評価、感想、誤字報告、ここすき等ありがとうございます!
執筆の励みになっております!
少年には
物心ついた時から自然が遊び場だった少年は、毎日の様に幼馴染と野山を駆け回り、夏は川で、海で泳いでいた。少年は、そんな幼馴染と共に野球というスポーツに打ち込み、少年はピッチャー、幼馴染はキャッチャーとして、二人で母校を甲子園へと導くことになる。
「神奈川も、宮城も、福島も、和歌山も倒してきた。あと一つ……あと一つで優勝だぞ、■■」
甲子園決勝戦当日、マウンドで向かい合う幼馴染は少年にそう言った。
「大阪のあいつらはどいつもこいつも化け物だ。プロ注のドラフト候補が何人もいやがる。でもな■■」
幼馴染は、ミットで少年の胸を叩く。
「俺は、お前があいつらに劣っているだなんて───一度だって思ったことはないんだぞ」
白い歯を見せて笑いながらそう言った幼馴染を見て、少年は表情を綻ばせた。
「お前のボールを誰よりも受けてきた俺が言ってやる。お前は、日本一のピッチャーだ」
しかし、現実は非情である。
ここまで全ての試合を一人で投げ抜いてきた少年の疲労は限界など、とうに超えていた。だがそれでも、少年は
もしも、もしも少年のコンディションが万全だったならばもう少し肉薄できていたかもしれない。だが、勝負の世界でifなど言い始めたらキリがない。そんな甘い戯言は通用しない。
存在するのは、結果だけ。
日本一に届かなかったという、結果だけ。
ただ、それでも少年を欲しがるチームは多かった。東京六大学、誰もが知っている有名企業、プロ野球スカウトの接触まであったほどだ。
しかし、少年が野球を辞めるという決断を変えることはなかった。
当然、周囲の人間は少年の決断に反対だった。「もったいない」「次のステージでやり返せばいい」「君はもっとすごい選手になれる」そんな台詞を耳に
そんな中。
「辞めちまえ辞めちまえ。雑音なんて気にするな。お前はもう、
周囲の人間が頼みの綱として幼馴染に説得を頼むも、幼馴染は
この幼馴染は、
「ただ、まあ……あれだな。これから先、一生お前のボールを受けられないのは正直寂しいぞ。だから、二十年後か三十年後か……俺達がおっさんになった時、
そう言ってくれた幼馴染の笑顔を見て、少年は静かに涙を流す。甲子園の決勝戦での敗北後でさえ、涙を見せなかった少年が。
甲子園から帰ってきて、周囲の状況が激変する中、何一つ変わらない幼馴染のその言葉に、間違いなく少年の心は救われていた。
幼馴染の言葉がなければ、きっと少年は野球を続けざるを得なくなり、
そして、二人の少年はいつかまた、同じグラウンドに立つという約束を交わした。
だが。
その約束が、果たされることはなく。
大学二年生、二十歳になったばかりの夏、不運な事故により───
「おはよう、マサル」
目を覚まして最初に飛び込んできたのはホップの顔だった。あれ? ホップとは別の部屋だったよな? なんで俺の部屋に……。そう思ってスマホロトムを確認すると、アラームをかけ忘れていたことに気付いて慌てて起き上がった。
「ふぃあ~お♪」
それと同時に、隣にいたふわふわとした感触の正体に気付く。どうやらボールから出たニンフィアが俺のベッドに潜り込んでいたらしい。
「マサルが寝坊なんて珍しいぞ。夜更かししたのか?」
「ネズさんとちょっと話しててな。でも、あんまり遅くならなかったんだけど……」
そこでホップが怪訝そうな表情を浮かべて俺を見ていることに気付いた。
「マサル……お前、泣いてるのか?」
「……え?」
ホップに言われて頬に手をやると、汗ではない水滴が指先に付着する。寝起きの欠伸で出た涙、じゃない。明らかに、流れていた涙だ。
「お前が泣くなんて……カブさんのメジャー復帰会見以来だぞ。怖い夢でも見たのか?」
「……覚えてねえな」
嘘だ。はっきりと覚えている。夢の内容も、涙の理由も。
随分と懐かしい夢だった。幼馴染と交わした、
絶対に、果たすことのできない、約束。
