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ニンフィアがネズさんの最後のポケモンであるタチフサグマを倒し、俺の勝利が決定した。ふー、まだまだだな……試験的要素が大きかったとはいえ、俺はあまりにも
こいつらの能力を最大限引き出せるように、俺がもっと成長しないといけないな。
「ふぃあ~♪」
「お疲れ様、ニンフィア。今日も強くて可愛かったな」
しゃがみこんでニンフィアの頭を撫でてやると、嬉しそうな笑顔で俺に飛びついて頬ずりしてくる。
いずれにせよ、ネズさんを相手に試せたのはデカい。野生のポケモンや一般トレーナー相手だと試す前に相手が倒れるからな。正直、負けを視野に入れていたバトルだったけど、ポケモン達が本当にがんばってくれた。感謝しかねえよ。
「俺を相手に新たな挑戦をする度胸。変化を恐れぬ強さ……見事でした。お前のトレーナーとしての有様を見せてもらいましたよ。どうぞ『あくバッジ』です」
「ありがとうございます。……怒ってないんですか?」
「何をです? ジムチャレンジで本当にチャレンジしてきたことを? それとも、バトル前に俺を煽ったことをですか?」
「両方です」
「……別に、怒る程のことじゃありませんよ。俺が怒っているとすれば、このバトルにおけるお前の意図を最後まで見抜けなかった俺自身の不甲斐なさに対してです。俺にとっても学びの多い一戦でした」
ネズさんがそう言って手を差し出し、俺はその手を強く握る。よかった……てっきり「舐めプしやがってこの野郎!!」とか言われるかと思ってたけど、ちゃんと俺の意図は伝わった……というか読まれていたらしい。そうだよなぁ。七番目のジムリーダーである以上、それくらい読まれちまうよな。
「とはいえ、マリィをダシに使ったのは許せねえけどなあ!!」
「めっちゃキレてるじゃないですか!?」
「服を貸したのはいい!! マリィは甘辛コーデ好きで俺の服を無断で借りていくこともよくありましたからね!! 押し倒されたのも……よくはないがどうせ何かの拍子にマリィが転んで結果として押し倒された形になったのでしょう!! マリィはあれで小さい頃はお転婆でよく転んでいましたからね!! だが!! 『お兄ちゃん』と呼ばれたことは許せねえ!! 許してたまるか!! 俺なんて小さい頃からずっと『兄貴』としか呼ばれなかったのに……許さねえぞ絶対に!! 場合によっちゃ戦争だ!!」
「……小悪魔チックな笑顔で『マサルおにーちゃん♡』って耳元で囁いてくれました」
「そこに直れクソガキ!! ジムチャレンジなんて知ったこっちゃねえ!! 俺のガチパーティでぶっ潰してやるよ!!」
やっぱネズさんおもしれーな。俺は何一つ嘘ついてないのに……まあでも、ネズさんの気持ちもわかる。マリィみたいな可愛い妹がいたら俺だって絶対シスコンになるもんな。
「もう!! 二人とも何を言い合いよーと!? マサル!! バトルが終わったんやから早く行くよ!!」
そんな風にネズさんと小粋なトークを交わしていると、見かねたマリィがコートに入ってきて俺を連れ出そうと俺の腕をぐいぐい引っ張ってきた。
「待ちなさい妹よ。こいつのことを『お兄ちゃん』と呼んだ経緯を詳しく説明してもらわないと兄は納得できません」
「あ、あれはその場のノリで言っただけやけん……あたしの兄貴は兄貴しかおらんよ」
「聞きましたかマサルよ。お前は所詮、紛い物の兄……『ジェネリックお兄ちゃん』なのです。血の繋がった真の兄である俺の敵ではないのですよ」
「……マリィの頭を撫でたら『兄貴みたいやった』って言われました」
「てめえこの野郎マリィの頭を撫でるとか万死に値する!! 余程路地裏の染みになりてえようだな!!」
「ネズさん、さっき『変化を恐れぬ強さ』『学びの多い一戦だった』って言ってましたよね? ここはやはり、ネズさんのシスコンも変わっていくべきなのでは?」
「それとこれとは話が別!! マリィのことは生まれた時からずっと面倒を見てきて……妹であり娘のような存在なのです。いいや、俺にとってだけじゃない。マリィはこのスパイクタウンのアイドルであり女神……変わることで得られる強さがあることは認めましょう!! ですが!!
