【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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No.0042 てんせい?? ボールガイ

「あ、ボールガイだ~! 久しぶり!」

「久しぶりボル、ユウリ選手! カブとのバトルはすごかったボルね~。正直、強すぎてドン引きしたボルよ~」

「えへへ。それほどでも~」

 

 ユウリと遺跡を眺めていたらボールガイと遭遇してしまった。どうやらまだポケモンリーグに怒られたりはしていないらしく、無事に……無事に? 活動できているらしい。子供達からは「モンスターボールの化け物!」とか呼ばれてて意外と人気っぽいしな。

 

「んで、何の用だよ? 今日も元気にボールを配ってたのか?」

「いや~、最初に比べると僕の知名度も少しずつ上がってきたボルから、ボールを受け取ってくれるジムチャレンジャーも増えてきたボルけど……カブのジムで大半が脱落したせいでここしばらくはものすごく暇だったボル!!」

「カブさん強かったもんなぁ……」

「そんなカブ相手にあの大立ち回りした人間が言う台詞じゃないボル!! あの一戦とその後の取材ででんTマンのトレーナーとしての実力もかなり評価されてるボルよ」

「そうなんか?」

 

 ボールガイに話を聞くと、カブさん戦で俺とユウリのジムチャレンジャーとしての知名度が一気に上がり、俺とユウリのどちらが強いかという論争が繰り広げられていたらしい。まあ、傍から見ればユウリの特異な能力になんて気付かないからそんな論争ができるんだろうけど。こいつの本当の力を知ったら……論争なんて無意味だ。

 

「総合的な人気はユウリ選手が上ボルね~。可愛いし強いから老若男女問わず人気があるボルよ」

「うへへ~、やっぱり? やっぱりぃ?」

「でんTマンはちびっ子達からの人気が絶大ボル。でも服装がダサいから女性ファンは少ないボルね~。ただ、あの熱いバトルを繰り広げたから男人気はもしかしたらユウリ選手以上かもしれないボルよ」

 

 色んなことを調べてるんだなと感心したけど、ジムチャレンジャーの数が減ってやることがなかったからネットサーフィンやジムチャレンジの記事を片っ端から読み漁っていたらしい。

 

「んで、リーグからお声がかかったりはしなかったのか?」

「残念ながらまだボルね。ジムチャレンジャーの数も少なくなってきたし、このまま同じことを続けていてもアピールにはならないと思うボル」

 

 お? さすがに危機感を感じ始めたか。順調に成長しているようで何より。

 

「そもそもボールを配ることがアピールになるっていう理論が意味わからん」

「ふっ……でんTマンがそんなことを言うのは百も承知でござるボルよ! だから僕は、新しい作戦を考えていたボル!!」

「新しい作戦?」

 

 ユウリが首をかしげて尋ねると、ボールガイが腕を組んで胸を張り、俺達を見下ろしてくる。その被り物の下ではめっちゃドヤ顔浮かべてんだろうなぁ。

 

「そう! あれはまだ、ラテラルタウンにやって来たはいいもののジムチャレンジャーが全く来なかったから近所のちびっ子達と一緒にナンジャモのドンナモンジャTVを観ていた時のこと……」

 

 そんなことやってたのか。こいつって普通にコミュ力も行動力もあるし、それがちゃんとした方向に進めばすぐに就職できるだろ。

 

「僕は閃いたボル!! 僕も同じように僕の存在をアピールするような動画を投稿すればいいのではないかと!! そしてゆくゆくはナンジャモやキバナのような有名インフルエンサーに……名付けて『不審者や無能と罵られいい加減就職しなさいと言われ続けた僕だったけど投稿した動画があっという間に一億再生!? 昔の知り合いが友達面してくるけど後悔してももう遅いボル!! 大作戦!!』」

「失敗しそう……」

「リーグ就職はどこ行った?」

 

 さすがの能天気なユウリちゃんもこればっかりは呆れた様子を隠し切れない模様。このご時世で一億再生とか夢見過ぎだろ。世の中にどれだけの動画が溢れてると思ってんだ。

 

「……で、肝心の動画の内容は?」

「ふっふっふ~。ちゃーんと考えてるボルよ~。僕はバトルはからっきしだけどモンスターボールと捕獲に関する知識は誰にも負けない自信があるボルね。だから色んな種類のボールを紹介して実際にそのボールを使ってポケモンを捕まえる……つまり、『ボールガイのポケモンゲットだぜ講座!』」

