【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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No.0050 おんせん!! サービス回

「キルクスタウンとうちゃ~く! すごいね、雪で真っ白だよ! 夜になったらイルミネーションでロマンチックな雰囲気になるんだろうな~」

「さ、寒かね……あたしは早く温泉に入りたい……!」

「マリィ、俺の『まぼろしコート』……着る?」

「着んよ!! あったかそうだけど! ものすごくあったかそうだけど!」

「さすがだぞマサル! 寒がっている女の子に上着をかけてあげる紳士ムーブだな!」

「シチュエーションだけやん!」

 

 ナックルシティでダイゴさんと別れ、そのままホテルに一泊した後は二日かけてキルクスタウンへとやってきた。当初の予定通り、気温が急激に下がる八番道路の手前でキャンプをし、翌日に一気に八番道路を突破する。

 

 俺はスポンサーのお姉さんにもらった「まぼろしコート」のおかげで寒さを全く感じなかった。コートの下にはでんTしか着てないのに。デザインに目をつぶればほんとにすげーなこのコート。

 

 そして、キルクスタウンは一面の銀世界で、建物の屋根には雪が積もり、広場では白いダルマッカが雪の中を転がりながら遊んでいる。ガラルのダルマッカは白いんだよな。イッシュだと赤くて火力がバカ高い優秀なアタッカーだった。

 

「ねえねえマサル。私、雪まつりの季節に来てみたーい!」

「そうだな。俺も雪像は見たいし……今年一緒に見に来るか」

「うん!」

 

 キルクスタウンでは冬の降雪量が多くなる季節に札幌で行われているような「雪まつり」が開催されている。ポケモンやその年話題になった映画やドラマ、アニメキャラクターの雪像が制作され、ダンデくんの雪像も毎年作られている。

 

 さらに、このキルクスタウンはガラル有数の温泉街であり、人間用の温泉だけでなく、ポケモンと一緒に入れたりポケモン専用の温泉もたくさんあるんだ。

 

 マリィも寒そうにしてるし、早速温泉に向かおうと思っていたところで、俺は見知った人影を見つけた。

 

「あ、マサルー! ユウリー!」

 

 向こうも俺に気づいたらしく、笑顔で手を振りながら俺達の方へ駆け寄ってくる。ふわふわと揺れているポニーテールがなんとも可愛らしい。

 

「トウコさ~ん!」

 

 ユウリは犬っころのように件の人物、トウコさんの方へ走り出し、思いっきり抱き着いていた。こいつ、懐いた相手だったら誰にでも抱き着きに行くよな。

 

「ども、トウコさん。ナックルシティ以来ですね」

「二週間ぶりくらいね! 元気してた?」

「見ての通りですよ。トウコさんもお元気そうで……足寒くないすか?」

「めっちゃ寒い! さすがにこの街でホットパンツは自殺行為だったわ! マサル、ズボン貸して!」

「……今履いてるヤツを脱げとおっしゃるので?」

「ちっがうわよ! 他に持ってる物を貸してちょうだいって意味!」

 

 よかった。トウコさんに無理矢理ズボンを脱がされるなんてエロ同人的展開はなかったんですね。そんなことを考えながら、俺はリュックから寒冷地仕様のお洒落な裏ボアカーゴパンツとベルトをトウコさんに渡すと、ホットパンツの上からそのまま履いていた。うん、さすがにこの場で脱ぐわけにはいかないからね。

 

「うわ~、これめちゃくちゃあったかいわね! ありがとマサル、おかげで助かったわ」

「いえいえ。てか、あそこにブティックあるんだから買えばよかったじゃないすか」

「一応寄ってみたんだけどね~。あたし好みのパンツがなかったのよ。ほら、あたしって可愛い系の服ってあんまり似合わないじゃない?」

「そんなことないと思いますけどね。フリル系の可愛さ全開ファッションのトウコさんも見てみたいです」

「ぜーったい嫌よ」

「でもトウヤさんが『着てほしい』って言ったら着るんでしょ?」

「うん」

 

