【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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No.0058 どこでも!! ダイゴさん

 終わった。

 

 終わってしまった。

 

 あたしの持てる力、全部を総動員しても、この高い高い壁を超えることはできんかった。

 

 ポケモン達はみんな、本当によくやってくれた。あれだけ不利な状況やったのに、みんな、あたしの期待に100%応えてくれた。それでも……それでも届かなかった。

 

 敗因は、あたし。

 

 あたしの、実力不足。

 

 ユウリが強すぎた。なんてことは、理由にならない。確かに、あの子の持ってる力はあたしの理解が及ばん領域にある。でも、そこから目を背けたところで、理解できんからって目をそらしたところでこの差が埋まることは、ない。

 

 受け入れるんだ。

 

 この敗北を。

 

 この現実を。

 

 だって、マサルもそうやって前に進んできたんやから。

 

 マサルにできたんなら、あたしだって、できる。

 

「おめでとう、ユウリ。あんたは、あたしが出会った中で一番強いトレーナー。ユウリと、あんたとここで戦えてよかった。あたし、今日のこと、絶対忘れんけんね」

 

 あたしは歩み寄り、スタジアムの中心であたしを打ち負かした少女に手を差し出した。

 

「ありがとう、マリィ。マリィは、私が戦ってきた中で一番強いトレーナーだよ。何度もヒヤッとさせられて、その度にひりひりして、高揚して……マリィとここで戦えてよかった。私も絶対に、絶対に今日のこと、忘れない」

 

 ユウリは、瞳に涙を潤ませながらあたしの手を強く握ってくれた。もう、勝ったのはあんたやのに、なんであんたの方が泣きそうになっとると? そういうところ、本当に可愛らしかね。

 

「あたしに勝ったんやけん、この先情けない試合したら許さんよ」

「……マリィが応援してくれたら、もっとがんばれるかも」

「あんたの応援するかどうかは決めてない」

「なんでーっ!?」

「だって兄貴おるし」

「むーっ!」

 

 途端にほっぺたを膨らませて小さな子供みたいに不満を隠さないユウリの顔を見て思わず笑みがこぼれそうになる。ついさっきまで、あんなに凛々しくて格好良かったのに。

 

「次は負けんよ、ユウリ」

「次も負けないからね、マリィ」

 

 うん。これ以上言葉は必要なか。ユウリは先へ進み、あたしの戦いはここでおしまい。でもね、これで何もかもが終わったわけやない。むしろここからが始まりなんだ。

 

 ポケモントレーナーマリィとしての、新しい一歩を───

 

「お嬢ーーーっ!!」

「おじょおおおおおおおっ!!」

「ぼじょおおうおおううおうっっ!!!!」

 

 ユウリと別れ、フィールドを去ろうとしたその時、観客席の最前線で必死に声を張り上げているエール団の……みんなの姿を見て、こみ上げてきたものが、我慢してきたものが溢れ出しそうになってしまった。

 

 でも、だめ。

 

 ここでそんな姿を見せたら、絶対に、だめ。

 

 あたしはこみ上げてくるそれを必死でこらえ、唇を嚙み締めてみんなに向かって頭を下げる。

 

 ありがとう。

 

 本当にありがとう。

 

 あたしがここまで来れたんは、みんなのおかげやけんね。

 

 でも、だからこそ……だからこそあたしは……。

 

 みんなの期待に───応えたかった。

 

 

 

 

 

 

 ユウリが勝ち、マリィが負けた。それが結果であり、現実だ。

 

 試合前、俺がマリィに言ったことは嘘なんかじゃない。ユウリに勝てという思いも、マリィにリベンジしたいという思いも、紛れもない本音だった。ただ、それらを全部、ユウリが上回った。

 

 それだけの、こと。

 

 ……何にせよ、これで決勝の相手が決まった。いよいよ、あいつとの対峙が現実味を帯びてくる。

 

