【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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追憶の闘志

 少年はプロ野球選手になることが夢だった。

 

 海と山に囲まれた小さな島に生まれた少年は、身体を動かすことが大好きで、海も川も山も森も、自然の全てが少年の遊び場だった。

 

 そして、少年は野球というスポーツと出会う。

 

 成長を続けた少年は島にある唯一の公立高校に進学し、高校三年生の夏、彼はエースピッチャーとして野球部を甲子園へと導いた。

 

 少年の学校が甲子園に出場するのは創立以来初めてのことで、島の人間だけでなく県全体が少年の学校を応援し、活躍を祈っていた。

 

 そして少年は、支えてくれる人達の期待通り……いや、期待以上の活躍を見せることになる。

 

 全国の並み居る強豪校との激戦を制し、少年の学校は遂に決勝戦へと駒を進めたのだ。

 

 エースピッチャーとして、予選からたった一人で全ての試合を投げ抜いてきた少年の名は全国に轟き、プロ野球のスカウト達が接触を図る程になっていた。

 

 そして、迎えた決勝戦。

 

 相手は高校野球をやっている人間ならば知らない者はいない、否、たとえ野球に詳しくなくとも誰もがその名を一度は聞いたことがあるほどの大阪の超名門校。

 

 その高校は春の選抜をも制しており、春夏連覇の期待がかかる、言わばプロ野球予備軍のような高校生集団。

 

 超名門校の春夏連覇を阻止するために立ちはだかるのは、快進撃を続ける初出場の公立高校。

 

 まるで、漫画やドラマのような展開。

 

 少年は、負ける気など微塵もなかった。胸を借りるつもりなど微塵もなかった。良い試合をしようなんてことを言うつもりなど微塵もなかった。

 

 ただただ、自分達の力を信じ、自分達の勝利を信じ、少年は()()()()()を抱いてマウンドに上がった。

 

 

 

 

 結果は───惨敗。

 

 

 

 

 少年の自慢のストレートは、自慢の変化球は、少年の力の全てが、彼らに何一つ通用しなかった。

 

 だが、試合が終わった後、少年達に向けられたものは健闘に対する賞賛。

 

 誰もが言う。

 

「よくやった」と。

 

 誰もが言う。

 

「夢を見せてくれてありがとう」と。

 

 誰一人として、少年達を責める者はいなかった。誰一人として、だ。

 

 その事実が、逆に少年の心を追い詰めた。

 

 いっそのこと、罵詈雑言を並べられた方が楽だった。責められた方が楽だった。

 

 少年は甲子園での成績が評価され、その年のU18日本代表に選出されるも、甲子園での疲労を理由に辞退することになる。

 

 島に戻り、地元の人達から、学友達から、先生達からヒーローのような扱いを受ける少年だったが。

 

 少年の心はすでに───折れていた。

 

 いくつかの球団から「スカウトしたい」という話があったものの、少年は遂に、プロ野球志望届けを出すことなく野球というスポーツから離れることになる。

 

「たった一度の敗北で?」と人は思うだろう。

 

「次勝てるように努力すればいい」と人は思うだろう。

 

 だが、その敗北は───少年に現実を突きつけるのに、十分すぎた。心を折るのに、十分すぎた。

 

 努力ではどうにもならない才能があるということを理解するのに、十分すぎた。

 

 やがて少年は、現実を()()()()、甲子園で見せた灼熱の闘志を心の奥底に封じ込め───

 

 二度とマウンドに上がることはなかった。

 

 これは、一人の野球少年がプロ野球選手になることを諦める。

 

 そんな。

 

 どこにでもある。

 

 ありふれたお話。

 

 

 

 

 

 

 いつ以来だろう。こんな高揚感は。

 

 いつ以来だろう。こんなにも心が熱くなったのは。

 

 いつ以来だろう。拳を握り、雄叫びを上げるほどに魂が燃え上がったのは。

 

『勝者はインテレオン!! インテレオンです!! ジムリーダーカブのマルヤクデを……インテレオンが打ち破りました!!』

 