 即答かい。どんだけお兄ちゃん大好きっ子なんだ……って思ったけど、そういや前に会った時に相当なブラコンっぷりを発揮してたな。

 

「そういえば、さすがのマサルもここではあの変なTシャツは着てないのね」

「中に着てますよ、ほら」

「ジャケットの下がTシャツ一枚!? そんな恰好でよく……ってコートの裏地がボア仕様ですっごくあったかいわ!」

「背中には幻のポケモンミュウがプリントされてます」

「正面から見たらお洒落な白いジャケットなのに台無しね!?」

「ちなみにお値段六十万円」

「馬鹿じゃないの!?」

 

 トウコさんの辛辣なツッコミを聞きつつ、俺はジャケットを閉じてホップとマリィにトウコさんのことを紹介した……んだけど「イッシュのチャンピオン」って言うと二人とも怪訝な表情を浮かべていた。なんでだよ。

 

「イッシュのチャンピオン……この人もとんでもなくキャラが濃いに違いないぞ……」

「きっと何かの収集癖があったり特定のタイプを推してくるに違いなか」

 

 ダイゴさんの後遺症が酷過ぎる。いや、確かにあの人はめっちゃ濃かったけどさ……トウコさんはそんなことないよ。

 

「大丈夫だって二人とも。このトウコさんはイッシュの命運をかけた戦いに勝利した後にイケメンを追いかけてガラルにやってきたブラコンを拗らせてる普通の美人さんだから」

「全然普通やなか!!」

「欲張りセット過ぎるぞ」

「もうちょっとマシな紹介の仕方があるでしょ!?」

 

 事実陳列罪とはこのことか。とはいえ、ホップもマリィもすごく良い子なのですぐにトウコさんと打ち解けていた。マリィは一人だとコミュ力に難があるものの、間に誰かが入れば普通にお喋りできる子だからな。俺には容赦ないツッコミ(物理)を入れてくるけど。

 

「二人のことは知ってるよ。ジムリーダーとのバトルを観てたからね。ジムチャレンジが終わってポケモンが十分に育ったらバトルしましょう!」

「トウコさんトウコさん! 私は~?」

「すっごく強くて驚いたわ! イッシュの四天王はもちろん、お兄ちゃんにも勝てるかもしれないわね!」

「うへへ~♪」

「トウコさん、俺は?」

「マサルは……頭大丈夫? 病院に行った方がいいんじゃない?」

「しまった。ポプラさんとのバトルしか観てないのか……」

 

 トウコさんが俺の頭を撫でながら心底心配そうにそう言った。ユウリは撫でられている俺を羨ましそうに見ていたけど俺は悲しいからな。

 

 で、Nと会えたのかと聞いたらまだ会えていないらしい。ラテラルタウンの骨董市で店番しているマラカッチと楽しそうにお話ししているところを目撃した人がいたけど、トウコさんがラテラルタウンに到着したころにはNは別の街へ行っていたそうな。

 

「ホップとマリィもこの男を見かけたら連絡ちょうだいね」

「おお、本当にイケメンさんだぞ」

「浮世離れした雰囲気やね。どんな人なんです?」

「……色々お労しいヤツなのよ」

 

 さすがにトウコさんもNの素性をほいほい話すのは憚られたらしい。そして、しばらく五人で雑談した後、キルクスタウンにNはいなかったとのことでトウコさんは別の街に行ってしまった。俺のズボンを履いたまま。

 

 ……美人なイッシュのチャンピオン使用済みのズボンか。プレミアが付きそうだな。

 

 そんなことはどうでもいいとして、トウコさんと別れてから温泉を探しつつ街を散策していると、広場でアイスクリーム屋さんを見つけ、何を血迷ったのかユウリがバイバニラを模したアイスを買いやがった。なにしとんねん。

 

「マサル、ちべたい……半分食べて……」

「しょーがねえなあ……」

 

