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【前回のあらすじ】
「元ホウエン地方のチャンピオンで大企業の御曹司なイケメンの僕が鉱山でスローライフを送っていたらうっかり穴に落ちちゃった! 大ピンチな僕のもとに可愛い女の子トレーナーがやってきて……この先僕はどうなっちゃうの~!?」
私のマスターは頭がおかしい。
これは私とマスターが出会った時の話だが、マスターは私を捕まえるなり「このコイルさんはかつて人気投票でピカチュウさんに勝った伝説のポケモンなんだ!」と頭のおかしいことを言っていた。
私なんかがピカチュウよりも人気があるなんて、何を根拠にそんなことを言っているのか。
きっとマスターは私達とは別の世界線からやってきたに違いない。
そもそも、他に格好良かったり可愛い電気ポケモンがたくさんいるのに、わざわざ好き好んで私なんかを仲間にしようとする理由が理解できない。
それに、あのへんてこなTシャツをあえて着ている理由も理解できない。
やっぱり、私のマスターは頭がおかしい。
頭がおかしいといえば、ユウリ嬢も頭がおかしい。
毎日毎日三食全てをカレーにしようとするカレーキチだ。
カレーは美味しい。確かに美味しい。それは認めよう。
だが……だが……飽きる……!!
ご飯を頂いている身でこんなことを言うのは贅沢かもしれないが……毎日三食カレーは、飽きる!!
さすがのマスターもユウリ嬢のカレーキチには付き合い切れないらしく、あの手この手でカレーを回避しようと試みている。
その時は、マスターのポケモンだけでなくユウリ嬢のポケモンとも一致団結してカレーを阻止しているのだ。
そのおかげで、今は「一日にカレーは一食まで」と頻度が減っている。
やっぱり、ユウリ嬢は頭がおかしい。
頭がおかしいといえば、さきほどまで穴に埋まっていたこの男も頭がおかしい。
まず、穴に埋まっている時点で頭がおかしい。
次に、石を眺めながら高笑いをしている時点で頭がおかしい。
さらに、鋼タイプのポケモンに恍惚とした表情を向ける時点で頭がおかしい。
ついでに、あのボールガイとやらも見た目も頭も何もかもおかしい。
どうやら、マスターの周りには頭のおかしい人間しか集まってこないようだ。
唯一まともなのはマリィ嬢だけだろう。
ホップ少年やソニア嬢もまとも寄りだが……マスターと同郷であるというだけで怪しいところはある。
マスターの故郷……ハロンタウンというところらしいが、一体どんな魔境なのか?
いずれ私もマスターの故郷へ共に行くことになるのだろうが、今から戦々恐々としている。
感情というものを理解していない私をここまで揺さぶるとは……やはりマスターは只者ではない。
ああ、なるほど……。
私は、気付いた。
そうか。
これが。
───心か。
マスターの頭のおかしさで気付くことになるとは……。
本来であればもっと感動的な出来事があって心や感情を理解できるのではないのだろうか?
こんなことがきっかけで心を理解してしまっていいのだろうか?
いや、思い出せ私。つい先日、マスターが私にかけてくれた感動的な言葉があったではないか。
「せっかくコイルがたくさんバトルをがんばってレアコイルに進化したのに……すぐに石を使ったりしたら、戦いの道具として扱ってるみたいで嫌なんだよ」
そう。あれは私がレアコイルへ進化した直後のことだ。
マスターは確かにこう言ってくれた。
あの時の私はまだ、感情というものを理解していなかったが今ならわかる。
マスターが本当に、私のことを───私達のことを大切に思っているということを。
はぁ……なぜ、その時に気付かなかったのか。
なぜ!! その言葉を言われた時に感情や心を理解できなかったのか!!
よりによってマスターの頭のおかしさを再認識した時にそれらを理解できるようになるなんて……
なるほど、これが「悔しい」という感情か。
……まあいい。
いずれにせよ、マスターは感情を知らない無機質な私に心を与えてくれた。
きっかけやら背景やら諸々を無視すれば感動的だな! うむ!
