【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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No.0035 なやむよ!! ホップくん

「あ、そうだ。ホップとマリィに渡しておくよ。ほい、ゴーゴーゴーグル」

「おお、これがあれば砂漠でも平気だぞ! でも、どうやって手に入れたんだ?」

「ホウエン地方の元チャンピオンでデボンコーポレーションの御曹司に取り寄せてもらったんだ」

「なんでそんな人と知り合いなん!?」

「……鉱山で拾った」

「拾っ!? 道に落ちてる物をなんでもかんでも拾ったらいけんよ!」

「はーい」

 

 取材を終え、エンジンスタジアムを出てワイルドエリアの入り口までやってきたところでホップとマリィにゴーゴーゴーグルを渡しておくことにする。そういや、ダイゴさんは接触してこなかったな。忙しい……わけないか。どうせまた鉱山かどこぞの洞窟に旅立ってしまわれたのでしょう。

 

 忘れた頃にまた遭遇しそうだし、別にいいか。

 

「ワイルドエリアを突っ切るのもありだけど……カブさんとのバトルで全部力を使い果たしたからな! 俺はここで強いポケモンを仲間にして伝説の1ページを増やすぞ!」

「あたしも手持ちと相談しながら捕まえたいかも……二人はどうすると?」

「俺は今のバランスで良い感じだから新しいポケモンを捕まえるよりも鍛えることに重点を置きたいな。イーブイ、ヒトモシ、ヨーギラスを進化させたいし」

「私もマサルと同じ感じ!」

 

 俺もユウリも今のところ手持ちは五匹で残り一枠は念のため空けておきたいと考えている。そもそも、バトルに出せるのは最大六匹までで、それ以上となると育成に手が回らなくなる上に、ジムチャレンジっていう時間の制約がある中だと、片っ端から捕まえて育てるってわけにもいかないからな。

 

「無駄なことはおよしなさい……どうせジムチャレンジも突破できないのですから」

 

 俺達がそんな風に話していると、もじゃもじゃ頭のビート少年がいつものように嫌味ったらしく絡んできた。開口一番その台詞……安定と信頼のビート少年。というか、まだ先に行ってなかったんだな。ああ、もしかしたら鉱山でねがいぼしを集めていたのかもしれない。ご苦労様です。

 

「あ、ビートくんだ~! ねえねえ、ビートくんも私達と一緒に行く?」

「行くわけないでしょう!? なんなんですかあなた!! 会う度にやたらと距離を詰めてきて!!」

「え? だって私達もう友達でしょ?」

「なんでそうなるんですか!?」

「バトルして一緒にカレーを食べたんだ。ガラルの掟に従えビート少年」

「聞いたことありませんよそんな掟!!」

「マサルとユウリに捕まったらもう逃げられないぞ。……お労しいな」

「なんかあの嫌味な口調も可愛く思えるね。……飴ちゃんあげる」

「その哀れむような視線をやめなさい!! まったく、なんであなた達のようなトレーナーがジムチャレンジに推薦されているんですか!! チャンピオンといいジムリーダーといいどうかしてますよ!!」

 

 ホップやマリィまでビート少年に絡んでいく始末。思ったより早くこの二人とも仲良くなれそうだな。それに、ビート少年はこっちを無視したりしないでちゃんと律儀にリアクションしてくれるから面白い。口と性格は悪いけど、根っこは真面目なんだろうな。

 

「おいおい。兄貴は世界一のチャンピオンなんだぞ。馬鹿にするなよ」

「ふん、ボールもまともに投げられないホップくんを推薦するなんて……僕がチャンピオンを超える日も近いですね」

「マサルとユウリに負けてるくせに何言ってんだ。そんなんじゃ兄貴どころか俺にだって勝てないぞ?」

「ふー……やれやれ。そこまで言うならあちらで勝負してあげますよ。僕とあなたの実力差を思い知らせてあげましょう。マサルだのユウリだのチャンピオンだの……あなたの実力を見せてほしいものですね」

「上等だ。三人とも、すぐにこいつを倒して追いつくから先に行っててほしいぞ」

 

