【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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No.0039 おれさま!! キバナさん

「あ、ビートくんだ~」

 

 ホップ、マリィと別れてからナックルシティ入口の長い階段を登り、最初に目に飛び込んできたのはくっそでかい城だった。この城がスタジアムになってるんだけど、歴史ある城をスタジアムに改装するってなかなか思い切ったことをやったよなローズ委員長。

 

 城を見上げながらそんなことを考えていると、城の入口にビート少年、ローズ委員長、オリーヴさんがいるのを発見する。でも俺はそれよりも城を取り囲むように建っている八つの塔の方が気になっていた。あの塔から城に向かって橋みたいなのが伸びてて、でも城と繋がってるわけじゃない。

 

 ……大丈夫? あの橋みたいなの崩れ落ちてきたりしない?

 

「ローズ委員長! ねがいぼしもジムバッジも順調に集めています!」

「さすがね、ビート選手。委員長に選ばれたことを忘れずに励んでいるようね」

「ねがいぼしがたくさんあれば、委員長をわずらわせる悩みが解決するんですよね!」

「いや、私の問題ではなくガラル地方の未来のためだよ。それにねがいぼしだけではなく、チャンピオンのように強いポケモントレーナーも必要さ」

 

 ガラルの未来のためにねがいぼしとチャンピオンのように強いポケモントレーナーが必要? ねがいぼしはエネルギー産業の関係で理解できるけど、ダンデくんみたいな強いポケモントレーナーってどういうことだ? ジムチャレンジや興行的な意味?

 

「……お言葉ですが、チャンピオンが推薦したトレーナーの一人、ホップくんには実力の差をみせつけました。僕ならチャンピオンにも勝ちます! 勝ってみせます!」

「いいね! みんなで競い合ってジムチャレンジを盛りあげてよ」

 

 なーんか、ビート少年とローズ委員長の間に温度差があるというか認識の違いがあるというか……まあ、ビート少年にとってローズ委員長は自分を救い上げてくれた恩人だからな。恩人の力になりたいって思いが強いんだろう。

 

 その思いが空回りして変な方向に暴走しなきゃいいけど。

 

「ビート選手、話したいことがあります。ちょっとよろしいかしら?」

 

 そして、話が一段落するとビート少年はオリーヴさんに連れていかれてしまった。大丈夫? 折檻とかされないよな?

 

「やあ、マサルくん! ユウリくん! エンジンスタジアムでは素晴らしいバトルを見せてくれてありがとう!」

 

 俺達の存在に気付いた……いや、気付いていたローズ委員長が柔和な笑顔を浮かべながら近づいてくる。うーん、このあふれ出る腹の贅肉と黒幕オーラ。相変わらずですね。

 

「こんにちは。エネルギープラントの視察ですか?」

「そんなところですよ。お二人も知っての通り、ねがいぼしにはポケモンをダイマックスさせるだけではなく、ガラルのエネルギー事業を……いや、もう城内で説明した方が早いですね。さあ、行きましょう二人とも。私がガラルのエネルギーについて教えてあげますから」

 

 ローズ委員長は一方的に捲し立てて城の中へ入っていく。うおーい、俺達の意見はー? と思ったけど、相手はガラルのお偉いさんなので素直に従っておくことにしよう。

 

「ユウリ、お勉強の時間だ」

「うえ~……」

 

 ユウリは露骨に顔をしかめながら俺と腕を組んでくる。ポケモンとバトルだけじゃなくて一般的な教養も身につけていこうな。

 

 

 

 

 

 

「お、おい……見ろよあれ!」

「ローズ委員長に、カブを圧倒したユウリ選手だ!」

「一緒にいるのは……あのでんせつTシャツ……間違いねえ、ハロンタウンのマサルだ!」

「バカ野郎! 呼び捨てにするな! 『さん』をつけろ『さん』を!」

「そ、そうだったな。それにしても、すげーよなマサルさん。あんなバトル初めて観たぜ」

「ああ、すごいよ!! マサルさん」

 

 おいやめろやめろ。その言い方やめろ。俺がセクシーコマンドーの使い手みたいじゃねえか。

 