要はネズさんのシスコンはこれからも変わることはないってことだな。マリィはスパイクタウンのみんなから愛されてるし、マリィに何かあったら……それこそスパイクタウンが総力を上げてその元凶を潰しに来るんだろうなぁ。
そんなネズさんに、どうしても言っておきたいことがある。
「一片の淀みなく
「いきなりどーしたとマサル!?」
マリィのツッコミを無視し、俺は続ける。
「ネズさん……あなたはこれから、多様化するこの現代社会でどこまで『妹』に生き『シスコン』を貫けるかな?」
俺の問いに、ネズさんは迷いなくこう答えた。
「───無論、死ぬまで」
その言葉を聞き、俺はネズさんともう一度固い握手を交わした。
「え!? なんで!? さっきまであんなにいがみ合っとったのになんで急に仲良くなっとーと!? わからん……男ってほんとにわからん……」
「マリィは可愛いですねぇ」
「マリィは可愛いなぁ」
「二人して同じこと言うのやめんしゃい!!」
マサルとネズさんのバトルが終わって、マリィが小さい頃からよく通っていたレストランを貸し切ってエール団の人達も交えて大宴会をした後、なんと!! なんと私はマリィの自宅にお呼ばれ(押しかけ)されてしまったのだ!! マサルとホップは男の子だからポケモンリーグ運営の宿泊施設に泊まって、ネズさんはどこかに行っちゃったらしく、マリィの実家にマリィと私の二人きり。
……興奮してきたな。
こ、ここここれは!? マリィと一緒にお風呂に入って体を洗いっこしたりしてどさくさに紛れてちょっとえっちなところを触り合ったり一緒のベッドで寝て「今夜は寝かさないよ」的な感じでマリィと一晩中いちゃいちゃちゅっちゅ……。
んほぉ~!! スパイクタウンたまんねぇー!!
「ユウリ。お湯沸いたけん、先にお風呂入ってきんしゃい」
「うん。わかった!」
ぶへへへっ! これは途中でマリィがお風呂に乱入してくるパターンですねぇ。マリィが入ってくるまでにしっかり身を清めておかないと……。この前一緒に温泉に入ったけど、自宅のこじんまりとしたお風呂で身を寄せ合っていちゃいちゃするのもまた趣深し。
私ったらなんて風情のある女なのかしらぁ~?
待っててねマリィ♡ 私の魅惑の身体でマリィを私の虜にしてあげるから♡
ってマリィはもう私に「メロメロ」だったなぁ~っ!! こりゃ失敬!!
一時間後
「なんでお風呂に乱入してこなかったの!? 危うくのぼせるとこだったじゃん!!」
「そげんことするわけなか!! 乱入待ちで長風呂しとったと!?」
くっ……マリィめ。恋愛強者であるこの私を焦らすとはやるではないか……。でも、一緒のベッドで寝るのは譲らないからね♡
その後、マリィは自分の部屋に私の分の布団も敷いてくれようとしたけど、私の華麗なる話術(駄々をこねまくった)により、ベッドで添い寝する権利を見事に勝ち取ったのだ。
「今日のユウリ……ちょっと怖か……」
「ご、ごめんね……私、地元に同い年の女の子の友達がいなくて……こうやってお家に遊びに来たのも初めてで嬉しさを隠し切れなくて……本当にごめんね? 気持ち悪かったよね?」
「そ、そげんことなかよ! 実はあたしも……ユウリが初めてできた同い年の女の子の友達で、お家に呼んだのも初めてで……その、喜んでくれて……すごく、嬉しかった」
あぁ^~心のバネブーがぴょんぴょんするんじゃぁ~~~~~!!
