【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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鋼使いはひかれ合う~少年はてょわわわぁ~ん適性が高過ぎた~

 光るキノコを目印に森を進み、樹齢数千年はあろうかと思われる大樹の根をくぐった先にアラベスクタウンはあった。

 

 ルミナスメイズの森同様、至る所に光るキノコが生えており、フェアリータイプのポケモンがうろうろしている。いよいよディズニー感が増してきたな。不思議の国の……ユウリは似合わねえからマリィだな。不思議の国のマリィちゃん。

 

「わぁ~、すごい! 綺麗なところだね。あ、見て見て! ポケモンセンターの上にテブリムがいるよ!」

「テブリムか。ビートを思い出すぞ」

「ビートくん、今頃どうしてるかなぁ……」

 

 ほんとにどうしてんだろうなあいつ。ナックルシティに戻ったらしいけど、あいつの性格からしてじっとしてなさそうなんだよな。少なくとも、心が折れて病んでたりはしてないだろ。メンタルの図太さだけは超一級だからな。

 

「マサルも……やっぱりビートを心配しとーと?」

「いや、まだ夕方なのに真っ暗でジメジメしてるから、この町の人達は洗濯物が乾きにくくて苦労してそうだなって」

「あたしが全然予想しとらんこと心配しとった!?」

 

 でも実際、不便だと思うんだよ。電車もないし、陸の孤島って感じで。いくらダイマックスできるパワースポットだとはいえ、もうちょっとどうにかならなかったのか? いや、パワースポットがあるから……か。もしもここにアラベスクタウンがなかったら、野生のポケモン達が好き勝手ダイマックスして大惨事になりそうだし。

 

 ワイルドエリアの巣穴はリーグスタッフやジムリーダーが巡回してるらしいからな。ここに町やスタジアムを作ったのも、パワースポットをしっかり管理するためっていう理由があるんだろう。

 

「マサル、どうする? もうスタジアムに行く?」

「いや、先にポーラちゃんの手紙を届けよう。この時間だし、スタジアムに行っても挑めるのは明日になるだろうからな」

 

 ユウリが訪ねてきたので答えてやると、ユウリは引きつった表情を浮かべていた。お? さすがにユウリも嫌な予感がしてんのか? 心配すんな、俺もだよ。

 

「ポーラちゃんって誰だ?」

「ナックルシティで出会った女の子だ。アラベスクタウンにいるフランクくんっていう男の子に手紙を渡してくれって頼まれたんだよ」

「さすがだぞ! ジムチャレンジの最中なのにしっかり人助けをしてるんだな!」

 

 人助け……人助けなぁ……。シャンデラがやたらと反応してたり、オニオンくんがなぜか手紙の存在を知っていたりしたからホラーな予感しかしねえんだけど。

 

 まあいいや。ここまで来たらホップとマリィにも最後まで付き合ってもらうからな。

 

 で、フランクくんとやらを探すために近所の人達に聞き込みをしていると……。

 

「フランク? 俺の()()()()()だよ」

 

 たまたまユウリが話しかけた少年がそんなことを言い放ったのだ。

 

「お、おじいちゃんって……ひ、人違いじゃないかなぁ~?」

「それはないよ。アラベスクタウンでフランクって名前の人はじいちゃんしかいないんだ。小さい町だからわかるもん」

「あっ、ふーん? じゃ、じゃああとはマサルに任せるね! 私はマリィと一緒に先にスタジアムへ───」

「よし、行くぞ」

「いーやーっ! 放してっ! 放してよ~っ! ま、マリィ!! 助けて~っ!」

「ちょ、マサルっ!? あたしの腕まで掴まんで! べ、別にマリィは怖くないけん!」

「……ここで逃げたら手紙に呪い殺されるかもしれねえぞ?」

「呪いって言ったぁ!? 呪いって言ったなぁ!? あ゙ーっ! あ゙ーっ! 考えないようにしてたのにぃ!!」

「マリィは悪タイプの使い手だからゴーストに効果抜群だな!」

「ガチなホラーにはタイプ相性とか関係ないけん!!」

 

 ぎゃーぎゃーと騒ぐ女子二人の手を引きながら少年についていくことにする。ホップは俺達の会話内容から大体の事情を察したっぽかったけど、全然平気そうだった。さすがだぞ!

