……なんで私がナチュラルに数に入ってるのよ! 変なことは変なの同士でやってなさい!」

「ソニアちゃんはマグノリア博士に元気な姿を見せた方がいいだろ?」

「いくらでも他に見せ方があるでしょ!!」

「ルリナさんは……敗者に拒否権なんてないです」

「言ったわねこいつ! 本気出したら強いんだからね! 絶対にチャンピオンカップでぼっこぼこにしてやるからね!」

「ねえボールガイ、どんな動きなの~?」

「ユウリはなんでノリノリなのよ!?」

 

 ルリナさんが「きーっ!」ってなって俺の頭をぐりぐりし、その傍らでユウリが楽しそうにボールガイから動きを教わり、最後まで抵抗していたソニアちゃんを力づくで無理矢理参加させ、ボールガイが考えた変な動きを五人で仲良く実行する動画を撮影し、SNSにアップするとキバナさんとナンジャモに速攻でいいねとリポストされ、瞬く間に動画が拡散するのだった。

 

 ブーブー文句を言っていたルリナさんも、この動画がきっかけでなんだかんだ仕事が増えたらしく、釈然としないながらも俺達に感謝していた。

 

 ちなみに、サッチムシを連れたユウリファンの可愛い女の子は、俺達のやりとりの一部始終を離れたところからドン引きした表情で見ていたらしい。ファンが減ったかもしれん。すまんユウリ。

 

 

 

 

 

 

「それではマサルくん、ユウリくん! 君達の勝利をお祝いしようか!」

 

 俺達は今、なぜかバウタウンの高級レストランでローズ委員長と同じテーブルに着いている。

 

 なんでいきなりこんなことになっているのかというと、スタジアムでボールガイと別れてから(別れ際に俺とユウリにルアーボールを渡していった)せっかくだから四人でどこかでご飯でも食べようとしていたところ、ジャージ姿のローズ委員長と遭遇してそのままレストランで食事会をしようっていう話になったんだ。

 

 なーんかこの人、やたらと俺とユウリを気にかけてくれるよな。それはそれとして腹出過ぎですよ腹! ジャージの上からでも丸わかり!

 

「ローズ委員長、一ついいですか?」

「何かな、ユウリくん」

「私、こんな高級レストランに来るの初めてでテーブルマナーとかよくわかりません!」

 

 すげーなこいつ、全く物怖じしないでそんなこと言うのか。でも、正直俺もテーブルマナーはよくわからん。コース料理っぽいから、外側のナイフとフォークから順番に使うんだったか?

 

「気にしなくてかまいませんよ。堅苦しい場でもないですからね。美味しく食べるのが一番です」

「よかった~。ありがとうございます!」

「バウタウンは何といっても海の幸が美味しいんですよ。お二人は海の物は平気ですか?」

「お魚! 大好きです!」

「俺も好きですね。釣りもよくやっていましたし」

「そうですか。それはよかった」

 

 ローズ委員長が朗らかに笑う。うーん、笑顔なんだけど溢れ出る黒幕臭と贅肉。

 

 ちなみに席は一番上座のお誕生日席にローズ委員長、俺の隣にユウリ、向かい側にソニアちゃんとルリナさんという並びになっている。秘書のオリーヴさんはローズ委員長の後ろで控えていた。

 

「ところで、マグノリア博士はお元気になされていますかな? 博士には本当にお世話になりましたよ。ねがいぼしの秘めたパワーでポケモンを巨大化させるダイマックスバンドを作れたのも彼女の研究のおかげです」

「ダイマックスについては、まだ不明なことが多く不安もあると申していました。私が旅立つときも『パワースポット探しマシーン』まで持たせたぐらいですから……」

「パワースポット探しマシーン! それのおかげでパワースポット…… ガラル粒子が発生し、ダイマックスを使える場所も判明したのですよ! だが、マグノリア博士が不安を覚えるのはよくないね。私に何かできること…… ソニアくん、ナックルシティにある宝物庫に足を運ぶといいよ。私は歴史の中にダイマックスの秘密を紐解く鍵があると考えています」

