【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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No.0047 らすぼす!! ユウリちゃん

「ではこれより!! レアコイルの進化の儀を執り行う!」

 

 ホップとマリィがラテラルスタジアムを突破し、次の目的地であるアラベスクタウンまでの道中にあるルミナスメイズの森の入り口にて、俺は自分の手持ちを全員呼び出し、リュックからかみなりの石を取り出した。

 

「このかみなりの石はかつてホウエン地方のチャンピオンだった……鋼タイプをこよなく愛するダイゴさんより賜った一品。まさに、鋼タイプのレアコイルにふさわしい! 今までありがとうレアコイル。そして、これからも俺に力を貸してくれ!」

 

 俺が声を高らかにそう言うとレアコイルはよくわからない機械音で返事をする。こいつは他の手持ちと違って表情がほとんど変化しないけど、喜んでいるってことくらいはわかる。ってか、ナンジャモのコイルが表情豊か過ぎるんだよ。色もピンク色だし。あれって色違い? それともナンジャモが塗ったのか?

 

 まあいいや。今はナンジャモよりも俺のレアコイルだ。ここまで進化を引っ張ったのには、次のアラベスクタウンでその本領を存分に発揮してもらいたいからって理由があったからな。ただ、ルリナさんとのバトルでレアコイルを見せてるからポプラさんも俺がどういう戦い方をするか予想できているだろうけど。

 

 そして、かみなりの石を与えるとレアコイルの身体が眩い光を放ち始め、その光の中から最終進化形態であるジバコイルが現れた。

 

 UFOっぽくなったな。宙に浮いてるし、そのまま乗って移動できそう。とか考えていたらさっそくエースバーンやユウリがジバコイルに乗ってふよふよ移動していた。おい、俺を差し置いて何しとんねん。遊んでないでさっさと先に行くぞ。

 

「ルミナスメイズの森にはフェアリータイプのポケモンがたくさん生息しているみたいだぞ。鋼タイプや毒タイプのポケモンを育てるにはうってつけの環境だな。俺のアオガラスもここでアーマーガアに進化させるぞ!」

「あたしもドクロッグをもっと鍛えんとね。他の子達は……ちょっとしんどいかも」

「フェアリー同士だと等倍のダメージ交換にしかならないもんな。でも、オーロンゲの攻撃力ならある程度対抗できると思う。あとは……ほら『どくづき』のわざレコード。ズルズキンが覚えるはずだ」

「あ、ありがと……でも、ええの? 前にマジカルシャインのわざレコードも貰ったのに」

「俺にはジバコイルがいるからな。それに、マリィの笑顔のためなら安いもんさ」

 

 俺がキメ顔でそう言うとマリィは途端に胡散臭いものを見るような目になった。酷くない?

 

「……モルペコ、マリィに『笑顔を盛るペコ』こうげき!」

「うら~!」

「ちょ、モルペコっ!? なんでそんな素直にマサルの言うこと聞くと!?」

 

 俺が指示を出すとモルペコがマリィによじ登ってほっぺたをぐにぐにしている。尊いね。

 

「こらっ! マサル! 私の許可なくマリィを口説くの禁止ーーーっ!!」

「普段はクールでキリッとしている美少女の笑顔からしか得られない栄養がある」

「わかりみ」

 

 ユウリがジバコイルに乗って俺に突撃してきたのでそう言ってやると、ユウリは腕を組んでうんうん頷いていた。ついでにマリィの手持ち達もみんな腕を組んでうんうん頷いていた。仲良いなお前ら。

 

「おーい、三人とも。早く来ないと先に行くぞー!」

 

 森の入り口から少し進んだ場所で野生のポケモンをアオガラスで蹴散らしていたホップが俺達に向かって手を振っている。よっしゃ、ここでジバコイルを鍛え上げてポプラさんに挑むとするか。

 

「ぎゅわ~ん」

 

