「ん……」
目を覚ますと、すぐ目の前に幸せそうに眠るユウリの顔があったので、昨晩はユウリ達と一緒にキャンプをして同じテントで寝たことを思い出した。
「ふへぇ~♪」
ニヤケながら眠るユウリの寝顔に見覚えがあると思ったら……モルペコの寝顔によー似とーね。モルペコもそうやけど、ユウリも表情がコロコロ変わって見ているだけであたしも楽しい気持ちになってくる。
それにしても、ユウリは同じ女の子から見ても可愛い顔しとーね。まつ毛は長いし髪はサラサラで触り心地良いし、良い匂いするし……あたしが男やったら絶対放っておかんよ。いくらポケモンバトルが強くても女の子なんやから気を付けんとね。
でも、ユウリにはマサルがおるけん大丈夫かな。マサルは変な子やけど、あれでしっかりしてるし頼りになるけん。昨日も「よし、風呂作ってくる!!」って言ってポケモン達に穴を掘らせて予備のテントを使ってお風呂作ってたし。
ユウリに聞くとマサルはいつもあんな感じらしい。発想はおかしいけど、キャンプ中にお風呂に入れるのはすごくありがたかった。原始的やけど気持ちよかったなぁ。
「きゃあああああああああっ!! おきゃわわわわわわわわわわわっ!!」
そんな風に昨日のお風呂とマサルのことを考えていると、外からマサルの物と思わしき汚い奇声が聞こえてきた。今の、本当にマサルの声? 野生のポケモンとかやなかと?
あたしはユウリを起こさないようにそっと起き上がって……というかユウリは今の大声でも起きんのやね。
ユウリの寝顔を横目で見ながらテントの入り口を開くと、マサルが一体のポケモンを抱き締めながら芝の上をゴロゴロ転がっていた。
どんな状況!?
理解できずにしばらくマサルの奇行を眺めていたら、こちらに気付いたマサルとばっちり目が合ってしまった。
「おはよう、マリィ!」
「お、おはようマサル……えっと、一応聞くけど……何しよーと?」
「見ろよマリィ! とうとう……とうとうウチのアイドルイーブイちゃんが完璧究極アイドルニンフィアちゃんに進化したんだ!! はぁ~~~~~っ!! 俺のニンフィアが可愛すぎてガラルが危険で危ない!! こんなんもうポケモンコンテストの『可愛さ部門』ぶっちぎり優勝だろ!!」
「ふぃーあっ♪」
マサルが抱き締めていたポケモンはニンフィアだった。確か、イーブイ系統で唯一進化方法が不明だったポケモン。だからマサルはイーブイをボールに戻さずにずっと隣を連れ歩いてて、一緒に寝てるって言ってたけど……本当にそんな方法で進化したんやね。
「ほらニンフィア、マリィにあいさつしてきなさい」
「ふぃあーっ♪」
マサルがそう言うとニンフィアがとてとてとあたしの方に歩いてくる。胴体と顔の体毛は白色で首元がリボンのような形になっている、尻尾や足の先、耳はピンク色、目は透き通るような空色……な、何この子可愛すぎん!?
思わずあたしはニンフィアの頭を撫でていた。するとニンフィアは甘い鳴き声を出しながら笑顔であたしに擦り寄ってくる。あ、あざとい……!? こ、これがフェアリータイプの力なんやね。これはマサルがメロメロになるのも頷ける。
「ろと~」
あたしが表情を緩ませながらニンフィアを撫でていると、スマホロトムがあたし達に近づいてきてパシャリ……ってこの子! マサルのスマホロトムやないの!?
「寝起きマリィがニンフィアと戯れる図。可愛いと可愛いが合わさってかわちーカーニバル開催決定!!」
「こらっ! け、消しんしゃい!! 逃げるなロトム!!」
ふよふよと宙を漂うスマホロトムを捕まえようとするも、あたしの手が届かないところに飛んで行った後にマサルの手元に戻っていく。
「良い写真だよ、ほら」
そう言ってマサルがさっき撮った写真を見せてくれた。あたし、こんな風に自然に笑えるんだ……ちょっと感動。で、でもっ! 勝手に撮るのはだめっ!