 

 宝物庫ってRPGみたいだな。ナックルシティにそんな場所があったのか。ロケット団とかいたら真っ先に狙われそうな場所だけど、トップジムリーダーのキバナさんの管轄だからそんな心配もないな。

 

 あと、どうでもいいけど「パワースポット探しマシーン」ってもうちょっとネーミングはどうにかならんかったんか? ド直球すぎるだろ。

 

「それにしても、お二人は実に見事な戦いっぷりでした。どうですかルリナくん、二人と戦った感想は?」

「委員長がご覧になられた通りです。二人はまだまだ強くなると思いますよ。ダンデの弟やネズの妹、委員長が推薦したビート選手もいますし……今年のジムチャレンジャーは七年前以来の豊作じゃないでしょうか」

「なるほどなるほど。私も概ね同じ意見だよ。ジムチャレンジを勝ち残れるのはおそらくその五人でしょうからね」

 

 ユウリはともかく、俺までそんなに高く評価してくれてるのか。別に卑下するつもりなんてないけど、正直俺は次のカブさん戦をどう乗り越えるか全く結論が出てないんだよな。

 

「そして、お二人にももっともっとジムチャレンジを盛り上げていただきたいものです。特にマサルくん、君はエンタメが何かをよく理解しているようですからね。レギュレーションの穴を突くジムミッションの攻略法、あれは非常に愉快でした」

「ダンペイさんにはめっちゃ怒られましたけどね。一応、失格にならないよう細心の注意は払っていますから」

「……君は一見、ちゃらんぽらんでノリと勢いの力技で突破する直感的なトレーナーに見えますが、本質は読み合いを主体とする相当にクレバーなトレーナーです。ルリナくんやヤローくんとのバトルでそれがよくわかったよ」

 

 クレバーかどうかは置いておくとして、確かに読み合いを主体としているところは大いにある。というか、ポケモンバトル自体が読み合い合戦みたいなもんだからな。あらゆる事態を想定し、情報を取捨選択し、その場その場で常に最適な判断を瞬時にくださなければならない。

 

 まあ、そういう一切合切を無視して直感で常時最適解を叩き出しているのがユウリなんだけどな。

 

「マサルくん、ジムチャレンジを勝ち抜くために必要なものは多々ありますが……君は特に何を重視していますか?」

「ポケモンとの信頼関係や決断力、判断力、知識、理解は()()()として……俺個人が重視していることは『情報をコントロールする術』ですね」

「……ほう?」

 

 ローズ委員長が楽しそうな笑顔になった。やっぱこの人、こういう話が好きだよな。

 

「ジムチャレンジャーが唯一、ジムリーダーよりも優位に立っている点は『手の内を知られていないこと』です。ガラルは他の地方とは違い、ポケモンバトルが興行として成り立っている関係で、ジムリーダーのポケモンや戦い方がいつでもどこでも誰でも簡単に調べて対策を立てることができる。これは、ジムチャレンジャーにとって圧倒的に有利な要素です。それに、ジムチャレンジというシステム上、他の参加者のジムミッションの様子やバトルの様子をじっくり観察することができる」

「……以前に私は言いましたね。『時間の使い方が大事』だと」

 

 エンジンシティでローズ委員長と再会した時のことを思い出す。そういえば、なんやかんやこの人って絶妙のタイミングで俺達の前に登場するよな。そういうところがますます黒幕ムーブに見えるんだよなぁ……

 

「ただ、その優位性も勝ち進めば進むほど薄れていきます。勝ち残るジムチャレンジャーの数が少なくなることに加えて、ジムチャレンジャーの手持ちや戦い方、あらゆる情報を手に入れられるのはジムリーダー達も同じですから」

 

 そう、情報を集めて対策を立てられるのは何もジムチャレンジャーだけの特権じゃない。どれだけポケモンが強くとも、バトル運びが上手くとも、対策を立てられればあっさり敗れることもあるんだ。