 実況の声が、スタジアムに響き渡る歓声がやけに遠くに聞こえる。

 

 その声援に応える前に、俺は片膝をついて肩で呼吸をしている相棒へと歩み寄った。

 

「ありがとうインテレオン。お前を信じてよかった。」

「うぉん……」

 

 手を差し出すと、インテレオンが得意気に笑って俺の手を取り立ち上がった。でかくなったなぁ……本当に。出会った時はめそめそ泣いてたのに、お前を見てると心からこみあげてくるものがあるよ。

 

「マサルくん、インテレオン」

 

 雨が降りしきる中、カブさんが勝者である俺達に声をかけてくる。

 

「最高の勝負をありがとう。負けはしたが、僕は初心を思い出すことができたよ……力と力の真っ向勝負、その楽しさをね。」

 

 カブさんの顔は実に晴れやかだった。初心を思い出すことができた、か。お礼を言うのは俺の方ですよ、カブさん。

 

「あなたと戦えてよかった。俺も、()()()()……昔を思い出せた気がします」

 

 あの日の俺には程遠いけれど、今日、俺の心に灯った火は今の俺に……これからの俺に必要なものなんだという確信があった。

 

「心を燃やし続けろ。君の闘志は本物だ、マサルくん」

 

 カブさんが手を差し出してくる。

 

「ファイナルトーナメントで、君を待つ」

 

 俺がその手を取ると、カブさんの熱が、身体の内に宿る炎が俺の中に流れ込んでくるような感覚に陥った。

 

 ああ、そうか。

 

 そうだよな。

 

 ファイナルトーナメントに進めるのは……たった一人なんだよな。

 

 あいつらに、()()()に勝たなくちゃいけないんだよな。

 

 だとしても───

 

「誰が相手だろうと、俺がやることは変わりません」

 

 俺の言葉に、カブさんは満足そうに笑った。

 

 それはカブさんに告げた言葉というよりも、俺が俺自身に言い聞かせるような言葉。

 

 揺れるな、迷うな、ブレるな。

 

 これまで通り、あらゆる可能性を考慮し、全ての努力を尽くし、勝利を掴み取るために最後まであがき続けろ。

 

 そして、俺の仲間達を信じろ。

 

 それが、今の俺に、これからの俺にできること。

 

「次も勝ちます」

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあ!! やっぱりね、水タイプが最高なのよ!! よくやったわマサル、インテレオン!! あとでハグとキスしてあげるわ!!」

 

 あの野郎……やりやがった。いくらタイプ相性が良かったとはいえ、あのカブさんの相棒だぞ? そいつを……あの野郎は……マサルとインテレオンがぶっ倒しやがった。正直、俺様はこいつのジムチャレンジはここで終わりだと思ってたんだがな。

 

 認めてやるよマサル。ダンデがお前に期待する理由が俺にも少しわかった気がするぜ。

 

 あとルリナ、お前はモデルでもあるんだからちょっとは自重しろ。マサルがお前の厄介ファンに目を付けられかねないだろうが。

 

「いや~、さすがなんだなマサルさん。僕とバトルした時もいきなりかえんほうしゃを使ってきたりしてて驚いたもんですわ」

「どうしましょう? 僕のセキタンザン……インテレオンが刺さり過ぎるんですが」

「ソーラービームを覚えさせるしかないですな。意気揚々と水タイプを出してきたトレーナーにダイソウゲンで度肝を抜いてやるのはどうじゃ?」

「インテレオンってスピードもあるからダイソウゲンする前にダイストリームで押し流されそうで……」

 

 マクワもすでにマサルが自分とバトルするイメージをしてやがる。まだサイトウとポプラのばあさんが控えてるってのに……そこまで勝ち上がってくると想定してるんだな。まあ、かくいう俺様もマサルとのバトルには期待している。俺の天候操作パーティにどんな戦い方を披露してくれるのか楽しみだ。

 