反則だろこれ!! 反則だろこれ!! ベッドの上で二人で寝ころんだまま向かい合って恥ずかしそうに顔を赤らめて手を握ってくるとか反則だろこれ!! 私が男だったら問答無用で押し倒してR18の展開になってたよ!! えっちすぎる!! マリィがえっちすぎる!!
えちえちもんすたー ちぢめて えちもん
誰だ!! 私のマリィをこんな風に育て上げたのは!! 私が完全で瀟洒で清楚な淑女でよかったな!! こんな姿……他の男共には見せられない!!
「安心してマリィ。私が絶対にマリィを幸せにするからね!」
「なんでいきなりプロポーズみたいなこと言い出したと!?」
「くっ……私としたことが婚約指輪を忘れてしまうとは……!! はっ!? ヘアゴムを良い感じに縛り付ければ指輪っぽく見えるんじゃ……」
「強く縛り過ぎて鬱血しとーよ!? 外しんしゃい!!」
こんな感じでベッドの上でくんずほぐれつし終えると、自然とお互いに笑い合っていた。
「はぁ……はぁ……ゆ、ユウリはほんとにおかしな子やね。バトル中は……人が変わったみたいに、凛々しくて、格好良いのに……」
「こ、これも全部マリィが可愛すぎるのが悪い……私の、せいじゃ……ない……」
「もうっ、そげんことばっかり言って……! でもあたし、自分がこんな風にできるなんて思ってもなかった。あたしって、自分でも嫌になるくらい表情が変わらんし、笑うのが苦手やし……周りから『何を考えてるかわからん子』って思われるような人間なんやもん。小さい頃はそんなことなかったのに……兄貴にもすごく心配かけちゃった」
「その気持ち、わかるよ。私もね、今でこそ初対面の人とお話ししたり、誰かと仲良くなるのは得意だけど……小さい頃は人見知りしてばっかりだったんだよ」
「そうなん? 全然想像つかんね……」
だけどあの日、ガラルに引っ越してきたあの日……マサルとホップに出会ってから私の人生は変わった。ううん「始まった」っていうほうが正しいかな? 文字通り、世界が変わる感覚……毎日が大冒険で、新しい発見ばかりで……。
「あたしね、ユウリ達と出会ってから変われたんよ。最初は、スパイクタウンを復興させるために……みんなの期待を背負ってこのジムチャレンジに参加して……他のチャレンジャーはみんなライバルで、孤独に戦い続けるもんやって思ってた。でも、みんなと出会って、みんなと旅して、色んなお話をして、お互いに高め合って、
マリィはそう言って、もう一度私の手を握ってくれた。
「だから……ありがとう、ユウリ。あたしと友達になってくれて」
なんでだろう……その言葉を聞いて、私は無性に泣き出したくなってしまった。そう言ってくれたことが嬉しくて……すごく嬉しくて、私もマリィと出会ってから楽しいことがたくさんあって、お礼を言いたいのは……私の方なのに。
「ふふっ。ユウリはほんとに、そーゆーところが羨ましいくらい可愛らしかね」
マリィは
「そんなユウリやからこそ……あたしの一番の友達のユウリやからこそ、ちゃんと言うね? あたし───誰にも負けんから。ユウリにも、マサルにも、ホップにも、兄貴にも……チャンピオンダンデにも。絶対に、誰にも負けん。あたしが一番になる。あたしが、チャンピオンになるけん」
マリィの言葉を聞いて、私は胸が熱くなった。ネズさんとのバトル前にマリィがそう宣言した時も、私はその光景を見て自分の心が焦がれるような、焼かれるような不思議な熱に侵されていたんだ。
あの時はわからなかったけれど、今ならわかる。はっきりと。
私はそれを、言葉にできる。
「マリィ、私ね……」
私は、マリィの手を握り返して口を開いた。