「ねえマサル。私達もう有名人だね!」

 

 ユウリはむふーっと満足そうに笑いながらそう言っていた。まあ、しゃあねえか。エンジンシティであれだけの大立ち回りをしたんだから。それに、メディアの取材も受けたもんな。あとはユウリに変なのが近づかないように警戒しておこう。

 

「さあ、二人ともこちらへ。私のタブレットで説明してあげよう」

 

 注目を浴びることに慣れているローズ委員長は周囲の視線を全く気にせず、俺達に説明を始めた。

 

「ナックルスタジアムの塔からエネルギーを吸収して、地下のプラントで電気に変換し、ガラル全土に届けているんだ」

「……とんでもねー技術ですね。ユウリ、わかるか?」

「り、りろんはしってる」

「理論知ってんのかよ、すげーな」

「ふへへ~♪」

 

 ユウリの頭を撫でてやると、嬉しそうにふにゃふにゃ笑っていた。どこぞの漫画に出てくる緑髪幼女と全く同じリアクション。

 

「私達の暮らしや社会は電気やガス、水道といったエネルギーがないと成り立ちません。私達の関連グループではねがいぼしのエネルギーによってみんなの生活を支えることを目標としているのです!」

 

 実際、ガラルのインフラのほとんどをマクロコスモスが担ってるんだよな。そのトップに立ってるのが今目の前にいる気さくなおっさんで……ちょっと気さく過ぎない?

 

「おっと! 仕事の時間だね。オリーヴくんに怒られる前に移動しようじゃないか」

「よく怒られてるんですか?」

「彼女はすごく厳しいんだよ。この前も私がファンサービスで───」

 

 そんなガラル経済のトップであるローズ委員長を怒れるってオリーヴさんすげえな。仕事ができるバリキャリ有能オーラが半端ないし……実質、マクロコスモスのナンバーツーなんだろう。

 

「そういえば委員長、さっきビート少年に『ガラルの未来のためにはチャンピオンのように強いポケモントレーナーが必要』っておっしゃってましたけど、あれって興行的な意味ですか?」

 

 俺の問いにローズ委員長の瞳がほんの一瞬、鋭くなったのを俺は見逃さなかった。

 

「───知りたいかい?」

 

 外から見れば人の良い笑顔。だけどわかる。明らかに裏のある笑顔だ。

 

「いえ、別に」

「そうですか。()()()()話してもいいと思ったのですがね」

 

 ローズ委員長は残念そうにそう言った。絶対面倒臭いこと……というか厄ネタの匂いしかしないんですけど。やめてやめて。そういうのはダンデくんに頼んでくださいよ。彼なら絶対何とかしてくれますから。

 

「……なんか厄介ごとの気配がビンビンなので」

「はっはっは。その感覚は大事にしてくださいね。ああ、そうだ。二人とも、よかったらこの後は宝物庫に行くといいですよ。ちょうどソニアくんを案内したところなんだ。キバナくんには話を通しておきますからね」

 

 ソニアちゃんも来てるのか。そういや、バウタウンのレストランで宝物庫の話もしてたな。確か、歴史を紐解く鍵がどうたらこうたら……。

 

「マサルくん」

「はい?」

 

 バウタウンでの会話を思い出しているとローズ委員長に名前を呼ばれた。

 

「1000年先の未来を守るためにはどうすればいいと思う?」

 

 え? 何その質問? 1000年先の未来って……今そんなこといきなり聞かれてもどう答えていいかわからんわ。

 

 またあれか? 委員長のいつもの気まぐれな質問か? とはいえ、真面目に聞いてきてるみたいだし真剣に答えよう。

 

「ん~……現状で想定できる『1000年後に発生しうる問題点と課題』を浮き彫りにして、解決策を模索し、後世に伝えていくことじゃないですか?」

「では、君の考える『1000年後に発生しうる問題点と課題』とは何ですか?」

「パッと思いつくのは『エネルギー問題』『環境問題』『食糧問題』『人口問題』ですかね」

「その中で君が最も重要だと思う問題は?」

 

