「あら、マサル。最近はずいぶん勉強熱心だね」
「おっす、ソニアちゃん」
俺がマグノリア博士の研究所で勉強しているとワンパチを引き連れたソニアちゃんがやってきた。勉強熱心……元々こうやって博士の研究所でよく勉強していたけど、最近さらに力を入れるようになったのは間違いなくサイトウちゃんの影響だ。将来的にジムチャレンジに参加することになるとして、サイトウちゃんとあんな約束をしておきながらラテラルジムまで勝ち進めなかったら目も当てられないからな。
「ホップとダンデくんは? 今日は一緒じゃないの?」
「あの二人は釣竿を持って二番道路の湖に伝説のポケモンを探しに行った」
「ウチのすぐ裏じゃない!? あんなところに伝説のポケモンがいるわけないじゃん!!」
「最初の街のすぐ近くに隠しダンジョンがあるのは割と王道の設定だと思う」
「ゲームの中の話でしょ!?」
ソニアちゃんの言うように、こんな田舎町にそんな大層な場所はないと思う。でも、ユウリの家の裏にある「まどろみの森」は結構怪しかったりするんだよな。じいちゃんやばあちゃんは「絶対入るな」って口を酸っぱくして言ってるし。ばあちゃんはともかく、じいちゃんが言うんだからあの場所はよっぽど曰く付きなんだろう。
「そうそう。今朝の新聞見た? カントー地方にある大企業のシルフカンパニーを占拠してたロケット団を十歳の少年が壊滅させたって」
「切り抜いて額縁に入れて部屋に飾ってある」
「なんでそこまでやるの!?」
「俺の前世の魂がここがいいと叫んだからさ」
「マサルって時々意味わかんないこと言うよね」
そう、今日の新聞にはなんと!! あの伝説の男!! 原点にして頂点───レッドさんの記事が載っていたのだ!! ポケモン赤青緑の主人公で全ての始まり……まさかゲームのイベントをこんな形で知るなんて……感動し過ぎて俺は朝から号泣していた。いや、ポケモンをプレイしたことのある人間ならこんなん誰でも泣くやろ。
「冷静に考えたらすごいよね。十歳の男の子がテロリスト集団に占拠された超一流企業に単身で乗り込んで事件を解決するって」
……小学生時代にプレイしてる時は思わなかったけど、言われてみれば完全に「俺TUEEEE」だよな。十歳の子供になすすべなく蹂躙される。俺がロケット団員なら子供がトラウマになると思う。
「十歳ってダンデくんやソニアちゃんと同い年だもんな。ソニアちゃんはともかく、ダンデくんもトレーナーの素質はありそうだけど、方向音痴だからテロリストのいるところまで辿り着けなさそう」
「辿り着いたとしても建物内で迷子になるよね」
実は、ダンデくんにもこの前「バトルでトレーナーが次に出すポケモンがわかるか?」って聞いたら「わかる時とわからない時がある」って答えたんだよな。きっと方向感覚を犠牲にして手に入れた直感力なのでしょう。
ただ、ユウリもダンデくんも共通して、相手のトレーナーが
「そういえば、ガラルにはロケット団みたいな悪の組織っていないよね」
「昔はいたらしい。だけどじいちゃん達が根絶やしにしたって言ってた」
「マサルのおじい様は一体何者なの!?」
「元ラテラルジムのジムリーダーで……ガラルでポケモンバトルが興行として発展する前の黎明期にじいちゃんとあと二人のトレーナーでそういう集団を叩き潰して治安を安定させたんだって」
あと二人のトレーナーというのが、現アラベスクジムのジムリーダー、フェアリー婆ことポプラさんと元ガラルチャンピオンのマスタードっていうおじいちゃん。この三人がガラルを暴れ回っていたとかなんとか。詳しいことはじいちゃんも話したがらないからあんまり聞いてないけど、悪の組織を根絶やしにするとか「昔はやんちゃしてました」ってレベルじゃねーぞ。