 何やらいつの間にかビート少年とホップがバトルする流れになってる。こうやって最初は険悪な雰囲気だけどバトルをしたり色々交流していく内に友情が芽生えていくんやろうなぁ……。

 

 まあ、それはそれとしてビート少年の先ほどの発言には思うところがあるわけで。

 

「ビート少年はあんな風に人を小馬鹿にしたような言い方だったけど……ホップのボールの投げ方をちゃんと知っていた。ホップのバトルをしっかり見ていないとそんな感想は出てこない。つまり、どういうことだユウリ!?」

「ビートくんはツンデレ!! ラブコメとかで初登場時は口が悪くて反感を買うけど真っ先に主人公に惚れるツンデレチョロイン!」

「よしよし、正解だ」

「えへへ~♪」

 

 ユウリの頭を撫でてやると幸せそうな笑顔になった。

 

「人の戦意を削ぐようなことを言わないでください!! 行きますよホップくん!! あの二人が視界に入らないところでバトルしましょう!!」

「……マサルとユウリが気に入る理由がわかったぞ」

 

 そして二人は、というかビート少年が俺達から逃げるように足早に離れていき、ホップはそれを追っていった。二人のバトルは気になるけど……これ以上ビート少年を刺激すると逆に面倒臭いことになりそうだからやめておこう。引き際を見極めることは大事。

 

「よし、じゃあ俺達はナックルシティ方面に向かうか!」

「おー!」

「え? ホップは追いかけんと?」

「男と男の真剣勝負に口を挟むほど野暮じゃないさ」

「さっきまで口挟みまくっとったばい」

「あー! それにしてもなー! ユウリとマリィで両手に花だなー! 俺は幸せ者だなー!」

「誤魔化し方下手くそかっ!!」

「マリィは私のなんだからね! マサルにはあげないよっ!」

「ユウリはどこに対抗しとーと!?」

 

 とまあ、ワイルドエリアの入り口でひと悶着ありながらも三人でナックルシティに向かうことにする。この三人で一緒に旅をするのは初めてだな。よっしゃ、しばしのハーレムタイムを楽しみますか!

 

 

 

 

 

「いわなだれだ、ヨーギラス!」

 

 エンジンシティを出て橋を渡り、北へ進むと広大な原っぱが広がっており多くの野生のポケモン達が闊歩している。

 

 そして、足を踏み入れた瞬間に、わかった。

 

 明らかに、これまでとはポケモン達の強さが違う。ここからが、本当のワイルドエリアなのだと。

 

 それを理解した俺達三人は各々離れすぎないでお互いがフォローし合える距離を保ちながらポケモン達を戦わせていた。俺はヨーギラスのデビュー戦の指揮を執り、俺の後ろには万が一の時のためにインテレオンが控えている。

 

 相手はレパルダス。ヨーギラスのいわなだれが見事炸裂し、当たり所が悪かったらしくレパルダスの動きが止まった。

 

「じだんだ!」

「ヨギィ!」

 

 レパルダスの足元が隆起し、地中の岩や礫、土砂がレパルダスに襲い掛かった。顎に良い一撃が入ったらしく、レパルダスはそのまま目を回してその場に倒れ伏す。

 

「よくやったヨーギラス。お前の勝ちだ」

「ヨギィ♪ ヨギィ♪」

 

 ヨーギラスがトコトコと嬉しそうに駆け寄ってきたので優しく撫でてやる。上出来だよ。正直、やる気になったとはいえ群れから追い出されたっていう境遇だったから、他のポケモンへの攻撃に抵抗があるかと思っていたけど……。

 

「うおぉん!」

「ヨギィ!」

 

 インテレオンがしゃがみ込んでヨーギラスを撫でている。うん、やっぱインテレオンへの憧れでバトルへの恐怖が払拭されてるみたいだな。それどころか、技の威力も俺が思っている以上に高かった。レパルダスにほとんど何もさせずに二発で沈めたからな。

 

 さて、まだまだ元気いっぱいだし次の相手を───

 

 ゾクリ、と。()()()()()凍り付くような寒気が背筋を襲った。

 

 振り返ると、約十メートルほど先から巨大な熊を思わせるようなポケモンがのっしのっしとこちらに向かって歩いて来ていた。

 