 

 で、少年のおじいちゃんであるフランクさんとお話しして……。

 

「いやぁ、懐かしい。()()()よく一緒に遊んだよ! でも彼女……病気だったらしくてね。それをわしに隠していたんだ。それで、喧嘩になって……わしも引っ越すことになってそれ以来会っていないが、ポーラちゃんは元気にしてたかね?」

「ゲンキニシテマシタヨー、ネーマサル?」

 

 そうだね。元気そうだったね。シャンデラがものすごく気にかけるくらい、事情を話していないはずのオニオンくんがなぜか名前を知っているくらい元気でしたね。

 

 さすがにそんなことは言えず、「重い病気を抱えているようには見えませんでしたね~」と誤魔化しておくことにする。世の中には知らない方が幸せなこともあるんだ。

 

 ほら、「人は思い出を忘れることで生きていける。だが決して忘れてはならないこともある」って碇ゲンドウも言ってたし……この場合はちょっと違うか? まあとにかく、懐かしい思い出に浸って嬉しそうにしているフランクさんに話す意味はないよな。

 

「そうだ。何かお礼を───」

「いえいえ、そのお気持ちだけで結構ですよ」

「そうは言っても……」

「だったら、時々でいいので……彼女のこと、思い出してあげてください」

 

 多分、それで彼女は浮かばれる……成仏できると思うので。あれ? でもよく考えたらポーラちゃんって俺達に干渉できたんだからその気になれば自分でフランクさんに手紙を届けることができたんじゃないか?

 

 いや待てよ。ポーラちゃんがいた場所がフランクさんとよく遊んでいた場所だとしたら? ポーラちゃんがその思い出の場所に囚われている地縛霊だとしたら?

 

 うん、ナックルシティに戻ったらもう一度あの場所に行ってみるか。

 

 そして俺達四人はフランクさんの家をクールに去っていく。多分、ユウリとマリィのクールは悪寒的な意味だろうけどな。

 

「マリィ、私なんだかすっごく寒い……」

「……今日は一緒に寝よか?」

 

 フランクさんの家を出るなり二人は身体を震わせながら抱き合っている。幽霊よりももっと怖い野生のポケモン達と平気でバトルはできるのにな。まあ、怖さのジャンルが違うんだろう。

 

「マサルのせいで寒くなっちゃったじゃん! 責任もってあっためて!」

「んなこと言われてもなぁ。俺達のやったことって、幼い頃に仲の良かった友達への数十年ぶりの手紙を届けてあげるっていう、むしろ心温まるエピソードなわけで」

「状況だけ抜粋しても実態は全然別物やろ!!」

 

 女子二人にめっちゃ怒られたので、責任もって二人が温まるようなイベントを起こしてあげるかと考えていた時のことだった。

 

「フガー!! フガガガー!! 俺はポケモンだー!! お前、俺と勝負しろー!!」

 

 道端で変な雄叫びを上げているおっさんに絡まれてしまった。

 

「マサルがまた変なのに目をつけられた!!」

「あんたはどういう星の下に生まれたと!?」

「マサルは昔からこんな感じだぞ」

「今回は俺は悪くねえだろ!!」

 

 そのおっさんは「ポケモンになりたかった」などと意味の分からない供述をしており「俺の燃え上がる気持ちを表現しているような炎を感じるような服を見せてくれ!」などと(のたま)い、挙句の果てに、俺が善意でカブさんのユニフォームを見せるも「それは解釈違いなんだよなぁ……」みたいなことをほざきやがったので、それが俺の逆鱗に触れた結果、そのおっさんは最終的にカブさん信者になるのだった。

 

「ほら、ユウリ。お望み通り心が熱くなったな!」

「熱い要素炎だけじゃん! 変なおじさんに絡まれて洗脳しただけじゃん!」

「マサルといるとイベントに事欠かないぞ! 毎日刺激たっぷりだな!」

「あんたらが幼馴染やれてる理由がよーくわかったよ」

 

 そんな風にぎゃーぎゃーと騒ぎながらアラベスクスタジアムへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

「おいでなすったね、脳内ピンクのチャレンジャー。この間言ったように、このジムミッションは後継者探しのオーディションも兼ねているのさ」

「お、オーディション……どうしよう。私、本当のアイドルになっちゃうかも」

「ジムリーダーのオーディションだって言ってるじゃないか」

 

 アラベスクスタジアムで受付をしてホテルで一泊した翌日、俺達四人は再びスタジアムを訪れてジム攻略に臨む。

 

 一番手はユウリ。その間、俺とホップとマリィの三人は控え室のモニターでユウリを見守っていた。

 

 ジムミッションのステージは……いや、本当に文字通りステージだな。ステージの上でチャレンジャーとジムトレーナーが向かい合い、ポプラさんはステージ下でチャレンジャーを品定めしている。ミッションの時からジムリーダーが出張ってくるのはここが初めてだな。

 

「内容は簡単さ。勝負をしつつ、みんなが出すクイズに答えるだけ。正解すればポケモンの能力が上がり、不正解ならば下がる。なーに、フェアリーポケモンの不思議な力を使えば造作もないことさ」