そう思っていたら再びスマホロトムが至近距離でパシャリ。
あーっ!!
「勝手に撮られてほっぺたぷくーマリィ。可愛い」
「消しん、しゃい!」
マサルが悪戯っぽく笑いながら写真を見せてきたから、身を乗り出してその手からスマホロトムを奪おうとする。
けど……勢い余ってマサルを押し倒してしまった。
「……あらやだ」
マサルがあたしの身体の下で呑気にそんなことを言っている。マサルの吐息が触れるくらい顔が近くに……兄貴以外の男の子とこんなにくっついたの初めてかも……。
それを理解した瞬間、あたしは自分の顔が信じられないくらい熱くなっていることを自覚した。は、恥ずかしかっ!! い、今絶対マリィの顔……真っ赤になっとーけん!! なんでマサルはそんなに余裕なん!? ずるいっ!
「うらら~?」
マサルを押し倒した体勢のまま動けずにいると、モルペコが眠そうな目を擦りながら……なぜか
「なんか知らん内に俺のテントに潜り込んでた」
「……お世話かけました」
あたしはそう言ってマサルの上からゆっくりと起き上がる。ありがとうモルペコ。あんたのおかげでちょっと冷静になれた。さっきまでのマリィはちょっと……その……変な気分になっとったけん。
「じゃあ朝飯の準備するか。ユウリは……ギリギリまで寝かせておこう。無理矢理起こすと機嫌悪くなるし」
マサルはそう言って何事もなかったかのように起き上がって、モルペコとニンフィアにモーモーミルクをあげている。女の子に押し倒されたのになんで? って思ったけど、毎日あれだけユウリとくっついてたら慣れっこやんね。
……ユウリはあたしと違って可愛いもん。
「昨日の夜も思ったけどさぁ……」
「どげんしたと?」
マサルがヨクバリスのプリントされた「おおぐいエプロン」を着ながらあたしをじっと見つめてきた。
「マリィって髪下ろすとグッと雰囲気が変わるよな。今のマリィは可愛い系っていうよりも大人っぽくて色気がある」
「……マサルはこっちの方が好き?」
「んにゃ、どっちも好き。ってか、色んな髪型見てみたい。ポニテとかお団子とかパーマとか」
「ふ、ふーん……」
ホップもそうやけど、マサルも恥ずかしがらずにこういうことをサラッと言えるよね。普段の言動は全然ガラル紳士っぽくないのに……そういうところはマサルの良いところというかずるいところやと思う。
でも……うん。きょ、今日は髪を下ろしたままにしてあげようかな?
べ、別に他意はなか。あたしもたまには気分変えたいし。マサルが褒めてくれただけが理由やなか!
あたしがそんな風に髪の毛先を弄っていると、ニンフィアがマサルに気付かれないように「私、マリィの考えてることわかってますよ?」みたいな表情を向けてきた。
こ、この子……したたかな女やね!
「ま、マサルっ! あたしも朝ご飯の準備手伝うよ」
「さんきゅー。今日はサンドイッチにするから……トマトをひたすらスライスしてくれる? 俺は他の具材を用意するから」
「うん。わかった」
「インテレオン。この大量の食パンを良い感じにカットしてくれ。耳は捨てずにこっちの袋な? おやつ用のラスクを作るから」
「うぉん!」
マサルが指示するとインテレオンはパンスライサーを器用に使って食パンをどんどんサンドイッチサイズに切っていく。ま、マサルのインテレオンはそんなこともできるんやね!?
「んで、マリィは……俺とお揃いの『おおぐいエプロン』を着るか!」
「な、なんであたしがそんなん着んといかんと!?」
「ほら、可愛いパジャマが汚れるから」
「そんなん言いながらあたしに着せたいだけやん!」
結局、あたしはマサルに押し負けてヨクバリスエプロンを着る羽目になってしまった。むぅ~、マサルとお揃いっていう恥ずかしさよりこのデザインの方が恥ずかしか!