 そう思って森の中に足を踏み入れようとしたところで、サナギラスが俺の前にやって来てぴょんぴょん飛び跳ねながら何やらアピールしている。いつもより気合いの入っている表情……なるほどな。

 

「わかった。この森のポケモン達の相手はジバコイルとサナギラスに任せる。できるな?」

「ぎゅわんっ!」

 

 俺がそう言うとサナギラスが嬉しそうな笑顔になった。俺の手持ちで最終進化まで至っていないのはサナギラスだけ。ジムリーダーとのバトルに出ていないのもサナギラスだけ。パーティに加入するのが一番遅かったとはいえ、周りがどんどん活躍していく中で自分だけ置いていかれたような焦りを感じているんだろう。

 

「心配すんなサナギラス。俺はちゃんとわかってるからな」

「ぎゅわっ♪ ぎゅわっ♪」

 

 後はその焦りが悪い方向へ作用しないようにしっかり見ておいてやればいい。

 

 さて、色々あったけどようやくルミナスメイズの森にカチコミだ!

 

 

 

 

 

 

 ルミナスメイズの森は……なんつーか、ワイルドエリアの森とは全く雰囲気が異なっていた。あちこちに色とりどりの光るキノコが生えていて、幻想的な雰囲気に包まれている。ディズニー感が強いな。時計を持った白ウサギやらチェシャ猫が出てきてもおかしくない……って思ったけど、そもそもポケモンがファンタジーな存在だったわ。

 

「ねえねえ、見てマサル~。このキノコ面白いよ! ほら、触ると光るんだ~!」

「あんまちょろちょろしてるとこけるぞ」

「ふーんだ。いつまでも私を子ども扱い───」

「ぎもーっ!!」

「わあっ!?」

 

 言わんこっちゃねえ。

 

 デカいキノコの影から飛び出してきたギモーに驚いてユウリが尻もちをつきそうになったので支えてやる。お前はほんとにあれだな。フラグを立ててから回収するのが早いな。

 

「よくもやってくれたなこのやろー! メタング、コメットパンチ!」

「誰がどう見てもお前の自滅だろ」

 

 メタングの強烈な一撃であっさりとギモーを撃退。ユウリにはメタングとルカリオがいるからポプラさん相手だとかなり楽にバトルを進められるな。まあ、俺のジバコイルも負けてないんだが? ラスターカノンがクッソ強くてビビってるくらいなんだが?

 

 ちょっとジバコイルの火力を甘く見てたわ。特攻型でタイプ相性がいいとはいえ、この森のポケモン達を一撃で落としてるからな。

 

 ただ、ちょっと心配なのは……。

 

「ぎゅわっ! ぎゅわーっ!」

「サナギラス、かみくだく」

 

 サナギラスの攻撃で野生のイエッサンが倒れた。それ自体は問題ない……問題ないけど、サナギラスの気合が入り過ぎているのが心配なんだよな。一戦が終われば休む間もなく次の野生のポケモンと戦おうとしてて、いや、やる気があるのは良いことなんだけど少しは自分の身体を労わらないと。

 

「お疲れサナギラス、戻っておいで」

「ぎゅわーっ!」

「だめだ。さっきからずっと連戦だったろ? 休むのもトレーニングだ。もうすぐ正午だし、続きは昼飯食ってからだ」

 

 ちょっと強めの口調でそう言うと、サナギラスはしょんぼりとした表情の垂れ目になって戻ってくる。仕方ないだろ、無茶して大怪我でもされたらそれこそ大変なんだから。薬はたくさん用意しているけど、まだアラベスクタウンまでは距離があるし、簡単にポケモンセンターまで行けるわけじゃないからな。

 

「見てくれ、三人ともー! とうとうアオガラスがアーマーガアに進化したぞー!」

 

 離れたところでアオガラスを鍛えていたホップがアーマーガアを引き連れて戻って来た。改めて近くで見てみるとでけえな! アーマーガアタクシーは何回も使ったことがあるけど、やっぱ迫力あるわ。

 