 なんか学校の授業を思い出すな。ユウリは早々に思考放棄……いや、考えてるけど頭に十個くらいはてなマークを浮かべてやがる。ヤドランかよ。特防上がってそうだな。

 

「いや、四つの問題は全部繋がってるからどれが最も重要かは決められませんよ。俺達が今、豊かな生活を送れているのは潤沢なエネルギーのおかげで、でもそのエネルギーは少なからず環境に影響が、環境が悪化すれば食糧生産に影響が、食糧生産が減少すれば増加する人口を賄いきれなくなる。まあ、人口に関しちゃ少子高齢化って問題もありますがね」

「ふむ。ですが、君が()()()()()()()エネルギー問題……これを解決できればその他の問題も同時に解決できることになりませんか?」

「ああ、なるほど。ローズ委員長は()()に重きを置いているわけですね」

 

 俺がそう言うとローズ委員長は満足そうに笑った。そうだよな、ガラル経済……ガラルのエネルギー事業を一手に担ってるんだからそこを重要視するのも当然か。

 

「俺達の世代で限りある資源を食い尽くすわけにはいきませんからね。正直、1000年後の未来なんて想像できませんが……俺達の子供や孫、子孫達に不自由な思いはさせたくないし、俺達の()()を背負わせるなんてあっちゃいけないと思います」

 

 元の世界でもその辺の問題はよく取り上げられていたからな。

 

「『持続可能な開発』というのは、人類に課せられた永遠の課題でしょうね」

 

 俺の言葉にローズ委員長は何度も深くうなずいていた。その反応を見て俺も安心したわ。ガラルのエネルギー事業のトップもちゃんと未来のことを考えていたんだな。どこぞの悪の組織みたいに「自分達が良ければそれでいいのだ!」みたいなことにはならずに済みそうだ。

 

「ありがとうマサルくん。君と話ができてよかった」

 

 ローズ委員長は最後にそう言って俺達の前から去っていく。なんか、あの人と関わる時はいつもこんな感じの討論……というか話し合いになるよな。基本的にあの人は話好きなおっさんなんだろう。

 

 はー、疲れた疲れた。真面目な話はカロリーを消費するわ~。脳が糖分を欲してやがる。甘いもん食いてえ。

 

「ローズ委員長もマサルも色々考えて偉いね〜、よしよししてあげる!」

 

 ユウリがそんなことを言いながら俺の頭を撫でてきたので、思いきり抱き締めてやった。

 

 ふんわりとしたいつもの甘い匂い。うん、やっぱお前の匂いは落ち着くし癒される。満足満足。

 

「うし、じゃあ宝物庫に行くか」

「おっふおっふ……フヒィ」

 

 ユウリが顔を赤くしておめめをぐるぐるさせながら変な声を出していた。お前、ほんとこういうのに弱いよな。自分からはガンガンくっついてくるくせに。

 

 俺は笑いながら、そんなユウリの手を引いて宝物庫へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 ローズ委員長と別れて通りを北に進んでいくと、大きな扉の前で日に焼けた高身長顔面600族のイケメンが笑顔で俺達に手を振っているのが見えた。

 

「よう、待ってたぜ。マサル、ユウリ。委員長から連絡はもらってるよ」

「ども、よろしくお願いします」

「おう。んで、()()()()はなんでそんなにだらしない顔してんだ?」

「お見苦しいものをすみません。おいユウリ、起きろ。着いたぞ」

「ふにゃ~、ふへへへぇ~……はっ!? 私は何を!?」

 

 ふへふへ言いながらだらしなく笑っているユウリのほっぺたを何度かぺちぺちしてやるとようやく正気に戻った。お前、キバナさんにとんでもなく無様な面を晒してたからな。

 

「ここどこ……? ってキバナさん!? でっっっっっっか!! 何食べたらそんなにおっきくなるんですか!?」

「こいつ大丈夫か? 俺様心配なんだけど」

「平常運転です。ユウリ、ちゃんとあいさつしなさい。こんにちは」

「こんにちは!」

「はい、よくできました」

「幼稚園かよ」

 

 キバナさんにツッコまれる。

 