「……まだまだだな」

「何がだよ? お前の期待通りマサルはカブさんに勝ったじゃねえか」

「こんなもんじゃない。あいつの、マサルの本当の闘志はこんなもんじゃない」

「めちゃくちゃ雄叫びあげてたじゃねえか。っつーか、気合とか根性とか闘志とか、そんな曖昧なもんだけで勝ち上がれるほどガラルのジムリーダー達は甘くないぜ?」

「だが、それが今のマサルに足りないものだ。確かにこの一戦で一つ殻を破ったが……あの異質なリアリズムとメンタリティに本物の闘志が加われば、その牙が俺の喉元に届くかもしれないな」

「ほう? つまり、俺様よりも強くなると?」

「さあな。だがマサルは、このカブさんとのバトルで()()()()()()()()()()()()()()()というのもまた事実だ」

 

 ダンデのその言葉の意味を理解できないほど俺様は馬鹿じゃない。マサルはあれだけ派手なバトルを繰り広げた……どいつもこいつもその過程と結果に目を向けがちだが、あいつが本当にやばいのはそこじゃない。

 

「マサルはこのバトルで───手持ちを()()()()晒してねえ」

 

 

 

 

 

 

「マサルくんはヤローくんとのバトルでヒトモシを、ルリナくんとのバトルでジメレオンとレアコイルを使っていました。そして、今回のカブくんとのバトルではインテレオンのみ。つまり、彼の手持ちはここまでで三体のみ明らかになっています。他のチャレンジャーが()()、全ての手持ちと手の内を晒した上でカブくんを突破したにも関わらず、マサルくんは少なくとも()()()()の手持ちを隠したまま次のジムに挑むことができる。ユウリくんでさえ、ここまでで()()の手持ちを晒しているというのに、ね。これは他のチャレンジャーにない大きなアドバンテージですよ」

「マサル選手は、カブさんへの勝ち筋を見出しながら、その先まで考えていたと?」

「考えていただろうねえ」

 

 オリーヴくんの言葉を肯定する。いやぁ、マサルくんは本当にエンターテイナーですね。彼は興行というものをよくわかっている。それだけじゃなく、彼はこのバトルで勝つために観衆の反応やスタジアムの空気、ジムチャレンジが興行であるということを最大限利用し、私すらも巻き込んだ。

 

「おまけに、カブくんの性格を理解した上で真っ向勝負を挑みましたからねえ。カブくんなら()()()()()とわかっていたのでしょう。まあ、カブくんもマサルくんのそういう考えをすべて理解した上であえて乗ったのでしょうがね。ただ、彼の唯一の誤算はカブくんが本気の相棒を出してきたこと。これは私にも予想できませんでした」

「……本気でカブさんをマイナー降格させるおつもりですか?」

「もちろんだよ。むしろ、私が『マイナー降格』を撤回したところでカブくんはそれを拒否するだろうからね。彼はそういう男です」

「では、後任は誰になさいますか?」

「メロンくんかオニオンくんですね。ジムチャレンジが終わったら二人にバトルしてもらいましょうか」

 

 名門スタジアムであるエンジンスタジアムを任せるのは……経験値で言えばメロンくんが適任でしょうが、オニオンくんという若い才能をもう一段引き上げてやりたいところでもありますね。ふふっ、ガラルは本当に人材が豊富で贅沢な悩みが尽きません。彼らがいれば、次世代も安泰でしょう。

 

 ただ、それよりももっともっと未来はどうなるかわかりませんが。

 

「やはり委員長は、マサル選手が勝ち上がってくるとお思いですか?」

「まさか。セミファイナルトーナメントを勝ち抜くのはユウリくんですよ。間違いなく、ね」

 

 明らかに、一人だけモノが違う。あれはダンデくんをも凌駕するかもしれない、本物の天才だ。

 

「ではなぜ、マサル選手をそこまで高く評価するのです?」

「……誰だって大好きでしょう? ()()()()()()()という構図が」

 

 彼を凡人と評するには過小評価かもしれませんが……彼女の前では誰もが等しく凡人だ。残念ながら、それが現実ですよ。

 