「見た目の割に羽毛はもふもふしとーね」

「がぁ~」

「はっ!? これはお昼ご飯は進化のお祝いカレーにすべきなのでは!? ハイ決定! アーマーガア、私が美味しいカレーを作ってあげるからね!」

「お前、朝もホテルのビュッフェでカレー食ってたろ?」

「あのカレー美味しかったよね。厨房に行ってスパイスをちょっと分けてもらったんだ~」

「お前そんなことやってたの?」

 

 そのカレーに対する飽くなき探究心は何なんだ? まあいいや。昼はカレーにしてやろう。その代わり夜は絶対別の物を食わせるからな。

 

「ユウリのカレーキチ……まだまだ健在やね」

「あれは一生治らない気がする」

「マサルが責任取ってあげんとね」

「俺何もしてないけど?」

 

 確かにユウリは小さい頃からカレー好きだったけど、ここまでじゃなかった気がする。一緒に旅を始めてから歯止めが利かなくなったというか……ああ、そうか。家ではユウリママがしっかり手綱を握ってたんだな。実家から解き放たれて好きなもんばっかり食べるようになったと。そういうことね。すいませんユウリママ。可能な限り栄養バランスの取れた食事をさせますので。

 

「アーマーガアは甘口と辛口どっちが好き? 甘口だよね? うんうん、私と同じだ~」

「が、ガア……?」

「ちゃんと辛口も作ってやれ」

 

 そして、森の中の開けた場所にキャンプを張って昼食にする。悔しいことに、ユウリのカレーは相変わらず絶品だった。悔しいことに。

 

「マサル、ちょっとニンフィアを借りたいんやけど……」

「俺のニンフィアは絶対嫁にやらんぞ!」

「誰もそんな話してなか!」

「え? マリィがお嫁さんになるって? だめだめー! そんなの許さないよ。マリィには私がいるんだから!」

「ユウリも話をややこしくせんで!」

 

 昼食後、マリィにニンフィアを貸してほしいとお願いをされたので理由を聞くと、ルミナスメイズの森の野生ポケモンだけでなく、トレーナーのフェアリーポケモンとも戦っておきたいとのことだ。確かに、トレーナーの指示があるのとないのとでは天と地の差があるからな。

 

「おーけー。そういうことなら喜んで力になる……ついでにマリィのポプラさん対策も一緒に考えるか」

「そ、そんな……ええよ。マサルやって自分のこと考えんといかんでしょ?」

「俺はジバコイルで行けるところまでゴリ押しするって決めてるからな。クチートはシャンデラのオーバーヒートで沈める。以上、終わり」

「力技過ぎん!?」

「今のこいつらならそれだけのことができる」

 

 最終進化で基礎能力が大幅に上がっている上にタイプ相性も有利だからな。はっきり言って、負ける要素があるとしたらそれは俺のトレーナーとしての実力不足くらいだろう。だけど、そんなもんは今に始まったことじゃない。俺は()()()()()()()で勝つってカブさんとのバトルで誓ったんだからな。

 

「……じゃあ、一緒に考えてもらっていい? 正直、悪タイプが中心やから困ってた。ものすごーく困ってた」

 

 マリィは少し申し訳なさそうに、でも嬉しそうに上目遣い気味でお願いしていた。こういうところを見ると妹って感じがするよな。

 

「うっし、まずはポプラさんの手持ちのおさらいだ。マタドガス、クチート、トゲキッス、マホイップ。その内、マタドガスは鋼か地面、クチートは炎か地面で攻めなければならない」

「……本来なら有効打になるはずの毒が通らんのよね」

「そう。だから、さっき渡した『どくづき』以外に『じだんだ』のわざマシンをオーロンゲとモルペコに、『アイアンヘッド』のわざレコードと『ほのおのパンチ』のわざマシンをズルズキンに、『ダストシュート』のわざレコードをレパルダスに使う」

「なんでそんなにわざマシンとかわざレコード持っとると!?」

「ワイルドエリアでリーグスタッフと物々交換しまくったんだ」

 