「す、すごい……」

 

 チートすぎるだろ。ポケモンのデバフ技いらねーじゃん。

 

「う~……でも負けませんよ! 私は今日! ここで! アイドルとしての私を完成させる!」

「……ま、がんばりな」

 

 何を言うとるんだあいつは。

 

「ユウリは可愛いけんね。本当にアイドルになれるかも」

「実際、ユウリはハロンタウンのお年寄りから大人気なんだぞ!」

「……それ、おじいちゃんおばあちゃん達から孫扱いされとるだけやない?」

 

 控え室で待機しているのは俺達三人だけだった。そういや、他のチャレンジャーと一緒になったことってないよな。俺達より先に進んでいるチャレンジャーもいるみたいだけど、俺達がワイルドエリアやら道中に時間をかけているから会ったこともない。

 

 というかよく考えたら、ホップやマリィと同じタイミングでジムに挑戦するのも初めてだな。

 

 さてさて、どんなクイズが出題されるのやら。過去の映像やこれまでのチャレンジャーへのクイズの内容を調べてみても、傾向らしい傾向はない。強いて言うなら「意地悪なクイズ」が多いってことかな。

 

 ちなみにユウリへのクイズはこんな感じだった。

 

「第一問、フェアリータイプの弱点は?」

「毒タイプと鋼タイプ!」

「正解だよ。ポケモン達の能力アップ」

「わーい!」

「第二問、あんたがさっき戦ったトレーナーの名前は?」

「え? え? えーっと……よ、ヨドバシさん!」

「家電量販店じゃないんだよ。不正解、ポケモン達の能力ダウン!」

「ぎゃーっ!?」

「第三問、あたしの今日の朝ごはんのメニューは───」

「カレー!!!!」

「それはあんたの好みだろう? 能力ダウン!」

「ぎゃーっ!!?? なんでなんで!? 朝カレーはガラルの伝統文化なのに!?」

「あたしはそれなりに長生きしてるけどそんな伝統文化聞いたことないよ」

 

 あいつ、正解する気あるのかよ。タイプ相性以外全然だめじゃねえか。ってか、三問目とかわかるわけねえだろ。ユウリの答えも論外だけど。

 

 しかも、本当にポケモン達の能力が下がってるな。ルカリオやメタングがかなり戦い辛そうにしてるし。まじですげえなあの婆さん。あの能力があればダンデくんにも勝てるんじゃねえの?

 

 そしてユウリはポケモン達の能力が下げられたものの、タイプ相性と力技で三人のジムトレーナーを退けたのだった。よっしゃ、次は俺の番だな。

 

「がんばれよマサル。一筋縄じゃいかないみたいだぞ」

「おう。……こんな婆さんにじいちゃんは相性が最悪な格闘タイプでやり合ってたのか。そりゃ勝てねえわな」

「なんというか……相当癖の強いジムやね。これまではあたし達のトレーナーとしての資質を試すようなミッションが多かったのに」

「そりゃあポプラさんがジムミッションを私物化してオーディションの場にしたからな」

 

 ホップとマリィの微妙な反応を横目で見つつ、俺はジムミッションステージへと向かっていると、途中でユウリとすれ違った。

 

「お前、カレーはねえだろカレーは」

「なんで? 私は毎日三食カレーだと嬉しいよ。今日の朝だってカツカレー食べてきたのに」

 

 相手は八十歳超えてる婆さんだぞ。朝からカレーなんか食わしたら胃もたれで大変だろうが。

 

「マサルのおじいちゃんだって朝からカレー食べるときあるじゃん!」

「俺のじいちゃんは普通の年寄りじゃないからノーカン」

 

 何事にも例外があるんだよ。

 

 労いの意味も込めてユウリの頭をポンポンと撫でてやり、俺はステージへと足を踏み入れた。

 

 よっしゃ、どんなクイズでもかかってきやがれ! 全問正解で突破してやるよ!

 

 今回は真っ当にクリアしてやるからな。ダンペイさんとの約束だもんな!

