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スタジアムが、沸く。
世にも珍しい色違いのバンギラス。それもあのマクワさんのセキタンザンを相手に、満を持して登場させたバンギラス。狙っていたことだが、まさかここまで……ここまでとはな。
「ありがとうバンギラス。最高に格好良いデビュー戦だったな!」
「がお~ん♪」
ダイマックス化が解けたバンギラスは、ヨーギラスの頃から変わらない小さな子供のような笑顔で俺に駆け寄り、俺を抱き上げて全身で喜びを表現している。
そうだよな。これまでずっと自分の無力さに耐えてきてたんだもんな。俺の役に立ちたいって、期待に応えたいってずっと思ってくれていたんだもんな。
だけど、まだまだこんなもんで満足なんてさせねえよ。俺達は、もっともっと先へ行くんだからな。
「マサル選手、ありがとうございました。あなた達の強さの根源である、互いを理解し合う、尊重し合う強い強い信頼関係、深い愛情……あなたとのバトルを通して、僕もまた一つ成長することができました」
「こちらこそ、ありがとうございます。俺もこのバトルで……マクワさんの生き様を目の当たりにして、大事なことを、本当に大事なことを思い出せた気がします」
俺がそう言うと、マクワさんはバツが悪そうに笑って眼鏡のブリッジに指先を当てた。
「僕の生き様は……後悔なんて微塵もありませんが、反省することばかりです。結果だけ言えば、僕は一族の伝統を捨てた親不孝者ですからね」
「いや、逆逆。逆ですよマクワさん。あなたが親不孝者? そんなの、ありえないでしょう。だって、一番の親孝行って───『親の想像を超える成長した姿を見せること』じゃないですか」
事実、マクワさんはメロンさんからキルクスタウンジムリーダーの座を勝ち取った。メロンさん個人のことは詳しくは知らないが、ジムリーダーとしてならば多少は知っている。彼女は間違いなく、実の子供が相手であろうと手を抜くような人間ではない、ということを。
むしろ逆に「自分を越えてみせろ!」と言わんばかりのつよつよかーちゃんだ。だからこそ、メロンさんは自身のマイナー降格が決まっても、メディアで悲壮的な面を一切見せなかった。悔しさはあるだろうが、それ以上に我が子の成長を心から喜んでいたんだろう。
「メロンさんがそういう性格だっていうのは、俺なんかよりもマクワさんの方がよくわかっているでしょうけどね」
「……だから反抗したくなった、とも言えます」
「そういう反抗心というか反骨心も、メロンさんは喜んでるんだろうなぁ」
「その結果が
メロンさんのレアリーグカードはネットで一時期かなり話題になっていた。満面の笑みでマクワさんの肩を叩くメロンさん。そんなメロンさんとは対照的に反抗期全開の中学生のような表情をしているマクワさん。事情が分かれば微笑ましいもんだ。
「いや、わかってる。わかってはいるんですよ! 母が純粋に、トレーナーとしての僕の実力を評価してくれて……僕の成長を喜んでくれているっていうのは! でも、それとこれとは別でしょう!?」
「そっすね。あれに関して物申していいと思いますよ。というか、シーズンが終わってからちゃんと面と向かって話せてないんじゃないです?」
「……気難しい年頃なんですよ。ただ、あなたと言葉を交わして、バトルをして色々と吹っ切れました。タイミングを見て、一度母とちゃんと話してみようと思います」
おお、よかったよかった。今のマクワさんは現状と自分の感情をしっかり理解しているみたいだから、拗れることはないだろうな。多分。