 

 ……ダンデくんとかいう例外もいるけどな。

 

「目の前の一戦をおろそかにするつもりは毛頭ありませんが、後先を考えない戦い方や行動をしているだけでは……必ずどこかで行き詰まる。だからこそ、ジムリーダーや他のチャレンジャーの情報だけでなく、()()()()()()()をどう扱うかが鍵になると俺個人では考えていますね」

()()()()()()()()()が大事、ということですね。なるほど……なるほど。()()()()()()()()お話です」

 

 なんかやたらと意味深に頷いてるなこの人。まあ、ガラルの経済を担ってるんだし、色々とガラルの未来について考えているだろうから俺の話に共感できる部分もあったんだろう。

 

「マサル……あなたってそんな恰好をしてるのに色々と深いところまで考えているのね」

 

 ルリナさんが驚いたように言う。服装は関係ないでしょう服装は。

 

「ジムチャレンジというシステムだからこそ……()()()()()()()()()でどういう行動をするかが重要なんすよ」

「その結果がボールガイとの奇行?」

「あれは重要じゃない行動です」

 

 あんな不審者がジムチャレンジのキーパーソンになってたまるか。

 

「はえ~……すごいね。マサルってそんなことまで考えてたんだ。どうしよう……私、全然なんにも考えてなかった……」

 

 ユウリは感心したように言いつつも、不安げな表情を隠しきれていない。ばーか、お前はそんなことを()()()()()()()()んだよ。

 

「お前は()()()()()()()

「ほえ?」

「お前は深く考えずに、自分の直感を信じろ。そうしているお前が───()()()()

 

 実際その通りなんだ。これから先、勝ち進むにつれてジムリーダー達が使うポケモンの数や技が増え、読み合いの要素が多くなればばるほど、バトルが複雑化すればするほど、ユウリの()()()()()()()()直感は誰にも真似できない唯一無二の武器になる。

 

 まあ、その直感はバトル以外では全くと言っていいほど役に立たないけどな。

 

「えへへ、マサルがそう言うならそうする~♪」

 

 そうそう。お前はそのくらい能天気でいいんだよ。ごちゃごちゃ面倒なことを考えるのは俺だけでいい。

 

 嬉しそうな笑顔でデザートを食べるユウリを見ながら俺は思わず頬を緩ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

「ひっろい! でっかいベッド! ローズ委員長ふとっぱら! メタボなだけに!」

 

 ローズ委員長たちとの食事会を終え、俺とユウリは委員長が手配してくれたバウタウンの高級ホテルにやってきた。他のジムチャレンジャーと同じホテルでよかったのに……大丈夫? こんなに贔屓されて不正とか疑われない? そんなヘマをするような人じゃないから大丈夫か。

 

「マサルー! ベッドすっごくふかふかだよ! ほら、こんなに跳ねる!」

 

 ユウリは手持ちのポケモン達をボールから出してクソデカいキングサイズベッドの上でポケモン達と一緒に飛び跳ねていた。こんだけベッドがデカかったらポケモン達も一緒に寝られるな。

 

 てか、ナチュラルに俺とユウリは一緒の部屋なんだな。……変な気を回してくれましたね委員長。

 

 ちなみにソニアちゃんとルリナさんはどこかで飲んでいるらしい。俺はともかく、ユウリには一方的にやられたからソニアちゃんがヤケ酒に付き合わされているとこのことだ。うん、俺は近寄らんとこ。ルリナさん酒癖悪そうだし。それに明日は鉱山を超えてエンジンシティに行かなくちゃならないからな。さっさと風呂に入って寝るとするか。

 

「よーしお前ら! お風呂タイムだ! いくぞー!」

 

 俺もユウリと同じようにポケモン達をボールから出してバスルームへ向かうと……風呂もめちゃくちゃ広かった。ポケモン達みんなで入っても余裕の広さで、レアコイルに電気風呂にしてもらったり、イーブイを洗ってやったり、ヒトモシの体を拭いてやったり、ジメレオンとみずでっぽう勝負をしたりと、非常に有意義なバスタイムだった。

 

 んで、全員でクソデカいキングサイズベッドに寝て、俺はイーブイを抱き枕にして眠りにつくと……イーブイの抱き枕適性が高過ぎてめちゃくちゃ熟睡できた。ユウリとは毎日一緒に寝てるけど……あいつとは大違いだな。なぜか朝起きたらイーブイとユウリがキャットファイトしてたな。仲良しめ。

 

 さて、じゃあ朝飯を食ったらガラル第二鉱山に向かうとしますか!