「リオル、ラビフット、ヨーギラス、メタング。お前らは切った具材をパンにどんどん挟んでいってくれ」
当たり前のようにユウリのポケモンにも指示を出して、ポケモン達もそれを素直に聞いている。マサルとユウリはずっと二人で旅を続けてたけん、お互いの手持ちとも仲が良いんやろうね。
それで、手が使えないポケモン達は何をするのかと思ったら、レアコイルが籠をぶら下げてキャンプから離れ、ニンフィア、シャワーズ、パルスワン、ランプラーがそれに付いて行っていた。
マサルが言うには、近くに落ちているきのみや果物を取って来てくれるらしい。あと、たまに有用な道具も拾ってくるとか……この子達有能すぎん?
「うら~」
「モルペコ、もうちょっとでできるから待っててな」
「うらら~!」
今度はモルペコがマサルの背中をよじ登っている。こらっ! マサルの邪魔したらいかんでしょ!
「ん~? もしかしてモルペコも手伝ってくれるのか?」
「うらら~♪」
「じゃあ、モルペコはあっちでパンに具材を挟んでるみんなを手伝おうな」
「うら~♪」
「ズルッグはコップを準備してモーモーミルクを注いでいってくれ。んで、グレッグルはテーブルにお皿を並べてくれるか? レパルダスはレアコイル達と一緒に近くの散策だ」
そして、いつの間にかマサルの近くに集まっていたあたしのポケモン達もマサルの言うことを素直に聞いている。いやいや……モルペコもそうやけど、この子らもマサルに懐くの早すぎん? 確かに昨日の夜にモーモーミルクとカレーで餌付けされとったけど……。
「あ、ごめんなマリィ。マリィのポケモンに勝手に指示しちゃった」
「ええよ、別に。でもね、あの子達がすぐマサルに懐いたの……マリィ、ちょっとだけ嫉妬しとーけんね」
「はぁ~……マリィに嫉妬されるとか……尊いわぁ~」
なぜかマサルはすごく嬉しそうやった。確か……兄貴も昔同じような顔をしてた気がする。マサルって一人っ子のはずやのに……なんでこんなにもお兄ちゃんっぽいんやろうね? ちなみに、あたしはこの疑問に対する答えにすぐに気付くことになる。
「みんなお手伝いありがとうな~。散策組は……お? オレンの実とりんごがたくさん採れたのか。偉いな~」
マサルはお手伝いしてくれたポケモンみんなに声をかけて優しく頭を撫でている。きっと、こういうところがポケモン達がマサルを慕う理由なんやろうね。
そして、みんなで楽しく朝ご飯の準備を終えるとテーブルに着いて朝ご飯を食べることにする。
ユウリ以外のみんなで。
「あいつ、低血圧だからな。朝が弱くていつもこんな感じなんだよ」
マサルはそう言いながら自分の分のサンドイッチを早々に平らげ、ミキサーに野菜やきのみ、果物、ヨーグルト、はちみつを入れていた。
「何作っとーと?」
「俺特製のスムージー。ユウリに嫌いな野菜を食わせるために編み出した至高の一品だ。マリィも飲んでみ?」
マサルが得意気な表情であたしにスムージーを渡してくる。色は……白みがかった薄いピンク色。ヨーグルトとモモンの実の色かな? 一口飲んでみると……ヨーグルトの爽やかな酸味に果物や木の実の自然な甘みとはちみつの柔らかい甘みが口の中に広がった。野菜もたくさん入れてたのに……全然苦みを感じない。
「……美味しい」
「だろ? この比率を編み出すのに苦労したんだよなぁ~」
ユウリのためのマサルが試行錯誤した結果なんやね。そういえば、兄貴もあたしに嫌いな野菜を食べさせようと四苦八苦して……そこで気付いた。マサルがこんなにお兄ちゃんっぽく見えてしまうのはユウリがいるからなんだ。
「んじゃ、そろそろユウリ起こしてくるわ。リオル、食べ終わったらそっちに干してるタオルを持ってきてくれ。で、ラビフットはあっちの桶に水を汲んで温めてくれ」
「あおんっ!」
「ふぁーっ!」
マサルはそう言ってユウリが眠っているテントへと向かっていった。
「ユウリー、そろそろ起きろー」
「ん~……やーぁっ」
「やー、じゃねえ。もうみんな朝ごはん食べてんだ。起きろ」
「ましゃる~、抱っこしてぇ~」
テントの中からそんな呑気な会話が聞こえてくる。ほんとにあの子はカブさんとあんなすごいバトルを繰り広げてたのと同一人物なん?