にしても、まさかジムリーダーの家庭環境に首を突っ込むというかお悩み相談みたいなことになるなんて思ってもみなかったな。結果的にマクワさんは前向きになってくれたし、俺には案外カウンセラーの才能があるのかもしれない。
「気性が荒く、人に懐くことが滅多にないバンギラスとこれほど強い信頼関係を結んだ。マサル選手、あなたのポケモントレーナーとしての力の根源はそこにある……それを絶対に忘れないでください。あらためて、キルクススタジアム突破おめでとうございます!」
そして最後にマクワさんと固い握手を交わし「いわバッジ」を受け取った。これで残るバッジは───あと二つ。
「おかえりマサル~! バンギラス、大活躍だったね~」
「さすがだぞ! 強さだけじゃなくてスタジアムの盛り上がりも最高だったな!」
控え室へ戻ると、ユウリとホップが駆け寄ってきて俺の勝利を祝ってくれた。それに対してマリィは何か思うところがありそうな表情を浮かべて俺に近づいてくる。どしたねマリィ? 別に変なことはしなかったと思うんだけどな。
「おめでと、マサル。あたしも悪タイプトレーナーの端くれとして、バンギラスが活躍してくれて嬉しいけど……ちょっとだけ悔しか。マリィやったら、マサルみたいにバンギラスを育てられたかも活躍させられたかもわからんもん……」
マリィはモルペコをぎゅっと抱き締めながら俯き気味にそう言った。マクワさんも言っていたように、本来バンギラスはものすごく気性が荒い危険なポケモンで、簡単に手懐けられるようなポケモンじゃない。ただ、俺の場合はヨーギラスとの出会い方が特殊だったからなぁ。あんまり育成の参考にはならない気がする。
「いやいやいや、何言ってんの? 他のタイプと違って性格に難がありまくる悪タイプのポケモンを五体も立派に育ててるのに……バンギラスを育てられない理由がないでしょ。マリィでダメなら誰だって無理だわ」
「そうだぞマリィ。俺の家ではチョロネコを飼ってるけど、昔から全然言うことを聞かなくて悪戯ばかりするんだ。一体でも手を焼くのに、パーティメンバーが全部悪タイプってすごいことなんだぞ!」
「そうそう。あのチョロネコったら私に全然懐かないんだよ! おやつをあげる時にしか寄ってこないの! マサルにはすぐくっつくのに!」
ホップの家でジムチャレンジやダンデくんのバトルを観る時は決まってあのチョロネコは俺の膝の上に座ってくるんだよな。なんでかは知らんけど。で、ユウリが抱っこしようとすると尻尾でいつもぺしぺし叩かれて拒否されてるんだ。
「うん、ごめんねみんな。ちょっとだけ弱気になってた。次は兄貴のジムやのに、こんな調子じゃダメやね! 気合を入れ直さんと!」
そうか、とうとう……とうとうネズさんとのバトルになるのか。俺はマリィに「マサルお兄ちゃん♡」って呼ばれたこともあるし、実質マリィのお兄ちゃんの座を懸けた「お兄ちゃん代理戦争」ってわけだな。
「あ、マサルが変なこと考えてる顔してる」
「してねーよ。ネズさんとどう戦うか考えてたんだ」
ユウリが意地悪そうに笑いながら肘で小突いてくる。こいつ……こういう時だけ鋭くなりやがって。ただ、ネズさんとのバトルについて考えていたのも本当だ。ニンフィア大活躍は間違いなしだけど、スカタンクをぶつけられたらキツイ。それに、俺の手持ちには純粋な格闘タイプがいないから相当苦労するだろう。
「ねえねえ、マサル。聞きたいことがあるんやけど」
「なんぞね?」