「私がジムチャレンジに参加したのはね……ホップに誘われて、マサルが参加することになってたからなんだ。こんなことを言うと、怒られちゃうかもしれないけど……私にすごく大きな目標があったりだとか、志があったわけじゃない。マリィみたいに町のみんなの期待を背負って、覚悟を決めて参加したわけじゃない。ホップには『チャンピオンになる!』って目標があったけど、私にはチャンピオンっていう存在がどういうものなのかよくわかんなくて……ただ、ポケモンが大好きで、大事な二人のお友達が参加するから私も一緒に参加したんだ」
今にして思えば、その場の雰囲気に流されていた部分もあるんだろうなぁ……あの時は「チャンピオンになってガラル中の美味しいカレーを集める」とか、我ながらなかなかにアホなことを言っていた気がする。
ホップにはジムチャレンジで「ダンデさんを超えるチャンピオンになる」っていう明確な目標があって。
マサルにはジムチャレンジで私の知らない何かを手に入れようと必死にあがいていて。
私だけ、何もなかった。ただ漠然と参加していただけだった。
私は、ポケモンが大好き。バトルをするのが楽しい。でも、それだけじゃだめなんだ。
ここから
そのことを。
マサルが、ホップが───マリィが教えてくれた。
だから私も、覚悟を決めてマリィに宣言する。
「ここまで旅をしてきて、そのことをに気付くのに……随分遠回りをしちゃったかもしれない。だけど、私はもう、決めたから。私のことを『一番の友達』だって言ってくれたマリィに、最初に……言うね?」
なんだろう。胸がすごくドキドキする。心臓が、うるさいくらいに高鳴っている。でも、逃げちゃいけない。いけないんだ。マサルも、ホップも、マリィも、他のチャレンジャーの人達も、それぞれが色んな事情を抱えながら、それでも覚悟を決めているんだから。
私だけ、逃げるわけにはいかない。
「私が───チャンピオンになる」
マリィは真っ直ぐに私の目を見つめて、真剣な表情で私の決意を聞いてくれた。そしてすぐに、さっきみたいに自然な笑顔を浮かべてくれた。そのことが無性に嬉しくて、私は思わずマリィを抱き締めていた。
「あたしが勝つ。負けんよ、ユウリ」
「私だって、マリィにもマサルにもホップにも……誰にも負けないから」
「負けた方が勝った方にバトルカフェの新作を奢るっていうんはどう?」
「えへへ、それ最高。マリィの財布、空っぽにしてあげるからね」
「ユウリこそ、マサルに泣きついても知らんけんね」
私、マリィに出会えてよかった。マリィと友達になれてよかった。心の底から、そう思うよ。
そして、私が今、心の中に思い浮かべている人物は、マリィの他にもう一人。
ねえ、マサル。
私は今日、覚悟を決めたよ。
マサルはどうなの? 探しているものは、見つかりそうなの?
マサルがね、必死にあがいて何かを手に入れようとしているのは知ってるよ。
だけどね。
あんまり遅いと───
ただ、それでも私は信じてる。
マサルが必ず、その答えを見つけられることを。
そして今後、私の前に立ちはだかるであろう最大の障壁が。
マサルだということを。
私は誰よりも、信じてる。
レストランで行われていた宴会を抜け出し、俺は一人でスパイクタウンの町中を歩いていた。宴会自体は最初の方はエール団のおっさん達がマリィの成長と健闘を称え、俺達にちょいちょい文句を言っていたりといった感じだったんだけど、アルコールが入っておっさん達が泣きながら同じ昔話を延々とリピートし始めたので逃亡。
ユウリはマリィの家に泊まり、ホップは先に宿泊所に帰るって言ってたから久々に一人の夜だった。
ネズさんとのバトルが終わってからはバンギラスが大人気で、おっさん達と写真を撮ったり、バンギラスがちびっ子達を担いで楽しそうに走り回ったりしていた。田舎特有の排他的な雰囲気なんてない、温かい町だ。
俺はそのまま町を出て坂道を下り、海岸へと出る。月が出ていたことと灯台の明かりのおかげで浜辺は思った以上に明るかった。肌寒さを感じるくらいの海風だが、宴会で火照った体を冷ますには心地良い。