 

 

 

 

 

 

「次のチャレンジャーはあんたかい。あんたにはクイズを出す意味がないね。さあ、さっさとあたしの自慢のトレーナー達と戦いな」

「ジムミッションの意味!!」

「……あんたのピンク力はゼロなんだよ。ゼロには何を乗算してもゼロだろう? だから、オーディションをやる必要すらないのさ。ああ、安心しな。クイズがない分、あんたの相手をするトレーナー達のポケモンは他のチャレンジャーが相手をするときよりも強い個体ばかりだからね」

「いらん特別扱い!! 真っ当にクリアしようと思ったらこれだよ!! 俺が言うのもなんだけど、やりたい放題だな!!」

「あたしは今年で引退だからね。怖いものなんて何もない……そう、今のあたしは無敵婆だよ。坊や、よく覚えておきな。開き直った年寄りほど厄介なものはないってね」

「ダンペイさん!! こんな横暴が許されていいんですか!?」

「……ジムミッションの内容は、ジムリーダーに一任されている」

 

 ダンペイさんは審判っていう立場で公平にジャッジしなければならないけど、どうやら事前に俺に対するジムミッション内容についてポプラさんがリーグスタッフやダンペイさんに根回ししていたらしい。抜け目ねえなこのばーさん!!

 

「わかったよ! わかりましたよ! 誰が相手だろうと、俺のジバコイルで全員蹴散らしてやらぁ!!」

 

 そして、ジバコイルによる「怒りのラスターカノン祭」によって、俺はジムミッションをなんとかクリアするんだけど、ジムトレーナーさん達のポケモンは本当に強かった。能力ダウンさせられてたら……危なかったかもしれない。

 

 ちなみに俺の後に挑戦したホップは三問正解、マリィは二問正解という結果で無事にミッションをクリアするのだった。すげーなホップ。

 

 

 

 

 

 

『本日、アラベスクスタジアムのジムリーダーポプラに挑むのは四人のチャレンジャー! これまでのバトルで圧倒的な強さを発揮し、早くも世代最強と評されるユウリ選手! 名勝負と迷勝負を繰り広げ、壊滅的なファッションセンスながらもお子様達から絶大な人気を誇る生きた伝説マサル選手! 歴代最強と名高いチャンピオンダンデの弟ホップ選手! スパイクタウン復興を掲げ、兄であるネズをも上回る才能の持ち主と言わしめたマリィ選手! いずれも、今年のジムチャレンジで大注目のチャレンジャー達です! また、本日の解説にはかつて十八年間チャンピオンの座に君臨し続けたレジェンドトレーナーであるマスタード氏にお越しいただいております。マスタードさん、よろしくお願いします!』

『はいはい、ワシちゃんがマスタードだよ~ん。みんな、よろしくね~ん!』

『マスタードさんはジムリーダーのポプラ氏とも長い付き合いだとうかがっております』

『そうだね~。なんだかんだ五十年の付き合いだねん。ワシちゃんは格闘タイプの子達がメインだから、タイプ相性で不利だったけどそれを差し引いても厄介なばば……トレーナーだったよん。七十年もジムリーダーをやってるとか最早人間の所業じゃないね~』

 

 俺達四人がジムミッションを終え、ポプラさんに最初に挑むユウリを見送った後に控え室のモニターを眺めていると、超絶長い眉毛が特徴的なマスタードさんの姿が映った。

 

 まじかよ。今日の解説はあの人なのか……子供の頃に何度か話したことがあって、その時はすげー身体能力の眉毛が長いじーさんって印象しかなくて、後で調べたらものすごいレジェンドだったってわかったんだ。ポプラさんの七十年ジムリーダーやってるってのも大概だけど、十八年間連続でチャンピオンやってた方が人外だわ。ガラルの年寄りは化け物ばっかだな。

 

「おお、マスタードさんか。すごく懐かしいぞ! マリィ、この人が兄貴の師匠なんだ。兄貴のトレーナーとしての才能をいち早く見出してくれたんだぞ」

「……レジェンドトレーナーマスタード。噂でしか聞いたことなかったけど、本当に実在してたんやね」

「ちなみに、俺のじいちゃんの同期でもある」

「ハロンタウンの人材はどーなっとーと!?」

 

 現チャンピオンのダンデくんもハロンの民だし、俺が一番知りてえわ。

 

 三人でぐだぐたとくっちゃべりながらモニターを眺めていると、ユウリとポプラさんがスタジアム内に現れる。ユウリは愛想の良い笑顔で観客達に手を振る余裕があった。ここだけ切り取ったらアイドルに見えなくもない。中身はともかく、ビジュアルは良いからな。ビジュアルは。

 

「クイズに答えたあんたのリアクションを見せてもらったよ。最後の試験はあたしさ。相棒のポケモンにどんな振る舞いをさせるのか、ちょっと見せておくれよ」

「ジムミッションのクイズでは不覚を取りましたけど……ここからはずばーんと華麗に全問正解して私のピンク力を見せてあげますからね!」

「その発言ですでにピンクが失われていってるねぇ」

「そ、そんなことないもん! あ、そうだポプラさん。ポプラさんに勝ったらウイニングライブとかやった方がいいですか?」

「あんたやっぱりオーディションを勘違いしているだろう?」

 