 結局半分どころか七割くらいを俺が食べる羽目になり、ユウリは冷えた体を温めるようにマリィにずっとくっつきながら歩いていた。

 

 そして、広場を北に真っ直ぐ進みしばらく歩いていると、温泉のものと思わしき湯気が立ち上っているのが見えてくる。やっと冷えた体を温められると思い、俺達は意気揚々と温泉まで走っていくが……。

 

「英雄の湯……ポケモン専用だなんて……」

 

 ユウリが絶望したように膝をついていた。俺はそんなユウリをよそに、ポケモン達をボールから呼び出して温泉に入れてやることにする。お金はかからないみたいで、俺達以外にもポケモンを温泉に入れているトレーナーが何人かいた。

 

「ふぃーあっ♪」

「どうしたニンフィア? 俺と一緒に入りたいのか?」

 

 尋ねると、ニンフィアが俺の足に擦り寄ってくる。

 

「気持ちは嬉しいけど、この温泉はポケモンしか使えないんだ」

「ふぃあ~……」

「ホテルに戻ったら一緒に入ろうな。ほら、みんなと行っておいで」

「ふぃあ~お♪」

 

 頭を撫でてそう言ってやると、ニンフィアは笑顔でインテレオン達と一緒に温泉へ入っていく。水タイプが弱点のバンギラスは最初は恐る恐るといった様子だったけど、次第に和らいだ表情になって温泉につかっていた。インテレオンとジバコイルは問題ないとして……シャンデラも火が消えないように浮かびながら器用に温泉に入っている。

 

「いいなぁ~、私も入りたいな~」

「これだけ大きい街なんやから人間用の温泉もあるよ。あとで探してみよ」

 

 ユウリはマリィに宥められながらポケモン達を温泉で遊ばせている。ホップやマリィも同じ感じだ。というか、ここって温泉っていうよりポケモン用のプールみたいだな。

 

「やあ、若人諸君! がんばってるかね?」

「お、ソニアちゃん……って、このクソ寒いキルクスタウンでへそ出しファッションって頭フェアリーかよ」

「頭フェアリーになってたのはマサルでしょ!? それに、あんたにだけはファッションに口出しされたくないよ!」

 

 温泉で遊んでいるポケモン達を四人でぼーっと眺めていたらソニアちゃんがやってきた。ラテラルタウン以来だな。相変わらず寒そうな格好をしていらっしゃる。

 

「コートを着てるから一瞬マサルってわからなかったわね。なんかもう、最近はあのTシャツが本体になってない?」

 

 新八の眼鏡理論かよ。再会早々辛辣だなソニアちゃん。

 

「君は……確かマリィ選手だよね? ナックルシティの宝物庫ではちゃんと自己紹介できなかったね。私はソニア。マグノリア博士の助手をしています」

「マリィです……あ、あのマグノリア博士の助手なんですか?」

「えへへ、実はおばあさ……おほん。博士に頼まれて色々と調査をしているんだ」

「あの有名なマグノリア博士直々に頼まれて……か、かっこよか……」

「でしょでしょー? 素直ですっごく良い子だね! マサルも見習いなさいよ?」

「マリィ、ソニアちゃんは一見頼れるお姉さんだけど年下に平気で甘える残念美人だからな」

「誰が残念美人よ誰が! あ、マサル。寒いから上着余分に持ってたら貸してくれない?」

「そーゆーとこだよソニアちゃん」

 

 なんでみんな俺に服を借りたがるんだ。ただ、ソニアちゃんの服装は見てるこっちが寒いので、ジャケットを一着貸してあげることにする。ユウリとマリィにも貸してるし、俺の私服のストックがどんどんなくなっていくんだけど。

 

「イヌヌワン!」

「おー、ワンパチよ。元気だったかー?」

「ヌワッ! ヌワッ!」

 

 ワンパチの頭を撫でてやると気持ちよさそうな表情でひっくり返ったのでお腹をわしわししてやることにする。しばらくワンパチを愛でていると、背中をとんとんと叩かれたような感じがしたので振り返ったら、ユウリのパルスワンが物欲しげな表情で俺を見つめていた。