「とにかく、早く支度した方がいいぞ。お前が寝過ごす日に限ってユウリは早起きするからな」
ホップはそう言って部屋から出て行った。俺が嘘ついたことに気付いてんだろうなぁ……。それを聞いてこないあたり、あいつは本当に気遣いの達人だよ。聞かれても説明できねえけど。
「ふぃ~あ?」
ニンフィアが俺の涙を拭うように頬をペロペロと舐めていた。
「大丈夫だ。別に悲しいわけじゃないからな。心配してくれてありがとう」
そう言って頭を撫でてやるとニンフィアは嬉しそうに擦り寄ってくる。さーて、ユウリにイキリ散らかされる前にさっさと顔を洗って支度するか。
「遅いよマサル! このユウリちゃんを待たせるなんてけしからん! 全くけしからん!」
「悪かったよ」
待ち合わせ場所のスパイクタウン入り口にやってくるとすでにユウリとマリィが待っていた。思った通り、いつもは寝坊する癖にこういう時だけきっちり早起きして俺にマウントを取ってきやがる。
「ん~? んんん~? ん~?」
二人に近づくと、ユウリは首をかしげながら俺の周囲をちょこちょこと動き回りながら俺の顔を見上げてきた。何をしとんねん。
「何かあった? マサル、疲れた顔してるよ?」
ユウリが両手で俺の両頬を包み込むようにそっと触れてくる。こいつは本当に……こういう時だけは鋭いな。
そう思って頭を撫でてやるとユウリはふにゃふにゃとだらしない笑顔を浮かべた。
「そういうお前こそ、ちょっと雰囲気変わったな」
「ふはははーっ! 気付いたかねマサルくん! 今の私はね、超スーパーユウリちゃんなのだっ! 覚悟を決めた私はさいきょーなんだからね!」
何言ってるのかよくわかんねえけど、「覚悟を決めた」っていうのは、多分
かけたんだろうなぁ……。
「そんなグレイトでハイパーな超スーパーユウリちゃんがマサルくんを癒してあげよう!」
ユウリはそう言って笑顔で両腕を広げる。覚悟を決めたのは立派だけど、大分調子に乗っているみたいだからここらでちょっとわからせてやるか。というわけで、ユウリをぎゅっと抱き締める。
「おっおっ……おふっ……ふへっ……ふひひひっ……」
途端にユウリは耳を真っ赤にして気持ち悪い笑い声を発し始めた。お前ほんとにそういうとこだぞ。昔はそんなことなかったのに年々気持ち悪くなっていってないかこいつ?
「ユウリのああいうところ、愛らしかね」
「……マリィもだいぶ重症だぞ」
さて、気を取り直してナックルシティに向けて出発だ。
「お、あんなところに兄貴がいるぞ! おーい、兄貴ー!」
エール団やネズさんに見送られ、スパイクタウンを出発して九番道路を西に進んで行くと、なぜかダンデくんと遭遇した。なんでこんなところにいるんだよ……と思ったけど、またいつもみたいに迷子になったんだろうなぁ。
「やあ、四人とも。順調にジムバッジを集めてるみたいだな!」
「ああ! あとはキバナさんをぶっ倒してチャンピオンカップに臨むだけだぞ!」
「キバナは本当に強いぜ。なんせ、俺がライバルと認める男だからな!」
ダンデくんがチャンピオンになってから七年、一度もダンデくんは負けたことはないけれど、そんなダンデくんのポケモンを一番倒しているのがキバナさんだ。まあ、キバナさんはキバナさんでタイプ相性の関係でメロンさんに全敗してるらしいけど。そう考えると、ガラルは割とジムリーダーのパワーバランスが取れている方だよな。
「俺も兄貴のライバルだぞ! 兄貴を超えるチャンピオンになるんだからな!」
「残念やけど、チャンピオンになるのはあたしやけん」
「ダンデさんの無敗伝説を終わらせるのは私なんだよなぁ~!」
「三人とも、その意気だ。だが、俺と戦うにはチャンピオンカップを勝ち抜く必要があるぜ。しかも今度のジムリーダー達はチャレンジ用じゃない本気のメンバーでかかってくる。過酷なジムチャレンジを突破したチャレンジャーでも一筋縄じゃいかない相手ばかりだ」
盛り上がる四人を俺は一歩退いたところで眺めていた。会話に混ざれない、というよりも今の俺が混ざってもしょうがないって感じだ。実際、まだまだ暗中模索してるわけだし。
