評価、感想、誤字報告、ここすき等ありがとうございます!
執筆の励みになっております!
No.0056 えちもん!!ソニアちゃん
勝った。
俺が、勝った。
あのキバナさんに……ガラルのトップジムリーダーに、俺が、勝った。
反射的に、拳を高く掲げ、叫んでいた。
呼吸が荒く、心臓の音がうるさい。熱い。身体が、燃えているかのように熱い。
ここにきてようやく、ようやくスタジアムの大歓声が耳に入ってきた。
インテレオン、ニンフィア、バンギラス。
三体の犠牲を払いながらも、俺が、勝った。
「シャンデラ!!」
思わず駆け出し、シャンデラに飛びつく。最後の最後でこいつが決めてくれた。あのジュラルドンを、キバナさんのジュラルドンをシャンデラが倒した。いや、シャンデラだけの力じゃない。最後の一撃までにバンギラスが文字通り体を張ってジュラルドンを消耗させていたからこそ、だ。
逆に言えば、あそこまでバンギラスが追い詰めた上でシャンデラの最大火力「オーバーヒート」でどうにか倒すことができたんだ。あれを耐えられてたら……正直あのままジュラルドンに押し切られていただろう。
「まさか俺様に勝ちやがるとはな。
「……ありがとうございます」
「これでお前はすべてのジムバッジを手に入れた。が、ここで終わりじゃねえ。むしろ、ようやく
そう。俺はただ、チャンピオンカップへの出場権を、「セミファイナルトーナメント」への出場権を手に入れただけ。ここから先に立ちはだかるのは、ジムチャレンジを勝ち抜いたトレーナー。その先には、
そして、ガラルの全ポケモントレーナーの頂点に立つ男───チャンピオンダンデ。
果てしない、本当に果てしない道のりだ。
「俺様がいるところまで勝ち上がってこいよ。お前には最後の最後で天候操作の主導権を握られた。このでけえ借りをさっさと返してえからな」
キバナさんともう一度戦う。それが何を意味するのか。
つまり、俺がセミファイナルトーナメントを勝ち抜くということ。
つまり、俺があいつに───ユウリに勝つということ。
ああ、そうか。
本当に、ここまで来ちまったんだな……。
「ま、お前の考えてることはわかる。悔しいが、間違いなく
キバナさんが差し出してきた手を、俺は強く握り返した。
「このキバナ様にここまで言わせたんだ。チャンピオンカップ……情けねえ試合しやがったら許さねえからな」
そしてキバナさんは俺にドラゴンバッジを手渡した後、背を向けてコートから去っていく。
その背中を見て色々と思うとことはある、が……とにもかくにも、これで、俺のジムチャレンジは終わった。
「マサルー! おめでとー!」
控え室に戻るなり、ユウリが俺に駆け寄って思い切り抱き着いてくる。我が事のように喜ぶユウリの笑顔を見て俺は思わず安心感を覚えてしまった。ただ、俺の胸に顔をぐりぐりと押し付けて甘えてくるユウリの頭を撫でながら、こう思う。
俺とお前が勝ち上がったその意味を、本当にこいつは理解してんのかねぇ。
「さすがだぞマサル! あの状況から大逆転するなんてな! お前が勝ったときに俺も思わず叫んだぞ!」
「本当にすごかったね。最後の勝利の決め手がキバナさんが得意とする天候操作やったなんて……うん、あたしもすごく勉強になったよ」
「さんきゅーな二人とも。ほんとにポケモン達には頭が上がんねえんわ。いつだって……どんな状況でも俺の期待に100%応えてくれるんだから」
俺自身はポケモン達の潜在能力を最大限引き出す指揮ができているのかと問われれば、胸を張って答えることなんてできないが、それでもできる限りのことは精一杯やっているつもりだ。自分の実力に自惚れるつもりも悲観するつもりもない。
「マサル達の熱いバトルを観て今すぐキバナさんにリベンジしたくなったけど、今は我慢……我慢だぞ俺!」
「そうよホップ。あたしらは特訓してちゃーんと対策を立てんといかんのやけん。ユウリ、マサル。疲れてるとこ悪いけど、あたしらの特訓に付き合ってもらうよ」
「もちろん! へっへっへ~。ユウリちゃんが手取り足取りナニ取り教えちゃうぜ~?」
ユウリが手をワキワキさせながらマリィに近づこうとするので首根っこを掴んで拘束する。こいつ、実は中身がおっさんだったりしないよな?