「カビゴン……か。こいつ、ワイルドエリア入り口付近にいたイワークと同じ気配……」

 

 つまり、このワイルドエリアを長い間生き抜いてきた強い個体。さすがにヨーギラスには荷が重いだろう。ここはレアコイルかインテレオンで……。

 

「ヨギィ!!」

 

 しかし、俺が指示を出す前にヨーギラスが前に出て俺の顔をじっと見上げている。おいおい、それは無茶だヨーギラス。そのやる気と根性はすげー嬉しいけど、現実的に考えてお前が勝てる相手じゃないんだ。

 

「もしっ!!」

 

 と、どうにかヨーギラスを説得しようとしたところで、ヒトモシがボールから出てヨーギラスの隣に並び、同じように力強い瞳で俺を見上げてくる。その瞳を見て、俺はとても感慨深くなってしまった。

 

 ヒトモシ……お前、そんな目ができるようになったんだな。あの引っ込み思案だったお前が……。

 

 そうだよな。ヨーギラスと一番仲が良いのはお前だもんな。友達ががんばってるのに、黙って見てるわけにはいかないよな。

 

「わかったよ。ヨーギラス、ヒトモシ。俺達三人で勝つぞ!」

「ヨギィ!」

「モシィ!」

 

 ポケモンは、ただただトレーナーの言うことを聞くだけの道具じゃない。

 

 ポケモン達の意思を、気持ちを、願いを汲み、彼らの力を最大限引き出してやる。

 

 それこそが、ポケモントレーナーだ。

 

「マサル、あたしが手を貸そうか?」

「ありがとう。だけど気持ちだけ受け取っておくよ。今はあいつらの思いを最大限尊重してやりたい」

「ん、わかった。じゃあ、応援しててあげる。マリィのエールは効き目バッチリやけんね」

「頼むわ」

 

 マリィはそう言って俺の隣から一歩下がる。ユウリは少し離れたところでラビフットとメタングを待機させていた。あいつには何も言う必要がない。そんなことしなくても、俺がやりたいことを理解してくれるからな。

 

 そして、いつの間にかボールから出ていたイーブイとレアコイルは俺の後ろで待機し、ヨーギラスとヒトモシを見守っている。

 

 さあ、態勢は整った。始めようか。

 

「ヒトモシ、おにびだ! ヨーギラス、あなをほる!」

 

 まずは初手おにび。禍々しい紫色の炎がカビゴンに襲い掛かる。だがカビゴンはやけどを気にせずヒトモシ達に突っ込んできて、その巨体で小さなヒトモシ達を押し潰そうとのしかかる。

 

 だが、ヨーギラスは穴を掘って地中に回避。そしてヒトモシは、()()()()()()がない。

 

 タイプ相性の基本中の基本。ノーマルタイプの技はゴーストタイプには効果がない。

 

「ヒトモシ、のろい」

 

 そして、ゴーストタイプの技もノーマルタイプには効果がない……が、いくつかの()()がある。

 

 その例外が、この「のろい」と───

 

「おいおいカビゴンさんよ。たいあたりしたところでヒトモシちゃんには意味がないぜ?」

 

 目を覆いたくなるような毒々しい光がカビゴンの顔を包み込む。

 

「あやしいひかり」

 

 カビゴンはこんらんした。そして、「やけど」のダメージと「のろい」のダメージが確実にカビゴンを蝕んでいく。あやしいひかりによって上下左右がわからなくなったカビゴンはその場でのたうち回っていた。

 

 その隙にヒトモシに指示を出して、カビゴンから距離を取らせる。

 

()()はできたか? そろそろ出てこい、ヨーギラス」

 

 そして、カビゴンの巨体が()()()()。地中から猛スピードで飛び出してきたヨーギラスの強烈な頭突きがカビゴンを真上へと吹き飛ばした。完璧だヨーギラス。お前が地中を()()()()()()()()おかげで、次の技へ繋ぐことができる。

 

「すなじごく」

 

 カビゴンが落下すると同時に、地面が不自然に陥没し、蟻地獄のような窪地にカビゴンが拘束された。計算通り、ヨーギラスが地中を掘って柔らかくしていたことと、カビゴンの体重と落下の衝撃で動きを封じることができた。