「マサルは……そうか。まだ見つけられていない、というよりも
ダンデくんは俺の頭を撫でながらそう言った。ただ強いだけじゃない。こういうところが、ダンデくんをチャンピオンたらしめる理由。
チャンピオンの、器。
「ありがとう。ま、ダンデくんはチャンピオンらしく玉座で踏ん反り返ってなよ。
そこで「俺が」と言えないのが、俺自身の弱さだ。そんなことはわかってる。だからといって、立ち止まるわけにはいかない。全てが終わった後に後悔しないために、俺は最後の最後まであがき続ける。
「期待してる」
子供のような笑みを浮かべてダンデくんがそう言った瞬間だった。突如、爆音とともに激しい振動が俺達に襲い掛かる。
「わっ、わぁっ!?」
バランスを崩したユウリを抱き留めてやり周囲を見回すと、マリィはホップが支えていた。さすホプ。ガラル紳士の鑑。
「あ、ありがとマサル。びっくりしたぁ~、今の……地震?」
「だな。結構でかかった」
「いや、ただの地震じゃないみたいだぜ」
ダンデくんの視線の先を目で追うと、そこにあったのは巨大な赤い光の柱。俺は……いや、俺達はあの光の柱に見覚えがあった。ワイルドエリアでいくつも見てきた光の柱。それが、なんでこんな所に……?
「あれは、ダイマックスできる巣穴で見た光の柱だぞ? この辺りにパワースポットなんてあったのか?」
「いや、ないはずだよ。パワースポットがないから兄貴はジムを移さんかったんやし」
「トンネルの向こう、か。俺はトラブルを片付ける! ジムチャレンジの邪魔なんてさせないぜ。君達はそのままナックルシティへ向かうんだ!」
うーん、なんという頼れるお言葉。やっぱチャンピオンはそうでなくちゃな。というか、これが本来のあるべき姿だよな。トラブルを全部主人公が解決することになった他の地方がおかしいんだよ。
よーし、ここはダンデくんに任せ───
「って! ちょっと待ったダンデくん!」
俺は慌ててダンデくんを呼び止める。あ、あぶねーあぶねー! 一番大事なことを忘れるところだった。
「リザードン!」
「ばぎゅあっ!」
俺が呼ぶと、ダンデくんのリザードンがボールから飛び出してきた。
「あの光の柱までダンデくんを連れて行ってくれるか? ダンデくんが迷わないように」
「ばぎゅっ!!」
リザードンが元気よく返事をする。
「いや、マサル……あんな目立つ光の柱、迷いようがなかよ?」
「甘いぞマリィ。兄貴の方向音痴を過小評価しすぎだぞ」
「ダンデさんは道なりに真っすぐ進めば着く隣町に行くまでに迷子になる人だよ」
「い、いくらなんでもそれは言い過ぎじゃ……」
「ナイスだぜマサル。何せ俺はリザードンの案内がなければエンジンシティの昇降機にすらたどり着けないからな」
「逆にどうしたらそーなるとですか!?」
マリィの悲痛なツッコミも虚しく、リザードンはダンデくんを引き連れて光の柱へと向かっていった。これで問題なく辿り着けるだろう。我ながらファインプレーだったな。
「というか……チャンピオンのリザードンが普通にマサルの言うこと聞いとる……」
「ヒトカゲだった頃から一緒に遊んでたからな。俺だけじゃなくてホップやユウリの言うことも聞いてくれるよ」
「あたし……もうハロンタウンのことは何もツッコまんけんね!」
謎の地震の一件以降、特にトラブルらしいトラブルはなく無事にナックルシティへと到着してポケモンセンター前までやってくると、なんとダンデくんも迷うことなくここまで来ていた。き、奇跡だ……。てっきり、解決したらまたどこかわけのわからんところに行っちゃうかと思ったのに。さすがリザードン。
そして、ダンデくんだけでなくソニアちゃんともう一人意外な人物……マグノリア博士もいた。
「兄貴ー! 問題なく解決できたみたいだな! SNSですっげー話題になってたぞ!」