……まあいいや。とりあえずポケモン達を回復させて外のバトルコートで特訓だな。
着替えと回復を済ませてスタジアムの外へ出ると、ダンデくんとソニアちゃん、マグノリア博士を発見した。そういや、謎のダイマックス現象と赤い光について調べるって言ってたな。なんか進捗あったかな?
声をかけようとする前に、ソニアちゃんが俺達の存在に気付いたようで笑顔で手を振ってきた。
「みんなお疲れー! マサルとユウリはジムチャレンジ突破おめでとう! ホップとマリィは残念だったけど、まだまだ終わりじゃないからね! 次でしっかりリベンジ決めちゃえ!」
「もちろんだぞ! 俺達は全然諦めてないからな! 次こそキバナさんに勝つために今から四人で特訓するんだ!」
「落ち込んではいないようだな。その意気だ。さすがは俺のライバルだぜ」
「おお……兄貴が俺達のことをライバルだと認めてくれたぞ」
「何を言ってるんだ? ポケモントレーナーは誰しも俺のライバルだ!」
気遣いやお世辞ではなく、ダンデくんは本心でそう言っている。実際、幼稚園児が相手だろうと一切手を抜くことなく蹂躙するだろうからなあ……。ま、ダンデくんらしい。
「ソニアさん、あの赤い光については何かわかったんですか?」
「それがね~、あんまり進捗ないんだよ。あの現象が、大昔にポケモン達が巨大化して暴れ回ってガラルを滅ぼしかけたブラックナイトに似てるって推測できるくらいかな」
マリィが尋ねるとソニアちゃんが髪をいじいじしながら答えてくれた。なんか気軽に言ってるけど、その推測が当たってたら結構やばいことになるんじゃねえの? ブラックナイトの再来とかやめてくれよ、と思いながらも他の地方で実際にとんでもねえ事件が起こってるわけだし……ガラルも例外じゃないよなぁ。
ま、覚悟だけしておくか。なーに大丈夫大丈夫。ダンデくんがいるし。それにトウコさんやダイゴさんだって。いざとなったらどっかで観光してるNも手を貸してくれる。多分。
「ポケモントレーナーは地上に落ちた『ねがいぼし』から溢れるエネルギーを使ってポケモンをダイマックスさせています。ですが、私達はそのエネルギーを完全に制御する方法を明らかにできていません」
マグノリア博士が言うように、ダイマックスバンドはあくまで「ねがいぼし」のエネルギーを貯めて方向性を持たせているだけだもんな。
「いずれにせよ、ブラックナイトを鎮めた二人の英雄の正体を突き止める必要がありますね」
「これまでの調査やラテラルタウンの遺跡、古い文献なんかを見てると……マサルの仮説が当たってそうなんだよね。伝説の剣と盾……その正体はポケモンの可能性が高い」
「そのポケモン達を使役していたトレーナー……いや、そんな昔だとトレーナーっつう概念もねえか。ただ、その二体のポケモンと一緒に戦ってた人間もいそうだな」
「それにマサル、あんたナックルシティで言ってたよね? 『ブラックナイトは超強いポケモンなんじゃないか』って。私もね、調査していてそう思うようになったんだ。ガラル以外の他の地方のことを調べてるとね。かつては自然現象と思われていた大災害も、その影にはポケモンの姿があったんだ」
ホウエン地方とかまさにそれだもんな。
「だから、このブラックナイトもただの災害なんかじゃない。『ねがいぼし』のエネルギーが暴走しただけとは考えられない。何らかの指向性を持たせた干渉があったんじゃないかって思ってる」
「ソニアちゃんの推論通りだとするとさ。やっぱ昨日の赤い光って……」
「自然現象とは、
ソニアちゃんははっきりとそう言った。つまり、人為的な干渉があったということ。マグノリア博士とダンデくんが神妙な面持ちでいることから、何かしらの確信があるのかもしれない。まじできな臭いな。なんかもう完全にどこぞの誰かが「ねがいぼし」のエネルギーを利用してブラックナイトを引き起こそうとしてるとしか思えねえ。