余談だけど、父さんも昔ジムチャレンジに参加してポプラさんにボコボコにされて期限切れで失格になったらしい。父さん曰く「あのばーさんはバトル中に道具を使わずにポケモンの能力を大幅に下げることができる」とか。なんだそのチート能力。そんなの勝てるわけないじゃん。さすが六十年以上もジムリーダーの座を守り続けている生きる伝説。
俺がジムチャレンジに参加するまでに引退してくれないかなぁ……
「あ、今気付いたけどユウリは? ホップ達と一緒?」
「知らん。今日は俺の部屋に突撃してこなかったから家で大人しく……してるわけないよなぁ。多分、もうそろそろここに襲撃を───」
「こんにちはーっ! マサルいますかーっ?」
俺がそう言った矢先のことだった。研究所のドアが勢いよく開いて幼い少女の声が響く。俺とソニアちゃんが視線を向けると……思った通り、ユウリが入り口に立っていた。
「マサルいたーっ! まったく、私を放って一人で遊びに行くなんて!」
「別になんも約束してなかったろ」
ユウリはぷんすかしながら俺達の方へ駆け寄ってくる。こら、研究所には高い機材とかあるんだから走るな。
「ソニアちゃんのワンパチ可愛い~っ! マサルのわたぱちはもう進化しちゃって抱っこできなくなったんだよね……」
ユウリがソニアちゃんの足下にいるワンパチを抱き上げながら寂しそうに言う。そうです、この度ウチの愛犬兼牧羊犬のわたぱちが「パルスワン」というポケモンに進化したのです。足がスラッと伸びてスタイルが良くなり、顔も可愛さと凛々しさが同居している。例えるなら……ドラえもんの映画に出てきそうな見た目?
「二人で何して遊んでたの?」
「遊んでない。勉強だ」
「うえ~……あ、思い出した。私ホップに用事があったんだ」
「ちょうどいいからユウリも勉強していけ」
逃げ出そうとするユウリの手を掴むと露骨に嫌そうな目で俺を見てきやがった。牧場や草むらを駆けずり回るだけじゃなくて、少しは落ち着いて勉強する癖をつけておいた方がいい。野生児ワイルドユウリちゃんのまま大きくなったら彼氏の一人もできんぞ。
「ユウリ、おやつ用意してあげるからちょっとだけがんばってみようか」
「おやつ! うん、がんばるっ!」
ソニアちゃんがそう言っておやつの準備をし始めると、ユウリは俺の膝の上に座って俺が読んでいた本をのぞき込む。おやつで釣れる辺りユウリもだいぶちょろいよな。まあなんにせよ、勉強をやる気になってくれるならそれでいい。にしても、だ。お前ってほんとに俺に座るの好きだよな。
「よし、じゃあ今日は『タイプ相性』と『状態異常』についてやっていくか」
「マサル先生! さいきょーのタイプは何ですか?」
ダンデくんみたいなこと言いやがって。才能あるトレーナーの思考は似通うのかよ。
「そんなもんない」
「えー、ないの? マサルの役立たず」
「役立たず言うな。俺の手作りカレー二度と食わさんぞ」
「わーっ! ごめんなさいごめんなさい! 謝るから毎日作って~」
小さい子供は気に入ったものを食べ続ける習性があるとはいえ、毎日カレーはさすがに飽きる。俺はユウリを適当に宥めながらタイプ相性についてユウリに教えていった。そういや今更だけど「フェアリータイプ」って俺が知らないタイプだったんだよな。少なくとも、BWにはいなかったはず。
「ドラゴン」と「格闘」と「悪」に有利を取れて「鋼」と「毒」が弱点。「炎」は弱点じゃないけど攻撃の際に不利になる。
俺が初めてフェアリータイプの特徴を知った時に思ったのが「これ、強くね?」だった。
まず「ドラゴン」に有利を取れるのがでかすぎる。不遇と言われる「氷」や同じ「ドラゴン」の技を用意しなくていいからな。弱点についても「毒」の使い手は少ないからバトルで大幅に不利になることは他のタイプと比べて少ない印象だ。「鋼」に対しては……ぶち当たったらご愁傷様としか言いようがない。
あと、ガラルって地質の影響もあってか他の地方と比べて「鋼」が複合してるポケモンが多い気がするから「フェアリー」が猛威を振るうってことはないと思う。フェアリー婆は例外として。ババア自重しろ。