ふー……さて、残るバッジはあと一つ。
このジムチャレンジを通して少しずつ、本当に少しずつだけどあの日の自分に近づいているのがわかる。だけど、まだ遠い。まだ足りない。まだこんなところで満足しちゃいけない。
マリィは覚悟を示した。
ホップは憧れるだけの自分と決別した。
ユウリは能天気だが馬鹿じゃない。旅の終わりが近づいている今、そう遠くない内に答えを出すだろう。
それに比べて俺はどうだ? 未だに試行錯誤を繰り返し、暗闇の中をもがき、あがいている。
ま、それがなんだっつー話だけどな。この程度で焦って劣等感を感じられるような
焦る余裕なんざ、ねえ。劣等感を感じる余裕なんざ、ねえ。こちとら毎度毎度必死こいて全力疾走するしかねえんだからな。しかも次の相手はトップジムリーダーキバナさん。他の地方ならチャンピオンになれる実力の持ち主。
そんなのが最後の最後に立ちはだかってんだ。迷えば、足を止めればその瞬間に───負ける。
だから俺は絶対に迷わない。足を止めたりしない。
時には迷うことや足を止めて考えることが必要だとは思うけど、
対キバナさん戦では、タイプ相性関係なく全戦力を総動員して、なおかつ初めから何体かの
キバナさんは、それだけの実力者だ。
加えて、あまり慣れていないダブルバトル。
自分と相手が出すポケモンが二体ずつ、単純に指示が二倍になるだけじゃない。四体のポケモン達のタイプ相性にコンビネーション、さらにキバナさんは天候操作をしてくる。
ゲームのように互いが選択肢を選び終えるまで時間が止まってくれるわけじゃない。四体のポケモン達と場の状況を瞬時に把握し、最適解を導き出し続けなければ
ダブルバトルでは、シングルバトルと比較して求められるマルチタスクのレベルが桁違いだ。だからこそ、一瞬の迷いが、判断ミスがそのまま敗北に直結する。
次に俺達が挑むのは、そういう次元の戦いだ。
気合や根性、闘志だけでどうにかなるようなもんじゃない。
奇策でどうにかなるような相手じゃない。
これまで培ってきた、ポケモントレーナーとしての一瞬の判断力が、純粋なスキルが最大限求められる戦い。
どれだけ仲間のポケモンが強かろうとも、それを活かす采配のできないトレーナーはここで終わる。
まさに、ジムチャレンジの最後にふさわしい相手だな。
瞬間のマルチタスク? 上等だ、俺の得意分野だよ。
己の持てる力を全て尽くす死闘? 上等だ、
ってことで、俺がキバナさんに勝つために今すぐできること……疲れたから帰ってぐっすり寝る!!
「なーにを一人で黄昏てやがりますか?」
と思っていたところで、不意に後ろから声をかけられたので振り返るとネズさんが立っていた。あれ? エール団の酔っぱらったおっさん達に絡まれてましたよね?
「酔っ払いの相手は苦手だからね。逃げてきたんですよ」
ネズさんはそう言って俺の隣に並んだ。バトル中も思ったけど、この人めっちゃ猫背だな。将来腰痛めそう。
「
「言えなかったこと?」
「ええ。他の人には聞かれたくなかった話ですからね。お前がこのジムチャレンジに
そしてネズさんは俺の目を真っ直ぐに見てこう言った。
「ユウリと
その言葉を聞いて、俺が「思ったこと」は一つだけ。
そして、ほとんど無意識の内に、俺はその「思ったこと」を口に出していた。
「そんなの───
これは、
ヤツの返答を聞いた瞬間、この言葉が俺の脳裏に浮かんでいた。
ユウリのような「理外の理にいる天才」ならば、まだわかる。彼女と同じような力を持つ男が、俺達の前に七年も立ちはだかっているんだからな。
だが、こいつは一体なんだ? なんなんだ?
普通、あんなことを言われてしまえば、怒りや悲しみ……何でもいい。何かしらの感情を見せるだろうが。
なんで、それほどまでに……こんなにも残酷な現実をあっさりと受け入れられる?