 まあそれも、俺がホップに勝てたらの話だがな。ホップとは、ダンデくんにポケモンをもらった次の日のバトルを除けば俺が全勝している。だが、どんな勝利も、次の勝利の保証になんてなりはしない。

 

 先ばかり見据えていたら足をすくわれる、なんてのは傲慢な考え方だな。足をすくわれるほど、俺とホップに実力差があるわけじゃないんだから。

 

 そんなことを考えていると、自動扉が開いてフィールドからマリィが戻ってきた。何かをこらえるように、唇を噛み締めながら。

 

 こんな時、敗者に一体どんな言葉を送ればいいのかを。

 

 俺は、とうの昔に知っている。

 

「マリィ」

 

 俺はマリィに近づき、できる限りいつものように声をかけた。

 

「おかえり……それから」

 

 顔を上げて俺を見るマリィの目を真っ直ぐに見て、言う。

 

「お疲れ様」

 

 瞬間、マリィは体をぶるりと震わせ、その瞳にどんどん涙が溢れてくる。わかるよ、マリィ。俺にはわかるよ。今のマリィの気持ちが。

 

 敗者に必要なのは、健闘を称える言葉なんかじゃないってことが。

 

「マリィ。今この場には、俺しかいない」

 

 今の彼女に必要なもの。

 

 それは。

 

「だから()()、我慢しなくていいんだ」

 

 抑えきれないほどに溢れてくる感情の、やり場。

 

 マリィの瞳から零れ落ちる涙が、彼女の頬を濡らしている。それでいい。それでいいんだ。今はそれを、抑える必要なんてない。

 

 感情に、身を任せていいんだ。

 

 そして俺は、彼女に()()()()()形でベンチに座った。わざわざ言葉にしなくても、俺の行動の意味を、今の彼女なら理解してくれる。

 

 背中に感じる、この温かさが証拠だ。

 

「あんね。マリィ、勝てんやった」

「うん」

「あんなに……あんなにみんなががんばってくれたのに、勝てんやった」

「うん」

「町のみんなが応援してくれてたのに……期待に、応えられんやった」

「うん」

「ユウリ、強かった。信じられんくらい、強かった」

「うん」

「それでもね、マリィは勝ちたかった」

「うん」

「ユウリに勝って……みんなに勝って……マリィが、チャンピオンに、なりたかっ、た……!」

「うん」

 

 マリィは俺の背中に身を預け、涙を流し、抑えていた感情を、内に秘めていた思いを吐露する。

 

 それでいい。全部全部吐き出して、それらと向き合うことで、ようやく一歩、踏み出せるんだ。

 

 敗北を、現実を受け入れるための、一歩を。

 

 だけど、受け入れるだけじゃ、だめだ。

 

 受け入れるだけの、俺のようになっては、だめだ。

 

 だから俺は、マリィに伝えなくちゃいけない。

 

「マリィ」

 

 彼女の名を呼び、体を反転させ、もう一度彼女と真正面から向き合った。

 

 努力は決して裏切らないとか、努力は必ず報われるとか、がんばれば絶対に結果はついてくるとか、そんな綺麗事を言うつもりは、ない。

 

 だって俺は知っているから。

 

 世界がそれほど優しくないことを。

 

 だけど。

 

 それでも。

 

 彼女には、知っておいてほしいことが、ある。

 

()()()()()、努力が無駄になることは、ある。それでも、()()()()()なんてものは、何一つだってありはしない。絶対に、絶対にだ」

 

 彼女の目尻に溜まった涙を拭い、俺は断言した。

 

「マリィが歩んできた道のりは、これまでの旅路は、積み重ねてきた努力は、決して、無駄なんかじゃない」

 

 実らない努力、報われない努力が世界に溢れていることは、紛れもない現実。

 

 だけど、それらが「無駄な努力だった」なんて。

 

 そんなこと、俺が誰にも言わせやしない。

 

「だから胸を張れ。()()()()()()()()()、マリィ」

「……うん」

 

 俺の言葉にマリィは頬を赤く染め、小さく頷いた。

 