でも誰がそんなことを……一番怪しいのは立場的にローズ委員長だけど、あの人のガラルに対する愛は本物だ。そんな人が、ガラルを滅ぼしかねないリスクを背負ってまでブラックナイトを引き起こそうとするか? むしろ止めようとする側じゃねえの? それとも、ただ単にエネルギーを制御する実験に失敗して昨日の現象が起こったと考える方が自然だよな。
「ねがいぼし」のエネルギーはポケモンをダイマックスさせるほど強大なものだ。そんなエネルギーを完全な制御化に置くことができれば、どれだけ莫大な利益が出るのか、恩恵を受けられるのか想像もできない。
うん、わざわざブラックナイトを引き起こす理由がねえ。ロケット団とかの悪の組織だったらわかんなくもないけど、ローズ委員長が率いるマクロコスモスは世界でも有数の超一流企業。そんな企業が裏でこっそり怪しい計画を……ゲームや漫画にありがちな設定だな。
怪しい、めちゃくちゃ怪しいがローズ委員長のことを考えればそんなことをする理由がわかんねえ。それとも、俺達はあの人のことを完全に見誤っている? がーっ!! そういう人間性の深いとこまで考え始めたらキリがねえよ!!
「色々と考え込んでいるようですね、マサル。よろしければ、考えていることを聞かせていただけませんか? あなたの意見は非常に面白いとソニアも褒めていましたよ」
「……あんまり現実的じゃないお話ですよ」
「それを明らかにするのが科学者です」
なるほどね。まあ確かに、俺が一人で頭抱えてもしょーがないからな。俺よりも頭の良いソニアちゃんやマグノリア博士に考えてもらった方が良いに決まってる。ふっ、俺は一人で抱え込んで「そういうことははよ言えや!」とツッコまれるような人間じゃないんだ。
漫画とかだと抱え込んで追々それが大爆発して大変なことになった方が物語的に盛り上がるかもだけど、下手したら人の命にかかわることだからな。俺は何でも話しますよ。報連相、大事!
で、さっきまで考えてたことをみんなに話すと、ユウリ以外は真剣な表情で俺の意見について思案していた。ユウリはぽかんとしてたけど、お前はそのままでいいからな。
「なるほどな。ローズ委員長とはそれなりの付き合いだが、確かに俺達が想像もしていない何かを抱えている節はある。これからは委員長の動向にも注意しておこう」
こういう時のダンデくんは頼りになるな。
「マクロコスモスは委員長のワンマンと思われがちですが、彼があそこまで自由に動けているのは頼りになる右腕がいるからこそです。今後はマクロコスモスのナンバー2、オリーヴさんのことも調べてみる必要がありそうですね」
その辺はお任せします。俺達には大企業のVIPを調べるコネもスキルもないので。俺の杞憂ならそれで安心できますし。
「ソニア、あなたにはこの白衣を渡しておきます。おそらく私はマクロコスモスにかかりきりになるでしょうから」
「え? いいのおばあ様? まだ調査は終わっていないのに……」
「終わらせるためですよ。剣と盾のポケモン、ブラックナイトの正体。あなたに任せますね」
マグノリア博士はそう言って、自分が着ている白衣をソニアちゃんに渡した。それが一体、何を意味するのか。
「ソニアちゃん、かっこいい!」
「ソニア博士、やね」
「馬子にも衣装だぞ」
「お、おう……照れるぜ。ホップは後でシバく」
恐る恐る受け取ったソニアちゃんは白衣に袖を通し、照れ臭そうに頬を染めていた。これで名実ともに「ソニア博士」の誕生だな。長年助手でがんばってる姿を見てきた身としてはこう……こみ上げてくるものがある。
「へへっ、どうよマサル?」
「うん、すげー似合ってて格好良いよ。でも、それ以上に……」
「それ以上に?」
「正直に言っていいの?」
「言っていいよ。今の私は気分が良いからね。ちょっとのことじゃ怒らないわ」
ホップに怒ってなかった? まあいっか。じゃあ、言わせてもらいます。
「ぶっちゃけエロい」
そう言うとソニアちゃんは顔を赤くして俺の両耳を引っ張ってきた。怒らないって言ったじゃん!?