いずれにせよ、マスターは狂人の類であるが、悪人ではない。
実に興味深い人間……生物だ。
きっとマスターはこれからもたくさん、私に色々なことを教えてくれるのだろう。面白いものを見せてくれるのだろう。
それで、十分。
私がマスターについて行く理由は、それだけで十分だ。
ああ、そうだ。一番大事なことを忘れていた。
マスター。あなたは確かに頭のおかしな生き物ではあるが……。
あなたの隣は───とても居心地がいい。
「で、なんであんなとこに埋まってたんすか? まあ、大体の予想はついてるんですけど」
「珍しい鉱石に目を奪われていたら足元がおろそかになってね。『足元注意』の看板も目に入らず穴に落ちてしまったんだ。ボールは腰のベルトにつけていたから取り出すこともできず、ポケモンも呼び出せなかったんだよ」
「期待を裏切らない男ですね、ダイゴさんは」
「はっはっは。よく言われるよ」
ダイゴさんを救出したら丁度お昼時だったのでそのまま鉱山の広いスペースで俺達はカレーを作り始める。ついでに作業員さん達にもカレーを振舞いたかったので、デカい鍋を三つ用意して辛口、中辛、甘口のカレーを作ることにした。
「みなのものー! 今日はマサルが高級食材である『ヤドンのしっぽ』を解禁してくれたぞー!」
ユウリが高らかに宣言すると、ポケモン達が拍手をしたり喜びの声を上げている。せっかくの機会だからな。出し惜しみはせんぞ。
よーし、おじさん張り切って作っちゃうぞー!
ということで、炊き出しレベルのカレーを作り、ダイゴさんや作業員の人達に振舞っていく。アホほどたくさん作りましたからね。どんどんおかわりしてくださいね~。
「どうだヨーギラス? 美味しいか?」
「ヨギィ……」
他のポケモン達と一緒にカレーを食べているヨーギラスに声をかける。まだ緊張はしているものの、さっきほど怯えている様子はないな。俺のポケモンもユウリのポケモンもみんな人懐っこくていい子だから安心しろ。特にヒトモシは自分が引っ込み思案だったことを自覚しているのか、かなりヨーギラスを気遣っている。
ヒトモシ……立派になって……
「マサルー! マサルー! 私が甘口ばっかり食べてるとマサルのイーブイが『お子様め……』みたいな目で見てくるんだけどー!」
……ユウリ、お前はヒトモシを見習え。
「イーブイ、ユウリをそんな目で見てたのか?」
「ぶーいっ」
「見てないってよ。そうだよな~? イーブイがそんなことするわけないもんな~?」
「ぶいー♪」
「あ゙-っ! あ゙-っ! そうやってイーブイばっかり甘やかすーっ! マサルのポケモナー! おねーさんはマサルをそんな子に育てた覚えは……ってほらマサル! イーブイが勝ち誇った表情してる!」
「……してねえじゃん」
「ぶーい♪」
「マサルの前で猫被ってるだけだよっ! ぐぬぬ……この子、自分が可愛いことを自覚していて自分を可愛く見せる手段を知っていやがる……将来とんでもない悪女になるよ!」
「お前人のこと言えんの?」
自分が可愛いことを自覚しててあざといのはお前も一緒だろ。っつーか、何をそんなにイーブイに張り合ってんだよ。むしろユウリの方がイーブイの手玉に取られてないか? まあ、嫌い合ってるわけでも喧嘩してるわけでもないから別にいいか。イーブイも楽しそうにしてるし。
ユウリがぎゃーぎゃー言ってるうちは大丈夫だ。本当に嫌なことがあったら全く喋らなくなるからなこいつは。
「色違いのヨーギラスか。僕も初めて見るよ」
「……どうもこいつ、群れから追い出されてこの鉱山に逃げ込んできたっぽいんですよね」
「なるほど。色違いポケモンが同族から迫害を受ける……ありえない話ではないね。君が連れて行くのかい?」
「はい。このまま放っておくわけにもいかないし、ウチのポケモン達と一緒なら大丈夫でしょうから」
なんだかんだみんな面倒見がいいからな。打ち解けるまで時間がかかるかもしれないけど、焦らずにじっくりいこうと思う。身体の傷はすぐに治っても、心に負った傷はそうもいかないからな。