そしてマサルはユウリを抱えて……というよりユウリがマサルに思いっきりしがみついている。……ガルーラ親子にしか見えんよ。
「ほら、そこ座れ」
「いや~っ! まだましゃるにぎゅーってするのぉ~!」
「あと十秒だけだ。顔を拭いてやるから十数えたらちゃんと降りろよ? リオル、タオルさんきゅー……って、櫛も持ってきてくれたのか。気が利くな~。ラビフットもお湯を準備してくれてありがとうな」
マサルはしがみついているユウリを抱えて背中をトントン優しく叩いてあげながら律儀に十秒数えている。……子守り、というか赤ちゃん?
「顔上げろ」
「んぅ~……ふへへぇ、タオルほかほかで気持ち良い~」
マサルがお湯で温めたタオルを使ってユウリの顔を優しく拭いてあげている。それだけじゃなくて、寝癖でぼさぼさになっていたユウリの頭を櫛で丁寧に梳いていた。て、手慣れすぎ……というか甘やかしすぎ!! いくら低血圧でも限度があるやろ!?
ま、まさかご飯も食べさせてあげるんやなかろうね!?
「あ、サンドイッチだ~! レタスと~、ハムと~、チーズと~、トマトと~……えへへ、私の好きな物ばーっかり!」
「スムージーもちゃんと飲めよ?」
「は~い。あれ~? イーブイがいつの間にかニンフィアに進化してる~! 可愛い~♪ こっちおいで~」
「ふぃーあっ♪」
「おぉ~! もふもふでふかふか……甘い匂いするし、寝そう……」
「寝たら湖に放り込むからな」
あ、さすがにご飯は自分で食べるんやね。でもマサル……ユウリの分だけみんなのより小さいサイズにカットしてたような……うん。寝起きで喉に詰まらせたら大変やもんね。そう思っておくことにしよう。
「マサル……あんた、いっつもこんなことしよーと?」
「そうだけど?」
あたしが尋ねると、マサルが不思議そうな表情を浮かべて答えてくれた。そんなマサルの反応を見て……ホップが「そういうのを通り越して結婚すると思うぞ」って言ってた理由がよーくわかった。
よーく、ね……。
「……そういえばホップは?」
「俺が起きた時にはもういなかったな。テントもないし……一人で先に行ったんだろ」
昨日の夜にはもう立ち直ってたから、居ても立っても居られないというか、はやる気持ちを抑えられなかったんやろうね。ああいうホップの真っ直ぐなところは見習いたいな。
「マサル~、ミルクなくなった~」
「へいへい。ちょっと待ってろ」
献身的にユウリをお世話してるマサルを見て、思う。
たまにはあたしがマサルを甘やかしてあげよう、って。
「お、キャンプキングの情報通りベロバーがいるな」
「ほんとやね。ありがとうマサル、あたし一人やったら見つけられんかったかもしれん」
朝食後、ホップが先に行ってしまったので俺達は三人でナックルシティへ向けてワイルドエリアを進んで行く。イーブイがニンフィアに進化し、これで格闘対策が万全になった俺のパーティを見てマリィもフェアリータイプのポケモンが欲しくなったらしく、「悪」と「フェアリー」の複合タイプであるベロバーを捕まえに来ていた。
ベロバーは二回進化するポケモンで強力な物理アタッカーに成長するらしい。うーん、あの見た目で悪はともかくフェアリーも入ってんのか。
まあでも、マタドガスもフェアリータイプだし……。
「うん、無事に捕まえられた。ちょっと反抗期っぽい見た目やけど……言うこと聞かんかったらビシビシいくけん大丈夫」
そして俺達が見守る中、マリィは問題なくベロバーを捕まえた。ラテラルタウンまでに最終進化まで育てるのは厳しいけど……グレッグルも格闘耐性があるからな。なんとかなるだろう。ユウリにはメタングがいるし、そもそもあいつは多少タイプ相性が悪かろうがそれを簡単に覆すから問題なし。
それからマリィは捕まえたばかりのベロバーを中心に戦わせ、俺とユウリも昨日と同じように自分のポケモン達を鍛えていく。ワイルドエリアは地形や植生、天候が頻繁に変わるためそれらに合わせて生息しているポケモンも大きく異なっていた。
まだまだワイルドエリアの一部しか歩いていないけど、それでもポケモン図鑑の項目がどんどん埋まっていくのがわかる。そういや、結局今って全部で何匹くらいポケモンがいるんだ?