「で、マサル。ここどこ?」

「宝物庫だよ宝物庫。ローズ委員長が言ってたろ」

「おお~! こ、ここがナックルシティの宝物庫……伝説のカレーレシピが隠されているに違いないね!」

「きっと伝説の剣や盾が飾られてるんだろうなぁ……俺も正直わくわくしてる」

「ね! 楽しみだね~!」

「委員長はこいつらに何を説明したんだ?」

 

 キバナさんが気の毒そうな視線を俺達に向けてくる。いやいや、こんだけでかい城の宝物庫なんてゲームだったら貴重なアイテムがいっぱい保管されてるはずでしょ。それこそ、伝説の装備品があってもおかしくない。いったい何があるんやろうなぁ……。

 

「楽しみにしてるとこ悪いけど……まあいいや。俺様知ーらない」

 

 キバナさんは諦めたように頭の後ろで手を組んでそう言い、俺達を扉の中へと入れてくれる。

 

「宝物庫は階段の先にある。足元に気を付けろよ」

「「はーい」」

 

 俺達は返事をしながら自然とお互いに手を握り合っていた。ユウリはこういうところで足を踏み外してこけるからな。ちゃんと見ててやらないと。

 

 結構な長さの石の階段を登りきると広い展望スペースになっていた。ここからはナックルシティが眺望でき、遠くにはワイルドエリアも見える。そういや、こんな高いところからワイルドエリアを眺めたのは初めてだな。

 

「わぁ~、すごいすごい! マサル、景色がすっごく綺麗だよ!」

「おー、風もめっちゃ気持ちいいな」

 

 手すり壁にもたれながらきゃっきゃと景色を楽しんだり二人で自撮りしていると、キバナさんがものすごく温かい目で俺達を見守っていた。すんません、ちょっとテンション上がっちゃったんです。

 

 で、一通り楽しんだ後にいよいよ宝物庫の中へと入っていく。

 

「あ、ソニアちゃんだ~!」

 

 すると、中には飾られてある巨大なタペストリーを眺めているソニアちゃんがいて、ユウリが犬っころのように彼女へと突撃していく。

 

「よっ、ワンパチ。元気にしてたか?」

「イヌヌワン!」

 

 俺の足元にやってきたワンパチを撫でてやると、嬉しそうにお尻をふりふりしている。そういや、ソニアちゃんを宝物庫に案内したってローズ委員長が言ってたな。

 

 その瞬間、俺の脳内に電流が走る。

 

 気付いた。気付いてしまった。

 

 ───衝撃の、真実に。

 

「ユウリ」

「なぁにぃ?」

 

 ソニアちゃんに頭を撫でられて幸せそうにしていたユウリに、俺は辛い現実を突きつけてやらなければならない。

 

「ソニアちゃんとキバナさんは同期……俺達が来るまで薄暗い宝物庫で二人きりだった……これが意味することは!?」

「はっ!? だ、ダンデさんの脳が破壊されてしまう!!」

「やはり幼馴染は負けフラグ。もしかすると、今頃ダンデくんとルリナさんがこっそりいちゃついてて現在進行形でソニアちゃんの脳が破壊されているという……」

「そんなわけないでしょ!? 再会するなり好き勝手言うのねあんたは!!」

「互いに脳破壊し合う。つまり互いにこうかばつぐん同士であるというドラゴンタイプの特徴を、ドラゴン使いであるキバナさんとの関係を隠喩してたんじゃ……」

「するかぁそんなこと!!」

 

 ソニアちゃんがユウリから離れて俺に詰め寄り、思いっきりほっぺたを引っ張ってくる。いやー、元気そうでよかった。調査の調子はどう?