「あ、そうだダイゴさん。ちょっと相談があるですけど」
「なんだい?」
「ゴーゴーゴーグルを取り寄せることってできます?」
ゴーゴーゴーグルは砂漠地帯を歩く時の必須アイテムで、ワイルドエリアの探索でいずれ必要になると思っていた。あとはキバナさんの「すなあらし」対策。バトル中にすなあらしで状況を全く把握できなくなるという事態を避けておきたいんだ。
ジムリーダーとのバトルでトレーナーがゴーゴーゴーグルを使っていいのかはわからないけど……今度ダンペイさんに確認しておくか。眼鏡をかけているトレーナーもいるし、多分大丈夫だと思う。多分。
「ああ、できるよ。いくつ欲しいのかな?」
「俺とユウリと……あとホップとマリィの分の四つお願いします」
「わかった。明日にはエンジンシティの『スボミーイン』に届くようにしておくよ」
「早っ!? あ、明日ですか!?」
「マサルくん。僕はね、必要とあらば『元チャンピオンでデボンコーポレーションの御曹司』という肩書きと権力を振るうのにためらいがない男なんだ」
言ってることは割と最低だけどめちゃくちゃ頼りになるな。そういう考え方、俺は嫌いじゃないですよ。
「それで、ゴーグル四つでいくらになります?」
「ああ、お代はもうもらっているからかまわないよ。美味しいカレーと美味しいモーモーミルクというお代をね」
「うーん、イケメンだから許される台詞」
「君も服装に目を瞑ればなかなか整った顔立ちをしていると思うよ」
多分、その服装でとんでもないデバフがかかってると思うんですよ。まあいいか、別にモテるためにジムチャレンジに参加したわけじゃないし。本気出せば俺だってモテるし。
「あとは、そうだね……君達とカブさんとの熱いバトル。これもゴーグルのお代としておこうか」
「観ていくんすか?」
「観ていくも何も、エンジンシティでのジムバトルの解説は僕が担当しているんだよ」
「え!? まじすか!?」
ここ数日はルリナさんやヤローさん対策ばっかりでカブさんのバトルをちゃんと見れていなかったから知らなかった。
「解説を引き受ける代わりに鉱山の発掘許可を貰ったからね!」
「ブレないなぁ……」
ダイゴさんがこの第二鉱山にいる理由がわかりましたよ。あれ? でも待てよ。解説を依頼されてるんならこんな所にいる場合じゃないんじゃ……
「心配しなくていい。残っているジムチャレンジャーは君達二人だけだ」
「俺達、二人だけ……?」
「そう。カブさんのジムを突破できたチャレンジャーは───全体の二割。残りのチャレンジャーは全員、ここで脱落したよ」
「脱落!? まだ期限はあるのに!?」
「……彼らは諦めてしまったんだよ。『何度やってもカブさんには絶対勝てない』と」
ダイゴさんの言葉からは失望や落胆といった感情は感じられなかった。むしろ「仕方がない」といった様子で、脱落したチャレンジャー達に同情すらしているように見える。
俺は、諦めてしまった人達を責める気にはなれなかった。なぜなら、かつての俺も……彼らと同じように自分の力を信じ、勝つことを信じてやまなかったにもかかわらず、どうあがいても越えられない壁に直面して、諦めた側の人間だからだ。
そして、彼らと同じように
だが俺は、そんな強大な壁に対して畏怖や絶望、諦観といった感情を全く抱いていない。
それは、強大な壁が立ちはだかっているという
「
「昔のカブさんを知って……あ、待てよ。カブさんは確かホウエン地方の出身……もしかして、ダイゴさん……!」
「うん。僕は昔、それこそ───僕が
「ま、負けた!? ダイゴさんが!?」
「あの頃の僕は若かった……自分のことを天才だと信じて疑わなかったけど、自信もプライドもバッキバキにへし折られたよ。はっはっは! タイプ相性が悪かったとはいえ、あそこまでやられると清々しさすらあったね」
は、初耳だぞそんなの!? ギラついた切れたナイフ時代のカブさんとバトルしたことがあったなんて……あれ? でもダイゴさんの年齢を考えたら……まじで十歳くらいの子供の時の出来事じゃねえの!?