 

 

 

 

 

 

「ここが第二鉱山……ダイゴさんいるかな?」

「行く先々の鉱山で出会ってたまるか」

「はっ!? もしかしたらまたビートくんが出待ちしてるかも!」

「そんなわけ……ありそうだなぁ」

 

 第二鉱山の中に入ると、ここも照明で明るく照らされていることに加え、道がしっかりと整備されているから普通に通り抜ける分には全く問題がなさそうだった。そして、この鉱山には川が流れているらしく水ポケモンの姿もちらほら見える。

 

「あ、カムカメだ~。コソクムシもい……って速っ!? すごい勢いで逃げちゃった……」

「あいつを捕まえるなら背後からこっそりいかないとな」

 

 他にもツボツボやオンバットなど、最初の鉱山とは違うポケモン達が生息している。お? あっちにはグレッグルとズルッグ……次にマリィと戦う時はちゃんと対策しておかないとなぁ。

 

「マサル、あそこにモンスターボールが落ちてるよ。拾ってくるね!」

「待てユウリ」

 

 道の隅っこに不自然に落ちているモンスターボールを拾いに行こうとするユウリの腕を掴んで止める……あれって、どうかんがえても()()()だよな。

 

「何してるの?」

「ちょっと見てろ」

 

 俺がその辺に落ちている石ころを拾い上げると、ユウリが首をかしげながら尋ねてきた。そして俺は答える代わりにその石ころをモンスターボールへ向かって投げる。

 

 その瞬間。

 

「ま、マッギョが出てきた!?」

「疑似餌だ。ああやってユウリみたいにノコノコやって来たトレーナーやポケモンに襲い掛かるんだろうな」

「ほえ~、かしこい」

 

 コツンと音を立てて石がモンスターボールに当たった瞬間、地中からマッギョが勢いよく飛び出してくる。確か、ガラルのマッギョは電気じゃなくて鋼と地面の複合タイプだったよな。色も普通のとはちげーし、同じポケモンでも地方でタイプが違っているのは面白い。

 

「落ちてるもんをほいほい拾うなよ? マッギョに噛まれるからな」

「うん。気を付けるね」

 

 ユウリはそう言って俺の手を握って嬉しそうに歩き始める。能天気なくらいでちょうどいいとは思ったけど、多少は危機感なり賢さを身につけてほしいよなぁ……

 

 そして俺達は野生のポケモンやマッギョに注意しながら鉱山の中を進んでいく。この鉱山も開発途中らしく、作業員の人達やそのポケモン達が汗水を流して働いていた。いつもお仕事お疲れ様です。

 

「きゅ~ん……」

「ユウリ、今なんか聞こえなかったか?」

「え? そうかな?」

 

 しばらく鉱山の中を歩いていると、ものすごく小さいけれどポケモンの鳴き声のようなものが聞こえてきた。普段だったら野生のポケモンの鳴き声なんてそこまで気にしないんだけど、その鳴き声が弱っているポケモン特有のものだったから気になって足を止めてしまう。

 

「きゅ~ん……」

「あ、私にも聞こえた! ……どっちだろう?」

「リオル、波動で鳴き声の元を辿れるか?」

「あおんっ!」

 

 ユウリの手持ちからリオルを呼び出し、波動で音源を探らせる。もしも怪我をして動けないポケモンがいるのだとしたら……場合によってはポケモンセンターに連れて行くことも考えなくちゃいけないな。