 確か、ビート少年が言ってたな。ネットで俺の存在が「わらしべでんT野郎」って噂されてたことを。

 

 ……ビート少年、今頃どうしてんのかな。

 

「で、だ。ポプラさんの手持ち四体なんだけど……トゲキッス以外の三体にはある共通点がある。その共通点こそが、突破の鍵になるんだけど、わかるかな?」

「マタドガス、クチート、マホイップ……ああ、なるほどわかった。この三体は───」

「はいはーい! 私もわかったよー! フェアリータイプのポケモンはみんな可愛い! 私みたいに可愛い!」

 

 マリィと二人でお勉強会をやっていると、突然ユウリが割り込んできた。私みたいに可愛いって……オーロンゲさんにも同じこと言えるんか? 指摘しようと思ったけど、話が脱線しそうだったので、ここはうまいことユウリの関心を逸らせるか。

 

「偉いぞ~、ユウリ。よくわかったな~」

「うへへ~♪」

 

 頭を撫でてやると途端に犬っころのような笑顔になった。

 

「よーし、そんな可愛いユウリちゃんはあっちでホップと一緒にポケモン達の面倒見ててくれるか? それとも、俺達と超真面目なお勉強会をやるか?」

「はい、先生! 私はホップ達と遊んできます!」

「よろしい」

「ホップ~! マサルがね~! 私のこと可愛いって~!」

「……そうだな。ユウリはいつも可愛いぞ」

「えへへ~♪」

 

 マリィやホップと一週間ぶりに会えてテンション上がってんのか知らんけど、あいつ幼児退行してないか? いや、でも大体いつもあんな感じだったな。うん。

 

「……ユウリの意見も聞いてみたかった気もするけど」

「いや、バトルに関しては参考にならねえよ。あいつは俺やマリィみたいに戦術や策を練るタイプじゃない。典型的な直感型だからな」

「それであんなに強い理由がわからん……」

「あいつの強さは理屈じゃなくて……()()()なんだ。だからまあ、チャンピオンにはなれても指導者にはなれないタイプだよ」

 

 こっちの策も戦術も何もかもを直感だけで真正面からぶっ壊す……ほんとに理不尽な強さだよ。ユウリも、ダンデくんも。

 

「ただ……そういう相手を策にはめることほど面白いもんはないとも思ってる」

 

 策士キャラってバトル漫画だと大体噛ませに終わるけどな! 主人公の並外れた直感力に粉砕されるけどな!

 

「マサル、わるーい顔しとーよ」

「ふー、やれやれ。どうやら俺は悪タイプが似合う男だったらしい」

「だったら……あたしと一緒に───スパイクタウンを盛り上げちゃう?」

 

 マリィが首をかしげて頬をわずかに緩ませながら尋ねてきた。かーっ! あざといあざとい! 見んねユウリ! 卑し可愛い女ばい! スパイクタウンには「初恋はマリィちゃんです!」って男の子がたくさんいそうだな。

 

 マリィの はつこいクラッシュ!

 いちげきひっさつ!

 

「つまり、俺へのプロポーズ?」

「なんでそうなると!? あんたがスパイクジムのトレーナーになってくれたら心強いなって思っただけやけん!!」

 

 マリィが顔を真っ赤にしながら全力で否定してきた。俺も冗談だったとはいえ、そこまで全力で拒否されたらちょっとショックだわ。

 

「ジムトレーナーは別として……スパイクタウンを盛り上げるのに協力できることがあったら───」

「今、何でもやるって言った?」

「ふっ、マリィのためなら何だってやるさ」

「9点」

「10点満点中?」

「100点!!」

 

 マリィは厳しいな。にしても、俺がスパイクジムのトレーナーになってマリィと一緒にスパイクタウンを盛り上げる、か。

 

 うん。()()()()()()、そういう未来もあったのかもしれないな。

 