 なんか、過去一緊張感のないジムリーダー戦になりそうだな。カブさんやサイトウちゃんとのギャップが酷すぎる。というか、このばーさんが好き放題やりすぎなんだよ。

 

「さて、お喋りはこの辺にしてそろそろ始めようかねえ。さあ、出てきなマタドガス」

「行っておいで! メタング!」

 

 締まりのない空気から二人のバトルが始まった。最初はマタドガスとメタングか。マタドガスにはエスパー技が通るし、メタングは毒を無効化できる。うん、一体目はユウリの完全な読み勝ち。

 

 ───だったんだけど。まあ、なんというか、あれだ。

 

 この後、散々な展開になったんだ。

 

「あたしの好きな色は?」

「ピンク!!」

「人には求めるがあたしはそうじゃないよ」

「散々ピンクピンク言っておいてそんなのあり!?」

「はい、能力ダウン」

「ぎゃーっ!?」

 

 一問目、不正解。いやこれは理不尽すぎるだろ。誰でも間違うわこんなん。

 

「あたしの二つ名、知ってるかい?」

「妖怪!!」

「面白い冗談だ……って、言いたいところだけどその澄んだ瞳。あんた……本気で言ってるね」

「面白いってことは……正解?」

「不正解だよ。能力ダウン」

「うぎゃぎゃーっ!?」

 

 二問目、不正解。ユウリのヤツ、すげー度胸してんな。真正面から「妖怪」とか言うか普通?

 

「さてと、最後の問題だよ。あたしの年齢は?」

「はっ!? これは私知ってるよ! 300歳!!」

「……全ポケモンの全能力六段階ダウン」

「あぎゃぎゃぎゃぎゃーっ!? なんでなんでー!? マサルのおじいちゃんがポプラさんのことを『あれは300年生きた妖怪が人の姿をしておるんじゃ』って言ってたのにぃー!!」

「そうかい。じゃああんたの代わりに格闘爺の孫の全能力ダウン!!」

 

 ふざけんなクソババア!! なんでバトルしてない俺のポケモンの能力が……ってちょっと待て。今あのばーさん、何て言った?

 

 俺のポケモンじゃなくて()()()()()ダウンって言わなかったか?

 

 まじでふざけんなよ!! トレーナーにまでデバフをかけられるとかフェアリータイプの不思議な力で済まされる現象じゃねえだろ!!

 

「眠気覚ましのモーニングティーがようやく効いてきたみたいだね。さあ、腹をくくってキョダイマックスといこうか、マホイップ」

「ぐぬぬっ……フェアリータイプに有利なはずなのにメタングがここまで追い詰められるなんて……!! くっ、ここはルカリオに交代するしか───はっ!? メタングの身体が突然輝き始めた!! こ、この土壇場で……強敵を前にして、まさか……!!」

 

 いつの間にかバトルが佳境に入り、ポプラさんが最後の一体であるマホイップをキョダイマックスさせたところで、追い詰められていたメタングがメタグロスに進化するという少年漫画的な熱い展開になってたんだけど、理不尽に能力ダウンさせられることが決定している俺の心はスタジアムの盛り上がりとは裏腹にスンッとなっていた。

 

「いっけー、メタグロス!! ダイスチル!!」

 

 最終的にダイマックスしたメタグロスがマホイップを撃破し、ユウリが見事な勝利を収めるも、一緒に観戦していたホップとマリィは俺に対して気の毒そうな視線を向けている。

 

『えー……マスタードさん。何か一言お願いします』

『次にバトルするマサルちんに同情するね。いやほんとに』

 

 マスタードさんのマジトーンが俺の心をさらに抉るのだった。

 

 

 

 

 

 

「待ちわびましたよ、この時を。我が一族の宿敵……五十年の長きに渡る因縁、ここで断ち切ります!!」

「下手なお芝居はおよし。あんたはそういう一族の因縁なんかに囚われるような人間じゃないよ」

 

 ユウリのバトルが終わり、露骨にテンションが下がってしまった俺を三人が必死で励ましてくれた後に重い足取りでスタジアムの中心へとやって来る。そして、ポプラさんと相対するなり因縁の対決を演出してやろうと思っていたのに、このばーさんが初手でぶっ壊しやがった。

 

 ちなみに、三人がどんな感じで俺を励ましてくれたかというと……。

 

「大丈夫だ。俺は誰よりもマサルの心の強さを信じているぞ!」

「あたしがいっぱい応援してあげる。マリィのエールは効き目バッチリやけんね!」

「マサル! 気合と根性だよ! がーっていってどぎゃーんってやるの!」

 