 

「あおんっ!」

「こっちだな。案内してくれ」

 

 そしてリオルは小さな鳴き声の音源を見つけたらしく、駆け出して行ったので俺達もリオルについて行く。

 

 ついて行った先は鉱山の道はずれの隅で、鉱石や土砂が崩れている場所だった。

 

「きゅ~ん……」

「間違いない。ここだ。よくやった、リオル!」

「あおんっ!」

 

 リオルを撫でてやると嬉しそうに笑っている。この場所はすでに作業が終わっているらしく、周囲に作業員の人達の姿は見られない。崩れているのは壁際に一角だけで、声を出せている以上完全に埋まっているというわけではなく、横穴が土砂や鉱石で塞がって出れなくなっている可能性が高い。

 

「まだ間に合う……全員出てこい! 土砂や鉱石をどかして助けるぞ!」

「私達もだよ。みんなおいで!」

 

 俺とユウリは手持ちのポケモンを全員呼び出し、協力して土砂や鉱石を片っ端から片付けていく。俺もユウリも自分が汚れることを全く厭わず、ただただポケモンを助けることに必死だった。

 

「このデカい鉱石をどかせば……レアコイル、磁力で引っ張ってくれ!」

 

 俺が指示を出すと、レアコイルが強力な磁力で一番の妨げになっていた大きな鉱石を持ち上げてくれた。さすがだレアコイル。お前がいてくれてよかった。

 

「よし、もう大丈夫……って、お前───」

 

 鉱石の向こう側には予想通り横穴があり、その奥には震えている小さなポケモンがいた。緑色の体表に同色の角、本来は気の強そうな釣り目が恐怖で垂れ下がっている。

 

「ヨーギラス……しかも、色違い?」

 

 見つけたのは色違いのヨーギラスだった。本来、ヨーギラスのお腹の色は鮮やかな赤色だが、この個体は紫色……それに、体表も黄色がかった明るい緑色だ。間違いない……色違いの個体だ。

 

「怖かったな。でも、よくがんばった。もう大丈───」

「ヨギッ!」

 

 しゃがみ込んで視線を合わせて手を伸ばすと、ヨーギラスはますます体を震わせて奥へ逃げ込もうとする。

 

 閉じ込められて怖い思いをしたにしては……反応が過剰過ぎる。どういうことだ?

 

「……ユウリ、ちょっとお願いをしていいか?」

「うん。どうしたの?」

「ここの作業員の人達に聞いてきてほしいんだ。『この鉱山にはヨーギラスが住んでいるのか?』って」

「わかった。聞いてくるね」

 

 俺が頼むとユウリは素直に従ってくれた。俺達は鉱山の中をしばらく歩いていたけど、ここに来るまでヨーギラスと出くわすということは一度もなかったんだ。それに加えて、ここにいたのは色違いの個体。当たってほしくはないけど、もしも俺の予想が当たっているとしたら……

 

「マサル、聞いてきたよ。誰も『ヨーギラスなんて見たことない』ってさ」

「……やっぱりか」

 

 だとすると、このヨーギラスが過剰なまでに俺達に怯えていた理由に納得できる。

 

「マサル、何かわかったの?」

「ああ、多分こいつは───群れから追い出された個体なんだ」

「群れから……追い出された?」

 

 どこかにヨーギラス……だけじゃなくてサナギラスやバンギラスを含む群れがあって、そこを追い出されてしまった個体。追い出された理由は一つ───()()()であるということ。

 

 本来、色違いの個体が生まれてくる確率はものすごく低い。一説によると、およそ四千分の一……0.025%。

 

 そもそも、他の個体と色が違う……たったそれだけの理由で群れを追い出される、迫害されるということはありうるのか。

 

 答えは、「ありうる」。

 

 だって、野生のポケモンに限らず……()()()()()ありうることなんだから。

 

「群れから追い出されて、この鉱山に逃げ込んだんだ。でも、この鉱山にはすでに他のポケモン達が住み着いていて独自の生態系を築いている。()()()()()()()()()状況で周囲に馴染めず、こうやって道のはずれの横穴に隠れるように住んでいたが……」