「カブさんはチャンピオンにすら届きうる実力の持ち主だったけど……色々と巡り合わせが悪くてね。ホウエンを去ってからも気にかけてはいたんだ。それで、ガラルでジムリーダーをやっていると知って……僕もチャンピオンじゃなくなったし、良い機会だと思ってガラルにやってきたんだよ」
ただ珍しい石を探しに来ただけじゃなかったんすね。いやー、いいなぁ。こうやってガラルのジムリーダーが他の地方のトレーナーと因縁があるって……世界がちゃんと繋がってる感じがしていいよなぁ。
「ガラルにやってきてからの僕は良いことずくめだよ。珍しい石をたくさん見つけたし、カブさんの元気な姿を見られたし、君達のような面白いトレーナーと出会えたしね」
「あ、やっぱ石が最初に来るんすね」
そこはブレない安心と信頼のダイゴさん。
「そうだ。忘れる前に、僕を助けてくれたお礼に何か石をあげようじゃないか!」
「え? いやいやいいっすよ。前も貰ったし、ゴーゴーゴーグルも手配してもらったし……」
「石を!! あげようじゃないか!!」
「いやだから……」
「あげようじゃないか!!!」
あ、これ人の話聞かないモードだ。何が何でも俺達に石を貰ってほしいんだな。……ここまで言われたら遠慮する方が申し訳ない、か。実は俺も欲しい石があったし。
「おーい、ユウリ。ダイゴさんが石くれるってよー」
「え? ほんとですかー! 私、ちょうど欲しい石があったんですよー!」
イーブイに対抗して、辛口カレーを年頃の女の子がしちゃいけない表情で食べていたユウリが目を輝かせてこっちに来る。ユウリが残した辛口カレーは俺が食べることになるんだろうなぁ……
「ユウリちゃんは何の石が欲しいのかな?」
「『みずのいし』です! イーブイをシャワーズに進化させたいので!」
「なるほど。カブさんは炎タイプの使い手だからね。良い選択だと思うよ」
「ありがとうございます!」
ダイゴさんは大きなリュックからみずのいしを取り出してユウリに渡した。満面の笑みでみずのいしを受け取ったユウリは早速自分のイーブイに使って進化させている。行動がはえーなおい。
「はぁ~~~♡ 可愛さに格好良さが合わさって最強過ぎりゅうぅぅぅぅぅぅ!!! なにこれなにこれかっこかわかわかわかわヨ~!! ウチの子がかっこかわいしゅぎてガラルがヤバい!!」
「お前の頭の方がヤバいわ」
「しゃわわ~♪」
ユウリは進化したシャワーズに抱き着いて思い切り頬ずりしている。シャワーズはシャワーズで笑顔だし……まあええか。にしても、ユウリはシャワーズを選んだか。確かに、パーティに水タイプが一体いれば何かと便利だからな。俺も初代はめちゃくちゃお世話になったし。
「マサルくんは何の石が欲しいんだい?」
「俺は……『やみのいし』ですね」
「なるほど、シャンデラか」
そう。ヒトモシの最終進化にはやみのいしが必要だったんだ。ワイルドエリアのリーグスタッフやキャンプキングに色々と情報を貰おうと思っていたけど、その手間が省けたな。
「ところで、コイルがレアコイルに進化しているようだけど……前にあげたかみなりのいしは使わなかったのかい?」
「しばらくはレアコイルの姿でいてもらおうかと。最終進化させればバトルでは心強いでしょうけど……今の姿をしっかり目と心に焼き付けておきたいので」
「す・ば・ら・し・い!!」
あかん、ダイゴさんの変なスイッチ押してしもうたかもしれん。
「その気持ちすごくわかるよ僕も最初に育てたポケモンがダンバルで進化して強くなるのはすごく嬉しかったけれど一緒に過ごした時間が長ければ長いほど進化前の姿に愛着がわいてなかなか進化に踏み切れないこともあってでもそれは僕の我儘にすぎなかったからダンバルと話し合ってお互いが納得できる形で今後のことを決めていたんだ今ではメタグロスが僕の一番頼れる相棒で最高に強くて格好良いポケモンになって───」
長い長い早い早い!! この人ほんとに一度スイッチが入ると一気に捲し立ててくるよな!? いや、ダイゴさんが自分のポケモンを愛してるって言うのは伝わってくるよ? めちゃくちゃ伝わってくるよ? だけど限度があるだろ限度が!!