「あー……確かにそういう方面ならお前向きだし需要がありそうだな」

「い、意外と真面目な内容だった。炎上系ポケチューバーかと思ってたのに」

「炎上したら就職なんてできないボルよ!?」

 

 ユウリの言う通り、思ったより真剣に考えてるみたいで安心したわ。ガラルにもトレーナーズスクールは存在するけど、色んな理由でスクールに通えない子供達もいる。そういう子供達に向けての動画での捕獲講座はありだな。

 

 ガラルは他の地方よりもポケモンと人との距離が近い。だけどそれは言い換えれば、何の知識もない子供が不用意に野生のポケモンに近づきかねないということ。そして、忘れがちだがそもそもポケモンは普通の人間にとっては脅威となる力を持っていることが大半だ。そんな野生のポケモン達に何の知識もなく不用意に近づいてしまえば……最悪の場合命を落としかねない。

 

 そういった事故や悲しい事件を減らすということを考えても、ポケモンの正しい捕まえ方やボールの扱い方を伝えていくのは大事だな。

 

「良い内容だな。だけど、素人がいきなり動画を投稿してもバズるとは思えないし……いくら内容が良くても人の目に触れなかったらもったいないな」

「そこは僕の知名度でなんとかするボルよ! まずは近所の子供達に宣伝するボル! 子供は一度気に入った動画を何回も再生する習性があるボルからね~」

「でも、それだけじゃ弱いな……しょうがねえ。俺もちょっとは協力してやるよ」

「ほんとボルか!? さすが大親友!!」

「マサルが……協力? 絶対『がんばれよ』って感じで適当に流すと思ったのに」

「……こいつが私利私欲のための動画を作ったり、真っ先に俺をあてにするようだったら協力なんてしなかったよ。でも、内容は真っ当で少なくとも自分の力でなんとかしようとしてた。だったら協力するのも別にいいかなってな」

「でんTマンはツンデレボルね~。男のツンデレなんて需要ないボルよ」

「マサルはね。こういうところが可愛いよね!」

「……やっぱやめるか」

「嘘嘘やめないで!! 靴舐めるボルから~!」

 

 ユウリがしたり顔で笑いながら俺の頭を撫で、ボールガイが土下座しそうになるのを阻止しつつ、俺はスマホロトムを取り出してある番号へと電話をかけた。

 

『よう、どうしたマサル? 俺様に何か用か?』

「すみませんキバナさん。ちょっと協力していただきたいことがありまして」

 

 電話をかけた相手はキバナさんだ。ナックルシティで会った時に「まだしばらくジムチャレンジャーが来ないから暇だ」って言ってたからな。チャンピオンカップへ向けたトレーニングもあるだろうけど、多少なりとも時間を持て余してるなら協力してもらおう。キバナさん、こういうの好きそうだし。

 

 そして案の定、捕獲講座について話すとかなり乗り気で二つ返事で了承してくれた。おいおいすげーな。引き受けてくれるとは思ったけど、コスプレ一般人の動画にこんなに簡単に出てくれるのかよ。

 

『ただ、あれだな。ボールガイの格好で動画に出るんだったら……一応リーグの許可を取った方がよさそうだ。無許可で後々トラブルになる方が面倒だからな』

「あ、やっぱそうっすよね」

『とにかく、一回そのボールガイとしっかり話してみてえな。企画書や内容をしっかり精査した上で俺様が大丈夫だと判断したらリーグの許可も降りるだろ。動画の評判が良けりゃあ、他のジムリーダーにも声をかけてみるか。イメージアップにも繋がりそうだし』

「ありがとうございます。その辺を伝えて今度は本人から連絡させますね」

『おう、待ってるわ』

 

 キバナさんとの通話を終え、話した内容をそのままボールガイに伝えると、ボールガイがプルプルと震え出した。何だお前? その巨体で震えられると普通にこえーんだけど。

 

「ま、まさかいきなりトップジムリーダーキバナとのコラボなんて……ありがとうボルでんTマン! さすが僕の大親友! 心の友よ! お礼にヘビーボールを十個プレゼントするボル! ふー……こうしちゃいられないボル! 暇潰しに作っておいたボールの種類ごとの企画書が火を噴く時が来たボルね! いざ行かん! ナックルシティ!」

「お前なんでそんな仕事が早いのに就職できてねえんだよ」

「なぜかお祈りメールがたくさん送られてきたボル! 今さら僕を雇おうと思ってももう遅いボル!」

 

 そしてボールガイが駅の方へ駆け出して行こうとするも、最後に俺達に振り返ってこう言った。

 

「『いつ捕まえるか? 今ボル!』これが動画の決め台詞ボル!」

 

 お前の中身、実は転生者だったりしないだろうな?