 

「なんだー? お前も撫でてほしいのかー? 欲しがり屋さんめ、このこの~」

 

 パルスワンが鼻を擦り付けてきたので頭を撫でてやる。あー、だめだな。ワンパチやパルスワンと戯れていると実家のわたぱちに会いたくなってくる。元気にしてっかなー。

 

「ねえ四人とも。ここにいても寒いだけだから良いところに連れて行ってあげるわよ」

 

 ソニアちゃんが可愛らしくウインクしながらそう言うけど、いまいち信用ならないな。ホップも俺と同じ考えらしく疑うような表情を浮かべ、ユウリとマリィの二人は期待に満ちた笑顔を浮かべている。

 

「一応聞くけどさ、どこ行くの?」

「ふふんっ、聞いて驚きたまえ少年」

 

 ソニアちゃんは腰に両手を当てて胸を張ってドヤ顔になった。うーん、これは失敗の予感。

 

「足湯カフェだよ」

 

 あ、ほんとに良いところだったわ。

 

 

 

 

 

 

 ソニアちゃんに連れられて五人で足湯カフェへとやってくる。「英雄の湯」のすぐ隣にあって、案内された窓際の席に五人並んで座ると、英雄の湯で遊んでいるポケモン達の様子がよく見えた。これだけ近かったらあいつらだけで遊ばせていても大丈夫だろう。しっかり者のインテレオンもいるし。

 

「あ゙あ゙~……気持ち良すぎ……生き返る~」

「ソニアちゃん、おっさんみたいだな」

 

 俺がそう言うとソニアちゃんにぴしゃんと頭を叩かれた。まあでも気持ちはわかる。足湯の深さはふくらはぎくらいまでで、足元からじんわりと温まってくる感覚は心地よかった。他の三人もだらしない顔してるし。

 

 ユウリやホップはともかく、マリィのこの顔はレアだな。写真撮っとこ。ということでスマホロトムでぱしゃり。

 

「ゆ、油断しとった! マサル、何勝手に撮っとーと!? け、消して!!」

「ユウリ、どう思う? 消した方がいいか?」

「それを消すだなんてとんでもない。私にも送っておいて」

「この写真、ネズさんとのバトルで有効活用できねえかな」

「悪用の間違いやろ!!」

 

 マリィになんやかんや言われながらも写真を死守することに成功する。これも大切な思い出だからな。それに将来、マリィがジムリーダーになってメディアの取材を受けたりする時に貴重な資料として提供してマリィの可愛さをみんなに知ってもらうっていう使命もあるからな。

 

「この抹茶ケーキすごく美味しい~! マサル、一口あげるね」

「あ」

 

 ユウリが一口分のケーキが乗ったフォークを差し出してきたのでそのままぱくり。お礼に俺のチーズケーキを食べさせてやると嬉しそうに笑っていた。

 

「気になってたんだけどさ……あの色違いのバンギラス、どうしたの?」

 

 あれ? ソニアちゃんにはまだ話してなかったか。そういや思い返してみれば、行く先々でソニアちゃんと遭遇はしてたけど確かに話してなかった気がする。

 

「聞くも涙、語るも涙の熱いドラマがあったんだ」

「ホップ、どういうことか説明してくれる?」

「実はだな……」

「なんでバンギラスのトレーナーである俺から話を聞こうとしないのか」

 

 ということで、俺とヨーギラスの出会いからバンギラスに進化するまでの劇場版並みに濃い出来事をソニアちゃんに話してあげることにした。話しながら思ったけど、これまじで映画化できそうだよな。

 

「よがっだ! よがっだねバンギラズ! マザルど出会えてよがっだね! うえ~ん! マサル……あんたすごくいい子ね! あたしはね……あんたがそういう優しい子だってことはずーっと昔から知ってたんだから! 大事にしてあげなざいよ!」

 

 一通り話すとソニアちゃんは化粧が崩れるのも気にせずボロボロ涙を流し始めた。感受性が豊かすぎるな。酒を飲ますとダメなタイプ。

 