 約一名おかしなことを言っていたな。語彙力が五歳児並みだ。ホップはいつも通り。マリィは優しいし可愛いね。好き。エール団の気持ちがよくわかる。

 

「あんたは周りが思っているよりも遥かにリアリストだ。そうやって因縁の対決を演出することでスタジアムを盛り上げて観衆を味方につけようって魂胆だろう?」

「……バレましたか」

 

 やりにくいばーさんだ。これが「亀の甲より年の劫」ってヤツだな! 口に出すと容赦なく全能力六段階ダウンとかやってくるだろうから言わないけど。

 

 あと、現実的に考えてタイプ相性が最悪な格闘ポケモンで真っ向勝負を挑んだらそら負けるよじいちゃん。

 

「まあ、全く意識してないわけじゃないですよ。じいちゃんと父さんが一度も勝てなかった相手ですからね。ただ、バトルという場においては()()()()()そういう感情に囚われるわけにはいかないと思っているだけです」

「結局、戦うのは自分達だからね。強くなるための理由を()()()()()()()に求めると、それがかえって枷となることもある。あんたはそれを、()()()()()人間だ」

 

 ほんとにすげーなこのばーさん。まともに話すのはこれが二度目なのに、的確に俺の内面を見抜いてくる。前にダンデくんに対するインタビューで「勝ちたいのか負けたいのかわからない顔をする」って言ってたみたいに、ポプラさんは相手の人間性を分析する能力にたけているんだ。

 

 だからこそ、七十年もの間ジムリーダーの座を守り続けることができたんだろう。

 

「誰かのために強くなる。誰かを超えるために強くなる。それら全てが間違っているとは言わないよ。実際、それらがトレーナーにとって大きなモチベーションになっているのもまた事実さね」

「だけど、間違っちゃいけないのは……俺達が一番に向き合わなければならない相手は、自分と自分のポケモン達だということ」

「その通り。どれだけ大層な夢や目標を掲げようとも、ポケモントレーナーの原点はそこさ。それを決して、忘れてはいけないよ。まあ、あんたの場合は()()()()()()()()のだろうけどね」

 

 まったくもって、その通り。何も否定できねえな。

 

「あんたが自分と向き合って何を取り戻そうとしているのか、あるいは手に入れようとしているのか。あたしには想像しかできないが……あがきな若人。泥水を啜ってでも、地べたを這いつくばってでも、必死にあがいてあがいてあがいた末に掴んだ物は───あんたの一生の財産になる」

 

 その言葉を聞いて、俺は自分がホップに対して似たようなことを言ったことを思い出していた。ビート少年に敗れ、迷走しかけていたホップに告げた言葉。

 

 あの時の言葉は、ホップに対してだけじゃなく自分自身にも言い聞かせていたんだろう。それを、ポプラさんが気付かせてくれた。

 

 へっ、なんだよ。人を食ったような妖怪ばーさんかと思いきや、こうやって若者を導くようなことも言えるんだな。

 

 感謝しますよ、ポプラさん。

 

 おかげで良い精神状態でバトルに入れそう───

 

「というわけで、あがきな若人! 宣言通り、全能力六段階ダウン!!」

 

 ふざけんなクソババア!! さっきまでの感動を返せ!!

 

 そう思って文句の一つでも言ってやろうと口を開こうとしたところで、気付く。

 

 身体が……重い……!?

 

 立っていられず、俺は思わずその場に膝をついてしまった。

 

 なんだ、この……妙な息切れに、膝や肩、腰が痛む。くそっ……視界もぼやけてきやがった。一体何を……何をしたんだあのババア!!

 

「身体が重いだろう? その上、まるで全力疾走したかのような息切れ。膝や関節、身体の節々が痛み、えづき、近くの物が見え辛くなる……あんた自身の能力を低下させたことによって、今のあんたの身体機能はもはや八十歳の爺と同等!」

「とんでもねえことしてくれやがっ……えほっ! ごほっ! おえっ!」

「叫ぶのは良くないよ。何もないのに嘔吐しそうになるからね」

 

 ふざけんなよまじで!! こんなの……人間に許された力を越えてんだろうが!! フェアリータイプの不思議な力って言っておけばなんでもかんでも通ると思うなよ!!

 

「さあ、その状態のあんたが一体どこまであがけるか見せてもらおうかね」

 

 ああっ、くそっ……ババアがボールを構えてやがる。バトルが、始まる……。ヤバいヤバいヤバい!! まじでヤバい!! こんな状態で、まともにバトルなんてできるのか……!? いつものように、思考を巡らせて冷静に指示を出せるのか……!?

 

 視界がぼやける……頭が痛い膝が痛い腰が痛い肩が痛い……呼吸が荒い……。

 

 だめだ……思考が、まとまらない。

 

 ここまで……なのか? こんなところで、変なババアのわけのわからん力で俺のジムチャレンジは終わるのか?