 大丈夫。これで彼女は大丈夫だ。これで彼女は、あの日の俺のようになったりはしないだろう。

 

「マサル……あんね」

「うん」

 

 マリィは恥ずかしそうに、しおらしく髪をいじいじしながら、()としての側面を見せながら俺を見上げてきた。

 

「マリィね。マサルのそーゆーところ───」

「マアァァァァリイィィィィィィィッッッッ!!!!」

 

 マリィが何かを俺に伝えようとした瞬間、控え室のドアが勢いよく開き、息を切らせたネズさんが飛び込んできた。

 

 そしてネズさんは、向かい合っている俺とマリィを見るなり怒り狂ったギャラドスのような表情を浮かべた。

 

「てめぇ!! 言い残すことはあるかァ!?」

「……遅くないすか? 落ち込んでいた可愛い可愛いマリィちゃんは俺が慰めちゃいましたよ」

 

 マリィの頭を撫でながらそう言うと、ネズさんの怒りのボルテージが上がっていく。すげーな「りゅうのいかり」とかできそう。

 

「タチフサグマァァァァァァ!!!!」

「ぐまぁ~?」

 

 ネズさんの怒りがダイマックスですね。

 

 

 

 

 

 

「どういうこと兄貴!? 控え室に飛び込んでくるだけやなくて試合前でナーバスになってる選手を怒鳴りつけるなんて!!」

「違うのです。聞いてください妹よ」

「しぇからしか!! どんな理由があろうと試合前の選手にすることやなか!! これでマサルが調子を崩してたらどう責任取るつもりやったと!?」

「こいつはこの程度で調子を崩すようなタマじゃねえですよ」

「兄貴!!」

「はい。ごめんなさい」

 

 控え室に勢いよく飛び込んできたネズさんは正座させられてマリィに説教されている。タチフサグマはネズさんの後ろで狼狽しており、俺はマリィの後ろでほくそ笑んでいた。

 

 マリィを心配して来てくれたっていうのに……どんまいネズさん。まあ、俺が煽ったせいでもあるから半分は俺の責任だな。

 

「悪かったですね、マサル。確かに、妹が心配だったとはいえ冷静さを欠いていました。俺も大きなライブ前や試合前はピリピリしますし、変に刺激するようなことを言って申し訳なかったです」

「うむ。許そう」

「それはそれとして腹立つリアクションだなてめえ!!」

 

 やっぱネズさんおもしれーわ。ってか、ネズさんが言っていた通り、俺は別に試合前だからといって変に緊張したりってことはないから全然気にしていない。そういうもんは全部、前世に忘れてきた。

 

「兄貴がごめんね、マサル」

「俺は気にしてないよ。ネズさんの行動がマリィへの愛故にってわかってるから」

「……うん。ありがと」

 

 しおらしいマリィを宥めるように言うと、ネズさんがジト目で俺を見てくる。見てくるだけで何も言ってこないあたり、マリィに怒られることを相当恐れているらしい。

 

「では、話も一段落したところで……マリィ、行きましょうか。VIP席を取ってありますから」

「いや、そんなとこ行かんよ。せめてマサルの試合が終わるまではここで応援するけん」

「VIP席なんてよく取れましたね」

「毎年ジムリーダーやチャンピオンが一同に介してセミファイナルトーナメントを観戦するんです。今年はホウエン元チャンピオンとイッシュの英雄もいますよ」

「絶対そんなとこいかんけんね!!」

 

 俺やホップ、ユウリならともかくマリィにはきつい空間だろうな。それに、ダイゴさんとトウコさんもいるとか……どんな会話をしてるのか気になる。とても気になる。

 

「ダイゴさんといえば……あたしって今、パーティにまだ一体分の空きがあるから本格的にキリキザンを仲間にしようと考えてるんよね」

「なるほど。つまりマリィも鋼使い(ハガネラー)になりたいと。アイアンズクラブの会員証いる?」

「いらんよ! ユウリのメタグロスと戦って改めて鋼って強いなって思っただけやけん!」

「フェアリー対策にもなりますからね。悪くない選択だと思いますよ」

 