 ソニアちゃんのくしゃくしゃの泣き顔はさすがに写真に収める気にはならず、ティッシュを渡してあげると豪快に鼻をかんでいた。うーんこの残念美人。

 

「……はぁ、落ち着いたわ。ちょっとお手洗いでお化粧直してくるわね」

「いってらっしゃい」

 

 ソニアちゃんはそう言って化粧ポーチをもってトイレへと向かっていった。

 

「ソニアさんってああいう人なんやね。……イメージとちょっと違ったかも」

「昔からあんな感じだぞ。勉強ができてすごく頭は良いけど……周りが想像するような知的な博士っぽさはないな」

「ソニアちゃんは今、ガラルの伝説を研究してて……『ウッヒョー! この遺跡たまんねぇ~!』って感じで遺跡を見ると興奮するんだ」

「ダイゴさんの同類やん……」

「行動力もすごいんだよ。小さい頃に『絶対入っちゃダメだ』って言われてた森に勝手に入っちゃったりして……」

「俺達で助けに行ったんだぞ! その時のマサルがすごく格好良かったんだ。マリィにも見せてあげたかったぞ」

「ふーん、そうなんやね」

「ま、俺は今でも格好良いけどな」

「そうだな。今のマサルも格好良いぞ」

「……ホップきゅん」

「今のは気持ち悪いんだぞ」

 

 そんな風にソニアちゃんとの思い出話をしつつ、マリィにソニアちゃんがどんな人物なのかを教えてあげていた。まあ、結論から言うとソニアちゃんは「おもしれー女」だってことだな。この極寒の中へそ出しファッションで歩き回るくらいだし。

 

 余談にはなるけど、ジムチャレンジが終わってしばらくした後、なんやかんやあって俺とユウリとダンデくんとソニアちゃんの四人で「カンムリ雪原」ってめちゃくそ寒い場所を調査することになった時もソニアちゃんはへそ出しファッションのままなのだった。

 

 あと、その調査の時に知り合ったとあるおっさんと俺が伝説ポケモンに洗脳……というか操られるというか翻訳機にされるんだけど、それはまだまだ未来のお話だ。

 

「お、なんだか盛り上がってるねー。何の話をしてたの?」

 

 四人で色々と話をしていると、化粧を直したソニアちゃんが戻ってくる。

 

「ソニアとの思い出話をしてたんだぞ。まどろみの森で迷子になったこととか」

「その時に大泣きしておもらししちゃったこととか」

「恥ずかしい話ばっかり!? それに、おもらしはしてないよ!!」

「あと、ソニアちゃんが遺跡を見ると興奮する性癖だとか」

「確かに興奮してたけど性癖じゃない!! ろくなこと話してないわね!? 私のジムチャレンジ時代の話とか格好良いことを話してよ!!」

「あたし、七年前のセミファイナルトーナメントをスタジアムで観てました。ダンデさんとの試合、すごく格好良かったです」

 

 マリィがそう言うと感激したソニアちゃんがマリィに抱き着いていた。

 

「マリィ……マリィ……君、すっごくいい子だね! 私が博士になったら助手にならない?」

「じょ、助手ですか?」

「ん? マリィはスパイクタウンのジムリーダーになるんだぞ?」

「違うな。俺の妹になるんだ」

「私のお嫁さんになるんだよ!」

「後半二つの予定はなか!!」

 

 そんなこんなで五人で足湯カフェを堪能するのだった。

 

 

 

 

 

 

「ソニアちゃんの奢りか。だったら一番高いステーキを……」

「ちょっとは遠慮しなさいよ!」

「何カレーにしようかな~。悩むな~」

「ユウリ……あんたはここでもカレー食べるの?」

 

 足湯カフェで温まった後、ポケモン達を回収してスタジアムで翌日のミッションとバトルのエントリーを済ませ(挑む順番はユウリ、マリィ、ホップ、俺)、ステーキハウスの「おいしんボブ」へとやってくる。チェーン店だけどハロンタウンやブラッシータウンにはないから来るのは久しぶりだ。