 

「え? まだ付き合ってなかったのかよ」

「そーなんすよキバナさん。ソニアちゃんはともかく、ダンデくんはポケモンの気持ちには鋭いくせにソニアちゃんの気持ちには微塵も気づいてなくて……」

「ぎゃーっ!! いちいち説明するなぁーっ!」

「あ、そうだ。キバナさん、ダンデくんの前でソニアちゃんにボディタッチしまくって『ソニアちゃんを奪うぜムーブ』的なことをやってダンデくんを意識させるのはどうですか?」

「面白そうだな。あいつがどんな顔をするのか楽しみだ」

「悪ノリすんなぁー!! ほんとに……ほんとにあんたはいらんことばっかりぃ~!!」

 

 ソニアちゃんが俺をぽすぽす叩いてくる。可愛いなぁソニアちゃん。そういう反応をもっとダンデくんに見せてあげればいいのに。

 

 さて、ソニアちゃんを弄るのはこの辺にしておこう。メインは宝物庫だよ宝物庫。でもソニアちゃんに会えて結構満足しちゃってる自分もいる。

 

「で、キバナさん。伝説の装備品はどこですか?」

「伝説のカレーレシピは?」

「ねえよんなもん」

 

 俺とユウリが期待の眼差しを向けるも、キバナさんに一蹴されてしまった。話を聞くと、ここにあるのは四つの大きなタペストリーだけらしい。だったら宝物庫なんて大層な名前つけないでくださいよ! 保管庫でいいだろ保管庫で!

 

「伝説の……カレー」

 

 ユウリが露骨にしょぼーんとしながら俺に抱き着いて胸に顔をぐりぐり押し付けてくる。気持ちはわかる。伝説の装備品は半分くらいネタだったけど、宝物庫っていうくらいだから大昔のモンスターボールとかが保管されてるんじゃないかとわくわくしてたのに。

 

「二人とも露骨にがっかりしてる……あのねえ、このタペストリーはすごいのよ。ガラルの歴史をちゃーんと伝えてるんだから。ほら、見てみなさいよ。ねがいぼしを見る若者二人。災厄の訪れ……困惑する若者。災厄を追い払う剣と盾を見る若者。王冠をかぶる若者。ガラルに王国ができたときの物語を伝えるタペストリーよ」

「……どうせなら剣と盾も保管されてりゃよかったのに」

「まだ見つかってないんでしょ?」

「ガラル王国建国の象徴ともいえるものなのに?」

「もしくは、長い歴史の中で失われたか……ね」

 

 形あるものいつかは壊れる。諸行無常ってヤツだな。でも、歴史上で重要な意味を持つ剣と盾……それこそ国宝扱いされててもおかしくない物が失われるのかねぇ。

 

「ねえねえソニアちゃん。若者が二人描かれてるけど、英雄は二人なの?」

「お、ユウリくん。とても良い所に気付きました。エンジンシティの像は一人だったけれど、このタペストリーには明らかに二人描かれているよね」

「ユウリ選手、ソニアちゃんポインツ、10ポインツ獲得!!」

「やったぜ~!」

「100ポインツ集めるとソニアちゃんが抱腹絶倒激ウケギャグを披露してくれます」

「するかぁ!!」

 

 ソニアちゃんに頭をひっぱたかれた。

 

「マサル、余計なことばっかりじゃなくてあんたもなんか気づいたこと言いなさい!」

「真面目なヤツ?」

「真面目なヤツ!」

 

 そろそろソニアちゃんが嚙みついてきそうだから俺もタペストリーを見た印象を真面目に話すか。

 

「この三枚目なんだけどさ。剣と盾が宙に浮いてるよね」

「そうだね」

「これってさ、英雄二人が()()()()使()()()ブラックナイトと戦ったって感じに見えないんだよな。もしもそうだとすれば、英雄二人の手に剣と盾を持たせるはずじゃん」

「ふむふむ、確かに言われてみればそうね……」

「エンジンシティやバウタウンでも言ったけど、やっぱ剣と盾ってポケモンを意味してるんじゃない? 何ならブラックナイトもめちゃくちゃ強いポケモンで……この英雄二人が剣と盾のポケモンと協力してブラックナイトを倒した。で、二体のポケモンは役目を終えてどこかで眠りについた。それなら、剣と盾が現代まで残っていない理由も説明できる」

「にゃるほどねぇ~。確かに、その仮説も真実味を帯びてきたね。剣と盾が『物』だという先入観に囚われちゃうのはよくなさそう」

 

 俺の言葉を聞いて、ソニアちゃんが指先で髪の毛先をくるくると弄り始めた。これはソニアちゃんが何か考え事をするときの癖で、確かマグノリア博士の仕草を真似たものらしい。ソニアちゃんは博士にめっちゃ懐いてたからな。お可愛いこと。

 

 そして、ソニアちゃんが真剣に考え込んでいる一方で、キバナさんが俺に対して新種のポケモンを見るような目を向けている。なんすかその目?