 それにダイゴさんが「キリキザンには新しい進化先が発見された」って興奮気味に言っていたから、そういうポケモンを使うトレーナーとしてマリィは話題になるだろうし、うまくいけばスパイクタウンがもっと盛り上がりそうだな。

 

「鋼タイプの話をしてたらダイゴさんがその辺からぽっと湧いて出てきそうだよな」

「野生のココガラか何かですか」

「今観覧席におるんやろ? わざわざこんなとこまで来るわけなか」

「僕を───呼んだかい?」

「きゃっ!?」

 

 突如、控え室の入り口からひょっこりと顔を出して声をかけてきたダイゴさんに驚いたマリィが可愛らしい悲鳴を上げた。

 

 エネルみたいな登場しやがったなこの人。ほんとにどこでもダイゴさんだな。

 

「……なんであんたがここにいるんですか?」

「ネズくんを迎えに来たんだよ。他の人でも良かったかもしれないけど、マリィちゃんと実際に対峙したジムリーダーや師事を仰いだトウコちゃんと顔を合わせるのは辛いんじゃないかと思ってね」

 

 なるほどね。そういう気遣いはできるわけだ。確かに、俺達とダイゴさんが関わったタイミングって大体ギャグみたいな展開の時ばっかだったからな。マリィとしてもその方が気持ちが楽だろう。

 

「サイトウちゃんはマサルくんに会いたがっていたが、『腕組み後方支援者面している方が格好良いのでここにいます!』だってさ」

 

 サイトウちゃんって割とポンコツだよな。

 

「それに何より、僕がここに来た最大の理由はとても濃厚な鋼使い(ハガネラー)の気配を感じたからさ!」

 

 ……どこでも平常運転ダイゴさん。安心と信頼のダイゴさん。

 

「マリィは俺の後継者ですよ。鋼の道に引きずり落とそうったってそうはいかねえ」

「マリィちゃんの実力をもってすれば、悪と鋼、両立できない道理はないだろう?」

「おっ。これが新しい『やめて! あたしのために争わんといて!』 ってヤツだな」

「しぇからしか! アホなこと言ってないで止めるの手伝いんしゃい!」

「マリィちゃん、キリキザンを捕まえる時はぜひ僕も一緒に同行させてほしいなあとできればキリキザンがドドゲザンに進化する過程をゆっくりじっくり一緒に観察させてほし───」

「てめえ! ホウエンの元チャンピオンだかデボンコーポレーションの御曹司だかなんだか知らねえがマリィにちょっかいかけるんなら……覚悟、できてんだろうなぁ?」

「……ネズくん。君のことは年下のお兄さんだと思ってもいいかな?」

「───潰す」

「タチフサグマ! 兄貴を止めて! ダイゴさんも煽らんとってください!」

「内気で人見知りなあたしがひょんなことから大企業のイケメン御曹司に気に入られちゃった!? あたしの人生これから一体全体どうなっちゃうの~!?」

「マサルも頭悪いラノベみたいなタイトル言うとる場合やなか!!」

 

 そんな風に四人でぎゃーすか騒いで心温まる交流していると……。

 

「あのー……マサル選手、入場をお願いできますか?」

 

 気まずそうな表情のリーグスタッフが俺を呼びに来た。ほんとすいません。大体ダイゴさんのせいなんです。

 

「ほら、二人は元の所に戻りんしゃい! あたしはここに残るけんね」

「だったら俺も残りますよ」

「今は一人で観たい気分なの!」

「ネズくん、これ以上わがままを言ってマリィちゃんを困らせたらいけないよ」

「あんたが一番困らせてただろうが!!」

 

 まだやってら。まあいっか。変に気を遣わせるよりもずっといい。俺としてもその方が気持ちが楽だし、なんだかんだマリィが元気になったからな。

 

「マサルっ!」

 