ただ、俺が将来パーティーを組む際に「フェアリー」は確定で入れようと思うくらい強いタイプだとは思う。
ここまではあくまで俺の持論だけどな。穴だらけだしいくらでも反論の余地はあるけど、前世ではレート戦とかやってたほど廃人じゃないんだよ。基本的にストーリークリアと殿堂入り後のちょっとしたおまけ要素で満足してたくらいだったし。
「はー……ややこしい。そうだっ! 全部のタイプをぶちのめせるさいきょーのポケモンを見つければいいんだっ!」
「頭ダンデくんかよ」
発想のレベルが同じ過ぎる。将来ユウリがポケモントレーナーになるかはわかんないけど、なったらものすごいゴリ押し脳筋パーティーを組みそう。「攻撃」と「特攻」重視の火力パーティー……「タイプ相性? そんなの技の威力でゴリ押しすればいいんだよ!」ってな感じで。
あ、相手にしたくね~……駆け引きも作戦もクソもない火力ぶっぱって相手にするとめっちゃ怖いんだよ。
「少し休憩にしない? マドレーヌ焼いたからどうぞ」
「わーい! ありがとうソニアちゃん!」
ソニアちゃんが紅茶とマドレーヌを持ってきてくれた。ユウリと二歳しか変わらないのになんだこの嫁力の高さは。ダンデくんやホップみたいなガラル紳士なら「ソニアは将来、良いお嫁さんになれるな」なんて歯の浮くようなセリフを言ってソニアちゃんを赤面させてラブコメ展開になるんだろうけど、俺は蕁麻疹が出てゲロを吐くからそんなこと絶対に言わない。
「美味しい~♪ これ、蜂蜜とレモン使ってるでしょ? なんでわかるのかって? ふふ~ん。私はね、コーヒーが飲める大人のレディなんだよ」
飲めるのはコーヒーっつーかミルクと砂糖たっぷりのカフェオレだろ。
「大人のレディは食べカスをポロポロこぼしたり口の周りにつけたりしない」
「んぅ~……」
貴重な資料の上にこぼすな。ティッシュを敷きなさいティッシュを。俺はユウリに注意しながらテーブルにティッシュを敷いてユウリの口の周りを拭いてやると、ソニアちゃんがクスクスと笑っていた。
「そういうところを見ると、あなた達って兄妹みたいだね」
「だってさ! マサル~、私のことは『ユウリお姉ちゃん』って呼んでもいいんだよ?」
「ユウリは こんらんしている!」
ユウリは胸を張って得意げな顔で俺の頭を撫でながらお姉ちゃんぶってくる。どう考えても俺がお兄ちゃんだろうが。ソニアちゃんに「お姉ちゃんって呼んで」って言われるならまだ理解できるけどな。俺が釈然としない呆れ顔でユウリを見るも、ユウリは俺の心情になんてこれっぽっちも気付いていないみたいだった。
「ねえ、マサル。私、ずっと気になってたんだけど……私のお家の裏にある『まどろみの森』ってなんで立ち入り禁止なの?」
おやつタイムの最中、ユウリがそんなことを聞いてきた。よし、ここは俺の即興嘘話でユウリをからかってやるか。
「それはな……まどろみの森に神様が封印されているからなんだ」
「神様?」
ユウリは首をかしげながらも興味津々といった表情だ。ええぞええぞ。
「その昔、ガラル地方には世界を滅ぼすようなとんでもない力を持った厄災ポケモンがいました。人々は力を合わせてそのポケモンに挑むも、全く歯が立ちません。誰もが絶望し、諦めている中……まどろみの森から神にも等しい力を持ったポケモンが現れてその厄災を封じ込めたのです。役目を終えた神様ポケモンはまどろみの森へ帰り、人々は感謝の意を込めてひっそりと神様を祀り、神様の眠りを妨げぬようまどろみの森を誰も立ち入ることのできない聖地としたのでした」
どこにでもあるような昔話的な設定だけどユウリは目を輝かせて俺の話を聞いていた。このくらいシンプルな方がお子様受けがいいんだよ。やはり王道設定こそ最強。変に捻くれた設定にする必要なんてないんだ!