 

「マサル……お前ってそういうキャラなんだな」

「いきなりなんです?」

「カブさんとのバトルを見る限り、すげー熱くてクレバーなトレーナーかと思ったけどよ……」

「何言ってんのよキバナ。マサルがクレバー? そんなのはバトルの時だけで、マサルのジムミッションは酷いことになってたでしょ?」

「……言われてみりゃあそうだな。はんっ、おもしれー男だな」

 

 おお、現実でそんな台詞言う人初めて見たな。ちょっと感動。でも、おもしれー女レベルならソニアちゃんだって負けてませんよ。

 

「やばいユウリ。俺今ちょっとときめいたかもしれない」

「私知ってる! これ、全方位モテモテ俺様系イケメンが自分に全然靡かない少女漫画の主人公に言うヤツだ!」

「言っとくけど……あたし、あんたみたいな男に興味ないから」

「マサル、今のセリフもう一回! 動画をマリィとホップに送る!」

「……おいソニア。ハロンタウンはどういう教育してんだ?」

「私に聞かないでよ!」

 

 俺とユウリが作成した渾身の「おもしれー女ごっこ動画」をマリィに送るも「頭打ったと?」という辛辣な一言が返ってくるだけだった。さすがマリィ。

 

「今更ですけど、わざわざジムリーダーのキバナさんが案内してくれるなんて……暇なんすか?」

「おう、暇だぜ。俺様は最後のジムだからまだまだチャレンジャーはやってこないし、そもそも俺様のところまで辿り着けるのは毎年数人でゼロなんて年も珍しくないからな」

 

 で、その辿り着いた数人もキバナさんに勝てずに終わることもある。そうなった場合はセミファイナルトーナメントが実施されず、いきなりジムリーダー同士のファイナルトーナメントから始まるんだ。……やっぱほいほいバッジを集める歴代の主人公連中がおかしいんだって。

 

「ま、今年のチャレンジャーは俺様達以来の豊作みたいだし、結構期待してるぜ。ちゃんと俺様のところまで勝ち上がって来いよ二人とも」

 

 キバナさんはそう言って笑顔で俺とユウリの頭をポンポンと撫でてくれた。うーん、やっぱこうやって話してみると普通の気の良い兄ちゃんだな。顔面偏差値の高さもあって、人気が出るのも頷ける。

 

「そういや、ネズの妹は一緒じゃねえのか?」

「マリィはホップと一緒にワイルドエリアにいまーす!」

「……へえ、ダンデの弟とねえ。ネズに教えてやるか」

 

 ユウリが答えるとキバナさんが妖しく笑ってスマホロトムを取り出して何やらメッセージを送っている。

 

 どんまいだぞ! スパイクタウンの難易度が上がったな! がんばって格闘タイプの技かフェアリータイプの技を覚えさせておけよ。

 

「あ、キバナさん。話ついでに聞きたいことがあるんですけど」

「ん? なんだ?」

「なんでキバナさんがジムチャレンジで使うポケモンって……ドラゴンタイプが二体しかいないんですか?」

 

 これは俺の長年の疑問だった。本気のパーティーはドラゴン四体だけど、ジムチャレンジ中のキバナさんのパーティーってドラゴンパっていうより完全に天候パなんだよな。それはそれで相手にすると面倒なんだよな。

 

「あくまでジム()()()()()なんだから、手持ちを全部最終進化のドラゴンタイプにしちまうとチャレンジャーと力の差がありすぎてチャレンジにならねえんだよ」

「ああ、なるほど。ドラゴンタイプは成長が遅いですもんね」

「そーゆーこった」

 