「あ、そうだダイゴさん。質問があるんですけど」
「なんだい?」
ダイゴさんに鋼ポケモンの話をさせると止まらないので半ば無理矢理に話を変えることにする。
「俺、イーブイを
「ニンフィアか……最も新しく発見されたイーブイの進化先で唯一、
「あー……やっぱりそうなんすね」
俺のパーティは格闘と悪タイプに弱いから、フェアリータイプであるニンフィアに進化させようと思っていたんだけど、いくら調べてもイーブイをニンフィアに進化させるための条件がわからなかったんだよな。
「ニンフィアを除く他の七種類は全て、
そして、ニンフィアの進化条件を調べている過程で俺はこの世界とゲームの違いを発見した。それは、ダイゴさんが言ったようにブラッキーやエーフィも石で進化するポケモンだということ。
ブラッキーは「つきのいし」で、エーフィは「たいようのいし」で進化するらしい。これは俺にとってなかなかの衝撃だった。まあ、懐き進化って現実に置き換えたら意味わからんもんな。
「ただ、ニンフィアを所持しているトレーナーに共通しているのは───朝起きたら知らない間に進化していたということだ」
「……これから毎日イーブイと一緒に寝ればいいんすかね?」
「どうだろう? もしかしたら、ボールの中じゃなくて、連れ歩く形でなるべくトレーナーと行動を共にした方がいいのかもしれない」
サトシのピカチュウみたいな感じかぁ……まあ、よくわからんけど試してみる価値はありそうだな。イーブイを抱き枕にするとめちゃくちゃ熟睡できるから一石二鳥! すまんなユウリ。お前はもう過去の女になったんだ。
「……何やらカレーの匂いが漂っていると思えばあなた達ですか。鉱山の中で炊き出しとか非常識なのは服装だけにしておいてくださいよ」
「お、ビート少年」
その後もダイゴさんから色々と話を聞いていると、もじゃもじゃ頭のビート少年がエンジンシティ方面からやってきた。うーん、相変わらずの捻くれた嫌味キャラ。ブレないビート少年に安心感すら覚えてしまう。
「ビートくんビートくん! カレー食べる? どうせお昼はまだなんでしょ? まだ残ってるから私達と一緒に食べようよ!」
「何なんですかあなた!? 距離の詰め方がおかしいパーソナルスペースブレイカーですか!? それに僕は別にカレーなんか食べたくは……」
「ミブリムはこっちの甘口がいいのか? ポニータとゴチムは……辛口だな? よーし、たくさん食べて大きくなれよ」
「僕のポケモンが勝手にボールから出て手懐けられている!!」
「時に少年……君は鋼タイプのポケモンを持っているかな?」
「んなっ!! あなたは石を眺めながら高笑いしていたいつぞやの不審者!! 帰りますよ、ゴチム、ポニータ、ミブリム!! こんな怪しい集団の作るカレーなんて何が入っているかわからな……」
「おー、いい食べっぷりだな三体とも。まだまだおかわりはあるからなー。ジメレオン、リュックからモーモーミルクを追加で出してくれ。ビート少年達に振舞うから」
「きゅわっ!」
「人のポケモンを勝手に餌付けしないでください!!」
「ん? 少年……君のポケットから見えているそれはもしや……『ねがいぼし』では?」
「ビートくんはねがいぼしをたくさん集めてるんですよ~」
「そ・れ・は・す・ば・ら・し・い!! ねがいぼしはなんといってもこの輝きが一番の魅力だよね光の当たり具合や角度によって見える色が異なる点が芸術的な上に強大なエネルギーを秘めていてダイマックスの源になっているまさにガラルを象徴する鉱石だといっていいただ僕の見解を言わせてもらうとホウエン地方の『りゅうせいのたき』に落ちてきた隕石と共通している部分がありそうなんだが君はどう思う?」
「誰なんですかこの早口石オタクは!?」
「元ホウエン地方のチャンピオンでデボンコーポレーションの御曹司のダイゴさんだ」
「もっとマシな嘘をついてくださいよ!!」