「普通に褒めなさいよ!! なんだよエロいって!? 私のどこがエロいんだ!? 言ってみろ!!」
「へそ出しぴちぴちニットの上から白衣ってエロの塊じゃん!」
ソニアちゃんはスタイルが良くて胸も大きい。そんな女性がぴちぴちのニットを着てるってだけでもエロいのにへそ出しの上白衣とか……もうえちえちもんすたー略してえちもんだろこれ。
「エロの塊言うな!! セクシーファッションと言え!!」
「ソニアのそれはファッションだったのか? てっきり、サイズを間違えて小さいニットを着てるのかと思ったぜ」
「ダンデくんはそういうヤツだよな! そういうヤツだよな! ちくしょう……私のアピールはこうかがないようだ……」
あ、そういう服を着てたのはダンデくんへのアピールの意味もあったのね。だが残念。ダンデくんにそんな回りくどいアピールが通じるはずなかろうて。
「確かに、その恰好では風邪を引いてしまいそうですね」
「お、おばあ様まで……ちくしょー! せっかく博士として認められたのにこの仕打ちはなんだー!?」
「どんまいソニアちゃん」
「あ・ん・た・の!! せいでしょーがぁ!!」
そう言って今度は両手で俺のほっぺたを挟み、ぎゅーっと思い切り力を込めて掌で俺の顔を挟み潰そうとしてきた。やっぱソニアちゃんって良い反応してくれるから好きだわ。
(マサルはソニアちゃんのニットにエロを感じている……つまり私のニットパーカーにも同じ印象を持っているわけで……かぁ~っ!! 困っちゃうな~!! そんなつもり全然なかったんだけどなぁ~!! マサルがな~!! 私のこと好きすぎるからな~!!)
その一方でなぜかユウリが気持ち悪い笑顔を浮かべていた。なんやねんお前。
「やあ、また会ったね少年少女達」
ポケモンセンター内にあるフレンドリィショップで足りなくなった道具を購入していると、トウコさんが笑顔で俺達に声をかけてきた。ダイゴさんほどじゃないけど、この人とも結構遭遇するよな。
「トウコさんだ~♪」
「よしよし、ユウリとマサルはおめでとうだね。ホップとマリィは、色々と課題が見つかったバトルだったと思うけど、腐っちゃだめだよ。ありきたりな言葉になっちゃうけど、敗北から学ぶことってすごくたくさんあるんだから!」
「大丈夫だぞトウコさん! 俺もマリィも腐ってなんていないからな! むしろ、ユウリとマサルの熱いバトルを観て今すぐリベンジしたいくらい燃えてるんだぞ!」
「明日勝つために、今から特訓するんです」
「うんうん、どうやらおねーさんの杞憂だったみたいね」
トウコさんは抱き着いてきたユウリの頭を撫でながらにこやかに言った。敗北から学ぶことは多い……確かにそうだけどトウコさんって負けたことあんのかな? あ、Nのことか。バトルには勝ったけどその後Nはなんか勝手に満足してどっか行ったから実質勝ち逃げされたようなもんだし。
「あ、そうだマサル。この前借りたズボンなんだけどね、あれすごく穿き心地良くて気に入っちゃったから買い取らせてもらっていい?」
「いいですよ。俺の中古なんかでよければ」
「ありがとう! えーっと……いくらだったかな?」
そういやキルクスタウンをホットパンツで歩いていたトウコさんに俺のズボンを貸してたな。
財布を取り出して中身を確認しているトウコさんを見てそんなことを思い出していると、俺はあることを思いついた。
