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改めて注意事項です。必ずご一読ください。
【注意事項】
・バトルはノリと勢い、演出重視です。
・ゲームのシステムを考慮しない場面があるかもしれません。
・進化条件などがゲームと異なるかもしれません。
・本来出現しない場所にポケモンが出現するかもしれません。
・本来覚えないはずの「わざ」を覚えるかもしれません。
・「わざ」を四つ以上覚えるかもしれません。
・他ポケモンシリーズとの時系列については独自に解釈しています。
・「すごいよ!! マサルさん」要素はありません。
「お、お嬢……嘘……ですよね? そのジャケットがでんTマンのだったり、でんTマンを押し倒したり、お兄ちゃんって呼んだりなんてしていませんよね」
「あ、うぅ……」
「あ、これガチのやつだ。お嬢が嘘つけない時の顔だ」
「う、嘘だ……俺達のお嬢があんなダサいTシャツを着た変な男に……」
「マリィ、どういうこと? 私それ、知らない……マサルを押し倒したなんて───知らない」
「ひえっ!? 妖怪カレー女の目のハイライトがなくなっていく!!」
「修羅場!! 修羅場ですよ!? おい、ダンデの弟!! そんな呑気な顔してないで止めやがれです!!」
「ユウリのことか? そのままで大丈夫だぞ」
「何をそんなに落ち着いてやが───」
「私だってまだマリィに押し倒されたことないのに!!」
「ほらな?」
「……お前らについて深く考えるのはやめーる!!」
さて、観客達が変に盛り上がっているのは放っておくとして……煽っておいてなんだけど、ネズさんめっちゃキレてんな。とはいえ、これで冷静さを失ってめちゃくちゃなバトルになる……なんてことはありえない。
こういうトレーナーは、感情とは別に冷静に並列思考ができる。おそらくネズさんは今、俺をぶっ倒すことだけを考えて脳みそをフル回転させているに違いない。
いいねえ。そうこなくっちゃ。
「お前の戦術はわかっている!! 手持ちに悪タイプの天敵であるニンフィアがいることもな!! だが、この俺が!! 妖怪ピンク婆に幾度となく辛酸を嘗めさせられてきたこの俺が!! フェアリー潰しの真骨頂を見せてやるよ!! スカタンク!!」
「バンギラス!!」
「───ってバンギラスかよ!? ニンフィア出して来いよ!!」
「いやだってニンフィアって一番警戒されてるじゃないすか。そんな中で考えなしにほいほい出せませんって」
初手は読み勝った。まあ、スカタンク以外が出てきてもバンギラスならなんとかなっただろうけど。いやでもカラマネロが厄介だな。あいつ、タイプが優秀で弱点少ないし。
「い、色違いのバンギラス……格好良い。悪タイプの、王様……」
「ば、バトルが終わったら握手してもらおう」
「お、俺は写真撮ってもらう!」
「お前らどっちの応援してやがるんだ!?」
エール団のおっさん達がバンギラスにときめいていてネズさんに盛大にツッコまれていた。スパイクタウンのちびっ子達も目をキラキラさせてバンギラスを見ている。そうだろ? 俺のバンギラス、格好良いだろ? 少年の心をくすぐるビジュアルをしてるだろ?