「そして……俺の一族は代々その聖地を守ってるんだ」
「そ、そうなの!? じゃ、じゃあマサルが毎日バカみたいにキテルグマと戦ってるのって……」
「……神様の聖地を守るにふさわしい人間になるためだ」
というかユウリ、俺とキテルグマの熱いバトルを「バカみたい」とか思ってたのか。男と♂の真剣勝負やぞ。
「す、すごい……私、初めてマサルのことそんけーするかも───」
「まあ、全部嘘なんだけどな」
俺がそう言うとユウリが顔を真っ赤にして俺のほっぺたを引っ張ってくる。今更だけどユウリは俺に対してちょいちょい失礼だよな。ホップに対してはそんなのことないのに。っつーか、初めて尊敬とか……今まで俺のことをどんな風に思ってたんだよ。
確かに、いつもユウリをからかって反応を楽しんだのは俺だけど、それはそれとしてやられっぱなしは癪なので俺もユウリのほっぺたをむにむにと引っ張ることにする。子供のほっぺたってもちもちで気持ち良いよな。
そんな風にぎゃーすか騒ぎ合っている俺とユウリをソニアちゃんは優しい目で温かく見守るのだった。
「おばあちゃんみたいだ」って言うとソニアちゃんにまで攻撃されそうだったので俺の心の内にしまっておくことにしよう。
なお、この時俺が即興で考えた作り話があながち間違いじゃなかったと知ることになるのは───七年後のことだった。
「ダメだ~。博士の家の裏に伝説のポケモンはいなかったぞ」
「見事にコイキングしか釣れなかったな」
俺達三人がおやつタイムを楽しんでいると、ホップとダンデくんが帰ってきた。そんな簡単に伝説のポケモンが釣れてたまるか。多分、二人が使ってた釣竿ってゲーム的には「ボロのつりざお」だろうし。いやでも、特定の時間帯、特定のポイント、しかもボロのつりざおでしか釣れない伝説のポケモンっていそうだよな。伝説じゃないけど、ルビー・サファイアに似たようなポケモンがいたし。
「ずるいぞ三人とも! 俺達を差し置いてそんな美味しそうものを食べてるだなんて」
「あんた達の分もちゃんとあるから先に手を洗ってきなさい」
マドレーヌに手を伸ばしたホップの手がソニアちゃんにぴしゃりと叩かれる。
「マサルが作ったのか? マサルの作るお菓子は美味しいからな!」
「私よ! なんで真っ先にマサルだと思うわけ!? そんなこと言うならホップにはあげないよ!」
「じゃあホップの分は俺が食べよう。ソニアの作るお菓子も美味しいからな。毎日作ってほしいくらいだ」
「ま、毎日って……」
ダンデくんのナチュラルな口説き文句にソニアちゃんが顔を赤くしている。ダンデくん……十歳でそれって将来恐ろしいことになりそうだな。ホップもホップでガラル紳士の素質が見え隠れしてるし。俺みたいな野生児とは大違い。
「あ! ずるいぞ兄貴。よし、じゃあ先に手を洗ってきた方がたくさん食べられるってことにしよう! 洗面所まで競争だ!」
「研究所の中を走るな!」
ソニアちゃんが叫ぶも、ガラル紳士兄弟の耳には届かず二人は我先にと洗面所へと走って行った。なんだかんだこういうところは年相応な子供だなって安心するわ。そしてソニアちゃんは二人の態度にぶつぶつ文句を言いつつも二人の紅茶の用意をしてあげるあたり……ツンデレの才能があるな! ダンデくんはナチュラルに女を口説く鈍感主人公の才能がありそうだし……そんな男とツンデレ女という古き良きラブコメを思わせる組み合わせ。胸が熱くなるな! 俺はそんな二人を離れたところから見守る後方腕組みおじさんになろう! ヨシ!