しかも、しかもだ。
こいつは、現実をあっさりと受け入れた上で、
諦めているのならば、わかる。まだわかる。
「俺はあいつとは違うから」「あいつには才能があるから」そんな言い訳をするような人間ならば、わかる。だがこいつは、少なくとも絶対的な才能の壁を言い訳にするような人間じゃない。そもそも、それを言い訳にするような人間はここまで勝ち進めたりしない、が。
それを差し引いても、こいつのこの精神性はなんなんだ。
何があったら、何をどうしたらたった十四歳でそんな精神を
そこで、気付いた。
こいつの精神性の根本にあるもの……それはさっぱり理解できないが、
普通、あれだけ飛び抜けた才能を間近で見続けてしまえば、必ずどこかで心が折れる。だが、マリィもホップも折れちゃいない。本人達の心の強さもあったんだろうが、それ以上に、マサルがいたからだ。
何があっても、当たり前のようにユウリという天才の隣に立ち続けている。そんなマサルに二人は無意識の内に感化されたのだろう。
ただ俺は、マサルの周囲への影響力だけを見て、こいつを異才だと思った訳じゃない。
こいつは、ユウリのことだけじゃなく、起こりうる全ての事象を「現実」として受け入れられるだけの精神力を持っている。
だが、それは言い換えれば───
何を当たり前のことを、と思うかもしれない。
だが、その「ピースを揃える」という行為がどれだけ困難なのかをどれだけの人間が理解している?
そしてこの男は、マサルはそれを理解している人間だ。
理解しているから、こんなにももがき、あがいているのか。俺を相手に試験をぶっこむほどに。
なるほど、ダンデがマサルを高く評価している理由は
こいつならば「ユウリに勝てないという現実」を受け入れた上で、ピースを揃えて「ユウリに勝つ」という現実にしちまうかもしれない。
マサルにとって「ユウリに勝てないという現実」も「ユウリに勝つという現実」も同価値。両者の違いは、ピースが揃っているか否か、それだけだ。
そしてそれを、ユウリではなくダンデに置き換えれば───
そこまで……
俺達ジムリーダーを、差し置いて。
いいだろう。やってやろうじゃねえか。
理外の理を生きる天才だろうが、そんな天才を食い殺しかねない異才だろうが関係ねえ。
今年で引退だろうが関係ねえ。
「全員まとめて、チャンピオンカップで俺が潰してやりますよ」
そう宣言した俺を見て、マサルはただ手を差し出し、俺は強く───強くその手を握り返した。
【朗報】プレイヤーレベルの視点と才能を持つユウリちゃん、本気でチャンピオンを目指す
ガラルの未来は明るいね。マサル回でもあり、ユウリ覚醒回でもありました。ユウリだけジムチャレンジにおける目標がぼんやりとしていましたが、最終的にマリィとネズのバトルに脳を妬かれて覚醒した感じです。
ヒロインの覚醒を後押しするのは主人公じゃない。もう一人のヒロインだ!
ユウリとマリィがマサルに惚れちゃって、その結果マサルがパルデアに旅に出てナンジャモとの結婚報告配信とかしちゃったらユウリとマリィ禁断の百合ルートがあったかもしれない。
マサルに関してネズさんが色々分析していましたが、マサルを一言で表現するなら「異才」ですね。これに尽きます。
およそ常人には理解も共感もされない異常な精神性。感情移入しにくいな。やってることは割と王道のスポコンなのに、中身だけ見たら「本当に主人公なんかこいつ」って言いたくなる。
「ユウリに勝てない? そんなの当たり前だろ?」
でもピースさえ揃っちゃえば……。
「ユウリに勝てる? そんなの当たり前だろ?」
平気でこう言えちゃうし、それを現実にできちゃうのがマサルです。ただ現実を受け入れるだけじゃない異質の
次回、ナックルシティに向かいます。旅の終わりが近づいてきましたね。
ここからが本番な気もしますが……。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
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