 

 こうなったらもう、カビゴンにできることは何もない。

 

「ヒトモシ、ほのおのうず。ヨーギラス、いわなだれ」

 

 そしてカビゴンは強大な炎の渦に包まれ、ヨーギラスが掘り出した岩石の山に押し潰された。

 

「やけど」「のろい」「ほのおのうず」の継続ダメージ。「すなじごく」による拘束ととどめの「いわなだれ」。

 

 よって、カビゴン───戦闘不能。

 

「完璧なコンビネーションだ、お前ら」

 

 ヨーギラスとヒトモシが喜びを分かち合うように笑顔で抱き合った後、嬉しそうに俺に駆け寄って俺の足に抱き着いてきた。はぁ~!! お前ら強い上に可愛いとかもう反則だろなんだそれ!!

 

 俺はしゃがみ込んで二体を労うように撫でてやる。二体とも気持ち良さそうな表情をしていたかと思うと───

 

 突如、ヒトモシの身体が白く輝き始めた。

 

 来たか。

 

 ヨーギラスは突然のことに戸惑い、俺の足にぎゅっとしがみついてきたので安心させてやるように背中をぽんぽんと撫でる。大丈夫だヨーギラス。お前のお友達が───一足早く成長しただけだ。

 

「ぷら~♪」

 

 透き通るような綺麗な鳴き声と共に、ヒトモシの進化形……ランプラーが姿を現した。文字通り、ランプのような姿をしているが、ヒトモシの頃から何ら変わりない青い炎に可愛らしい黄色いおめめ。

 

 立派になっちゃってまあ……。

 

「よぎぃ?」

「ぷら~♪」

「ヨギィ♪」

「ぷらぷら~♪」

 

 最初は驚いていたヨーギラスだったけど、すぐに友達だって理解できたみたいだな。よかったよかった。元ヒトモシ、現ランプラーはインテレオンに次ぐ古参だったから、そろそろ進化してほしいと思ってただけに良いタイミングだ。これでサイトウちゃんとのバトルがぐっと楽になる。

 

「ランプラーおめでと~! もぉ~! 可愛さに磨きがかかっちゃって~♪ みんなと写真撮ろう! あ、そうだ。進化のお祝いカレーを作らなきゃ!」

「ぷら~!」

 

 ユウリは早速ポケモン達と一緒にきゃっきゃと騒いでいる。それはいいけど進化のお祝いって名目でカレーを連発する気じゃねえだろうな? カレーは一日一食までって決めてたろ?

 

「ふーん。なるほどね。ああいう戦い方もあるんだ。マリィの出番がなかったのはちょっと残念やけど、勉強になったよ」

「ふっ……俺はマリィの『おにーちゃん』だからな。妹には格好良いところを見せたくなるんだよ」

「また耳元で囁いておねんねさせるよ?」

「今度はちゃんと録音してマリィの結婚式で流してやる……ってちょっと待って! もう一回『おねんね』って言って!」

「この流れで言うわけなか!!」

 

 こうやって会話のところどころにあざと可愛いワードを自然と混ぜ込んでくるのがマリィのずるいところなんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

「あ、ホップだ! おーい、ホップー!」

 

 しばらくポケモン達を鍛えた後、日が沈み始めたので川のほとりにテントやテーブルを設置して夕飯の準備をしていると、遠くから歩いてきているホップにユウリがブンブンと大きく手を振っている。

 

 心なしかホップが落ち込んでるように見えるな。……さてはビート少年に負けたな?