「なるほど君はエスパータイプの使い手か石マニアでありながら鋼タイプのポケモンを一体も所持していないのはいただけないが残念ながら今の僕は君にあげられるようなポケモンを持っていないからこの『メタルコート』をあげようじゃないか!」
「いりませんよそんなもの!! 僕は絶対に!! 鋼タイプになんて屈しませんからね!!」
こんな風にぎゃーぎゃー騒いでいたビート少年だったが、最終的に観念してミブリム達と一緒に俺達の手作りカレーを食べていた。話を聞くと、ローズ委員長のために第二鉱山にねがいぼしを探しに来たとのこと。ジムチャレンジもあるのに委員長の依頼も引き受けて大変だな。
「まあ、僕ほどのトレーナーであればこのくらい余裕ですよ。炎バッジも手に入れていますしね」
「すげーな。あのパーティでカブさんに勝ったのか」
ビート少年は余裕ぶっていたが、後で調べたら負けては挑んでを何度か繰り返し、ギリギリのところで勝利を収めたらしい。それでもめっちゃすごいけどな。
で、カレーを食べて片付けをした後にビート少年が調子に乗ってバトルをふっかけてきたので、今度はユウリがバトルをすることになった。俺は前にビート少年と戦ったからな。順番だ順番。
ちなみに結果はユウリの圧勝。ほんとにすげーなお前。
「……あなたがまあまあがんばるから、勝たせてあげようと思いまして。そうだ、どうせあなた達がジムチャレンジを勝ち上がることもないでしょうし、記念に僕のリーグカードをあげますよ」
そして俺とユウリはビート少年とリーグカードを交換する。ビート少年の写真は……俺、この構図前世で見たぞ。一時期ネットの玩具にされてた「チャリで来た」じゃねえか。これは大事に保管しておかないとな。十年後くらいにこれをビート少年に見せて恥ずかしさで悶絶させてやろう。
颯爽と鉱山の奥へと消えていくビート少年の背中を見て、俺はそう誓うのだった。
まさか鉱山の中だけで一話を使ってしまうとは……
前半はレアコイルの独白。内心でマサル達の奇行や服装にツッコミを入れながらも、なんやかんやマサルを慕っている感じです。パーティメンバーの中では一番落ち着いているポケモンですね。
そしてダイゴさん劇場。何気に有用なアイテムや情報をくれるキャラなので重宝しています。また、カブさんとダイゴさんが過去にバトルをしたことがあるというの完全に独自設定です。でも同じホウエンの出身だし、顔見知りでもおかしくないかなって。
あと、本作の「あらすじ」にも記載してある通り、イーブイの進化条件に関してはゲームと異なっているのでご了承ください。マサルのイーブイをニンフィアに進化させるための苦肉の策でした。
というか、ゲームも懐き進化はニンフィアだけにしてエーフィとブラッキーは石進化でもいいんじゃないかなと思います。その方が楽だし。
ちなみに、マサルはこれから毎日イーブイを抱き枕にして寝るのでユウリの「ひろいんぢから」がさらに低下するでしょう。勝利が約束されているとはいえがんばれユウリ!
次回はエンジンシティに到着して……ジムミッションくらいは終わらせられるかな? あとはマサルの内面にガッツリ踏み込んでいけたらいいな。
それにしてもビートは「わからせ適正」と「くっころ適性」が高いですね。実におもしれー男。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
【ダイゴさんがやったこと】
・マサルにかみなりのいしとやみのいしを与えニンフィアの進化条件について有用な情報をくれる。
・ユウリにみずのいしとダンバルを与える。
・ビートにトラウマを植え付ける。
ダイゴさん「マサルとユウリはワシが育てた!」
イーブイとシャワーズとブースターとサンダースとエーフィとブラッキーとリーフィアとグレイシアとニンフィアに囲まれてモフモフしながら眠りにつきたいと思う人はここをぽちぽちしてください!