「ちっ……俺に悪タイプで挑んでくる心意気だけは認めてやりましょう。だが、バンギラスがいくら強かろうとも、悪タイプの扱いにおいて俺の右に出る者は!! マリィ以外に存在しない!! てめえに悪タイプの神髄を教えてやるよ!! いやなおと!!」
思わず耳を塞ぎたくなるような不快な音が響き渡った。バンギラスは顔をしかめ、スカタンクの前で完全に無防備になってしまう。今、攻撃を受けてしまえばいくら頑丈なバンギラスでもただでは済まないだろう。
だがそれも、計算済みだ。
そもそも、だ。初手でバンギラスを出した理由は、マクワさんの時と同様にネズさんを相手に悪タイプで挑みたかった
どうしても、ネズさんの
なぜなら───
「ふいうち!!」
この「ふいうち」のタイミングをバンギラスに
「踏みとどまった!? いやなおとの効果が……いや、まさかお前───」
この一瞬の攻防でネズさんは気付くとは。さすがです、ネズさん。
だが。
「
一手遅い。
「バンギラス!! じしん!!」
バンギラスが懐に飛び込んできたスカタンクを片腕で押さえつけると同時に、その強靭な脚で地面を踏み抜いた。ほぼゼロ距離、言わば震源地の最も威力が高くなる場所で技を受けたスカタンクは一撃で戦闘不能になる。
「バンギラス、
「ぐがぁ!」
俺の問いにバンギラスが力強く答えた。見取り稽古って言えば聞こえはいいけど、実戦の中で実際に技を食らって覚えろってことだからだいぶスパルタ教育だな。ゲームでバンギラスが「ふいうち」を使えたかどうかまでは覚えてないが、同じ悪タイプかつ物理技をバンギラスが使えないという道理はない。
ぶっちゃけ半分……いや七割くらいは賭けだったが、俺は賭けに勝った。
で、なんでそこまでして、ネズさんとのバトルで「ふいうち」を覚えさせることにこだわったのかというと───
残るジムバッジはあと二つ。いよいよ、あいつらとの……
ベストはわざレコードなんかを使って、誰にも知られずこっそりと覚えさせることだったけど、レコードが手に入らなかったから仕方がない。だから、あえてこの場でバンギラスの「ふいうち」を印象付ける方向へシフトした。
バンギラスほどの火力を持つポケモンの「後の先」はどんなトレーナーにとっても脅威だ。それを意識して少しでも躊躇してくれればその隙に別の技を叩き込めるし、考えなしに突っ込んできてくれるのであれば「ふいうち」の餌食。
いずれにしても、だ。たとえ「ふいうち」を使わなくとも、「使ってくるかもしれない」と相手に思わせた時点でこちらが精神的優位に立てる。
ま、そこまで思い通りに事が進むなんて思っちゃいないが、手札は多いに越したことはない。
「二体目……
「ぐがぁっ!!」
スカタンクの「いやなおと」と「ふいうち」でそれなりにダメージを受けたものの、まだバンギラスは十分戦える。それに、バンギラスにはネズさんとのバトルでもう一つやってほしいことがあった。
「お前……俺を試してやがるのか?」
ネズさんは眉をひそめてそう言った。そういう反応にもなるわな。なんせ、ネズさんの手持ちにはバンギラスの天敵である格闘タイプのズルズキンがいるんだから。それをわかっていながら、俺はあえてバンギラスをこのまま戦わせている。
(認めたくはないが、こいつはおそらく俺と
さあ、どうするネズさん。
「ズルズキン!!」
やっぱりズルズキンを出してきたな。だったら作戦に変更はない。このまま続行だ。
「お望み通り、試されてやる!! お前の策が、俺のポケモンを上回っているのかをな!!」
ズルズキンがバンギラスへ向かって真っすぐに飛んだ。バンギラスは決して素早いポケモンではない。強固な鎧で相手の攻撃を受け止め反撃するタイプのポケモンだ。
この場面で、俺がお前に求めているものは───
「ズルズキン、とびひざげり!!」
ズルズキンの強力な蹴りが、バンギラスに炸裂する。先程のスカタンクの「ふいうち」とは異なり、バンギラスの表情が苦悶に歪み、体勢が大きく崩された。
が、倒れない。踏みとどまり、バンギラスはズルズキンを睨みつける。
俺がお前に求めているもの。一つ目は、
「バンギラス」
そして、二つ目は───
「リベンジ」
ズルズキンの固い守りを、お前の
バンギラスの拳が、ズルズキンの腹部を的確にとらえ、吹き飛ばす。ズルズキンは格闘タイプの中でも屈指の防御力を誇るポケモンだ。そんなズルズキンの守りを、バンギラスのタイプ不一致格闘技で貫けるのだとしたら、たいていのポケモンに通用する。
「……よくやりました。ズルズキン」
ズルズキン、戦闘不能。最高だバンギラス。お前は俺の要求に、俺の期待に100%応えてくれた。
「お疲れ様。戻っておいで、バンギラス」
「ぐがっ♪ ぐがっ♪」
バンギラスは俺に近づいてきたかと思うと、しゃがみこんで頭を差し出してきた。なんだなんだ? 撫でてほしいのか? 身体はでかくなっても中身は甘えん坊のまんまだな。
労いの意味も込めてバンギラスの頭を撫でてやると嬉しそうに笑って満足そうにボールに戻っていった。後は頼れる仲間達に任せてゆっくり休んでくれ。
さて、残るはカラマネロとタチフサグマ……そして、俺が次に出すポケモンは決まっている。さあ、ネズさんはどっちを出してくる?