 そして俺は()()()、ポケモン達と戯れているユウリに視線を移してしまっていた。

 

「とりあえず、『大改造!! 劇的ビフォーアフター~なんということでしょう匠の手によって生まれ変わったスパイクタウン編~』については追々話し合うとして……」

「そのセンスの欠片も感じんサブタイトルはなんなん?」

 

 マリィのツッコミは本当に手厳しい。うん。とにかく、大幅に脱線した話を元に戻そう。確か、ポプラさんの手持ちの共通点について話してたよな。

 

「ぎゅわ~」

「お? どうしたサナギラス。みんなと遊んでこないのか?」

「ぎゅわわ~」

 

 と、そこでサナギラスが俺達の周りをぴょんぴょん飛び跳ねながら何やら訴えかけてきた。その目には強い意思が宿っているように見える。

 

「……サナギラスも俺達と一緒に戦い方の勉強するか?」

「ぎゅわっ♪」

 

 どうやら当たりだったらしい。サナギラスがこうやって前向きになって俺の力になろうと頑張ってくれるのはすごく嬉しいけど、少し危うさも感じてしまう。ポケモン達を正しい方向へ導く……トレーナーとしての腕の見せ所だな。

 

「よし、じゃあ話を戻そうか。さっき言ってた、ポプラさんの三体のポケモン達の共通点……マリィくん、答えをどうぞ」

「トゲキッス以外の三体は、スピードが遅い」

「正解!」

 

 そのトゲキッスもおそらく、モルペコ、レパルダス、ドクロッグの三体なら先手が取れる。タイプ相性の関係で受けに回れないことを考えると、スピードで上を取れるのは非常に大きい。

 

 だから、俺の考えはこうだ。

 

 まず、マタドガス。こいつは地面もしくは鋼技が通るから地面技を覚えるモルペコかオーロンゲで対処する。どちらも生き残れればベストだが、耐久力を考えれば高確率でどちらかが落ちるだろう。後々を考えれば対トゲキッスのためにモルペコに生き残ってほしいところではある。

 

 次に、クチート。こいつには地面と炎が通る。マリィのパーティで一番耐久力があり炎技を覚えるズルズキンで相打ち覚悟で倒してもらうしかない。

 

 んで、最大の難関であるトゲキッス。こいつは本当に厄介だ。毒が通るが飛行タイプ持ちだからドクロッグの弱点を突ける。ただ、さっきも言ったようにスピードは上回っているから、毒技を使えるレパルダスとドクロッグ、あともしも生き残っていればモルペコの三体がかりで仕留めたい。

 

 対トゲキッスで重要なのは、なんとしてもドクロッグを生き残らせることだ。最後にマホイップがキョダイマックスしてくるだろうから、そこにドクロッグのダイマックスをぶつけたい。ただ、バトルの展開次第では対トゲキッスでダイマックスを切ることも視野に入れておく必要がある。

 

「何にせよ、相当に苦しい戦いだ。それに、一度場に出したポケモンは基本的に、どちらかが()()()()()()()()()()()交代できない」

 

 ゲームだとほいほい入れ替えることができて、相手の技をすかしたり、あえて受けさせたりということができるが、実際にはそんなことはできない。というか、ルールで禁止されている。極端な話、ボールからポケモンを出し入れするだけで技を回避できちゃうからな。

 

 そんなのを認めたらバトルにならねえよ。

 

「だからこそ、ポケモンバトルの基本中の基本である、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が重要になってくる」

「そうやね。元々タイプ相性は不利なんやから、そこで読み違えると……一方的にやられるだけ」

「うん。ただ、マホイップは最後に出してくるだろうから、残りの三体の順番……これまでのポプラさんのジムチャレンジでの傾向から考えると、先発はマタドガスの可能性が高い。だから、マリィの先発はモルペコにするべきだと思う」

「……モルペコなら、マタドガスとクチートには地面技で対応できるし、トゲキッスが出てきてもスピードで上回ってて電気技も通る」

「そういうこと」

 