「トウコさん、お金はいいです。代わりに、ちょっと俺達に協力してくれません?」
「協力?」
「はい。今から四人でダブルバトルの特訓する予定だったんで、トウコさんに力を貸してもらえないかなって」
トウコさんはイッシュのチャンピオンだ。しかも、プラズマ団と己のイデオロギーを賭けた戦いを繰り広げ、俺達とは比べ物にならないほどの修羅場をくぐり抜けてきている。そんなトウコさんなら俺達では気づかない視点からのアドバイスをしてくれるだろう。
それに、他地方の現チャンピオンとバトルをしたこと自体が大きな経験になるはずだ。
「そんなことでいいの?」
「トウコさんにとってはそんなことでも、俺達にとっては何にも代えがたい貴重な経験なんです。お願い……できませんか?」
「もちろんよ! あたしでよければいくらでも力を貸してあげるわ!」
トウコさんは笑顔であっさりと引き受けてくれた。女神かな? 優しくてノリがよくてバトルが強い美人なお姉さん。これは観覧車で四股も余裕ですわ。
「あ、ゼクロムはなしでお願いします」
「さすがにわかってるわよ。あの子を出しちゃったら蹂躙にしかならないもの」
イッシュの伝説ポケモンと真正面からやり合えるわけがない。弱点を突けばどうにかなるとかそんな次元じゃないからな。伝説には同じ伝説クラスをぶつけねえとどうにもならんて。
「ただ、その……後でこっそり、こっそり見せてほしい……!」
「しょうがないわね~。マサルも男の子だものね」
……ここの会話だけだとオネショタ物っぽいな。トウコさんの方が俺より背は低いけど。トウコさんとのオネショタとか……トウコさんのエロい尻を見てショタの性癖がぶっ壊れるんだろうなぁ。
「そういえば、Nには会えました?」
まあいや。俺のしょうもない妄想は置いておこう。で、Nについて尋ねると、トウコさんは額に青筋を浮かべながらにっこりと笑った。会えなかったんすね。
「あ・の・緑髪ヤロォ……どこほっつき歩いてんのよ……!!」
「もう、追いかけるんじゃなくて待ち伏せません? 多分、チャンピオンカップを観ていくつもりでしょうからシュートシティで捕獲しましょうよ」
トウコさんは不満そうにほっぺたを膨らませながらも俺の言葉に頷いた。可愛い反応するなこの人。こういうところだけ見たら「妹」って感じだ。トウヤさんもこうやってトウコさんを宥めていたに違いない。
「イッシュのチャンピオンが力を貸してくれるなんて……ますますやる気が出てきたぞ!」
「どんなことを教えてくれるのか楽しみやね」
「期待しちゃっていいわよ。実はね、イッシュには
ブルーベリー学園? どっかで聞いたことあるような……。そう思ってスマホロトムで調べてみると、色々と情報が出てきた。バトル特化の学園で、惜しみなく予算を使って最新鋭の設備をふんだんに導入しているらしい。
その中でも一番気になったのが……。
「テラスタルって……パルデアでしか確認できない現象なんじゃ?」
「あたしも詳しい理論は知らないんだけどね。テラリウムドームにある『テラリウムコア』っていう物のおかげらしいわよ。で、これがポケモンをテラスタルさせるために必要な『テラスタルオーブ』」
トウコさんがリュックから黒いモンスターボール型のアイテムを取り出したので、四人でのぞき込んでみるとオーブの中がキラキラと輝いているのが分かった。これまたダイゴさんが涎を垂らしそうな一品ですね。