 

 俺のそんな懸念なんぞ露知らず、ボールガイは叫び声をあげながら全力疾走で階段を駆け上がっていった。あのバイタリティがあればどこでもやっていけるだろ。

 

「上手くいくといいね~」

「あとはキバナさんに任せよう」

 

 そしてようやく、ようやく俺達はラテラルタウンへ足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ラテラルタウンは今までに訪れた街とは全く異なる、独特の雰囲気を持つ町だった。ラテラルタウンは年中気温が高く、乾燥しているので家の中が高温にならないよう、家自体が白い石灰を多く含んだ石材で作られている。その土地の気候によって建物の造形が変わるのは面白いな。

 

 街の入り口から露店が立ち並び、マラカッチなどポケモンが店番をしているところも多い。町全体の雰囲気はアラジンのアグラバーに近いな。いいね。初めて来たけどこういう雰囲気は大好きだ。

 

「面白そうなものがいっぱいあるね~」

 

 ラテラルタウンはそれほど大きな町じゃないけど、掘り出し物市が有名らしく多くの人でにぎわっている。今はジムチャレンジ中だからなおさらだな。

 

 俺は色々なものに目移りしてふらふらどこかへ行ってしまいそうになっているユウリの手をしっかり握った。人混みで迷子とか面倒だから絶対やめろよ。

 

「あ、マサル見て見て~! すっごく可愛いマグカップがあるよ!」

 

 しばらく二人で露店を見て回っていると、ユウリがアンティーク調のお洒落なマグカップを見つけた。値段を見ると、掘り出し物市だけあってそれほど高くはない。店のおじさんの話によれば、とある有名な作家の作品らしいとのこと。ほんとかよ。絶対贋作だろ。

 

「ねえねえ、マサルもお揃いの買おうよ!」

 

 まあ、贋作だろうが何だろうがユウリが気に入ってるならそれでいいか。むしろ本物で価値がある方が扱いに困る。

 

「そうだな。すみません、これ二ついただけますか?」

「まいど。ジムチャレンジがんばってね」

「ありがとうございま~す!」

 

 バレテーラ。まあ、こんな服着てるチャレンジャーなんて俺しかいないし、ユウリも黙ってれば普通の可愛い女の子だからな。

 

 その後、しばらく歩いていると豚串を売っている露店を見つけ、良い匂いに釣られた俺達はどちらが言い始めるでもなく豚串を買って食べ歩く。こういう露店で買った物を食べ歩くと普段より何倍も美味しく感じるのはなんでだろうな。

 

 あとは「かけたポット」だの「われたポット」だのわけのわからんもんを売ってるお店や、レアアイテムの買取店もあった。ワイルドエリアで色々お宝を拾っていたので、全部売り捌くと結構な値段になり俺もユウリも驚くことになるのだった。

 

 真珠みたいなのが三つくっついたヤツって「おだんごしんじゅ」って言うのか。変な形の石だから今度ダイゴさんに見せてあげようと思って拾ってたけど、30000円近くで売れるとは……でんTが買えるな!

 

 そして、掘り出し物市を堪能した後はジムに手続きをしに行こうという話になったが、俺達を出迎えてくれたのはクソ長い石階段だった。この階段の上にスタジアムもあるみたいだし、お年寄りに優しくねえなぁ。

 

「あんた達、ダンデが推薦したチャレンジャーと格闘爺の孫だね」

 

 そんなことを考えていると、後ろから声をかけられたので振り返る。俺達の背後に立っていたのは一人の老婆。傘を杖代わりにし、ピンクを基調とした衣装を身に纏う……アラベスクタウンのジムリーダー、ポプラさんだ。

 

「はじめまして、ですよね?」

「そうさね。開会式で顔は見たけど実際に話すのは初めてさ」

 

 ポプラさんは俺達二人を値踏みするようにじーっと見つめている。何かこの人、ジブリに出てきてもおかしくない雰囲気だよな。湯婆婆とレスバしてそう。

 

「すごい……ピンクだ」

「ピンクは女の魅力を引き立てるんだよ。覚えておきなお嬢ちゃん」

「ほえ~、そうなんですね~」

 

 ユウリは感心したように言ってるけど、お前もピンクのワンピース持ってるだろ。あと、マリィもピンクのワンピースの上から黒いジャケットを羽織ってたな。ソニアちゃんは……へそ出しニット。あの恰好は正直エロいからもうちょっと考えた方がいいと思う。

 

「荷物、持ちますよ」

「おや、気が利くね。あの爺とは大違いだ」

「じゃあ私は手を繋いであげますね! 階段がすっごく長いから」

「ふふっ、ありがとうお嬢ちゃん」

「俺はお前の方が転びそうで心配だよ」

「そ、そんなことないもん!」

 

 そんなこんなで、流れでポプラさんと一緒にクソ長い階段を登ることになった。ちょうどいい機会だし、色々話を聞いてみるか。

 

「ポプラさんは昔のじいちゃんを知ってるんですよね? 昔、じいちゃんとポプラさんとマスタードさんの三人で悪の組織を片っ端から潰して回ってたって本当ですか?」

「あんたの爺のこともマスタードのこともよーく知っているよ。それに、若い頃は()()()()してたのも本当さ。あの時はあたしも血の気が多かったからねぇ」

 

 こえーなおい。「この時代に老いぼれを見たら『生き残り』と思え」って土方さんも言ってたけど、ガラルポケモンリーグの黎明期を生き抜いてきた人の言葉は重みが違うよな。

 

「それにしても、あんたの戦い方は爺とは全く違うね。あの爺は戦術もクソもない脳筋だったから、搦め手のあたしとはタイプも戦い方の相性も最悪だったよ。その点、マスタードはまだクレバーだった。十八年もチャンピオンの座を守り続けてたけど……()()()()()があったとはいえ、あっさり引退するとはね」

「あんなこと?」

「……光と闇は表裏一体ということだよ、お嬢ちゃん」

 

 ユウリが尋ねるも、ポプラさんにはぐらかされてしまう。十八年もチャンピオンの座を守り続けてきた……その偉大な記録は未だに破られていない。でも、そんなレジェンドであるマスタードさんが引退を決意するほどの何かがあった。

 

 まあ、こればっかりは深く踏み込む必要もないか。ポプラさんの口ぶりからして、当時のポケモンリーグの汚点みたいなものなんだろうし。

 

「ポプラさんのジムミッションってどんなのですか~?」

「おいおい、そんなの教えてくれるわけ───」

「後継者探しを兼ねたオーディションだよ」

「ジムミッションを私物化してる!!」

 

 そういや、ダンデくんが言ってたな。「ポプラさんがジムリーダーの後継者を探してる」って。いや、確かに六十年もジムリーダーをやってたら後継が必要だろうけど……ジムミッションでオーディションすんのかよ!?

 

「オーディション……なんか格好良い! 選考基準は何ですか?」

「ピンクであるかどうか、だね」

 

 何だその選考基準!? ピンクであるかどうか!? バトルが強いとか人格とか事務能力とかそういうところで判断するんじゃないの!?

 

「ピンクであるかどうか……さっきポプラさんはピンクは女の魅力を引き立てるって言ってた……つまり、私こそ後継者にふさわしいのでは?」

「お嬢ちゃんは確かにピンクだけど、それは脳内ピンクであってあたしの好むピンクじゃないよ。ちなみに、そっちのあんたからはピンクを微塵も感じない。オーディションをするまでもなく不合格さ」

 

 好き勝手言いやがってこの婆。ジムリーダーになるつもりなんてまったくなかったけど、意味の分からん選考基準で勝手に落とされたらそれはそれで腹立つな。

 

「ぷぷっ、マサルは全然ピンクじゃないってさ。どんまい!」

「……お前、脳内ピンクの意味わかってんのか?」

「え? 女の子らしい魅力がたっぷり詰まってるって意味でしょ?」

「四六時中エロいことを考えてるって意味だよ。きゃー、ユウリさんったらいやらしい女の子」

 

 俺がそう言うとユウリは顔を真っ赤にして口をパクパクし始める。コイキングの真似か?

 

「い、いやらしくなんかないもん! そういうことを言うマサルの方がえっちなんでしょー!?」

「俺くらいの歳でそういうことに興味がなかったら逆に心配になるわ」

「ふーんだ! ホップはそんなことないもんねー!」

「いや、あいつは相当なムッツリだと……」

「あーっ! あーっ! あーっ! ありえません! ホップはいつも優しくて何でも褒めてくれる紳士だからいやらしいことなんて考えていません!」

「やっぱりあたし好みのピンクじゃあないねえ」

 

 ポプラさんは呆れてたけどニコニコと楽しそうに笑っていた。まあ、ポプラさんにしてみれば俺達は孫くらいの歳だからな。

 

「今のところポプラさんのお眼鏡に適うピンクはいないんですか?」

「ネズの妹はなかなかいい線いってるんだけどねえ……あれはネズの後継だから横取りする訳にもいかないよ」

「さすが私のマリィ! でも、マリィもだめってなると……どんな子がいいんですか?」

「真っ直ぐで捻くれている、そんな矛盾を抱えた深みのある人間がいいねえ」

 

 真っ直ぐで、でも捻くれている……あれ? もしかしてビート少年が案外ピンクだったりするのか? あの嫌味ったらしい性格のひん曲がったビート少年がマホイップとかニンフィアとか可愛いフェアリーポケモンと戯れてるのを想像すると笑えるわ。

 

 でもよく考えたらビート少年の手持ちって可愛い子ばっかりだったよな。これはビート少年がフェアリー落ちする日も近いな! ヨシ!

 

 そしてしばらくポプラさんと話しながら階段を登り、ラテラルスタジアムの前を通り過ぎてルミナスメイズの森の前へとやって来た。この森の先に、アラベスクタウンがある。

 

「ここまででいいよ、どうもありがとうね」

「そういや、なんでアーマーガアタクシーを使わなかったんです?」

「人間は一度楽を覚えると取り返しがつかなくなる生き物なんだよ。だからなるべくこうして自分の足で歩くようにしているのさ。それに、使わないと色々と衰えてくるからね」

 

 確かに、じいちゃんも七十歳を超えてるとは思えないくらい筋肉ムキムキだからな。俺もこういうところは見習おう。

 

「それじゃあお礼に、あたしとサイトウのリーグカードをあげようかね」

 

 そう言ってポプラさんは俺達に二枚のリーグカードを差し出してくれた。なんでサイトウちゃんの分もくれたんだろう。バトルが終わったらサイトウちゃん本人がくれそうだったのに。

 

 先にポプラさんから貰ってたって言ったら、サイトウちゃんどんな顔するかな?

 

「じゃあ、ジムチャレンジがんばりな。どこかであんた達の本気を見せてもらうからね」

 

 最後にポプラさんはそう言って、のんびりとした足取りで森の中へと入っていった。こんな薄暗い森の中を大丈夫かなとも思ったけど、ポプラさんにとってみれば自分の家の庭みたいなもんだから心配しなくてもいいか。

 

「面白いおばあちゃんだったね」

「……ガラルのジムリーダーはキャラが濃過ぎる」

 

 もうちょっとこう……普通の「ザ・凡人」って感じのジムリーダーがいても良いと思うんですけどね。

 

 まあとにかく、アラベスクジムは……レアコイルを進化させてラスターカノン祭り決定だな。鋼パワーを思い知るがいい。

 

「この後どうしよっか?」

「チャレンジ自体は明日に持ち越しだろうから、予定通りジムに行って手続きだけやっておくか。んで、観光名所の壁画を見てホテルにチェックインしよう」

「壁画……どんなポケモンが描かれてるのかなぁ~。ディグダの像もすごかったし、きっと壁画はもっとすごいよ!」

 

 そんな風に楽しみにしていた俺達だったけど、いざ壁画を前にすると……なんというかこう、よくわからんものが描かれていて完全に期待外れであり、コメントし辛い感じになってしまうのだった。俺達に芸術はわからん!

 

「……マサルくん、気の利いた一言をどうぞ」

「芸術は爆発だ!」

「つまり、この壁画は『だいばくはつ』で壊すことによって真の完成となるのですね」

「文化財保護法違反だな」

「ふへへ~、ユウリちゃんが逮捕しちゃうぞ~?」

 

 ユウリが手をワキワキさせながらアホなことを言っていたのでそれをスルーしつつホテルへと向かうのだった。




 ボールガイが動画投稿者になってポプラおばあちゃんとお話してるだけで終わってしまった。なぜこんなにもボールガイに話の尺を割いているのか……謎ですねぇ。

 次回はラテラルジムを攻略します。サイトウちゃん回です。幼い頃に交わした約束を七年の時を経て果たしに来た主人公と大舞台で再会します。ヒロインかな?

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

 ラテラルジムのくるくる回るアトラクションに地味に苦戦した人(私は不器用なのでああいうのがほんとに苦手)はここをぽちぽちしてください!


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