 

 く、そ……意識が……遠く───

 

 瞼を閉じ、その場に倒れ伏してしまいそうになってしまった時だった。

 

(マサルくん)

 

 声が、聞こえた。

 

(立つんだ、マサルくん)

 

 俺の名前を、呼ぶ声が。

 

(諦める理由なんて、ないじゃないか。だって君はもう、知っているだろう?)

 

 ああ、そうだ。知っている。

 

 俺は、知っている。

 

 この声の主を、あなたのことを……知っている!

 

 

 

 

 

 

(鋼タイプが───()()()()()()()()()んだってことを)

 

 

 

 

 

 

「ジバ、コイル!!」

 

 ()の言葉に、俺の言葉に呼応するように、ダイマックスバンドが輝いた。

 

 

 

 

 

 

 ガラル地方。どこかの洞窟にて。

 

「───そうか、ようやく目覚めたんだね。歓迎するよ、マサルくん」

 

 

 

 

 ジョウト地方。アサギの灯台にて。

 

「この気配───うん、大丈夫だよ。アカリちゃん、ハガネール。世界のどこかで、新しい鋼使い(ハガネラー)が生まれたみたい」

 

 

 

 

 シンオウ地方。ミオジムにて。

 

「ほう! なるほどなるほど! 喜べトリデプス、新たなる同胞の誕生だ!」

 

 

 

 

 カロス地方。ポケモンリーグにて。

 

「この方角……ガラル地方か。ふむ、実に良き風だろうギルガルド。まるで我らの新たな同士を祝福しているようではないか!」

 

 

 

 

 パルデア地方。チャンプルタウンの食堂にて。

 

「はうっ!?」

「ん? どないしたんやポピー?」

「こ、これは……!! チリちゃんチリちゃん!! 世界のどこかで新しい鋼使い(ハガネラー)のお兄ちゃんが誕生したのです!! お友達になれそうですよ~」

「はが……なんて?」

「素晴らしい!! 未知なる超感覚の覚醒に加えて新たなお友達ができるなんて……!! 小生、いたく感動じまじ……うおぉぉぉい!! おいおいおい!!」

「うるさっ!? そんな泣くほどのことやあらへんやろ!!」

「ハッサクさん。あと三人前追加してもいいですか?」

 

 

 

 

 ガラル地方。どこかの民家にて。

 

「むんっ!? この気配……ダーッハッハッハ!! そうかそうか!! そういうことか!! この坊主、もしやと思っていたが……まさか鋼使い(ハガネラー)の素質を秘めていたとはな!!」

「親父、うっさい! 今でんTマンが追い詰められててヤバいところなの!!」

「ハガネラー? とかまじ意味わからんし」

「おいおいおいおい!! そんな冷たいこと言うなよシャクちゃんボタちゃん!! せっかくパパが腕によりをかけて探検服とイーブイリュックを作ってるんだからよ~!!」

 

 

 

 

 

 

「ふん。いきなりダイマックスかい。確かに、思考も動きもままならない今のあんたにできる最善手だね。だけど、それだけであたしを越えられると思ったら大間違いだよ。ダイマックスが切れた時が、あんたが敗北する時さ」

「いいや……ポプラさん。あなたは、間違っている」

 

 ダイゴさんの声が聞こえたからなのか、不思議と身体の重みや痛み、眩暈が軽くなっていた。ああ、そうか。ダイゴさん達が……鋼使い(ハガネラー)達が、俺を守ってくれているのか。

 

 それに気付き、俺はゆっくりと立ち上がる。

 

「今のは、ただのダイマックスじゃない」

 

 そう、これは。

 

 今この瞬間だけに許された。

 

 鋼使い(ハガネラー)として覚醒し、猛威を振るうフェアリータイプを打ち倒す時にのみ許される特別なダイマックス。

 

 その名も───

 

「ダイゴマックスだ!!」

 

 鋼使い(ハガネラー)の第一人者であり、ホウエン地方元チャンピオンの名を冠するダイマックス。

 

 これが俺の切り札だ!!