 

「ああ、三人とも。ここでキャンプをしてたんだな」

「そうだよ~。もうすぐカレーができるからね! そっちに座って待ってて」

「あ、いや……俺は今は腹減ってないし、先に行ってるぞ」

「え~? もう暗くなるのに?」

 

 ただバトルをして負けた割にはえらく落ち込んでるな。ビート少年になんか変なことでも言われたか? なんにせよ、この状態のホップを放っておくわけにもいかないか。

 

「だめだホップ。先に行くのはいいけど、せめて飯は食っていけ」

「……わかったぞ」

「今日は私とマリィの愛の共同作業だからね! 楽しみにしてて!」

 

 ユウリの天真爛漫な笑顔にホップの表情が柔らかくなる。ユウリはあれを天然でやってるのか意図的にやってるのか……今回は半々だな。ホップの様子がおかしいってことには気付いてるみたいだし。

 

 そしてホップは俺の向かい側に座る。ちょうど良い機会だから色々話してみるか。

 

「んで、ビート少年にこっぴどくやられて落ち込んでんの?」

「こっぴどくはやられてないぞ。ただ、普通に負けただけだ……」

「にしてはえらく落ち込んでんな。俺に負けた時はそんなに落ち込んでなかったろ? ビート少年に何を言われた?」

「……マサルは何でもお見通しだな」

 

 そら君達の倍以上の人生を歩んでますからね。

 

「マサルの言う通り、負けたことは別にいいんだ。勝負って、そういうもんだろ? ただ、バトルが終わった後に『チャンピオンの顔に泥を塗っていますね』って言われて……」

 

 言いそう~……ってか実際に言ったんだよな。ビート少年め、あの口の悪さでいきなりホップの地雷を踏みぬいてくれやがるとは……いや、でもこれは逆に考えればホップの目を覚まさせるチャンスかもな。ビート少年の性格と口の悪さを最大限利用してやるか。

 

「たった一回負けたくらいでダンデくんの顔に泥を塗るって意味わからんだろ? そもそも、さっきも言ったけどホップは俺に一度負けてるし、カブさんには十回も挑んでるじゃねえか」

「それは、そうだけど……」

「大体、俺もマリィに負けたけどサイトウちゃんの顔に泥を塗ったなんて全く思ってないしな」

「あたしもユウリに負けたけど兄貴に申し訳ないなんて思ってないよ」

「私は誰にも負けたことがない! 結局、私が一番強くて可愛いんだよね!」

「ダイゴさんかよ。それに、お前は俺に一回負けてんじゃねえか」

「あれはマサルが動画でメッソンに『みずのはどう』を覚えさせるっていうズルをしたからノーカン!」

 

 カレーを作りながらユウリとマリィも会話に混ざってきた。俺達の会話をしっかり聞いてるあたり、二人もホップを心配してたんだな。

 

「というわけで、ホップが誰に負けようがダンデくんの強さには微塵も影響はない。以上」

「言いたいことはわかるけど、もうちょっと別の言い方があると思うぞ」

「今のホップに優しい言葉をかけても逆効果だろ? そのくらいわかってる」

 

 そう言うとホップは苦笑した。今のホップに必要なのは慰めじゃなくて、現状をきちんと理解させることだからな。慰めが欲しいなら後でユウリやマリィにいっぱい慰めてもらえ。

 

「そもそもだ。ホップ、お前はなんでジムチャレンジに参加しようと思ったんだ?」

「なんでって……そんなの、チャンピオンになって伝説になるため───」

 

 そこでホップはハッと何かに気付いたような表情になった。

 

「思い出したか? 別にお前は、()()()()()()()()()ジムチャレンジに参加してるわけじゃないだろ? お前が、()()()()()()()()()()()()()だったじゃねえか」

「あ、あ~……そうだな。うん、そうだぞ俺」

「まあ、あんな兄貴がいたら尊敬するし憧れるし()()()()()()()()()って思うのも仕方ない。俺はその気持ちを否定しないし、否定する権利もない。だけどなホップ、よく聞け? 今からめっちゃ厳しいことを言うぞ?」

「……マサルにそこまで念押しされると怖いぞ」

 

 俺の言葉にホップは身構えている。覚悟はいいな? 俺は今から、お前に現実を突きつける。

 

 

 

 

 

 

「お前は───ダンデくんにはなれない」

 

 

 

 

 

 シン、と不自然にキャンプが静まり返る。聞こえてくるのは、カレーを煮込む鍋のぐつぐつという音だけだ。

 

「たとえホップが、ダンデくんと同じポケモンを捕まえようとも。ダンデくんと同じポケモンを育てようとも。絶対に、だ」

 