「パルデアやブルーベリー学園みたいな特殊な環境でしかエネルギーが補充されないから、使えるのは一度だけなんだけどね」
「ガラルのダイマックスと似たようなものなんだな。トウコさん、テラスタルするとポケモンの姿も変わるのか?」
ホップが尋ねると、トウコさんは頷いた。
「姿だけじゃなくて、タイプが変わることもあるんだよ」
「た、タイプが変わる!? バトル中にいきなりポケモンのタイプが変わるなんて……そんなの反則だぞ!?」
「弱点を突こうとした結果、逆にこっちが弱点を突かれることなんてこともありそうやね。テラスタルがあることで、戦術の幅が一気に広がる」
「それに加えブルーベリー学園はダブルバトルが主流だからハイレベルな並列思考が求められる。テラスタルまで考慮すると……脳みそ一個じゃ処理しきれねえよ。トウコさん、ブルーベリー学園ってとんでもない魔境っすね」
変な汗出てきたわ。学生に求めるレベルを完全に超えてんだろ。ガラルにはそういう教育機関はないからな。普通のトレーナーズスクールはあるけど。
ガラルにはジムチャレンジがあるし、ブルーベリー学園みたいなトレーナー全体のレベルを底上げする国立教育機関みたいなのがあれば、もっともっとジムチャレンジが見応えあるものになりそうだよな。で、チャレンジャーのレベルが上がればジムリーダー達はそれに負けまいとさらに鍛錬を積み重ねる。結果的にガラルのトレーナーの質が上がる。良いサイクルが出来上がるだろう。
それに、ユウリのような埋もれた才能がもっと見つかるかもしれないし。
ただ、問題は死ぬほど金がかかるってところだな。こういうのはローズ委員長の案件だ。また今度会う機会があったら話してみるか。
……ローズ委員長が白だったらの話だけど。白であってほしいよなぁ。
「実際、そこに通ってる学生のレベルは高かったわよ。上位層は特にね。ただ……」
「ただ?」
「ううん、なんでもないわ。(その子達よりユウリの方がすごいわよ……ってことまでは言わなくてもいいわね)」
首をかしげて尋ねたユウリの頭をトウコさんは優しく撫でていた。何か含みがありそうだけど、言いたくないことなら別に追求しなくてもいいか。
「そうそう。ブルーベリー学園にも四天王やチャンピオンがいてね。現役ジムリーダーの娘さんが四天王の一角なのよ。フェアリータイプの使い手だからちょっと苦戦させられちゃったわ」
「へー、現役ジムリーダーの……誰の娘さんなんです?」
イッシュのジムリーダーって結構年齢層が若かった記憶があるんだよな。誰だろ一体。
「ヤーコンさんよ」
「え!? や、ヤーコン隊長っすか!?」
意外な人の名前が挙がったな。
「マサル、隊長ってなんだ?」
「見た目が探検隊の隊長っぽいんだよ……ほら」
スマホロトムで検索してヤーコンさんの写真を三人に見せる。
「た、確かにこれは完全に隊長だぞ!」
「ジャングルの奥地に突撃してそうやね」
「こんな濃い隊長の娘さん……きっと娘さんはゴリゴリマッチョなアウトドア派に違いないね!」
ユウリの言葉に同意する。きっとケンシロウみたいな見た目のバトルマニアなんだろうなぁ……。
「ざーんねん! すごく可愛い女の子よ。タロちゃんって名前なの」
トウコさんが笑いながら件の娘さん……タロちゃんの写真を見せてくれた。
そこに写っていたのは……桃色のセミロングにぱっつん前髪、垂れ目に太眉な美少女だった。全然ヤーコンさんに似てねえじゃねえか!!