 マリィが顎に手を当てて思案しているのを見つつ、ぴょこぴょこ動いているサナギラスを撫でてやると嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

「ありがとうマサル。すっごく参考になった。あんたってやっぱり、バトルはすごく理詰めなんやね」

「ユウリみたいに直感で状況を打破なんてできないからな。俺みたいなトレーナーは知恵を絞ってなんぼだよ」

 

 そうやって色々と思考を巡らせることがポケモンバトルの醍醐味でもあるしな。ただ、いくら思考や策をめぐらせたところで、その通りにいかないのもまたポケモンバトルだ。だからこそ、ポケモントレーナーには、あらゆる事態を想定できる思考力、どんな事態になっても冷静でいられる精神力と判断力が求められる。

 

 というようなことを、離れたところでシャワーズとニンフィアに抱き着いてご満悦な表情を浮かべているユウリを横目で見ながら、マリィに話した。

 

「マサルは……」

「うん?」

 

 するとマリィは口を開いて何かを言いかけるも、一度口を閉じる。何か俺に言いたいこと、というよりも聞きたいことがあるみたいだな。

 

 そして、マリィが再び口を開いて、こう尋ねた。

 

 

 

 

 

 

「マサルは───チャンピオンになるつもり、あるん?」

 

 

 

 

 

 

 その質問に、俺は自分の胸がチクリと痛むのを自覚した。

 

 鋭いなぁマリィは。それに、()()()

 

 聞きづらいことだろうに、俺に身を案じて、あえて嫌われてもおかしくないことを聞いてくれるんだから。

 

 そう思いながら俺は、再び()()()()()()()()マリィに向き直った。

 

「……正直に言う。俺は、今の自分が、チャンピオンになっている姿を想像できない」

 

 旅立つ前に、ダンデくんにだけ同じことを話していたことを思い出した。ジムチャレンジに参加して、旅に出て、色々経験をしてきたけれど、それでもまだ……俺は()()()()()()()自分を思い描くことができていない。

 

「それは、やっぱり……」

「あいつの存在が大きい。それは確かだ。けど、それだけが理由じゃない」

 

 俺は一度、心が折れてしまった人間だ。

 

 ジムチャレンジを通して、少しずつ……少しずつ昔の自分を思い出しつつあるけれど、まだまだ、足りない。

 

 こんなもんじゃ、足りない。

 

 結局のところ、今の俺は、ただ現実を受け入れることができているだけ。

 

 そんな俺が。

 

 実力も、そこに懸ける思いも何もかもが足りない俺がチャンピオンになれるのか?

 

 そんなことは、ありえない。

 

 そもそも……そもそもだ。そこに懸ける思いは、気持ちは、熱意は、確かに必要だ。

 

 だが、思い一つだけでどうにかなるほどこの世界が優しくないということを、俺はとうの昔に知っている。

 

「マサルとユウリがバトルをせんのは……」

「俺の心に問題があるからだな」

 

 そう。これまでの旅路で、俺はユウリと……最初にダンデくんからポケモンを貰った時を除けば、()()()()()()()()()()()()()()。一度たりとも、だ。

 

 ユウリのすごさは、俺が一番よくわかってる。

 

 ユウリの強さは、俺が一番よくわかってる。

 

 ジムチャレンジが始まってから、ユウリのことを、誰より近くで一番側で見続けてきたのは俺だから。

 

 ユウリが天才だと一番最初に気付いたのは俺だから。

 

 そして俺は、どうあがいても覆しようのない、絶対的な才能に打ちのめされ、絶望し、心が折れてしまった人間だ。

 

 そんな俺が。

 

 昔以上の闘志も、強い思いも持ち合わせていない俺が。

 

 何よりも、実力が足りていない今の俺が。

 

 ユウリとバトルしたらどうなるのか。

 

 少なくとも、心が折れる───ということは()()()()()だろう。

 

 だけど、たとえそうであったとしても。

 