あの赤い光の柱の下で何が起こっていたのかというと、ダイマックス化したポケモンが暴れていたとのことだ。あの辺りにはパワースポットがないはずなのに、なぜそんなことになったのか。それを調査するためにマグノリア博士がローズ委員長に呼ばれたらしい。
「今のところ何が原因かはわかっていません。データが全く足りないのでね」
「おばあ様! 私も手伝います!」
「お願いね。ブラックナイトを誰よりも調査しているあなたなら、何かわかるかもしれません」
「え? あの赤い光が厄災かもしれないってことですか!?」
ユウリが驚いて尋ねるも、マグノリア博士は首を横に振るだけだった。まだ何もわかっていない状態だから憶測で話すのははばかられたらしい。ただ、博士の反応からしてきっと無関係ではないのだろう。
……なんか、ここに来てすっげーきな臭くなってきたな。
さっきの現象が、たまたま自然に起こったものなのか。はたまた、人為的に引き起こされたものなのか。
まあいっか。そんなのを考えるのは俺の仕事じゃない。ってか、そんな余裕ねえし。
「兄貴! 俺達も何か手伝えることはないか?」
「ホップ、こういうのは専門家に任せておけばいいんだ。素人が下手に首を突っ込んでもろくなことにならないってことを俺はよーく知ってる」
「ホップ、気持ちはすごくありがたいが、マサルの言う通りだ。俺が望むものはただ一つ……最高の決勝戦。俺達が未来を守るから、みんなはジムチャレンジに集中してくれ! キバナは
「そうだな! 兄貴は最強のチャンピオンだもんな!」
「マグノリア博士もいるしな」
「私もいるでしょ!?」
俺がそう言うとソニアちゃんにほっぺたを引っ張られた。めんごめんご、ソニアちゃんも結構頼れる感じになってきてるよ。
というわけで、謎のダイマックス現象については専門家達に任せて俺達は対キバナさんに集中しよう。キバナさんを相手にする……実質チャンピオンと戦うみたいなもんだからな。
そして俺達はポケモンセンターでポケモン達を回復させた後、城門をくぐって城の中もといスタジアムの中へ入ると予想外の人物と再会した。
「やあ、みんな。元気にしてたかい?」
「ほんとにどこにでもいますねダイゴさん」
ダイゴさんとはワイルドエリアの砂漠で拾ってもらってから、アーマーガアタクシーでナックルシティに送ってもらって以来だな。この広いガラルで遭遇し過ぎだろ。どんだけ俺達と縁があるんだよ。
「こんなとこで何やってんすか?」
「エネルギープラントを見学させてもらっていたんだよ。ローズ委員長は本当に素晴らしいシステムを考案したね! それに、マグノリア博士とも石談義ができてとても有意義な時間を過ごせたよ!」
それ、談議になりました? ダイゴさんが一方的に熱く語っただけなんじゃないですか? とは言えなかった。ダイゴさんめっちゃご機嫌だし、水を差すこともないだろう。
「ただ、
ダイゴさんが目を細めて言う。まあ、ホウエン地方も古代ポケモンが復活するとかなんとかで大変でしたからね。アクア団やマグマ団のこともあるし、俺達の知らないところで「人間の悪意」ってやつにたくさん触れてきたんだろう。お労しやダゴ上。
「あとついでに、ナックルスタジアムでの解説を任されているんだ」
「そっちがついでなんや……」
そして、打って変わって笑顔になったダイゴさんにマリィが呆れたように言う。多分「解説するからエネルギープラント案内して!」って感じでゴリ押ししたんだろうなぁ……。
「キバナくんの手持ちで注目すべきは何と言ってもジュラルドンだよね『鋼・ドラゴン』という耐性が非常に優秀な複合タイプに加え高い物理防御に特殊攻撃と意外にも鈍足ではない速力特殊防御は控えめながらも補助技で十分カバーができるそれに最近パルデア地方でジュラルドンの研究が進んでてどうも新しい進化先がありそうなんだよねドドゲザンと並んで
まーた始まったよ。これさえなかったら……って、ジュラルドンに進化先? 今さらっと聞き捨てならないことを言ったよなこの人? バトル中にキバナさんのジュラルドンが進化して蹂躙されるなんて勘弁してくれよ。フラグじゃないよな?