 ホップは何も言わず、真剣な目で俺を見つめ返してくる。

 

「いいか? これは才能うんぬんの話じゃない。至極、()()()()()()()なんだ。仮に、お前がダンデくんと同じポケモンを捕まえて育てたとしても……『ダンデくんとは全く違うトレーナーなんだ』と一番強く感じるのは───ホップ、お前自身だよ」

 

 当然だろう。ダンデくんとホップでは、ポケモンの育て方も、愛情の注ぎ方も、戦い方も、歩んできた道のりの何もかもが違うんだから。同じポケモンを使ったとしても、同じトレーナーにはなりえないんだ。絶対に。

 

「なあホップ。昔、お前の相棒のウールーがいなくなったことがあったろ?」

「ああ、あったぞ。なんで今、そんな話を……」

「今のお前、あの時のウールーと同じだよ」

 

 何年も昔のことだ。ホップといつも一緒にいた相棒のウールーが突然、行方不明になったことがあった。当然、俺達は手分けしてウールーを探し回ったんだけど見つからず、日も暮れ始めた頃にホップがウールーと一緒に帰ってきた。話を聞くと、なぜかウールーはターフタウンまで行っており、ヤローさんに保護されていたらしい。

 

「ホップ。あの時お前は───ウールーに何て言ったんだ?」

 

 具体的に、ホップとウールーの間に何があったのかを、俺は知らない。

 

 何を言ったのかを、俺は知らない。

 

 だけど、あの日からホップとウールーの絆がもっともっと強くなったことを、俺は知っている。

 

 そして、なぜウールーがホップの前からいなくなったのか。

 

 その理由を、俺は知っている。

 

「ホップ」

 

 もう一度、親友の名を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

「お前には、お前にしかできないことがある───だからお前は、お前のままでいい」

 

 

 

 

 

 

 ダンデくんのことを尊敬するなとも憧れるなとも言わない。だけど決して、固執するな。ダンデくんはダンデくんで、ホップはホップなんだから。

 

 これから先、勝ち進めば進むほど、ホップはダンデくんと比べられる機会が増えてくるだろう。

 

 そしていざ、ホップがジムリーダーに敗北した時に、多くの人がこう思ってしまうかもしれない。

 

「ダンデはあんなに強かったのに……()()」と。

 

 そんな時、ホップの心が折れてしまわないように。

 

「俺は兄貴じゃない。俺は俺だ」ということを、ホップに気付いてほしかったんだ。

 

 それができれば、これから先、何があってもホップは最後まで戦い抜くことができるだろう。

 

 そして()()()、ウールーが突然ホップの前からいなくなった理由。

 

 それは、ウールーが───ダンデくんのリザードンのようになりたかったから。

 

 ウールーもリザードンに憧れていたんだ。ダンデくんに憧れている今のホップと同じように。

 

「ぐめぇ」

 

 いつの間にか、ボールから出ていたウールーがホップに寄り添っている。そうだよな。お前もホップのことが心配だったよな。バトルに負けて悔しかったよな。

 

「ウールー……ははっ、そうだよな。なんで、なんでこんな大事なことを忘れてたんだろうな……ありがとうマサル。危うく迷走するところだったぞ、俺」

「悩むのはいい、迷うのもいい。そうやって考えて考えて考え抜いた先に自分の手で掴んだ答えは───一生忘れない」

「そうだぞ! 俺はチャンピオンになって、伝説になる男なんだから……兄貴に憧れているだけじゃだめなんだ! 兄貴を越えなくちゃだめなんだ!」

 

 ホップはそう言って、両手で自分の両頬を二度叩く。

 

「マサル! 俺は、お前に勝つ! お前だけじゃない……ユウリに勝つ! マリィに勝つ! ビートに勝つ! ジムリーダー達に勝つ! そして、兄貴に勝って───俺がチャンピオンになるぞ!」

 

 ホップは初心を思い出してやる気を取り戻したらしい。それでいいんだよ。

 

 だけど中にはこんなことを言う人がいるかもしれない。

 

 「迷うな」「悩むな」「立ち止まるな」「過去を振り返るな」と。

 

 俺はそうは思わない。

 

 時には、迷っていいんだ。時には、悩んでいいんだ。時には、立ち止まっていいんだ。前に進むためには、後ろを振り返ることも、初心を思い出すことも必要なんだから。

 

「ありがとうマサル。お前のおかげで、俺はこの先も戦えるぞ! やっぱりお前は───俺の一番の親友で、俺の最高のライバルだ!」

 

 ホップは笑顔でそう言った。よく恥ずかし気もなくそんなことを堂々と言えるな。まあ、これがホップの良いところだよな。将来何人の女の子を泣かすんでしょうかねえ?