無意識の内に腕を組んで対ネズさん戦法について考えていると、マリィがちょんちょんと俺のユニフォームを引っ張ってきた。
「さっきのマクワさんとのバトル……なんでバンギラスを出したん? 確かにスタジアムは盛り上がったし、バンギラスで岩タイプのマクワさんに挑みたいっていう気持ちはわからんでもないけど……それだけが理由やなかろ?」
「なんでそう思った?」
「だって、わざわざバンギラスで勝負せんでも勝ち筋はいくらでもあったし、次の兄貴とのバトルを考えたら絶対バンギラスは隠しておく方が有利やもん」
マリィの言う通り、俺がセキタンザンにバンギラスをぶつけたのには「華々しいデビューを飾ってほしい」「バンギラスで岩タイプマスターのマクワさんに挑みたい」という理由だけじゃない。もう一つ、大きな大きな理由があった。
「次の相手が
「兄貴、やから……?」
俺の言葉にマリィは首を傾げた。
「ユウリ、スパイクタウンの一番の特徴はなんだ?」
「可愛いマリィの生まれ故郷!」
聞いた相手が悪かった。完全に俺の落ち度だな。とりあえず、満足そうなドヤ顔で腕を組んでいるユウリの頭を撫でておくことにするか。無視したらどうせ突進して話が脱線するだろうし。
「ホップ」
「ダイマックスが使えない、だろ?」
「その通り」
初めからホップに聞いときゃよかったな。
「前にエンジンシティで取材を受けた時にも言ったと思うけど、次のスパイクジムはポケモントレーナーとしての純粋な技量を改めて試されるジムだ。これまでダイマックス頼りでジムを攻略してきたチャレンジャーはここでふるいにかけられる。そんなジムだからこそ、俺は
最後のジムリーダーであるキバナさんとのバトルはダブルバトルだからこれまでのバトルとは勝手がかなり変わってくる。チャンピオンカップを除けば、ジムリーダーと純粋なシングルバトルができるのは次が最後なんだ。
「集大成……と言うには少し早いかもしれない。だけど俺は、俺達はここまで六人のジムリーダーを倒してきた。俺がこれまでの戦いで培ってきた
これまでのジムリーダー達とのバトルでは、
だけど、それが本来のポケモンバトル。相手の残りの手持ち、自分の手持ち、バトルの流れ、タイプ相性、場の状態等々……全てを一瞬で判断し、適切な指示、適切なポケモンを出す。ゲームのように、ターン制バトルなんかじゃない。気合いや根性だけでどうにかなるようなものじゃない。
ジムチャレンジが始まったばかりの俺ならば、不可能だっただろう。
だけど、今の俺なら。
今の俺なら。
少しばかり、自分の実力に自惚れてもいいのかもしれない。
「……そっか。マサルが、兄貴のこと……スパイクタウンのこと、そんな風に思ってくれてるの、すごく……すごく嬉しい」
マリィはそう言って、赤くなった顔を見られたくなかったのか俺に背を向けた。うーん、あざとい。無意識でこういうことをやるんだからとんだ悪女だなマリィは。さすが悪タイプの使い手。
「ま、マリィが照れてる!? うへへ~、お嬢ちゃん。その可愛いお顔をもっとよく見せてよ~?」
「ゆ、ユウリっ!? カメラ向けんでっ!」
せっかく俺が気を利かせてスルーしようと思っていたのにユウリが台無しにしやがった。まあいいや。好きなだけ二人でいちゃついてなさい。とりあえず俺はシャワー浴びて砂を落として着替えたいから。
そう思い、控え室を出ようとした時だった。
「いいねえ、若者特有の青臭さ。次世代を担うトレーナー達はそうでなくちゃね」
控え室の扉が開き、白い衣服を纏った笑顔の婦人が現れた。おいおいおい、なんであなたがここにいる!?