「あ、マサルー! あっちに砂漠が見えるよー! すっごい! ほんとに砂しかないや~」
ユウリの言った通り、進行方向に広大な砂漠が見えた。マップを見る限り、最短でナックルシティへ向かうなら砂漠を突っ切るのが早い。ゴーゴーゴーグルもあるし、念のため砂漠を歩く用のマントも買ってある。何より、砂漠にどんなポケモンが住んでいるのか興味があった。
だから、砂漠を進むのに抵抗はなかったんだけど……。
突如、モンスターボールの一つがブルブルと振動したかと思うと、中からヨーギラスが出てくる。どうしたヨーギラス?
「よ、ヨギィ……」
ヨーギラスは俺の足にしがみついて今にも泣き出しそうな表情で震えている。尋常じゃないヨーギラスの様子を見て、俺はしゃがみ込んで目線を合わせ、ヨーギラスの身体をゆっくりと撫でた。
「ヨーギラス、どうしたのー?」
ユウリも俺と同じようにしゃがみ込んで心配そうにしている。
「……迂回しよう」
俺はそう言いながら、ヨーギラスがなぜここまで怯えているのか、その理由に見当がついていた。
「砂漠の探索は
「ヨギィ……」
「安心しろ、大丈夫だ。俺達がついてる。ほら、ボールに戻りな」
ヨーギラスはこくりと頷き、ボールへと戻る。想定外の事態ではあったが、
「マサル、もしかしてこの子……」
「マリィの思ってる通りだと思う」
マリィが俺のTシャツの裾をちょんちょんと摘まんでそう言った。どうやら彼女もヨーギラスが怯えていた理由を察したらしく、それ以上は深く聞いてこなかった。この問題を片付けるのは後……ヨーギラスがもっと成長してからだ。
そう結論付け、俺達は砂漠を迂回して草原を進んでいく。それ以降はトラブルらしいトラブルもなく、日が暮れてきたので大きな湖の近くにテントを張ってキャンプの準備を始めた。
「今日は~♪ 何カレーにしようかな~♪」
「え? 今日もカレー食べると?」
「そうだよ? ほんとは三食カレーがいいのにマサルが厳しいから一日一食で我慢してるの! 偉いでしょ?」
ユウリの言葉を聞いてマリィが俺に責めるような視線を向けてくる。ちょっとちょっと、そんな目で見るのはやめてください。これでもがんばったんですから。俺だってユウリがここまでのカレーキチだって知らなかったんですから。
一応、なるべく飽きないように毎日違うカレーにしてるから。そのおかげでカレーのレシピばっか増えてキャンプキングからポケモン用の玩具をたくさん貰ってるから。ほーら、モルペコ達もおもちゃで遊べてご機嫌ですよ?