「ただ、それだけが理由ではありませんがね……」

「委員長?」

 

 つい、本音が零れてしまった。それもきっと、目の前で()()()()()()を見せられ、それに魅せられてしまったからでしょう。

 

「オリーヴくん、私はね……本当は、()()()()()()()()()()()()()んですよ」

 

 自慢じゃないが、私は小さい頃から勉強もスポーツも人付き合いも、何もかもに対して特に苦労することはありませんでした。周囲の大人達から神童と称えられ、私も自分の才能に絶対の自信を持っていました。

 

「私のトレーナーとしての戦績を知っているかい?」

「ええ。チャンピオンカップ準優勝、ですよね?」

「その通り。()優勝なんだ。私は一番ではなく、二番にしかなれなかったんですよ。圧倒的な天才が、すぐ近くにいましたからね」

 

 そう。彼と……マサルくんと同じように、私にも子供の時から誰よりも一番そばにいたんです。決して超えられない才能が。

 

「私の弟という、天才がね」

 

 私は自分を才能ある人間だと思っている。事実、鉱夫から成り上がり、一代でマクロコスモスグループをここまでの企業集団に発展させたので、私はあらゆる才能に恵まれていたのでしょう。

 

 だが、天は私が最も欲する才能を与えてはくれませんでした。

 

 そして、何の因果か……私が最も欲しかったものを弟が手に入れた。

 

 本当に、世界とはままならないものです。

 

「弟は優れたトレーナーでした。私が羨ましく思ってしまうほどに、ね。でも弟は……トレーナーとしての才以外全てが私に劣っていたので、昔から私と比較され続けていました。そんな状況に嫌気が差し、弟は家を飛び出していつの間にか『鋼タイプ』のジムリーダーに……そして、チャンピオンになったのですよ」

「初耳……です。委員長に、そのようなご家族がいらっしゃったとは……それで、ご令弟様は今何を?」

「さあねえ。私がリーグ委員長に就任すると同時にチャンピオンを辞めてしまいましたから……それに、あれは一か所でジッとしているのが苦手な男です。どこかを旅でもしているのでしょう」

 

 一緒にポケモンを捕まえに行ったり、二人で共に「鋼」タイプのポケモンを育てたり……私なりに愛情を注いでいたつもりだったのですが、今ではほとんど絶縁状態。まあ、あいつのことですから、どこかで元気にやっているとは思いますがね。

 

「失礼、話がそれましたね。私がマサルくんに期待する一番の理由は───彼が昔の私と同じ境遇にあるから。これに尽きます」

 

 私は折れて諦めてしまった人間です。そして彼も、過去に何があったのかは知りませんが……一度何かを諦めてしまった人間なのでしょう。顔を見れば、わかる。昔の私と同じだから。

 

 だが、それでも彼は再びあがこうとしている。絶対的な才能という壁を前にして。忘れてしまった闘志の燃やし方を、必死に思い出しながら。

 

 私には、できなかった生き方だ。

 

 だからこそ、私はどうしようもなく期待している……期待()()()()()()()()んだ。

 

 ふっ……これじゃあまるで、彼のファンみたいですね。ですが、そういうのも悪くはない。

 

「……がんばれ、マサルくん」

 

 

 

 

 

 

「おら~! マサル様とインテレオン様のお帰りじゃ~! 頭が高いぞ、控えおろう」

 

 インテレオンをキズぐすり系のアイテムである程度回復させてから控え室へ戻ると、残してきたポケモン達がわらわらと俺達の方へ駆け寄ってきた。インテレオンがしゃがみ込んでイーブイ達に視線を合わせているのに対し、俺は少し離れたところでインテレオンをキラキラした瞳で見つめているヨーギラスへと近づく。

 

「インテレオン……格好良かったろ?」

「ヨギィ……」

「安心しろ。お前もあいつみたいに……いや、あいつよりも格好良くなれるさ。これからは、お前もビシバシ鍛えていくからな。俺達と一緒にがんばろう」

「ヨギィ!」

 