「確固たる自分を築けないまま……あいつと戦うことなんて、できやしない」

 

 ユウリにもそれがわかっている。俺の心の内までは理解できなくとも、今の俺がユウリとバトルすることを望んでいないということを本能的に察しているからこそ。

 

 ユウリは旅の中で、一度も俺に「バトルをしよう」と言ってきたことはない。

 

 この旅で、俺はユウリを甘やかしてばかりだと思っているかもしれないけど。

 

 結局のところ、俺はユウリの()()()()()()に甘えてしまっているんだ。

 

 だからこそ。

 

 だからこそ、俺を待ってくれているユウリのために。

 

 何の憂いもなく、本気で、全身全霊であいつと向き合えるようになるために。

 

 かつての俺を思い出す───いいや。

 

 かつて以上の俺を、確固たる自分自身を築かなければならない。

 

 それが、俺を待ってくれているユウリへの、礼儀。

 

「まあ、要は……今の俺が、ユウリと本気で戦う覚悟のないヘタレだってことだ」

 

 自嘲気味にそう言った。元も子もない言い方になるけど、それが事実なんだ。

 

 そして、俺のそんな心情を、ホップもなんとなく察している。あいつは、そういう男だからな。

 

 ただ、勘違いしないでほしいのは、俺は今までのバトルで、ホップやマリィ、ジムリーダー達とのバトルで……手を抜いたことなんて、一度だってありはしない。常に本気で、その時に俺が出せる全力でぶつかっていった。

 

 ただ、ユウリだけが特別……俺にとって特別、なんだよ。

 

「マサルは、ヘタレなんかやない。弱い人間なんかやないよ」

 

 マリィは優しい口調でそう言った。

 

「本当に弱い人間は、自分の弱さを認めたり、向き合おうとなんてせん。見て見ぬふりをして、目を逸らして、蓋をしちゃう。でも、マサルはそうやなかろ? だからね、誰がなんて言っても、マサルは強い人間やってこと、あたしはわかってるから」

 

 そういうところだよ、マリィ。

 

 そうやって、他者の心を思いやることができて、ユウリと何度戦っても決して心が折れることなく、真っ直ぐに前に進むことができる強さを持つマリィやホップのことを。

 

 俺は───心の底から尊敬している。

 

「がんばり、男の子」

 

 俺の頭を優しく撫でながらそう言ってくれたマリィを見て、心の奥が少しだけ熱くなるのだった。




 ルミナスメイズの森編! と見せかけてマサルの心情吐露回でしたね。何気に本作でもかなーり重要なお話だったりします。

 強くなりたいという思いが先走って焦り気味なサナギラス、マサルがこれまでユウリと本気のバトルをしてこなかった理由、マサルがユウリに対して意外と重たい感情を向けていた、ユウリがマサルの内心を本能的に察していた、マリィちゃんカワイイヤッター! などなど、色々盛りだくさんでした。

 マサルが色々と心情を吐露していますが、だからといってウジウジ悩んで足踏みをするということはないです。個人的に、そういうウジウジ系主人公は好きじゃないので。マサルは自分の弱さとしっかり向き合いながら、必死にあがいてジムチャレンジを通して確固たる自分を築いていく……そんな泥臭い主人公です。

 で、マサルのそういう内面を一番理解しているはユウリでもマリィでもなく、ホップです! さすがだぞ!

 やはりホップはメインヒロイン! 今回のお話ではホップの影が薄かったですが、後々、マサルにとって相当重要な役回りをしてもらう予定です。めっちゃ先ですけどね。

 しかし、あれですね。マリィのひろいんぢからが留まることを知らないですね。

 ほ、ほら。ユウリはラスボス系ヒロインだから。マサルから一番重たい感情を向けられてるから。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

 次回「でんTマンVS妖怪ピンク婆」になる予定。乞うご期待!

 マリィちゃんと夫婦になって一緒にスパイクタウンを盛り上げたいだけの人生だったと思う人はここをぽちぽちしてください!

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