「め、メロンさん!? なんでここにいるんだ!?」
「息子が情けないバトルをしていないか観に来たのと……あんた達に会っておこうと思ってね」
ホップが俺の心を代弁し、メロンさんはあっさりと答えた。確かに昨シーズンまではずっとメロンさんがキルクスタウンのジムリーダーだったしマクワさんの母親だけど、いきなり俺達に絡んでくるとは……。
「あんたがマサルだね。息子とのバトル、しっかり見せてもらったよ。バトルだけじゃなくて、口も随分達者みたいだね」
「すみません。人様の家庭の事情を深く知らずに偉そうなことを言ってしまって」
「あっはっは! 思ったよりも真面目なんだねぇ。あたしゃそんなの気にしないよ。むしろ、よくマクワに言ってくれたとお礼を言いたいくらいさ。あの子の強さの源はあたしや一族に対する反骨心……だけどそれだけじゃあ今以上の高みになんていけやしない。それをあんたが気付かせてくれた」
「マクワさんは、それにとっくに気付いていたと思いますよ」
「だとしても、それをあの子の口から言葉として引き出したのはあんたさ。あんたのおかげで、あの子はもっと強くなれる。あたしときちんと向き合うことができる。トレーナーとして、母親としてお礼を言わせてもらうよ。……ありがとう」
メロンさんはそう言って俺に向かって頭を下げた。うん、思った通り良いお母さんじゃないか。トレーナーとしてはすごくシビアでストイックで、マクワさんに対してもそういう方針で育てていたんだろうけど……バトル抜きで向かい合ってみると豪快で気のいいおかんって感じだな。
「お礼ついでにお節介をさせてもらうと……マサル。あんたが求めているもの、その答え、それを手にするきっかけは、最後のひと押しはきっと、あんたが思っているよりもずっと近くに存在している。それを本当の意味で理解する日も遠くないさ」
メロンさんといい、カブさんといい、ポプラさんといい……ベテラントレーナーは誰も彼もが容易く俺の内面を見抜いてくる。
敵わねえよなぁ、本当に。
「ユウリ」
「は、はいっ!」
「あんたのようなトレーナーがいると、その強さに引っ張られて周りのトレーナーも強くなる。驕りや自惚れ、油断は足をすくわれかねないが『自分こそが世代の中心だ!』くらいの気持ちでいるんだよ。大丈夫、たとえあんたが世代のトップを走り続けていたとしても……絶対にあんたを孤独になんてさせないからね」
「こ、孤独……? は、はい……」
「ちょっと難しかったかね。走り続けているとしんどいだろう? だからたまには立ち止まってお休みしなさいってことさ」
「わかりました! 美味しいカレーをたくさん作ってたくさん食べます!」
今のユウリにそれを自覚しろっていうのは無理な話だ。ただ、メロンさんが言ったように、ユウリを孤独になんてさせないさ。俺が。絶対に。何があっても、だ。
「ホップ、マリィ。あんた達は二人とも偉大な兄を持っている。普通のチャレンジャーと違って、背負っているものも大きく、そのプレッシャーに押し潰されそうになったこともあったはずだ。だけど、ここまで勝ち進んできたあんた達の強さは本物だ。決して、ダンデやネズのおかげなんかじゃない。あんた達は自分自身の力で道を切り開いてきたんだから胸を張りな。ここから先は、誰もあんた達をダンデの弟、ネズの妹とは見ないだろう。だからこそ、改めて自分達の存在をガラルに知らしめてやるんだよ」
メロンさんは二人の肩を叩き、優しく笑ってそう言った。なんというか……同じストイックなカブさんとも違う、人を惹きつけるローズ委員長のカリスマとも違う。もっとこう、包容力があるというか。力強い言葉の中に安心感があるというか。
「おばさんの話に付き合ってくれてありがとうね。お礼にあたしがこの街で一番気に入っている温泉のチケットをあげようか。スパイクタウンに出発する前に入るといいよ」
最後にメロンさんは俺達四人の頭を優しく撫でてチケットを手渡し、控え室から出て行った。うーん、なんというパワフルかーちゃん。ジムリーダーで母親……メロンさんのファンが多いのも頷ける。
「メロンさんすごいね! お母さんって感じだったね! 私のママとは全然違うな~」
「大家族のおかん……か、かっこよか……」
女性陣二人はいたく感激している様子。ここでラノベ主人公とかなら「マリィは良いお母さんになれると思うぞ」とか言うんだろうな。
俺は絶対言わねえけど。
「マリィは良いお母さんになれると思うぞ!」
ほんとに言うやつがあるか。
これはガラル紳士ホップだからこそ許される台詞。俺は蕁麻疹が出るからそんなこと言えねえわ。案の定、マリィはホップの言葉に赤面して……おやおや? これはもしやフラグが立っ───
「つまり! マリィは私のお嫁さんでママってことだね! マリィママ! 一緒に温泉入ろう!」
「あ、あんたみたいな大きい娘はおらんけん!」
フラグキャンセラーユウリ。お前、その行動……ラブコメ漫画だと読者から
まあ、ユウリだししゃーないか。俺もホップに物申したいことがあったし。
「なあ、ホップ」
「なんだ?」
「マリィ
「……はっはっは」
おい。
「お、おふぅ~……き、気持ち良い……とろけそう……はふぅ。今の私はベトベター……」
「ちょ、ちょっと熱いかも……」
「ユウリ、マリィ! 美人の湯ですって! お湯がちょっとトロッとしてる感じがきっとお肌にいいのよ!」
スタジアムを出てソニアちゃんと合流した私達は、メロンさんに教えてもらった温泉へとやって来ていた。それなりにグレードの高い温泉らしく、ソニアちゃんは自腹だからちょっと涙目になってたけど……この温泉にはそれだけの価値があるよね!