「ダイゴさん。元ホウエンチャンピオンの目から見て、キバナさんはどうなんだ?」
「強いよ、文句なしにね」
話の流れを変えるために、ホップが問いかけるとダイゴさんは迷いなく答えた。
「ドラゴン使いとしてならウチのゲンジの方が上だろうけど……僕はキバナくんほどの天候使いを見たことがない。ダブルバトルにも精通しているし、あの若さで本当に大したものだよ。他の地方でならチャンピオンになれるという評価にも納得だ」
「じゃあじゃあ! ダイゴさんとキバナさんがバトルしたらどっちが勝ちますかー?」
ユウリめ、すげえこと聞きやがったな。確かに気になってはいたけど、相手によっちゃ怒られるぞ。まあ、ダイゴさんが相手だからズケズケ聞いたんだろうけど。
「
そして、ダイゴさんはユウリの問いに嫌な顔一つせず、真剣な表情で答えた。
まじかよ……「僕が一番強くてすごいんだよね」とか言ってたのに、ハルカさんにチャンピオンの座を譲ったとはいえホウエン地方のナンバーツーだぞ? 世界で見ても十本の指には入るであろう実力者なのに……そのダイゴさんがはっきり「勝てる」って言えないって。
相対的にメロンさんがやべーことになってんな。
「光栄ですね。俺様の実力をそこまで高く評価してもらえるとは」
その時だった。日に焼けた高身長イケメンのキバナさんが人懐っこい笑顔を浮かべながら俺達に近づいてきた。おいやめろやめろ。これ以上イケメン濃度を上げるんじゃねえ。ホップもイケメンだし、俺の肩身が狭くなるだろーが。
「ナックルシティのジムリーダーキバナです。どうぞよろしく」
「ツワブキ・ダイゴ。ただのしがない石マニアさ。気軽にダイゴさんと呼んでくれるかな?」
二人はしっかりと握手を交わすも、視線でバチバチにやり合っていた。イケメン同士で単純に絵になるのもそうだけど、これだけの実力者が火花を散らし合ってるのを見ると胸が熱くなるな。
腐女子には掛け算されてそうだけど。どっかから「ダイキバ尊い……」とか聞こえてきそうでこえーわ。
「イッシュの英雄様も来ているみたいだし、今年のチャンピオンカップの解説にはあのレジェンド達を招いています。せっかくの機会ですし、エキシビションマッチでもやりますか?」
「楽しそうだね。ガラルに来てからはまともにバトルをしていないし、ぜひ参加させてもらうよ」
あ、トウコさんが来てることは把握してるんすね。でも、あのレジェンド達って誰だろ? マスタードさんのことかな?