 俺が優しく頭を撫でてやると、ヨーギラスは小さな拳を力強く握った。やる気満々みたいだな。正直、こいつは境遇が境遇だからバトルをさせるまで時間がかかるかと思ったけど……インテレオンの勇姿に感化されたらしい。実際めちゃくちゃ格好良かったからな。俺も信じていたとはいえ、一撃でカブさんのマジヤクデを沈めちまったんだから。

 

「ちょっとマサル! いつのまにインテレオンに進化させてたの!? 私、なんにも知らなかったんだけど!」

「お前が俺の部屋で涎垂らして寝てる間にワイルドエリアで鍛え直してたんだよ」

「涎垂らしてたのは言わなくていいでしょ!?」

 

 俺がワイルドエリアから戻ってからもまだ寝てたからなこいつは。でも……ユウリのおかげで勝ち筋を見出せたんだし、こいつにも感謝しておかないとな。

 

「ありがとな、ユウリ」

「……ふふ~ん。マサルはね、私がいないとなーんにもできないもんね~。しょーがないからこれからも一緒にいてあげよう」

「お前こそ俺がいなかったら何もできねえだろ」

 

 俺達はぎゃーすか言い合いながら互いのほっぺたを引っ張り合う。 ユウリめ、露骨に調子に乗りやがって……こいつは一回どこかで痛い目に遭った方がいいんじゃねえの?

 

「それにしても……マサルもユウリもカブさんを一発で突破するなんてさすがだぞ! それができたのは、お前達二人()()なんだからな!」

 

 おまけに他の手持ちも晒さずに済んだからな。まだイーブイ(サイトウちゃんとのバトルまでにニンフィアに進化させる予定)とヨーギラスは誰にも知られていない。このアドバンテージはギリギリまで取っておきたいところだ。

 

「今の俺ならマリィ相手でもスペック差でゴリ押しできるな!」

「でも、相変わらず格闘は刺さるよね?」

「イーブイがニンフィアに進化すればその問題も解決できる。ムーンフォースでハイおしまい!」

「その前にドクロッグの『げっぷ』を浴びせるけん」

「マリィも一緒にげっぷするって?」

「なんであたしがバトル中にげっぷせんといかんと!?」

「ラップバトルならぬげっぷバトルを……スパイクタウンにミクスチャー・ロックを流行らせよう!」

「ただの汚いポケモンバトル!!」

 

 バトル中にポケモンと一緒にげっぷする美少女パンクロックトレーナー。コアな変態ファンが増えそうだな。っつーか、ドクロッグがニンフィアにげっぷを浴びせる絵面が酷すぎる。近づかれる前に処理しなくては……ウチのアイドルをそんな酷い目に遭わせてたまるか。

 

「もう! バトルの時はあんなに格好良かったのになんで普段はこんな……」

 

 そこでマリィはハッとした表情になり、俺の顔を見ながら頬を赤く染めていた。あら可愛い。俺のことそんな風に思ってくれてたのね。

 

「かーっ! そうかーっ! マリィは俺のことを格好良いと思ってくれてたのかーっ! そうかそうかーっ! いやーっ! モテる男はつれーなぁーっ! サインいる?」

「ちょ、ちょっとだけやけんね! そんなに自惚れんで!」

「おーい、聞いたか二人ともー! 可愛い可愛いマリィちゃんが俺のこと格好良いってよー!」

「マリィ……マサルが格好良いとか正気? 病院行く?」

「マサルの格好良さは俺が一番よくわかってる」

 

 この幼馴染二人の対照的な反応よ。ホップが女の子なら絶対ホップのこと好きになってたわ。ユウリ、てめーはあとで覚えてろよ? お前の嫌いな野菜をしこたま食わせてやるからな。

 

「お疲れのところ申し訳ございません。マサル選手はいらっしゃいますか?」

 

 そんな風に控え室で四人でぎゃーぎゃー騒いでいるとドアがコンコンとノックされて若い女性の声が外から聞こえてきた。もしかしてリーグスタッフさんかな? 騒いでないでさっさと出て来いって催促しに来たのかもしれない。すんませんスタッフさん、これも全部ユウリって女が悪いんです。

 

 そう考えながら控え室のドアを開くと、そこにいたのは高そうなスーツに身を包んだ綺麗なお姉さんだった。……どちら様?