「マサルがまたくだらないこと考えてる顔してる……」
ユウリがそんなことを言ってきたので髪の毛をわしゃわしゃにしてやるのだった。
「ホップ、コイキング以外には何も釣れなかったのか?」
「いや、一応トサキントとかメノクラゲもたま~に引っかかってたぞ」
「でも九割はコイキングだったな」
ガラル紳士兄弟を交えてティータイムを再開し、本日の釣果を聞いてみるもやっぱり芳しくないようだ。トサキント……初代ではハナダジムでトレーナーが使ってたよな。経験値うまうまでした。
「あ、ただ一匹だけ変なポケモンが釣れたぞ」
「変なポケモン?」
口の周りを汚したユウリが首をかしげて尋ねる。いい加減もう少しきれいに食べられるようになろうな。俺はそう思いながらユウリの口の周りを拭いてやった。
「俺も兄貴も見たことがないポケモンだった。なあ、兄貴?」
「ああ、見た目はすごく弱そうだったからすぐに逃がしたけどな」
見た目が弱そう……? ドジョッチとか?
「全体的に茶色くて……ヒレと尻尾は青かったぞ」
「斑な模様をしていて顔もすごく情けなさそうだった」
おいおいおい……おいおいおい……よもやよもや?
俺は二人の説明を聞きながらそのポケモンに心当たりがあった。いやいや待て待て。まだそうと決まったわけじゃない。お、俺の知らないガラル特有のおさかなポケモンだっていう可能性もあるだろ?
「マサル、どうしたの?」
「……ちょっとな」
俺が深刻な顔をしていたからか、ユウリが心配そうな顔で尋ねてくるので頭を撫でてやるとユウリは嬉しそうな表情を浮かべた。ほんとに犬みたいだなこいつ。
そんなユウリを尻目に俺はそっと席を立って二階へと向かう。そして、心臓の鼓動が高まっているのを感じながら水タイプのポケモンが書かれてある図鑑を持ってもう一度みんなが居るところに戻り、
「二人が釣ったポケモンって……まさか、こいつ?」
「ああ、こいつだぞ」
「間違いないな」
あー……なるほどなるほど。やっぱりね……思った通り、この子だったのね。はっはっは……まさかとは思ったがやはり……!!
俺は二人の言葉を聞いて一度図鑑を閉じる。
そして
「
俺の盛大なツッコミに全員が目を丸くして驚いた。俺の方がびっくりしてんだよ!! まさか近所にヒンバスがいるなんて思ってもいなかったからな!! しかもあっさり逃がすって……!! 俺がルビー時代にこいつを釣り上げるまでどれだけの労力と時間を費やしたと思ってやがる!! 釣れるポイントが時間でランダムに変わるからあの水路でどれだけのコイキングとメノクラゲをリリースしたことか!! ふええ……もうムロタウンに流行語を確認しに行くのいやぁ……
「ど、どうしたんだマサル……そんな大声出して?」
「ホップ……こいつは、こいつはなぁ……超……超々々々々激レアポケモンなんだよ!!」
「えぇっ!? こ、こんなに弱そうなのに!?」
「進化したらめちゃくちゃ強くなる系のポケモンなんだよ! ほら、コイキングだってギャラドスに進化するだろ!?」
「うわーっ!! そうだったのかーっ!! も、ものすごくもったいないことしたぞ……!!」
「進化した姿がこっち……『ミロカロス』だ」
ミロカロスのページを開くと、俺以外の全員が図鑑をのぞき込んだ。ミロカロス……ルビーの図鑑だと世界で「もっともうつくしいポケモン」って表現されてたな。実際、ミロカロスは美しさと格好良さと神々しさを兼ね備えたポケモンだ。上級者になるとミロカロスにエロを感じるらしいけど、あいにく俺はそんな異常者じゃない。ポケモン廃人は異常者の集まり。
「ウチのすぐ近くにこんなポケモンがいたなんて……じゃあ、あの広い池のどこかにもしかしてミロカロスが……」
「この図鑑には『澄んだ湖の底に住む』って書いてあるからいるかもしれないな」