ごめん……ごめんタロちゃん。勝手にケンシロウとか想像しちゃってごめんなさい。
「こ、この子……!?」
「どうしたユウリ?」
「と、とんでもない『あざと卑しか女臭』がするよ! 自分が可愛いってことを自覚してて、ボディタッチが激しくて距離感が近くて『タロって俺のこと好きなんじゃ……系男子』を量産してる気がする!!」
「お前人のこと言えんの?」
「ユウリの言うこと、ちょっとわかるかも。多分この子はたくさんの初恋をクラッシュしてきとる。『ごめんね、君のことはお友達としか思えないんだ』って感じで数多の屍を築いてきたんやろうね」
「マリィも人のこと言えんの?」
そんな二人の感想にトウコさんは否定もせずに爆笑している。どうやら、女子にだけわかる特殊な感覚らしくホップは首をかしげていた。そういうあざといのはホップには効かないだろうなぁ……逆にホップの自然で下心のない紳士的な振る舞いにタロちゃんが惹かれていく展開になりそう。俺はそんなドタバタラブコメを離れたところから後方腕組おじさん面で眺めていたい。
「にしても、トウコさんがこういう学園に通ってたって意外でしたね」
「あ、別に通ってたわけじゃないのよ。イッシュでNを探してる途中にたまたま立ち寄って、なんか流れで四天王やチャンピオンとバトルすることになっちゃって……」
で、全員蹴散らしちゃったと。うーんこの主人公。まあでも、学園側からすればイッシュの英雄なんて大歓迎だろうな。
「機会があれば見学させてもらうといいわ。設備は最新だし、色んな種類のポケモンが生息しているからきっと楽しめるわよ。不満点を挙げるとすれば、食堂のメニューくらいね」
「美味しくないんすか?」
「味は良いのよ。ただ、ボリュームが多いのと栄養に偏りがありすぎて……ね」
育ち盛りの子供がたくさんいるのにそれはよろしくないですね。
「あとは、学園への不満というより、個人に対する不安なんだけど……」
トウコさんは困ったような表情でそう言った。
不安? 不満じゃなくて? ってか、トウコさんを困らせるって何者なんだそいつ。脱走したNか拗らせてた時代のチェレンに匹敵する問題児だな。
「チャンピオンの子がね……留年しているの」
「バトルやってる場合じゃねえ!?」
トウコさんの言葉にそうツッコまざるをえなかった。
「ダブルバトルで最も重要なのは何と言っても一瞬の状況判断能力よ。キバナさんとのバトルを観る限り、ホップとマリィの判断能力は一定のレベルに達しているわ。ただ、経験不足なこともあって目まぐるしく変化する状況に対して後手後手にならざるをえなかった。でも二人は、実際に
バトルコートまでやってきて、トウコさんの話を聞いて俺は思わず安堵してしまった。力を貸してくれとお願いしたはいいものの、トウコさんがユウリと同じ完全な直感型で言語化できないタイプのトレーナーだったらどうしようという不安があったからだ。でも、この分なら大丈夫そうだな。
「さて、後は実践あるのみね。時間が惜しいし、早速始めちゃいましょうか。マサルとユウリがタッグを組んでホップとマリィが一人ずつ挑むんだったわよね? あたしは都度都度気になるところをビシビシ指摘していくからね! 言っておくけど、あたしの指導は厳しいわよ~?」
「望むところだぞ! ……です! よろしくお願いします!」
「あたしもその方がありがたいです。ご指導のほどよろしくお願いします!」
そして特訓が始まった。俺とユウリは五体の手持ちの内、それぞれ二体ずつを選ぶ合計四体。それに対しホップとマリィはフルメンバーだ。今思えば、ユウリとのタッグバトルは初めてだな。基本的に旅の道中ではトレーナーや野生のポケモンは各個撃破してたし。
ま、何にせよユウリが喜んでるしそれでいい。トウコさんが全体を見てくれてるおかげで俺も思いっきりやれるし。
「ホップ! あなたは判断力は高いけれど、集中し過ぎると視野が狭くなっているわ! もっとフィールド全体を俯瞰で捉えることを意識しなさい。視界の端から端まで、相手の表情や仕草、ポケモンの予備動作、その他の微細な変化を見逃さないこと!」
「む、難しい……でもやってやるぞ!」