ふへへ、美人の湯かぁ~。これはぁ! ますますユウリちゃんの可愛さに磨きがかかってしまいますねぇ! マサルもホップも私達のことを放っとかんでぇ!
「ラブコメの定番覗きイベント! 男湯はどっちだ!?」
「あんたが覗きに行ってどーすると!? おとなしくしんしゃい!」
勢いよく立ち上がるもマリィにお湯の中に沈められてしまった。むむむっ! こんな美少女が三人も温泉に入っているというのに、覗かないのは不作法というものでは?
「ラブコメって……ユウリとマサル、やっと付き合い始めたの?」
「え? 付き合ってないよ」
「あれだけ好き好きオーラ出してずっと一緒にいるのに!?」
「ねー? 困っちゃうよねー? でも仕方ないよねー! マサルが私のこと大好き過ぎるからねー!」
私が胸を張ってそう言うと二人が心底呆れたような目で私を見てきた。な、何その顔? あ、もしかして「小さい胸を張ってるなぁ」とか思ってるわけ!? た、確かにソニアちゃんと比べたら小さいけど、これからおっきくなるもん! だってママはスタイルいいんだもん!
「いや、逆よ逆。あんたがマサル好き好きオーラ出しまくってるってことよ」
「そ、そんなはずないよ! 私がいつそんなの出してたって言うの!? ねえマリィ?」
「あれだけ抱き着いたり甘えたりしてて自覚なかったと!?」
「だ、だって小さい頃からずっとあんな感じだし……私がそんなオーラ出してるなんて何かの間違いだよ! そう、私は淑女……完全で瀟洒なガラル淑女ユウリ。幼馴染の初恋を奪ってしまう罪作りな淑女……」
「酔っとーと?」
「淑女どころかあんたの発言って完全に負けヒロインよ」
だ、誰が負けヒロインかーっ!? まるで私が!! 幼馴染という距離感に胡坐をかいて何もしなかった挙句ぽっと出の女に幼馴染を奪われる哀れな当て馬みたいな言い方しちゃって~!!
「ごめんユウリ。あたし、なんも擁護できん」
「がーん!!」
「結局、何も進展はないわけね。二人で旅すればちょっとは変わるかと思ったけど……そんなのんびり構えてて大丈夫? マサル、あれで結構人気あるから誰かに掻っ攫われるかもよ?」
「あ、ありえないもん! それに、私以外の誰がマサルの心を奪えるというのか!?」
「隣にいるじゃん。マリィとかさ」
「ま、まままままマリィ!?」
「あ、あたしはそんなことせんよ!?」
「マリィは私のお嫁さんになるのに……マサルに奪われるなんて……脳が……!! 脳が破壊されてしまう!!」
「なんでマリィが奪われることで脳破壊されてんのよ!?」
た、確かにマリィはものすごく可愛くてマサルもマリィのことが大好きかもだけどいやでも私の方がマリィのこと好きだからね! マリィは私のお嫁さんになるんだからね! 将来はマリィが私のお嫁さんで私がマサルのお嫁さんでホップがマサルのお嫁さんで……完璧なサイクルができあがってしまった!