「ジバコイル!!」
「カラマネロ!!」
よし、
「(ジバコイル? ニンフィアじゃないのか? 確かに、鋼にはエスパーの通りが悪いが……悪は半減できねえだろう!!)つじぎり!!」
スピードはカラマネロが上。それは想定内だ。だけど、物理技である以上、地面か格闘でさえなければジバコイルなら一発は耐えられる。
「でんじは!!」
カラマネロは決して素早いポケモンではないが、ジバコイルはそれ以下の鈍足だ。だからまずは、相手の機動力を奪う。
「ちっ……麻痺技か。面倒なことをしやがりますね」
「てっぺき」
カラマネロはどちらかといえば物理アタッカー。「てっぺき」で守りを固め、盤石の態勢を築く。そして、「でんじは」でジバコイルがカラマネロのスピードを半減、麻痺状態で攻撃を封じ、さらに攻撃を畳みかける。
「ボディプレス!!」
「てっぺき」で防御力を上昇させたジバコイルがカラマネロを押し潰した。悪とエスパーの複合だから「こうかばつぐん」とはいかないが、等倍の「ボディプレス」がどこまで通用するか……。
「発想は悪かねえが、わざわざ接近してきてくれてありがとうよ!! しっぺがえし!!」
一撃では決まらず、カラマネロの反撃を受けるが、それも想定内だ。物理技、しかも防御が上がっているジバコイルはそれじゃあ落とせない。
「もう一発───」
「させねえ!! サイコカッター!!」
「リフレクター!!」
相手は非接触の遠隔物理技、対してこっちはリフレクターでさらに守りを固める。そして、鋼はエスパーを半減……ネズさんがそれをわかってないはずがない。が、それを使ってきたってことは麻痺でカラマネロがまともに動けない以上、それしか選択肢がないってことだ。
「これで終わりだ。ボディプレス!!」
そして、二発目のボディプレスでカラマネロを沈めた。
「上出来だ、ジバコイル。戻っておいで」
ジムリーダーを相手にこのコンボを
「とどめだ。さあ行ってこい、ニンフィア」
「ふぃあーお♪」
さあ、残るポケモンはあと一体。
マサルの戦いに、あたしは違和感を覚えずにはいられんかった。初手のバンギラス。これはまだわかる。格闘技を覚えさせてるけん、悪タイプ相手にも有利に立ち回れるから。やけど、ニンフィアの天敵であるスカタンクを倒した時点で、バンギラスはその役割を十分果たしていたはず。
にもかかわらず、バンギラスを交代させることなく戦闘を続行。兄貴にはバンギラスの弱点を突けるズルズキンがいるのに。まるで、あえてそれを誘っていたかのような……。
結果として、バンギラスはズルズキンも撃破。そこでようやくバンギラスを交代させたマサルが次に出したのはジバコイル。この選出にも、大いに疑問が残った。
そこまでニンフィアを温存する理由があるん?
「なんだ? マサルは一体……何を狙っている?」
マサルと付き合いの長いホップは顎に手を当ててポツリと呟いた。そして、マサルの戦いを誰よりも近くで、
普段の天真爛漫な笑顔は、微塵もない。マサルの一挙手一投足を見逃すまいと言わんばかりに、あたしが今まで見たことがないような真剣な表情を浮かべていた。
マサルが何の考えもなしにこんな戦い方をしているとは思えない。マサルは、直感型の極みともいえるユウリと違って、あたしや兄貴と同じようにバトルを理詰めで考えるタイプだ。
それに、マサルは言っていた。「全ての手札を晒した上で兄貴と戦いたい」と。「これまで培ってきた全てをぶつけたい」と。
だから、マサルが手を抜いているわけじゃないっていうんはわかる。マサルが兄貴に全力でぶつかっていってるのはわかる。
でも、わからない。
だからこそ、わからない。
マサルが何を考えているのか、わからない。
「マサルは……」
そして、バトルが始まってから一言も喋らなかったユウリが、口を開いた。
「何かを───
やってくれたな。
やってくれやがったな。
三体のポケモンを倒され、満を持して最大の天敵であるニンフィアを出してきたこいつを見て、俺はようやく気がついた。
バトルが始まってからずっと拭えずにいた、この違和感の意味に。
こいつのバトルはジムチャレンジが始まってから……ヤローとのバトルから全て分析してきた。いや、こいつだけじゃない。俺はこれまで、対戦する可能性のある全てのトレーナーのバトルを分析し、その傾向を、癖を掴み、対策を立ててきた。
だからこそ、今までのジムリーダー達とのバトルとは違う戦い方を見せるこいつに、薄気味悪さすら感じていた。
俺の想定がことごとく外れたのは、こいつの策が俺を上回っていた……
こいつが、俺とのバトルでやろうとしていたことが、