 

「ソニア、剣と盾のポケモンについては何かわかったのか?」

「ちょーっと行き詰ってるのよねー。ラテラルタウンの遺跡にもこれといった手掛かりはなかったし」

「剣と盾のポケモン?」

「そういえばマリィには詳しく話してなかったかもね。実は私、ガラルの伝説について調べてて……って何これー!?」

 

 お店に入り、店員さんにテーブル席に案内されて座ろうとしたところで、ソニアちゃんがいきなり壁に向かって叫んだ。他のお客さんの注目を浴びつつ、俺達も店内の壁に視線を向けると……。

 

「いいポスターだね!」

「そうそう。おいしんボブの笑顔全開のポスターが……って違うでしょ!?」

「そうだな。ユウリ、よく見たらこのおいしんボブの笑顔……不気味じゃね? 小さい子が見たら下手したら泣くぞ」

「マサルもどこに注目してんのよ!? 全然違わい!!」

「あれ? このタペストリー……似たようなんをナックルシティの宝物庫で見たような……」

「そうよ! さすがねマリィ! 好きっ!」

「ソニア、大声を出したら他のお客さんに迷惑だぞ」

「このあほあほコンビのせいだよ!」

 

 ソニアちゃんがぎゃーすか騒いでいるのをよそに、俺とユウリはさっさとテーブルについてメニューを広げていた。ふーん、なるほど……確かにマリィの言う通り、ナックルシティにあったタペストリーの続きっぽいな。

 

 ……なんでこんなところにあるんだよ。国宝レベルのもんだろこれ? ガラルのセキュリティはガバガバ。

 

「なんだろうね、これ。お墓かな?」

「三千年も前の出来事だからな。寿命には勝てなかったのか……いやでも化石からポケモンを復活させられるくらいから案外眠ってるだけかもな」

「人の手で封印されたんかもしれんよ」

「だったら、封印を解くキーアイテムがどこかにあるかもしれないぞ!」

 

 本来ならそういうアイテムこそ宝物庫で管理されるべきなんだろうけどな。もしかしたら他にもタペストリーがあって、それにアイテムの在り処が示されてたりすんのか?

 

「これはいよいよ、ユウリとホップがまどろみの森で出会った不思議なポケモンについて本格的に調査する必要があるかもしれないね」

「不思議なポケモン?」

「うん。私の家の裏にまどろみの森っていう立ち入り禁止の森があってね。私とホップがウールーを助けるために森に入った時に出会ったポケモンだよ」

「二人って……マサルはなんしよったと?」

「ダンデくんが迷子にならないように隣町まで付き添いをしてたんだ」

「チャンピオン……そういやエキシビジョンマッチも道に迷って遅れとったね」

「すごいポケモンだったぞ! 技が効かないというかすり抜ける感じで……」

「おっきいワンちゃんみたいなポケモンだったね」

 

 五人でテーブルについてまどろみの森の不思議なポケモンについてあーだこーだ話しつつ、各々好きな料理を注文する。ユウリはここでもカレーを頼んでいたので、俺のステーキを一切れ分けてやるとカレーをぶっかけて食おうとしていたのでそのまま口に詰め込んでやるのだった。

 

 ソニアちゃんがまどろみの森を調査するんだったらじいちゃんに話を通しておくか。なんだかんだソニアちゃんってバトル強いし、今なら一人で森に入っても大丈夫だろ。多分。

 

「キルクススタジアムのマクワさんは岩タイプの使い手だけど、みんな対策は大丈夫?」

「インテレオン無双」

「シャワーズとルカリオ、いざというときはメタグロスでゴリ押し!」

「ドクロックとズルズキンに任せるけん」

「俺にはゴリランダーとアーマーガアがいるぞ」

 