「マリィはホップと逆ね! 状況をよく捉えられているけれど、数ある選択肢の中から選び出すまでが遅いわ! せっかくの視野の広さを判断力の鈍さで活かしきれていない! ダブルバトルではそのコンマ一秒の遅れが敗北に直結するのよ? まずは迷わず決断してどんどん間違えなさい! これは
「は、はい!」
トウコさんの指導は厳しかった。一戦ごとに……いやバトルの途中であっても必要であればガンガン意見を言ってくれる。だけど厳しいだけじゃなくきちんと二人の長所を褒めてくれていた。その長所を活かすために、今自分達がどういう欠点を抱えているのかということを文字通り体感させた上で、具体的にどういうことを意識すればいいのかをしっかりと教えてくれる。
うん、やっぱこの人に頼んで正解だったわ。俺もめちゃくちゃ勉強になるし。
「あたしは自分が相当にレベルの高いことを要求していることを理解しているわ。だけどね、あたしは決して
その上、しっかりモチベーションを上げることも忘れない。何だこのカリスマ……やべえな、普通にトウコさん信者になりそうだわ。
そして、日が暮れて辺りが真っ暗になるまで特訓を続け(トウコさんも時々バトルに混ざってくれた)、トウコさんが晩御飯をご馳走してくれるとのことで「おいしんボブ」のナックルシティ店にやってきたんだけど……。
「はははははははははっ!! これが!! これがテラスタルオーブ!! まさかパルデア以外で本物をお目にかかれる日が来るとはね!! なんという美しい輝き!! 『ねがいぼし』とはまた異なるすさまじいエネルギーを感じるよ!! 知っているかいトウコちゃん!! テラスタルオーブのエネルギーを集められるのはパルデア地方かブルーベリー学園のテラリウムドームだけだと言われていたんだが近年『キタカミの里』と呼ばれる場所でもテラスタル現象が確認されたんだどうもキタカミの里にある『てらす池』が関係しているらしく今後パルデアやイッシュの研究者達が本腰を入れて調査する予定らしいいいなぁ素晴らしいなぁ僕のメタグロスもテラスタルさせたいなぁそうだメガシンカさせた上でテラスタルでタイプを補強してダイマックスさせたら最強なんじゃないだろうか!!」
例によってダイゴさんと遭遇し、テラスタルオーブについてそれはそれは熱く……熱く語られるのだった。
で、約束通りこっそりゼクロムを見せてもらった時にトウコさんはこう言っていた。
「……あたしのゼクロムって『理想を追い求め、希望の世界を造る者を補佐する』って伝承があるんだけど、さすがのゼクロムもダイゴさんにドン引きしてたわ」
戦わずして伝説ポケモンの戦意を喪失させるとかダイゴさんすげえ!!
ちなみに翌日、ホップとマリィは二度目のチャレンジでしっかりとキバナさんに勝利するのだった。
こうして俺達四人はチャンピオンカップへ臨むため、旅の最終地点であるシュートシティに向かうことになる。
よーし……俺達の戦いはこれからだ!!
最終章開始!
キバナ戦後の事後処理&【朗報】ソニアちゃん、えっちな女博士になる&ここがヤバいよブルべり学園!!&トウコおねーさんのたのしいだぶるばとるきょうしつ~ホプマリ特訓編~&【いつもの】ダイゴさん、テラスタルオーブに大興奮
毎度毎度詰め込み過ぎですね。安定のダイゴさんオチでしたが、本当はこの後にトウコがこっそりマサルのホテルの部屋を訪れて二人でゼクロムに乗って夜空を飛んでシリアスな会話をする予定でしたが……ダイゴさんとの温度差で風邪引きそうだったんでやめました。
チャンピオンカップ前にトウコともう一イベントやろうと思います。私がちゃんと覚えてたら。
次回はシュートシティに向かいますが道中はバッサリカットするでしょう。ここまで来たら普通のトレーナーは相手にならないし、何ならプレイ中も「なんで列車で直接行かんのじゃい!?」ってツッコんでたくらいですから。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
……本作で一番いい空気を吸ってんのはダイゴさんだと思う。
X始めました。よろしければフォローお願いします!
巨乳お姉さんのぴちぴちニットこそ着衣物の至高だと思う人はここをぽちぽちしてください!!