ソニアちゃんとダンデくんも興奮気味だ。野生のミロカロス……是非ともその姿を拝みたいところではあるけど、あのバカでかい湖の底を泳いで探索するのはたとえスーパーガラル人でも無理だ。というか、捕まえようと考えてる邪なトレーナーの前には出てこなさそうなんだよな。美しい心を持つ人の前にしか現れない的な逸話もありそう。
ただ、図鑑を詳しく読んでみると「人々が争いを始めると現れて荒んだ心を癒す」って記載もある。う、うーん……ミロカロスを見たいがために争うのはなんか違うような……
「ミロカロスがいるかもしれない───ロマンはロマンのままにしておこう」
「ああ、マサルの言う通りだ。もしも縁があれば……それこそ忘れた頃にひょっこり現れるかもしれないぞ」
「そうだな。本当にいるのかいないのかわからないワクワクを……俺は一生持ち続けていたい」
「……なんか男共が急に悟りだした」
しょうがないよ、男の子だもん。確かに……確かに将来的にトレーナーを目指す身としては是非とも捕まえたいところではあるが……!! あるがっ……!! 「この湖のどこかにきっとミロカロスがいる……」それだけでいい。それ以上は何も望まない。だって……そういう「本当にいるのかわからないこと」こそが───男のロマンなんだから!!
男達三人でうんうん頷き合っていると、ユウリがじーっと熱心にミロカロスのページを読み込んでいる。
「ミロカロス……最も美しいポケモン……私にピッタリだねっ!」
「ぶはっ!」
「あーっ!! マサル酷い!! 笑ったでしょ!? 今笑ったでしょ!?」
「だって……最も美しいポケモンにピッタリって……お前……」
俺が腹を抱えて笑っているとユウリが俺をポコポコ叩いてくる。ソニアちゃんが言うならさ、まだわかるよ? でも、お前……お菓子を食べたら口の周りを食べカスだらけにするような、柵をよじ登って牧場で泥だらけになりながら駆けずり回るような……そんな野生児にミロカロスがピッタリって……
「ホップ聞いて! マサルがね! 酷いんだよ! 私にはミロカロスがピッタリって言ったら大笑いし始めてねっ!」
「……マサルはきっとこう言いたいんだぞ。『ユウリには美しいポケモンよりも可愛いポケモンの方が似合う』って」
さすがガラル紳士ホップ、フォローが上手い。でもごめんな。俺、一ミリたりともそんなこと思ってなかったわ。ただただユウリの発言に爆笑してただけだったわ。
「ふーん? ふーん……? そっかそっかぁ~」
ホップの言葉を聞いて調子を良くしたのか、ユウリはニヤニヤしながら俺に顔を近づけてきた。おい、その歳でメスガキ面を覚えたのか? 将来有望ですね。
「も~、マサルったら照れ屋さんなんだからぁ~。私のこと可愛いって思ってるなら素直にそう言えばいいの───いひゃいひゃいひゃい(痛い痛い痛い)! ほっぺたつねらないでっ!」
「ユウリにはゴンべがお似合いだ」
「なんで~!? なんでゴンべ~!?」
なんでって……俺が作ったお菓子やカレーを美味しそうにもぐもぐ食べてるところがゴンべっぽいからだよ。よかったなユウリ、ゴンべは一部で「可愛い」って言われるくらい人気のポケモンなんだ。お前のお望みどおりやぞ。
正直、俺はこの時あんまり深く考えずに発言していたんだけど……ユウリは数年後、本当にゴンベを自宅で飼い始めるのだった。
エンゲル係数大丈夫?
ミロカロスは♀だと可愛いえっち。♂だとエロいえっち。もうミロカロスじゃなくてエロカロスに改名しろ♡
ヒンバスを進化させるためにポロックマシーンを連打しまくった思い出……何もかも懐かしい。
ではでは、今回もお付き合いいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします!