ラテラルスタジアムの朝は早い。
時刻は午前四時。誰もが寝静まり、太陽の昇らない暗い時間にもかかわらず、スタジアムの明かりだけが煌々と灯っている。
我々は、そんなラテラルスタジアムの主である彼女───ジムリーダーサイトウの一日を追った。
『ポケジェクトX~挑戦者たち~』
OPテーマ「地上のソウル」歌:ライム
───おはようございます。随分と朝が早いのですね。
「おはようございます。自分が未熟であることは私が一番よくわかっていますから。そんな未熟な己を鍛えるためには、他のジムリーダーの方達に追いつき、追い越すためには彼らの何倍も努力をしないといけないので」
十六歳という若さでメジャージムのジムリーダーを任されていながらも、彼女の目には驕りや慢心は一切ない。
そして彼女は、誰もいないスタジアムへと足を踏み入れ、自分のポケモン達を呼び出し、共にストレッチを始めた。
───ポケモン達と一緒にトレーニングをするのですか?
「はい、もちろんです。トレーナーは、ポケモンを戦わせるだけの存在ではありません。共に学び、共に鍛え合い、共に成長する……そうしてこそ、本当の信頼関係が築けるのです」
そう語る彼女の目は、誰よりも熱い。
ストレッチの後、広大なスタジアム内を何周もランニング、ポケモン達との組手、技の確認、連携の確認などを行っていた。一切無駄のないトレーニングの流れに、匠の技が光る。
そして、午前六時になると早朝のトレーニングを終えてポケモン達と共にスタジアムの食堂に向かった。
───いつもご自分で作られているのですか?
「ええ。ポケモン達の好みは私が一番よくわかっていますし、トレーニングで消費したカロリーやトレーニングの内容に応じた食事量、献立にしないといけませんからね。それに、いつも私のお願いを聞いてくれているこの子達には、私の手料理を食べて欲しいのです」
大きな鍋やフライパンを巧みに操り、額に汗を流しながらも料理をする彼女の笑顔はどこか母性を感じさせた。
「よかったら、みなさんもどうぞ」
彼女はそう言って、我々スタッフの分の朝食も用意してくれた。彼女の手料理からは、ポケモン達に対する確かな愛情が伝わってくる。
「おはようございます!」
「おはようございます。サイトウさん」
「おはようございます、ジムリーダー」
朝食の片付けを終え、時刻が八時半を過ぎるとリーグスタッフやジムトレーナー達が続々と出勤してくる。彼女は、出勤してくる彼ら一人一人に丁寧に頭を下げて挨拶をしていた。
「私がこうしてジムリーダーとして戦えているのは、ポケモン達はもちろん……私を支えてくれる彼らの尽力があってこそです」
彼女は誇らしげにそう言った。彼女はポケモン達とだけでなく、周囲の人達との間にも確かな信頼関係を築いている。
そして、朝の挨拶を済ませ、出勤してきたスタッフ達のスケジュールを確認すると、彼女は更衣室へと向かっていった。
「午前中は取材が一件入っているので、それまでにシャワーを浴びて身だしなみを整えておく必要があります」
ジムリーダーの業務はポケモンバトルだけではない。ジムそのものの運営やジムトレーナーの育成、今回のような取材対応やスポンサーとの会合など、業務は多岐に渡る。
彼女はジムリーダーとなってからまだ数年ではあるが、その堂々とした立ち居振る舞いには確かに、ジムリーダーとしての「格」があった。
「サイトウさん知ってます? ナックルシティのバトルカフェの新作、かなり評判良いみたいですよ~」
「本当ですか!? 行きたい行きたーい!」
「今度のお休み……ジムチャレンジが終わるまでは忙しいですから、終わったらみんなで行きましょうよ~」
「さんせーですっ!」
昼食の時間は他のスタッフやジムトレーナー達と和気藹々とした雰囲気で過ごしている。いつも真剣で凛々しい表情をしている彼女ではあるが、この時ばかりは年相応の少女の笑顔を浮かべていた。
「ジムチャレンジと言えば、サイトウさんが推薦した選手……カブさんに勝ちましたね!」
「ものすごく評判になってましたね~。昨日のニュースは
「い、いや~それほどでも。マサルならあのくらい当然ですから~」
彼女は自分のことのように誇らしげに笑っている。話題に出ている「彼」とは、彼女がジムチャレンジに推薦したトレーナー……「マサル選手」のことだ。
───サイトウさん、なぜ彼をジムチャレンジに推薦したのですか?
「……彼は、マサルは私に『トレーナーとしての在り方』を示してくれた人だからです」
───トレーナーとしての、在り方?
「はい。私とマサルが出会ったのは七年前……その頃は私の父がラテラルタウンのジムリーダーでした。そして、マサルのお爺様は父の師であり父の前任のジムリーダーでした。その縁で、ハロンタウンに行くことがあり、マサルと出会ったのです」
彼女は昔を懐かしむように語り始める。
「最初は、彼に牧場を案内されてウールーの毛刈り体験やミルタンクの乳搾り体験をしたり、牧場の美味しい名物をいただいたりしていました」
いたって普通の牧場体験だった。彼女が先ほど言ったような「トレーナーとしての在り方」というものはまだ見えてこない。
「彼の牧場は、牧羊犬のワンパチやお爺様の相棒であるカイリキー、お父様の相棒であるキテルグマなど、ポケモンと力を合わせて運営していました。そんな中で、私に牧場を案内してくれている最中に、当時七歳だったマサルはいきなりキテルグマに突進していったのです」
話のつながりが理解できない。なぜ少年少女の心温まる交流がいきなりそんなことになるのか。我々は口を挟まず、彼女の次の言葉を待った。
「当然、人間とポケモンには身体能力に大きな差があります。マサルはキテルグマに殴られてなす術なく吹き飛ばされてしまいました」
───事件じゃないですか!?
「ですが、マサルは全くの無傷だった……それどころか、彼にとってはそれが日常だったのです」
彼のジムチャレンジの様子を見ていて、只者ではないと思っていたが、どうやら彼は幼少期から文字通り只者ではなかったらしい。
「当然、私は怒りました。そんな無茶なことをしてはいけないと。野生のポケモンと不運な出会い方をして命を落とすトレーナーだっているのだと。だけど、彼は私にこう言ったのです。『ポケモントレーナーたるもの、ポケモンの技に耐えられなければならない』と。『俺は立派なポケモントレーナーになるために日々修行と鍛錬を重ねているのだ』と。私はその言葉を聞いて……とても、とても感動してしまったのです」
彼に思いを馳せる様に、彼女は頬を少しだけ赤く染めながら言葉を続ける。
「ポケモンを本当の意味で理解するには、知識を身につけるだけでは足りない。人と戦うだけでは足りない。言葉だけでは足りない。ポケモンと同じ時間を、同じ痛みを、苦しみを、喜びを分かち合わなければいけない。互いに拳を、技を、魂をぶつけ合った先にこそ───本当の信頼関係があるのだと。彼は私に、教えてくれたのです」
彼女の言葉を半分も理解できなかったのは、おそらく我々が凡人だからなのだろう。
「それから、ポケモン達との向き合い方が大きく変わりました。あの時の彼の言葉が、彼の教えが今の私を形作っているといっても過言ではありません。そういった意味で、マサルは私に『トレーナーとしての在り方』を示してくれた人なのです」
凡人にはおよそ理解できない思考。だが確かに、彼女と彼の間には特別な絆があることがうかがえた。
───では、先日ワイルドエリアでサイドンと殴り合っていたという情報も?
「はい、本当です。恥ずかしながら、その後に入った洞窟が崩れて危うく遭難しかけましたが……」
恥ずかしがる場面ではないと思ってしまうのは、やはり我々が凡人だからなのだろう。
───あなたにとって、彼は特別な存在なのですね。
「ええ。友人であり、恩人であり……ライバルです。私がこの時を、どれほど待ち望んでいたか……ようやく、ようやくあの時の約束を果たせる時が来ました」
───約束、ですか?
「はい。彼と七年前に交わしたのです。『いつか必ず───私と戦ってくれますか?』と。マサルは……ちゃんと、守ってくれた」
そう言った彼女の表情は、まるで恋する少女のようだったが、それを指摘するほど我々は野暮ではない。
「なんかサイトウさん、マサル選手に恋してるみたいですね!」
「こ、ここここここここここいこいこいこいコイキング!? そ、そそそ、しょんにゃわけにゃいじゃにゃいでしゅか!? わ、私がましゃるに恋とかありえましぇん!! そ、そもそも恋とかよくわかりませんし!!」
「サイトウさんは可愛いですね~」
非常にデリケートな話題であるため、我々でさえ指摘することを避けたのに、ジムトレーナーの女性があっさりと指摘した。
ストイックに自分と、ポケモン達と向き合っていた彼女が見せた、顔を真っ赤にして慌てながら全力で否定するその姿は彼女の知られざる一面だったのだろう。
彼女にこんな表情をさせる彼が、ラテラルスタジアムでどのように彼女と向き合い、どのような試合を繰り広げてくれるのか。
二人の試合の行く末に、大きな期待がかかるところである。
『ポケジェクトX~挑戦者たち~』
EDテーマ「ヘッドライト・
ふーん。これがサイトウちゃんのドキュメンタリーねぇ……ふーん。
ふーん。
あのさぁ、一つ言っていい?
カットしろよ!!!!!
なんで!! なんで最後のあのシーンを入れた!?
途中までは割と普通……普通? のドキュメンタリーだったのに!! 最後のサイトウちゃんの表情しか印象に残ってねえよ!!
よくこれを配信しようと思ったな!! というかサイトウちゃんもよく許可を出したな!? 大丈夫!? ちゃんと内容確認した!? っつーかEDはネズさんが歌ってんのか!! あの人、こういうバラードもいけるんだな!!
ふー……落ち着け俺。幸い……幸いネット配信だけだったからよかったものの……いやよくねえわ。全然よくねえわ。どうせあれだろ? ネット掲示板で色々あることないこと書かれてんだろ? 俺は別にそんなの気にしないし、というか前世で慣れてるけど……サイトウちゃんに迷惑がかかるのはいただけねえなぁ。
まあ、配信されたもんは仕方ない。変に邪推する連中が出てきたところで、俺達に実害がなけりゃいないと同じだからな。そもそも俺とサイトウちゃんはそういう関係じゃないんだから堂々としてりゃいいんだよ。
俺はそう考えて、ベッドにゴロンと横になる。ラテラルタウンのホテルで一泊し、朝になってユウリを叩き起こして風呂に放り込んだ後、何気なくサイトウちゃんのドキュメンタリーを観てたらこの様だ。
今日はジムミッションとサイトウちゃんとのバトルが控えてるってのに。
とにかく、俺にできることは今の全力をサイトウちゃんにぶつけるだけだ。対サイトウちゃんの切り札も奥の手も用意してきた。はっきり言って、負ける理由がない。それだけの自信が、今の俺にはある。
「まーさーるーっ! なーに観てたの~?」
風呂から上がったユウリが、ベッドで寝ころんでいる俺の上に覆いかぶさるようにのしかかってきた。シャンプーの甘い匂いが鼻腔を擽り、俺はユウリの髪を撫でる。うん、ちゃんと乾かしてるな。
「サイトウちゃんのドキュメンタリーだよ」
「……ふーん」
答えると、ユウリはジト目になってわざとらしくほっぺたを膨らませていた。何だその顔? 一丁前に嫉妬してんのか?
「ねえ、マサル」
「んあ?」
「マサルにとって……サイトウさんは特別なの?」
ユウリがずいっと俺に顔を近づけてそんなことを尋ねてきた。
俺にとって、サイトウちゃんが特別かどうかなんて……そんなの、決まってんだろ。
「特別だよ」
サイトウちゃんが俺をジムチャレンジに推薦してくれたおかげで、俺はもう一度自分の内面と向き合うことができた。遥か昔に忘れてしまった、心の奥底に眠っていた大事なものを、少しずつだけど思い出すことができた。
それに何より、たくさんの人達と、たくさんのポケモンと出会うことができた。
どれだけ感謝をしても、しきれない。
そんな、特別な人。
「む~……」
俺の答えに、ユウリは不満そうにしている。ったく、なんて顔してんだよ。
「嫉妬してんのか?」
「はぁー!? 私が嫉妬なんてするわけ……」
そこまで言って、ユウリは急に寂しそうな表情になって俺の胸に顔を埋めた。
「嘘……嫉妬してるもん。私の方がマサルと付き合いが長いのに。ずーっと一緒にいるのに。それなのに……サイトウさんは特別だーって……ずるい、ずるいよ」
ほんとにお前は……昔っからそうだよな。そういうところはガキの頃からなんにも変わってねえ。あのなぁユウリ……サイトウちゃんのことをずるいって言ってるけど、俺に言わせれば
「ばーか」
俺は苦笑しつつ、ユウリの頭を撫でる。
「俺の一番の特別は、お前に決まってんだろ?」
そう言うと、ユウリは顔を上げてふにゃふにゃとだらしなく笑い、俺の首にぎゅっと腕を回してくる。ほんとにお前は……こういうことに関しては、いちいちこうやって言葉にしてやらねえと伝わらねえのか。
「ふへっ……ふひひ~……特別……私が、一番らぁ♪」
耳元で気持ち悪く笑うな。くすぐったいんだよ。はあ……なんでお前はこんなにも残念なヤツなんだ。でも、そういうところを可愛いと思ってしまうあたり、俺も大概重症らしい。
「あ、やっぱさっきのなし。一番はホップでお前はその次。つまりユウリは二番目の女だな」
「その言い方いや~!」
「どんまいセカンドウーマン」
「ふざけんなこのやろー! このやろー!」
ユウリが俺をぽすぽすと叩いてくるも、本気で怒っているわけじゃないのがわかる。
そんな風に、出発の時間になるまでベッドの上でユウリとずっとじゃれ合っていた。
「おい、見ろよ! ついに来たぞ!」
「とうとうあの男がラテラルスタジアムに……まだ当日の観戦チケット売ってたよな!?」
俺とユウリがラテラルスタジアムに足を踏み入れるなり、誰の目から見てもわかるくらい周囲がざわめき始めた。カブさんとの一戦で俺とユウリに対する注目度が高まった上、俺はサイトウちゃんに推薦されたトレーナーだ。そんな俺と、俺を推薦したジムリーダーであるサイトウちゃんとのバトル……まあ、俺がジムチャレンジャーじゃないただの一般人の立場だったとしても、同じような反応をしてただろう。
「七年、か……」
あの時はまさか、自分がジムチャレンジに参加するなんて想像もしていなかったな。
ははっ、だめだな俺。まだ旅の途中なのに……こんなにも感慨深くなっちまってる。
「マサルっ! その顔禁止ー!」
ユウリが不機嫌そうな表情で俺のほっぺたを引っ張ってくる。その顔っつっても、どんな顔してたんだよ。
「彼女とのデートでたまたま元カノとの思い出の場所に来ちゃって懐かしい気持ちになってる彼氏の顔」
「彼氏がいたこともないのによく知った風に言えるな」
「う、うっさい! これからできるのーっ!」
ユウリはそう言ってパタパタと駆け出し、更衣室へと入っていく。先に受付を済ませろよと呆れつつ、仕方ないのでユウリの分の受付も済ませて、俺も更衣室へと入って着替えることにする。
ユニフォームに袖を通し、モンスターボールをベルトに着け、マリィから貰ったヘアゴムを用意した。鏡の前に立ち、マリィに教えてもらった通りに前髪を上げて後ろで束ねてヘアゴムで結ぶ。うん、良い感じだな。前髪が邪魔にならないし、動きやすい。
「うしっ!」
両頬を手で叩き、気合を入れる。
さあ、勝負と行こうかラテラルスタジアム。
「ラテラルスタジアムポケモンジムのジムミッションは!! カップに乗って障害物を避けながらゴールへ進む!! カップに取り付けられているハンドルを良い感じに操作してゴールを目指せ!! では、ぐるぐる回ってさっさと行きなされ!! 以上!!」
「何かダンペイさん、俺への対応がだんだん雑になってないですか?」
「これまでの自分の行いを思い出せ!!」
「……思い当たる節しかない」
「自覚あるなら改めんかい!!」
ジムミッションステージにやってきた俺が最初に思ったのは「今までのジムで一番金がかかってそうだな」だった。勾配のある三つのステージは迷路のようになっており、遊園地のコーヒーカップみたいな乗り物に乗ってゴールを目指すとのこと。
先に挑戦したユウリはきゃっきゃと楽しそうに攻略してたけど、これって三半規管が弱い人にとってみたら地獄だよな。
「ダンペイさん、今更ですけどジムミッションの様子ってリアルタイムで中継されてますよね?」
「そうじゃが、それがどうした?」
「もし途中でゲロ吐いちゃったらどうするんです?」
「どんなところを心配しとんじゃ!? 即座に映像を切り替える準備はできてるし、そもそもポケモントレーナーたるもの!! この程度で三半規管がやられるようなら過酷なポケモンバトルなんぞできんわい!!」
「なるほどなるほど、一理ある。じゃああのラストのパンチングマシンラッシュは? あれ、むち打ちになる人も出てくるでしょ?」
「ポケモンバトルでは!! あんなパンチングマシンよりもっと強力な技が飛び交ってるじゃろ!!」
「なるほどなるほど、一理ある」
「納得したらはよ行かんかい!!」
ダンペイさんにせっつかれるので、とりあえずカップの前までやって来た。まあまあでかいな。これを一人でぐるぐる操作しながら進むって……金かかってる割に地味な絵面になりそう。とりあえず、床の滑り具合を確認するか。
おっ? かなりツルツルだな。これならカップを使わなくても攻略できるんじゃねえの?
「ダンペイさん」
「なんじゃ?」
「あのパンチングマシンの威力って、キテルグマのメガトンパンチより強いです?」
「どんな質問じゃ!?」
「キテルグマのメガトンパンチくらいなら耐えられるんで、カップに乗らずに生身でスケートみたいに滑った方が楽だなと思って」
「もうどこからツッコんでいいのかわからん!! 『カップに乗ってゴールを目指せ』と言ったじゃろ!!」
「乗らなきゃだめ?」
「だめっ!!」
しゃーない。ダンペイさんがそこまで言うならカップに乗って攻略してやろうじゃないか。えーっと、安全ベルトはこれで……ハンドルは意外と軽いな。あんまり激しく回しすぎるとまじで目を回しそうだ。
よーし、あとは……。
「レアコイル」
機械音のような鳴き声と共に、レアコイルがボールから出てくる。さーて、マサルさん流の攻略を始めようかね。
「磁力でこいつをあっちのゴールまで引っ張って行ってくれ。パンチングマシーンはセンサー感知っぽいから、近づかなかったら大丈夫だ」
俺がそう言うと、レアコイルは頷いて磁力でカップを引っ張り始めた。はっはっは。レアコイルの磁力を舐めたらいかんぜよ。磁力が通る金属があれば大抵のものは引っ張れるからな。これならハンドルを回す必要もないし、パンチングマシンも安全に回避できるし、快適快適。
「何やっとんじゃーっ!! 戻ってこーい!!」
しかし、出発するなりダンペイさんが鬼の形相で俺に向かって叫び始めた。
「ちゃんとカップに乗ってますよ?」
「ポケモンの!! 力を使うな!!」
「……ポケモンと心を通わせ、力を合わせて困難に立ち向かうのが───ポケモントレーナーです」
「ジムミッションは!! トレーナー個人の資質を見極めるの!!」
「……戻らなきゃだめ?」
「だめっ!!」
ダンペイさんに怒られてしまったので、レアコイルにスタート地点まで引っ張ってもらい、ボールに戻した。良いアイデアだと思ったんだけどな。別に、レアコイルじゃなくてアーマーガアとかならこのカップを掴んでゴールまで飛ぶくらいできそうだし。
「なんでお前は毎回毎回!! まともに攻略せんのだ!?」
「ダンペイさんが俺係になった時点で、視聴者や上の人達が求めてるのってこういうことじゃないんですか? 真っ当に攻略するのはユウリや他のジムチャレンジャーさんにお任せして……俺はこう、ルールの抜け穴というか重箱の隅をつつくようなやり方で攻略することが求められてるというか」
「ワシの心労が!! 全く考慮されてない!!」
「……社会人は辛いですね」
「どの口が言うか!!」
「わかりました。ダンペイさんの血圧が心配なので次のジムミッションは真っ当にクリアします」
「言質取ったからな!? 絶対にポケモンの力を使ったりするんじゃないぞ!?」
「フリですか?」
「フリじゃないわい!!」
よし、撮れ高はもう十分だろう。カブさんのジムでチャレンジャーの数もかなり少なくなったから、こういうところでもしっかり盛り上げていかないといけないからな。
そして俺は再度カップに乗ろうとするが、最後にダンペイさんに聞いておきたいことがあったのでもう一度ダンペイさんの方へ振り返った。
「ダンペイさん」
「なんじゃ!?」
「俺、髪型変えたんですけど……どうですか?」
「はよ行けっ!!」
ダンペイさんは褒めてくれませんでした。
ジムミッションはそのまま素直にカップを操作してぐるぐる回ったりパンチングマシンに吹っ飛ばされたりしながら、至って真っ当に攻略した。意外と楽しかったな。ユウリの反応は間違ってなかったらしい。
ちなみに、途中で三人のジムトレーナーさんとバトルしたけど……ジムトレーナーさん達はほとんど格闘技しか使ってこなかったので、サイコキネシスを覚えさせてたランプラーで完封した。エビワラーのバレットパンチとカモネギのぶんまわすがちょっと痛かったけど、あれでランプラーは意外と耐久力もあるから問題なし。
「ねえねえ。実際……サイトウさんのことどう思ってるの?」
「……俺にとって特別な人です」
「ウッヒョー!!」
んで、アイコさんっていうお姉さんがバトルの後にこっそりとそんなことを尋ねてきたので、他の誰にも聞こえないように小さな声で答えるといきなり小躍りし始めた。
男性のジムトレーナーさんはまともな人が多いのに、女性のジムトレーナーさんは変なのばっかだな!!
というわけで、ジムミッションクリアまでです。
序盤のプロジェクトXとか情熱大陸とか……今の若い子達は知らないでしょうねきっと。
次回、サイトウVSユウリ(〇〇〇ンバトル!!)とサイトウVSマサルの両方を終わらせます。〇〇〇に入る言葉はカタカナ三文字です。予想してみてね。正解者にはマリィとキャンプデートする権利をプレゼント!
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
本作マサルのリーグカードとガチモードとネタ画像を乗せておきますのでよかったらここをぽちぽちしてください!
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