 

『だ、ダイゴマックス? え、えー……キョダイマックスとは異なる新種のダイマックス形態でしょうか?』

『いや、ただのダイマックスだよん』

『ええ!? じゃあなぜマサル選手はこんなことを……も、もしやこれもバトルを有利に進めるための作戦ということでしょうか?』

『作戦でも何でもないね。ただ……うん、なるほどねー。マサルちんは()()()()の人間だったかー』

『そっち側、とは?』

『時々ね、こういうトレーナーがいるのよ。ポケモンの催眠術や洗脳系の技とすーっごく()()()()()……相性の良過ぎるトレーナーがね』

『しかし、マサル選手自身が技を受けた様子は……あ、もしかして……』

『そーゆーこと。マサルちんはあのバ……ポプラちんからフェアリータイプの不思議な力を浴びせられて身体機能が低下した。そして、さっきも言ったようにマサルちんはそういう特殊な力と相性が良過ぎるトレーナーだよ』

『つまり、マサル選手の体質とフェアリータイプの不思議な力という二つの要素がおかしな化学反応を起こしてしまったということですね』

『そうだね~。ものすご~く簡単に言うなら、あれらは全部マサルちんの奇行だよん。多分、バトルが終わったら記憶がすっぽり抜けてると思うよ。いや~、今のマサルちんを見てると()のことを思い出しちゃうね~』

 

 実況やマスタードさんが何か言っているけど、そんなものは関係ない。俺は、鋼タイプをこよなく愛し、鋼タイプに全てを捧げる生粋の鋼使い(ハガネラー)

 

 それに、俺はいたって正気だ。奇行なんてそんな言葉で片付けられてたまるか。

 

「このダイゴマックスは……あなたに勝つまで絶対に切れない!!」

「いや、普通のダイマックスだろう? 時間経過とポケモンのダメージ次第で切れるよ」

「切れないのっ!!」

「……そうだね」

『ポプラ氏が珍しい表情をしていますね』

『いつも人を振り回すポプラちんが押されるとは……マサルちんは大物になるよ~』

 

 力が、湧いてくる。

 

 いや、力が湧いてくるというよりも……みんなが力を貸してくれているんだ!

 

 みんながそこにいてくれているんだ!!

 

(マサルくん!)

 

 ダイゴさん!!

 

(マサルくん!)

 

 ミカンちゃん!!

 

(マサルくん!)

 

 トウガンさん!

 

(マサル!)

 

 知らないおっさん!

 

(未来の隊長!)

 

 知らないおっさんその2!

 

(マサルお兄ちゃん!)

 

 知らない幼女!

 

「世界中の鋼使い(ハガネラー)達が、俺を支えてくれている!! 俺に力を貸してくれている!!」

「あんた、このバトルが終わったら医務室に行きな。腕の良い医者を呼んでおくから」

「そうだ……!! 俺の背中には、ダイゴさんが、ミカンちゃんが、トウガンさんが、知らないおっさんが、知らないおっさんその2が、知らない幼女がついている!!」

「半分は知人ですらないじゃないかい」

「見えるかポプラさん。俺に宿る……鋼使い(ハガネラー)達の熱い魂が!!」

「……あんたを見てると、あの『鋼の大将』を思い出すよ。まさかあの男と同類とはね。認めるよ。あんたにフェアリータイプの不思議な力を使ったのは間違いだった」

 

 さあ覚悟しろポプラさん。究極最強のダイゴマックス技で───あんたに引導を渡してやる!!

 

(いくんだマサルくん!! 誰のためでもない!! 自分自身の願いのために!!)

 

 わかってますよダイゴさん。あなたに教わった(教わってない)この技で、全てを終わらせる!!

 

「ジバコイル!! ダイゴスチル!!」

 

 鋼使い(ハガネラー)の勇気が世界を救うと信じて!!

 

 

 

 

 

 

『最後のマホイップが戦闘不能ですね。これでマサル選手の勝利ですが……あ、意識を失って倒れましたね』

『……担架呼んであげよっか』

 

 

 

 控え室にて。

 

「あたしらこの後にバトルせんといかんと!?」

「次からマサルのチャレンジは一番最後に回すぞ」

「……マサル、ミカンちゃんって誰?」




 はい。というわけでマサルのアラベスクスタジアムの攻略方法もとい、フェアリータイプの不思議な力への対抗方法は「各地方の鋼使い(ハガネラー)をスタンドにして、鋼使い(ハガネラー)達の絆パワーでぶっとばす」でした。

 この展開を予想できた人はいたでしょうか。できた人は恐らく他者の思考を読み取るスタンド使いか念能力者ですね。

 ちなみにマサルはBWまでしかプレイしていないので、ガンピさんやポピー、ピオニーのことは知りません。

 また、マサルはマスタードが言っていたように催眠や洗脳系の技とめちゃくちゃ相性がいいです。バド様にてょわわわぁ~んされたらピオニー以上に光り輝き、モモワロウの餅を食えばボタン以上にキレキレなキビキビダンスを披露します。マサルはキタカミに行ったらだめだな。

 あと、「ダイゴマックス」は今回限りの大技です。もう二度と出てくることはないでしょう。多分。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!


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