「ゆ、ユウリと恋バナしようと思った私がバカだったわ。まあ、ユウリの自惚れを肯定するわけじゃないし……マサルのそれは恋愛感情じゃないだろうけど、あいつがユウリのことを大好きなのは間違いないもんね」
「うへへ~? やっぱりぃ? やっぱりソニアちゃんにもそう見える~? かぁーっ! 困っちゃうな~!」
「だからマサルのは恋愛感情じゃないだろうって言ってるでしょ!?」
「ま、まあまあソニアさん。こうやって自分に自信があるのはユウリの良いところ……? やと思いますよ」
「でも、見習おうとは思わないでしょ?」
「それは……はい」
「ま、ユウリとマサルについては
「え、えぇ……? あ、あたしは別に……仲良くなったのも、実は……小さい頃、マサルにシュートシティで助けてもらったのがきっかけで……でも、連絡先とか交換してなくて、たまたまジムチャレンジで七年ぶりに再会して……」
「やだこの子……ユウリより百倍ヒロイン適性あるじゃない……」
私を放ってソニアちゃんとマリィが盛り上がり始めてしまった。むむむっ!? ソニアちゃんにもマリィは渡さないからねっ!
ふーんだ……でも、私だって、別に今の立場で何もしてこなかったわけじゃない。小さい頃から一番側でずーっとずーっとマサルを見てきたから、みんなが知らないマサルを、私は知っている。
ホップですら知らないマサルを、私は知っている。
だけど、そんな私でも……マサルのことを一番わかっていると自負している私の前でさえ───
マサルは時々───
マサルは何か、ずっとずっと遠くを見ているような気がしてた。昔を懐かしんでいるようで、でもちょっとだけ苦しそうで。マサルがどこかに行っちゃいそうで……。
そんなマサルの顔を見ていたくないから、私はそういう時にマサルにべったりと甘えていた。そうすれば、マサルは私のことを見てくれるから。私の知らない顔を見なくて済むから。
そんな時……マサルは決まって困ったように笑いながら私の頭を撫でてくれた。でもやっぱり、その目に私は映っていなくて……私じゃない何かを、どこかを見ているようで……。
そしてそれは、ジムチャレンジに参加してからもっと顕著になっていった。
多分マサルは、私の知らないその「何か」を見つけようとしているんだと思う。
ねえ、マサル。その「何か」を見つけるために、私は力になれないのかな? そう尋ねてみたいけれど、きっと私では力になれないのだろう。
だって、私が力になれるのならばマサルはちゃんと私を頼ってくれるから。
だって、マサルは一人で何もかも抱え込んで悩むような人じゃないから。
だって、マサルは誰かに頼ることができる人だから。
でも、そんなマサルが私にさえ何も言わないってことは……きっとそれは
そんな現状を、もどかしいと思ってしまう。
そんな現状で、私ができることはあまりにも少ない。
でも、少ないからこそ、私は自分にできることを、躊躇わない。
ねえ、マサル。
マサルが何を見つけようとしているのか、マサルが何に悩んでいるのか、私は知らないよ。だけどそれが、私には
わかっているから、私にできることは
それはね。
これまでも。
今も。
これから先も。
ずーっとずーっとずーーーーーっと。
たとえ、何があったとしても、どこに行ったとしても───私が側にいてあげる。私があなたを見つけてあげる。
だって私は。
更新が遅くなって誠にごめんなさい。
本当はクリスマスイブに投稿して「100万人の女性の誘いを断って投稿する二次創作者の鑑!」みたいな感じでぼっちちゃんやユウリのようにイキリ散らかしてやろうと思いましたが、そんな浅ましいことを考えて罰が当たったのかインフルにかかってしまいました。死ぬかと思いました。
なんとか年内の更新ができてよかった……。いやー、一年の最後にふさわしいメインヒロイン回でしたね! ユウリちゃんはただの自惚れイキリ敗北者ヒロインじゃないのだ! なんだかんだ色々察してる天真爛漫な(マサル限定で)激重感情持ちヒロインなんだ!
うーんこれは文句のつけようのないメインヒロインの風格。
次回の更新は年明けの……いつになるかわかりませんが、来年もどうぞお付き合いください。
ではでは、前作からお付き合いいただいた皆様、本作からお付き合いいただいた皆様、今年一年ありがとうございました!
良いお年を!
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