「じゃあ、詳しい話はまた今度ということで俺様は仕事に戻ります。……さて四人とも、ついてきな。俺様のジムミッションに挑戦させてやるぜ」
「ん? スタジアムでやるんじゃないのか?」
「あー、まあ……色々大人の事情があんのよ」
「大人の事情?」
ユウリが首をかしげて尋ねた。キバナさんが言葉を濁したってことは……そういうことなんだろうな。
「ユウリ、ヒントだ。キバナさんに挑戦できるジムチャレンジャーは何人くらいだと思う?」
「う~ん……十人くらい?」
「そう。
「あ、そっか。だからターフタウンやバウタウンのジムはすっごい仕掛けだったんだね! 序盤でチャレンジャーがたくさんいるから!」
「ラテラルタウンやキルクスタウンは地域の独自性を活かして財源を確保できてるからああいう仕掛けを用意できる。ナックルシティも財源自体はあるんだろうけど、そこに金をかけるくらいならスタジアムの設備に回してバトルそのものをもっと盛り上げる方がメリットが大きいんだ」
スパイクタウンは単純に財政難、アラベスクタウンは妖怪無敵ババアの独裁政権というか治外法権状態だから例外だな。
「ほえ~、なんだか世知辛いお話だね」
「マサルてめえ、せっかく俺様が黙ってたのによ」
「財源……財源……うっ、頭が……マリィ、がんばるけんね」
「マリィが変なダメージ受けてるぞ」
そして俺達は受付を済ませて、笑顔のダイゴさんに見送られながらスタジアムを後にした。確か、ジムミッションはジムトレーナーさん達とのダブルバトルだったよな? どこでやるんだろ。
あと、どうでもいいけどデカいキバナさんの後ろを子供四人がトコトコついていってる光景ってカルガモ親子みたいだな。
道中、キバナさんと雑談している中でわかったんだけど、どうやら俺達がナックルスタジアムの
アラベスクタウン以外。
「うっし、着いたぜ。お前ら四人にはこの上でバトルをしてもらう」
「ん? キバナさん、ここは宝物庫だぞ?」
「はっ!? まさかキバナさん……ガラルの国宝を破壊して反旗を翻す気なんじゃ……!? マサル、どうしよう!! キバナさんが黒幕だよ!! 黒幕!!」
「そういや、このナックルシティにガラル中のエネルギーが集まるプラントがあるんだよな。それに、ダイゴさんもさっき『いくらでも悪用できそう』って言ってた。つまり!! トップジムリーダーとは表の姿!! キバナさんの正体はプラントの膨大なエネルギーを利用して古代の強力なポケモンを復活させてガラルの支配を目論む真の邪悪!!」
「兄貴に勝てないから悪の道に手を染めてしまったのか……絶対にそんなことさせないぞ!!」
「もしやさっきの地震と赤い光の柱もキバナさんの計画!? ソニアちゃん達に伝えなきゃ!! よーし、キバナさんの野望は私達が阻止するよ!! マリィとの結婚式を邪魔されてなるものか!!」
「二人とも本気でマサルの妄言を信じとーと!?」
「相変わらずおもしれー連中だなお前ら」
「で、出た~!! キバナさんの『へっ、おもしれー女』攻撃!! これにはガラル中の夢女子もにっこり」
「あ、そういえばマサル、さっきポケモンセンターで『キバナ様の負け顔尊い』って言ってる人いなかった?」
「いたな」
「え? 何それ俺様初耳なんだけど」
「もうツッコまんけんね!! あたしはこれ以上なんにもツッコまんけんね!!」
「マリィ、それ自体がもうツッコミなんだぞ」
「ネズの妹も苦労してんだなぁ……こいつら相手にしてると大変だろ?」
「まずい!! このままキバナさんが『良い兄貴ムーブ』をする流れでどさくさに紛れてマリィに『ナデポ』するに違いない!! ユウリ、ごー!」
「ふしゃーっ!!」
「ナデポって確か二十年くらい前の文化だぞ」
こんな感じでキバナさんとぐだぐだ雑談しながら案内されたのは宝物庫のさらに上、開けた屋上だった。石畳だけで殺風景だけど、ダイマックスさえしなければ十分にポケモンバトルができるだけの広さがあった。ダブルバトルをやるだけならここで問題ないな。
屋上に待機していたのは四人のジムトレーナーさん。どうやら一人ずつ別のジムトレーナーさんとバトルするらしく、俺の相手はレナさんという眼鏡が似合う綺麗なお姉さんだった。レナ……血まみれで鉈とか振り回したりしないっすよね?