「マサル、有罪」
許されませんでした。
その日の夜、ユウリとマリィが寝静まった頃、俺はなんとなく寝付けなかったのでテントを出てテーブルに着き、一人で星空を眺めながらホットミルクを飲んでいた。考えるのは、昼間のヨーギラスのこと。
砂漠の入り口で見せたあの過剰な反応。
間違いない。あの砂漠こそが、ヨーギラスの生まれ故郷だ。
他の個体と色が違うという理由だけで迫害され、群れを、故郷を追い出された。言わば、あの場所はヨーギラスにとって
自分の生まれ故郷が、帰るはずの場所が、最も近づきたくない忌むべき場所になるなんてな。
思わず、溜息が出てしまう。
「うぉん」
「インテレオン……ヨーギラスはちゃんと寝られてるか?」
俺が尋ねるとインテレオンが頷いた。今日はヨーギラスを含むポケモン達をみんなボールから出して、テントで寝させている。少しでも、ヨーギラスの心が安らぐように。少しでも孤独を感じないように。
「お前も飲むか?」
インテレオンが黙って頷き、俺の隣に座ったのでマグカップにホットミルクを注いでやる。あの泣き虫だったメッソンがこんなインテリなイケメンポケモンになるとはなぁ。身長も俺より遥かにデカくなったし、あんなにちょこまか俺の後ろをついて来ていたちびっこだったのに、今や一番頼れるその背中……ただ、成長するのはすげー嬉しいけど、なんとも言えない寂しさもあるんだよな。
「うぉん」
「なんだよ? 俺の考えてることがわかってるってのか?」
俺の内心を見透かしたかのようにインテレオンは笑う。
「これから先……お前にはきつい場面ばかり任せることになると思う。それでもお前は、最後まで俺について来てくれるか?」
答える代わりに、インテレオンはもう一度笑った。「何を当たり前のことを」とでも言うように。
ははっ、頼れる相棒を持って俺は幸せ者だよ。本当に。
これからもよろしくな。
インテレオンの肩をポンと叩くと、俺の背中をバシッと叩き返してきやがった。はんっ、生意気なヤツめ。
そうしてしばらくの間インテレオンと星空を眺めつつ過ごしていた時のことだった。
一人分の足音が俺達の方へ近づいてきていることに気付く。
四足ではない、二足歩行。足音からして、そこまで体重は重くないな。人型の野生ポケモンかもしくは……。
俺とインテレオンは警戒しつつ、足音が聞こえてくる方へと視線を向けた。
今夜は満月。真夜中にもかかわらず、視界は明るい。奇襲してくるということはないだろう。
「こんばんは」
柔らかく、若い男性の声が聞こえた。
月明りに照らされながら、俺達の前に一人の青年が現れる。
端正な顔立ちに、サファイヤブルーの瞳。
そして、特徴的な緑色の長髪。
知っている。
俺は、この青年を───知っている。
「───良い夜だね」
誰もが見惚れるような柔らかい笑みを浮かべて青年は───Nはそう言った。
今回は「完璧で究極なアイドルニンフィア爆誕」「可愛いマリィちゃんとのいちゃいちゃキャンプ」「ユウリがイキリ自惚れヒロインになった理由」「ヨーギラスの故郷」「謎のイケメン登場」と盛りだくさん過ぎました。
前半と後半の温度差で風邪引きそうですね。
ユウリは幼少期からあんな感じでマサルにお世話されて、ジムチャレンジ中も毎朝ああやっていちゃいちゃ? というか子守りされています。これならイキリ自惚れ負け犬系ヒロインになっても仕方ない。全部マサルとホップが悪い。
ちなみに、もう進化したのでニンフィアがマサルと一緒に寝る必要はありませんが、あざといニンフィアはこれからも定期的にマサルのテントに潜り込んでくるでしょう。その内ユウリと正妻戦争しそうですね。
ヨーギラスに関しては、かなり先にイベントを用意しているのでそれまでお待ちください。ゲームとは出現場所が違いますが注意書き通りご容赦を。
そしてダイゴさんの次のイケメン枠はNです。これも感想欄であっさり当てられてビビりました。ポケモンのイケメンキャラって多いから絶対当てられないと思ったのに……。
次回はNとの語らいから始めます。真面目な話をしつつ、最終的にはきちんとマサルらしい「オチ」を付ける予定です。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
マリィちゃんとお揃いのエプロンを着ていちゃいちゃしながらご飯の支度をしたいと思う人はここをぽちぽちしてください!