 

「良い話聞かせてもらったよ。ほら、マリィとユウリ特製のカレーができたけんね。たくさん食べんしゃい」

「おお! すごく美味しそうだぞ! 二人とも良いお嫁さんになりそうだな!」

「ふふ~ん♪ マリィは私のお嫁さんだからね!」

「は? マリィを嫁に出すとかおにーちゃん許さないんだが?」

「ん? ユウリがマリィと結婚したらマサルのお嫁さんがいなくなるぞ?」

「俺がネズさんと結婚すれば自動的にマリィのお義兄ちゃんになれる」

「どんな家族計画しとーと!? あたしはそんなん絶対認めんからね!」

「義妹から疎まれてツンケンされるのもまた趣深い」

「趣やなくて業が深い!!」

 

 そんな風に、さっきまでの真剣な空気はどこへやらといった感じで四人でぎゃーぎゃー騒ぎながらカレーを食べるのだった。大変美味しゅうございました。なお、夕食中にビート少年のことが話題に上がり……。

 

「ホップはもうちょっとふてぶてしさが欲しいよね。ビートくんなんて負けても『こちらも本気ではありませんし』とか『あなたががんばるから勝たせてあげようと思いまして』とか言うんだよ!」

「あのメンタル()()は見習いたいよな」

「確かに、ホップはちょっと繊細過ぎるところがあるかもしれんね」

「ホップ、試しにこのビート少年みたいなポーズのリーグカードにしてみるか?」

「さすがにこのポーズはダサいんだぞ」

 

 何を思ってこのポーズにしたのか。絶対ネットで玩具にされるヤツじゃんと思いながらも、将来弄るネタとするために俺はビート少年のリーグカードを大事にしまい込むのだった。

 

 ちなみに、四人でキャンプしている様子を写真に撮ってマリィがそれをネズさんに送ったらしい。

 

 

 

 

 

 

「マリィのそばに!! 男が増えてやがる!!」

「あ、これダンデの弟っすよネズさん」

「許さねえぞダンデ!! チャンピオンカップでぶっ倒してやりますからね!!」

「ネズさーん。でんTマンが取材を受けてる様子がテレビに出てますけど観ますー?」

「観てやるわけないでしょうそんなもの!!」

「あ、お嬢も映ってる」

「へいロトム!!録画しなさい!! 今すぐ!!」




 ヒトモシ進化とホップのお悩み相談室でした。

 ゲームだとホップがだいぶ迷走しますが、このマサルがそんなホップを放っておくわけもないのでこんな感じでフォローを入れています。実際、この辺りの迷走しているホップはプレイしているこっちも見ていられなかったですね。相棒のウールーをパーティから外してたり……それはそれとして容赦なくぶっ倒して賞金を巻き上げますが。

 次回はもうちょっとワイルドエリアをうろうろします。ダイゴさん以外のイケメンが登場する予定です。多分。

 あと、実は私はポケマスというソシャゲの存在は知っていてプレイしたことがなかったのですが「ダイゴさんガチャ」をやってるとのことだったので、これはもうプレイするしかないなと思いインストールしてガチャを回したら10連で来てくれました。どこまで出たがりなんだダイゴさん。

 みなさん、もしもガチャで欲しいキャラがいたらそのキャラをメインにした二次創作小説をハーメルンに投稿すれば引くことができますよ。

 もしかしたらその内、マサルがアオイとハルトを引き連れてパシオにでんTを広める話を書くかもしれない。

 でんコスマサル実装しろ!!

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

 マリィと一緒に「おねんね」したいと思う人はここをぽちぽちしてください!

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