で、ドラゴンタイプを出してくるだろうと予想してインテレオンとニンフィアのコンビを出すも、レナさんが繰り出したのはキュウコンとバクガメスというポケモンだった。バクガメスはともかくキュウコンに対して心の中で「なんでやねん」とツッコミながら、ニンフィアに「ひかりのかべ」と「リフレクター」で防御を固めさせている間にインテレオンの「ねらいうち」で撃破しようとするも、キュウコンのせいで「ひでり」になったため水技の威力が半減し大苦戦。最終的に「ハイドロカノン」でゴリ押しした。
ふー、やっぱ場に四体もポケモンがいると状況を把握するのが大変だ。レナさんもダブルバトルに慣れているだけあってめっちゃ指示が早かったし。たまたまインテレオンが二体に有利を取れたからよかったものの……まじで一手の遅れがそのまま敗北に直結するぞ。
周りを見回してみると、他の三人も無事にジムトレーナーさんを倒したらしく、これでミッションクリア。
「へえ、やるじゃねえか四人とも。俺様が鍛えたトレーナー達にあっさり勝っちまうとは。さすがここまで勝ち進んできただけはあるな。うっし、スタジアムに行くか! キバナ様が相手してやるぜ!」
あっさりじゃなかったすけどね。ジバコイル出してたらやばかったわ。まあ、とにもかくにもこれでキバナさんに挑む権利を手に入れられたわけで、ジムトレーナーさん達も一緒にスタジアムへ戻ることにする。
「レナさん、なんでドラゴンタイプ2体じゃなかったんすか?」
「成長が遅いドラゴンタイプを複数育成してその上ハイレベルな天候操作を両立させてダブルバトルに必要なスキルを身に付けてバトルに活かせるのはキバナ様くらいよ」
とのことだ。確かに、ドラゴンタイプって育成がめっちゃ難しいもんな。俺達四人だって誰も育ててないし。でもキバナさんはそんなドラゴンタイプを何匹も育ててダブルバトルでマルチタスクを鍛えまくってジムトレーナーも育成して実力は他の地方のチャンピオンに匹敵する……控えめに言って化け物だろ。
キバナさんのヤバさを再認識して色々と雑談しつつ、ジムトレーナーさんともちょっぴり仲良くなりながらスタジアムへ戻るのだった。いよいよ、最後のジムバッジを懸けた、チャンピオンカップへの出場権を懸けた戦いが始まる。
だが、このキバナさんとのバトルにおいて俺達四人にとっていくつかの
一番手はこれまで通りユウリ。先発はメタグロスとシャワーズ。対してキバナさんはギガイアスとサダイジャ。ギガイアスが場に出るなり天候が「すなあらし」になるものの、ダイゴさんから貰ったゴーゴーゴーグルのおかげでユウリの視界は問題ない。ってか、技の発動前に天候を変える特性ってずるいよな。
そして、ギガイアスが尖った無数の岩の破片をフィールドにばら撒き、ポケモン達の身動きがとりにくくなる。が、メタグロスはお構いなしに岩の破片を踏み潰しながら突撃し、ギガイアスにコメットパンチをぶちかました。そのメタグロスに対し、サダイジャが「10まんばりき」をお見舞いしようとするも、その寸前にシャワーズの「ハイドロポンプ」が炸裂しサダイジャが戦闘不能となる。
が、サダイジャもただでは終わらない。倒れ際に体内にため込んでいた砂を吐き出し、さらに「すなあらし」の影響が強くなってしまった。
そして、キバナさんは即座にフライゴンを呼び出すと同時に、ギガイアスに「じしん」を命じる。
空中にいるフライゴンに「じしん」の影響はなく、ギガイアスは容赦なくメタグロスとシャワーズに大ダメージを与えるも、ユウリは
「耐えてメタグロス!! シャワーズ、なみのり!!」
メタグロスの耐久力を信じ、ユウリはメタグロスと「ステルスロック」によってばら撒かれた岩の破片ごと、「なみのり」でギガイアスとフライゴンを押し流したのだ。容赦がない、普段のユウリなら絶対にこんなことをしないが……キバナさんが相手だから