 成長が遅い……ゲーム的に表現するとかなり高レベルまで育てなければいけない。それこそ、手持ちの全てが50レベルを超えるくらいに。ジムチャレンジの期間中にチャレンジャー達にそこまで求めるのは酷だよな。ジョウトにドラゴンジムはあったけど。ああでも、確かハクリューとかキングドラしかいなかったか。

 

「そういや、ボーマンダやガブリアスは手持ちにいないですよね?」

「他の地方の四天王やチャンピオンと被るだろ? それに、ジュラルドンは天敵の氷タイプやフェアリータイプとやり合えるしな」

 

 ゲンジさんやシロナさんか。やっぱ、同じドラゴン使いとしてそういうとこも意識してんだな。あれ? でもゲンジさんとフライゴンが被ってるのは……エースポケモンが被るのを避けた感じか。

 

「鋼・ドラゴンって面倒臭いですよね。個人的に相手にしたくないタイプナンバーワンです」

「お褒めの言葉どーも。でも、鋼・フェアリーよりマシじゃね? 噂じゃパルデアにはくそでかいハンマーを持った鋼・フェアリーのポケモンが岩を殴り飛ばしてアーマーガアを打ち落としてるらしいぜ」

「え? パルデアこっわ。絶対そいつガラルに入国させちゃダメですね」

 

 野生のアーマーガアならともかく、空飛ぶタクシーのアーマーガアを打ち落とされたら大惨事ってレベルじゃねーぞ。

 

 そんな風にキバナさんとぐだぐだ雑談しながら仲良くなり、連絡先とリーグカードを交換した。俺のリーグカードを見るなりキバナさんはげらげら笑っていたからジュラルドンにダイアースを連発してやろうと心に誓うのだった。

 

 その後、ソニアちゃんはもう少しタペストリーを調べるらしく、俺とユウリの二人だけで宝物庫を出ることにする。全然宝物庫って感じじゃなかったな。タペストリーしか飾られてなかったし。

 

「マサル、これからどうしようか?」

「甘いもん食いてえ。バトルカフェに行こう」

「さんせーさんせー! 私、パフェ食べたーい!」

 

 俺が提案するとユウリは満面の笑みを浮かべて俺の手を取ってブンブン振り回す。ラテラルタウンまではまだ距離があるからな。休憩したら買い出しに行ってナックルシティで一泊して朝一で出発すればいいだろう。

 

 そして、そのままユウリと手を繋いでバトルカフェに向かおうとしたところだった。

 

「おーい! そこのバトルが強そうなお二人さーん!」

 

 背後から若い女の人、というか俺達と同年代くらいの女の子の声が聞こえたので俺とユウリは振り返る。

 

 すると、離れたところから一人の女の子が俺達に向かって手を振りながら小走りで近寄って来ており、俺はその女の子の顔を見て驚きを隠せなかった。

 

 白とピンクのキャップに黒のベストと白いトップス、ダメージデニムのホットパンツ。ぱっちりとした凛々しい瞳に端正な顔立ち。髪型はウェーブがかかったふわふわ茶髪のポニーテール。

 

 おいおいまじか。なんであんたがここにいる?

 

「いきなり声かけちゃってごめんね~! あたし、()()()。人探しをしてるんだけど……この男の人に見覚えはないかなぁ?」

 

 自らをトウコと名乗った女の子が俺達二人にスマホの画面を見せてきた。

 

 その画面に映っていたのは、帽子をかぶった緑髪のイケメン。

 

 ……どうしよう?




 ローズ委員長とのお話。宝物庫訪問。顔面600族のキバナさんとお友達になる。良いケツのトウコちゃんオチと今回も盛りだくさんでした。

 宝物庫訪問でがっかりしたのは私だけじゃないはず。絶対良いアイテムが手に入ると思ったのに。

 トウコと遭遇したのも予定通りです。マサルがNとフラグ立てちゃったからね。トウコの知らないところでNのトモダチ兼パパになっていたマサルの明日はどっちだ!?

 次回はトウコと楽しくいちゃいちゃ()します。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

 BWプレイ中にトウコがモンスターボールを投げる時にトウコの尻ばっかり見ていたいやらしい人は懺悔してここをぽちぽちしてください!




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