一つ目の誤算は、俺の想定を超えるバンギラスの火力と耐久力。マクワのバンギラスとは何度もやり合っているからこそ、わかってしまった。こいつのバンギラスの個体としての強さが、マクワのそれを上回っていることを。
二つ目の誤算は、ジバコイル選出の意図を見抜けなかったこと。俺の想定では、ジバコイルを出してくるのはニンフィアやインテレオン、バンギラスを撃破した後だった。だがこいつは、あえて二番目にジバコイルを出してきた。
ただ、読みを外されはしたものの、俺はこの二つの誤算でこいつの、
その意図とは───
バンギラスとジバコイルの、試験。
それも、ジムリーダーを相手に。この俺を相手に、だ。
まったくもって、腹が立つ。
ただ、その怒りは、この俺を相手に試験をぶっこんできたことに対して、
こいつの意図を見抜くのが遅れた、自分自身に対してだ。
そもそも、だ。ここまで勝ち進んできたチャレンジャーは己の戦い方、スタイルを確立している。そして俺は、そんなチャレンジャーが、ダイマックスを使えない状況下でどこまで自分のスタイルを貫き通せるかを試す立場にいた。
そのはず、だった。
なのに、何なんだこいつは。
なんでこの状況で、迷いなく新しいことを試すことができるんだ。どんなメンタルをしていやがるんだ。
さらにこいつの厄介なところは、この試験が
ダイマックスが使えず、打つ手がなくなったチャレンジャーが破れかぶれの特攻や一か八かの賭けに出てくることは何度もあった。
そして俺は、そんなチャレンジャーを返り討ちにしてきた。
だが、こいつは違う。
こいつには、試験をぶっこんでもなお、
いや、そもそも。
勝てる算段があったとはいえ、こいつは俺に
この先を───
ああ、そうか。
初めからこいつはそうだったんだ。
負けるつもりは微塵もないが、たとえ負けても問題ない。
初めからこいつは、そのスタンスで俺とのバトルに臨んでいやがったんだ。
普通、ここまで勝ち進んできたチャレンジャーは……いや、
なぜなら、ジムチャレンジの終盤も終盤で、今更戦い方を変えたりパーティメンバーを変えたりという大幅なスタイル変更ができないから。
つまり、俺に敗北するということ自体が、ジムチャレンジの終わりに直結しかねないことを意味している。
だけどこいつはそうじゃない。
「たとえここで
こいつは本気でそう、思っている。ただそれは決して、過信や驕りなんかじゃない。
自信であり、現実。
ああ、クソったれ。
認める必要がなくなったはずなのに。
こいつは、俺と同種のトレーナー
「ったく、ジムチャレンジで本当に
ほとんど無意識の内に、そんな言葉を呟いていたことに驚く。おそらくこれは、こいつに対する俺なりの賛辞だ。
変化を恐れず、失敗を恐れず、新しいことに挑戦し、結果を出す。言葉にすれば簡単だが、それを実行できる人間がどれだけいる?
少なくとも、今。
俺の目の前に、一人。
「本当に、大した男ですよ───
勝敗は、決した。
マサルVSネズ、決着。
みなさん色々とツッコみたいところがあるかと思いますので、軽く解説したいと思います。
まず初めに、マサルはこのバトルで色々と試験要素をぶっこみましたが、決して
もしもマサル本人がここまでの旅で確かな自信をつけられなかったら、普通にニンフィアを先発させて戦っていたと思います。
そして、このバトルはマサルがジムリーダーに対して初めて「負けを勘定に入れているバトル」でした。カブさんとのバトルでもそんなことはなかったのにね。それだけ、ネズの実力が高かったということです。この辺についてのマサルの考えは次回で触れていきます。
なんでマサルがネズさんとのバトルでこんなことをしたのかというと、何度か触れましたが「先の戦いを見据えて」です。この辺も次回でもう少し掘り下げます。
あと、結果として「ふいうちバンギラス」という無法者が誕生したことはご容赦ください。この件について感想でツッコミを入れられても内容を変えるつもりはありませんので。あらすじの【注意事項】の通りです。
次回はユウリがマリィの実家に押しかけて「いちゃいちゃ百合百合お泊り会!(マサルとホップは泊まれません)」と「ネズトーーク! ~どうした!? マサル~」をお送りする予定です。多分めっちゃまじめな話になります。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします!
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そのうち「マサトーーク!! ~どうした!? ナンジャモ~(メインゲストグルーシャ氏)」をやろうと思うので読みたいと思った方はこちらをぽちぽちして評価をお願いします!