ギガイアスはこれで戦闘不能になるも、フライゴンは体勢を立て直してメタグロスに「だいちのちから」を使ってとどめを刺そうとする。だが、メタグロスの「こらえる」によって「だいちのちから」は耐えられ、シャワーズの「れいとうビーム」で今度こそフライゴンは戦闘不能になった。
「荒れ狂えよ、俺のパートナー!! スタジアムごと、あいつを吹き飛ばす!!」
「シャワーズ、メタグロス、ありがとう! 戻っておいで!」
キバナさんはジュラルドンをキョダイマックスさせ、相対するユウリはエースバーンとルカリオを呼び出し、ルカリオをダイマックスさせる。
「行くぜ……竜よ吠えろ!! キョダイゲンスイ!!」
「ルカリオ、ダイナックル!! エースバーン、とびひざげり!!」
結果は、ジュラルドンの守りを崩し切ったルカリオとエースバーンの勝利。
これでユウリは無敗のまま、しかも
わかってはいた。わかってはいたが……本当にとんでもねえな、ユウリ。
「はははっ! ユウリのヤツ、すごすぎるぞ! 俺も負けていられないな! 次は俺の番だぞ! キバナさんをぶっ倒してくるからな!」
「ホップ、気合いよ! マリィのエールは効き目バッチリやけんね!」
「マリィのエールの効果が弱まりそうだから俺は心の中だけで応援しとくわ」
「サンキューだぞ二人とも! じゃあ行ってくる!」
ホップは両頬を両手で叩き、闘志あふれる表情で控え室を出て行った。
だが、ここで生じる、いくつかの───
それは───
「決して、お前
キバナさんのその言葉を聞き、俺はモニター越しながらも、背中に冷たい汗が伝うのを自覚した。ああそうだ、当然だ。これは、ありうべからざる事態。そんなわけが、ない。
わかっていたはず。いいや、俺は、俺達はわかっていなかったんだ。
「じゃあ、なぜお前達は俺様に
これが、これが───
「
チャンピオンダンデに次ぐ実力者。
「残念だったな、チャレンジャー」
トップジムリーダー───キバナ。
「そうやすやすと突破できるほど、ナックルスタジアムは甘かねえぞ」
ホップとマリィが───負けた。
ゲームでホップは「速攻キバナさんを倒したぞ!」って言ってましたが、パーティのバランスを考えた時に速攻倒すのは無理だよなと思い、しかもダブルバトルの経験が浅すぎるから一発突破は難しいのではないかと考えました。それに加え、キバナは「他の地方ならチャンピオンになれる」「ダンデがライバルと認めている」という設定から、あっさり勝てるような相手じゃない化け物トレーナーであるため、こういう展開にしました。
決してホップやマリィを過小評価しているわけでも軽んじているわけでもはありません。むしろ、二人をゲームより強くしていると思っているくらいです。ただ、相手が悪かった……通常のシングルバトルなら勝てていたと思います。それくらい、ダブルバトルは現実に置き換えるとシングルバトルとは比にならないほど難易度が高いと私自身は解釈しています。また、二人のジムチャレンジはこれで終わりではなく、普通に再挑戦するのでご安心ください。まあ、ユウリはそんなキバナ相手にストレート勝ちしてるんですけどね。なんやこいつ。
また、冒頭に出てきた前世の幼馴染くん。マサルには前世にもホップのような眩しい幼馴染がいました。彼のおかげでマサルは第二の人生を楽しく過ごせているといっても過言ではありません。文字通り恩人ですね。二度と会うことはできませんが。
次回、マサルVSキバナ
当然ながら、これまでのジムチャレンジで一番苦しい戦いになると思います。でんてぃーまーんがんばえー!
そして、次回でsecond seasonが終わります。次々回からfinal season……つまり、最終章に突入します。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
……ドラパルトはダンデではなくキバナに譲ってあげてもよかったのでは?
X始めました。よろしければフォローお願いします!
よろしければこちらをぽちぽちして評価をお願いします!