「運悪く、土砂崩れに巻き込まれちゃった……こんなに怯えているのは、土砂崩れのせいだけじゃなくて……同族から、他のポケモン達からいじめられていたから……」

 

 だからこそ、俺に対して強烈な拒絶反応を示したんだ。

 

 このヨーギラスがどれだけ怖い思いをしてきたのか、どれだけ寂しい思いをしてきたのか。

 

 俺には、その気持ちを推し量ることはできても、理解することはできない。

 

 ただ、今の俺にできることは一つだけ。

 

「……マサル?」

 

 俺はリュックからモーモーミルクを取り出して、小鍋とアルコールバーナーで温める。火傷しない程度に温まると、それを小皿に移してヨーギラスに差し出した。

 

「ヨ、ヨギィ……」

「大丈夫だ、ヨーギラス。君をいじめるようなヤツはここにいない」

 

 俺はできるだけ優しく笑いかけてそう告げ、ホットミルクの入った小皿をそっとヨーギラスの前に置いた。最初はさっきと同じように体を震わせていたヨーギラスだったが、スンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぎ、恐る恐るその小さな舌でホットミルクに触れる。

 

 途端に、ヨーギラスはポロポロと涙を流し始めた。

 

「大丈夫、大丈夫だからな」

 

 もう一度、俺はヨーギラスに手を伸ばす。

 

 今度は、()()()()()()()()()()

 

「もし~」

「ぶいぶーい」

 

 そして、ヒトモシとイーブイが横穴に入り、ヨーギラスにピッタリと寄り添って涙を拭ってあげている。

 

 その光景を見て、俺は決めた。

 

 

 

 

 

 

「俺と一緒に行こう───ヨーギラス」

 

 ヨーギラスは、俺の言葉に静かに頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

「やあ、また会ったねマサルくん、ユウリちゃん。悪いけど、胸から下が穴にハマっちゃって身動きが取れないから助けてくれないかな」

 

 ヨーギラスを仲間に迎え、鉱山を進んでいくとなぜか穴に埋まったダイゴさんと遭遇した。

 

 どうやらガラル鉱山ではイケメンも発掘できるらしい。

 

「ダイゴさん……一つだけ言わせてもらっていいすか?」

「なんだい?」

 

 さっきまでの感動を返せ!!




 ボールガイイベント、ローズ委員長とのお食事会、新しい仲間の加入、オチのダイゴさんと盛りだくさんというか詰め込み過ぎました。

 以前、どこかで言及していたマサルの600族はみんな大好きバンギラスです。しかも色違い個体というね。これで格闘技が使える物理アタッカーができました。ジャラランガ? 種族値が修正されたらまた会おう!

 これまでの四体と違ってアニポケっぽい出会い方でしたが、たまにはこういうドラマ的な展開があってもいいでしょう。まあ、このヨーギラスには追々過酷なイベントが待っていますがね。

 ヨーギラスは金銀のシロガネ山で出るまで粘りまくってバンギラスまで育ててカントー地方を連れ回してたなぁ。まあ、金銀時代のカントー地方は容量の関係でほとんどイベントらしいイベントはないんですけど。ゲームボーイ時代だから仕方ない!

 だからこそリメイクが神なんだ!

 ところで、みなさんが初ゲットした色違いポケモンは何ですか?

 私は「赤いギャラドス」を除けば金銀時代のメノクラゲです。色違いが出た時のあの「キラッ☆」ってなるエフェクト好き。

 次回はダイゴさんと一緒に行動しつつビートくんに絡んでいきます。

 鋼タイプを持たないビートくんの明日はどっちだ!?

 ではでは、今回もここまでお読みいただきありがとうございました!

 ソードでは野生のヨーギラスが出ないから泣く泣くポケモンHOMEから連れてくることになるという私と同じ悲しい十字架を背負っている人はここをぽちぽちしてください!

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