 こう考えてみれば、弱点が多い岩タイプでメジャージムリーダーの一角を担ってるマクワさんってすげーよな。見た目はちょっとチャライけど紳士的だし言葉遣いも丁寧だから好感が持てる。女性人気が出るのも納得だわ。

 

「マクワさんはお母さんのメロンさんと色々あって……氷タイプを受け継がないで岩タイプを選んだんだよね。私はおばあ様の跡を継ぐことしか考えてなかったから、そういう生き方って本当にすごいと思う」

「あたしも兄貴の跡を継いでスパイクタウンを盛り上げたいって思ってたから……あえて親の敷いたレールから外れた道を歩くってロックな生き方だと思う」

 

「岩タイプだけにな!」って言おうと思ったけど、ソニアちゃんとマリィが真剣だったからやめておこう。多分、そんなことを言えば二人に頭をひっぱたかれるだろうし。

 

「ロック度で言えばネズさんも負けてないだろ。あえてダイマックスができない場所にジムを構えてんだからな。まじかっけーわ」

「そ、そう……?」

 

 俺がそう言うとマリィは照れたように頬を染めて髪の毛先を指で弄り始める。ユウリはマリィのこういうところを見習わないとな。

 

「マクワさんとメロンさんの仲が悪いのは有名な話だぞ。でも、取材記事やインタビューを見るとメロンさんはマクワさんに負けて喜んでる感じだったな」

「実際嬉しかったんだろうさ。自分とは違う道を進みながらも、我が子の成長をこの目で見ることができたんだから」

 

 俺には子供がいたことがないから想像しかできないが、どんな状況でも子供の成長した姿を見られたら親は喜ぶもんなんだ。父さんやじいちゃんも俺がポプラさんに勝った後、何通も喜びのメールを送ってきてたからな。ダイゴマックスについては全然触れてこなかったけど。

 

「メロンさんで思い出したわ。確か、メロンさんってキバナさんに負けなしなんだよな? で、マクワさんはそんなメロンさんからメジャージムリーダーの座を勝ち取った……あれ? やばくね?」

「タイプ相性があるとはいえ、こういうのがポケモンバトルの面白いところやね」

「俄然燃えてきたぞ! マクワさんのロック魂を俺のポケモン達で打ち砕いてやるんだ!」

 

 ポケモンのタイプ相性はじゃんけんみたいなところがあるから、基本的には有利タイプで攻めるべきなんだけど、マクワさんがそれを見越した上でサブウエポンを仕込んでいる可能性も考慮しなくちゃな。ダンデくんがリザードンにソーラービームを覚えさせてるみたいに。

 

「ねえねえマサル! 聞いて聞いて!」

「なんだよ?」

 

 それまで黙って何やら考え込んでいたユウリがにぱーっと笑顔を浮かべて俺の服をちょんちょんと引っ張ってくる。

 

 そんなユウリの笑顔を見て、俺はこう思う。

 

 こいつ、なんかしょーもないことを言うに違いない、と。

 

「マクワさんの生き方は実にロックなんだよ! 岩タイプだけに!」

 

 瞬間、空気が───死んだ。

 

 そんなことは気にも留めず「私、上手いこと言ったでしょ? 褒めて褒めて!」と言わんばかりの笑顔を向けてくるユウリ。こいつに尻尾が生えてたらご機嫌でブンブン振ってるんだろうなぁ。

 

 そう思いながら俺はユウリの頭を撫でてやるのだった。




 キルクスタウン到着からの久々の良い尻をしたトウコちゃんとの再会。残念ながらまだNには会えていない様子。どこにいるんでしょうね一体。

 キルクスタウンの雪国的な雰囲気はすごく好きです。でもなんでマリィやソニアとのドキドキ混浴温泉イベントがなかったんだ! 許さんぞゲーフリ!

 次回はキルクススタジアムを攻略します。個人的にキルクススタジアムのミッションが一番苦戦した気がします。普通に何回か落ちました。マサルがどうやってミッションをクリアするのか……色々予想してみてください。今回は割と予想しやすいと思います。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 次回もよろしくお願いします!

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