 

「マサル選手、お会いできて光栄です。私、こういう者でございます」

 

 お姉さんは俺の顔を見るなり頭を下げた後、笑顔を浮かべて俺に名刺を渡してきた。ウチの牧場への依頼か何か? だとするとじいちゃんを通してもらった方が早い……と、思ったがその名刺に書かれてある企業名を見て驚愕する。

 

 なぜなら、名刺に書かれてあった企業名は誰もが知る超一流企業───でんせつTシャツを作っている企業だったから。

 

 俺が名刺を凝視したまま硬直し、呆気に取られていると、お姉さんはさらに衝撃の一言を俺に放った。

 

「マサル選手───弊社とスポンサー契約を結んでいただけませんか?」

 

 

 

 

 

 

「うわーん!! マサルが勝ったのはすごく嬉しいのにカブさんとあんな熱いバトルをした後に私のジムなんてハードル上がりまくりじゃないですかー!! ……ってあれ? キバナさんからメッセージ? 『マサルはお前の推薦なんだからカブさんを超える熱い展開を見せてくれるんだろうなぁ?』ですってぇ!? あーん!! キバナさんの意地悪!! また炎上してしまえ!! ぐぬぬ……で、でも私もカブさんのように熱く格好良いバトルで盛り上げたい~!! はっ!? マサルとカブさんはジムチャレンジの資格とマイナー降格という己の進退を賭けたバトルを繰り広げた……つまり私はそれ以上のものを賭ければいいのでは? それ以上のもの……自分の人生を賭ける? 『負けたら私の人生をマサルにあげます』ってこれじゃあプロポーズじゃないですかぁ!! マサルが負けたら……マサルの人生は私の───ぬわぁぁぁっっ!! こんなことを……こんなことを考えてしまうなんて修行が足りない証拠です!! 行きますよカイリキー!! 組手千本です!! 煩悩退散!!」

「ぐ、ぐわぁ~?」




 お久しぶりです。沖縄から生きて帰ってきました。サメハダーに襲われずに済んでよかったです。代わりにマンタインやプロトーガをたくさん見てきました。美味しいものをたくさん食べてたくさんお酒を飲んでローズ委員長みたいな腹になりました。しばらく野菜生活します。はい。

 今回は「マサルの前世」「ジムリーダー達の反応」「ローズの自分語り」「マサル、大企業に目を付けられる」「サイトウちゃん、ハードルが上がりまくってとち狂う」と盛りだくさんでした。マサルの前世はどこかで触れるつもりで、カブさん戦がちょうどよかったのでここで挟んでいます。ただ、ポケモンと全く関係ない内容なのでかなり駆け足気味ですが、ちょっとでも共感していただけると嬉しいです。

 あと、ローズの過去は完全に捏造です。でも、ローズ自身はチャンピオンカップ準優勝でピオニーは元チャンピオンだし……ああいう過去があってもおかしくないなって。それならマサルにも期待するよなって思ってああいうことにしました。ご了承ください。

 また、前回のお話の反響がすごくてめちゃくちゃびっくりしました。無理矢理なところもあったのでどうかな? とは思ったのですが、楽しんでいただけたようでとても嬉しかったです。たくさんの感想や評価、ありがとうございました!

 次回はエンジンシティを出発してワイルドエリアで修業します。ダイゴさんはしばらく(マサルの脳内以外には)出ません。多分。

 その代わりワイルドエリアではまた別のイケメンと出会う予定です。予想してみてね。これを当てられたらまじですごい。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

 煩悩まみれのサイトウちゃんがバトル前の口上で「私の人生半分あげますからあなたの人生半分ください!」って全国生放送中にプロポーズする「ユウリちゃん脳破壊ルート」は完結後にやるので見たい人はここをぽちぽちしてください!

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