 ネズさんの背中を押して控え室から追い出そうとしているマリィを横目で見ながらフィールドへ向かおうとすると、マリィが俺を呼び止めた。

 

「……しっかりね」

「おう!」

 

 マリィは胸の前で両拳を握りながら言う。

 

「ほら、二人もなんか一言」

「えぇ~……」

「そげん嫌そうな顔せんと」

 

 マリィに促され、ネズさんは本当に渋々といった表情で俺を見る。さてさて、どんな言葉が飛び出してくるのやら。

 

「マサル……何人もの人間が、()()()期待しています。ゆめゆめ、それを忘れないように」

「そして僕は、間違いなくその中の一人だ。君がこの旅で得たものを、君の答えを、見せてもらうよ」

 

 ネズさんとダイゴさんの言葉に俺は頷き、三人へ背を向けて歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

『第一試合、二人のチャレンジャーは本当に素晴らしい勝負を見せてくれました! 続く第二試合! 一人目のチャレンジャーはガラルが誇る無敗のチャンピオンダンデの弟ホップ選手! 偉大なる兄を持つ彼には我々が想像もできないようなプレッシャーを背負っていたことでしょう! しかし彼はそんな重圧を跳ねのけ、チャンピオンの弟としてではなく、一人のポケモントレーナーホップとしてこの舞台まで上り詰めました! そんなホップ選手と相対するのは子供達から絶大な人気を誇るお茶の間の人気者! ジムミッションのレギュレーションを何度も改訂させた事務屋泣かせ! どんな時でもでんせつTシャツを身に纏い、大企業の株価を上昇させて数万人の社員のボーナスを守り切った家計の救世主! しかし、ただの色物枠ではない! バトルの腕は本物だ! ガラル屈指のトリックスター、マサル選手!』

『……楽しみ』

『二人ともパーティには特にこれといったコンセプトがないバランス重視。簡単に弱点タイプを突けない以上、トレーナーとしての力量や戦術がより重視されるバトルになりそうだ』

『先程のユウリ選手もそうですが、この二人……そしてダンデもハロンタウンの出身ですね。ハロンタウンは穏やかな気候で酪農や羊毛業が盛んな町ですが、トレーナーの育成に力を入れているというようなことはあまり聞きません。にもかかわらず、四人もの実力者を輩出している……何とも不思議ですね』

『……そうかな?』

『俺もレッドもリーフも、カントーの田舎町マサラタウンの出身だからなぁ~。稀によくあることだと思うぜ』

『……あるある』

『えー……どうやら我々とお二人の間には埋めようのない認識の差がありそうです』

 

 実況の熱い口上を聞きつつ、俺の紹介だけ他の三人と違ってトレーナー全然関係なくねえか? と内心ツッコミを入れつつ、一歩一歩踏みしめるようにフィールド内を歩く。

 

 中心では、すでにホップが待っていた。

 

「……待った?」

「今来たところだぞ」

「デートの待ち合わせかよ」

「マサルが始めたんだぞ」

 

 向かい合うなり、俺達二人は笑い合う。

 

 うん。俺とお前は、これでいい。

 

「思えば、俺達もずいぶん遠くまで来たもんだな」

「ガキの頃には夢にも思わなかった……なーんてことはねえよな」

「ああ、そうだぞ。()()()()()、こうしてマサルと対峙する日が来ると、俺には()()()()()()

「ま、確かに感慨深くはある。一年前までの俺達にとってこの場所は……遠い世界のことだったんだから」

「でも俺達は今、遠いと思っていた世界に、自分の足で、立っている」

「夢の舞台、憧れの地……俺にもそういう感情があったことを、否定はしない」

「でも、それだけじゃダメだと……夢見るだけでも憧れるだけでもダメだと教えてくれたのは、他でもないマサルだぞ」

 

 誰しもが夢を見る権利を、憧れる権利を持っている。そして、決して忘れてはならないのが、()()()()()()()、誰もが「挑戦する権利」をも持っているということだ。

 

 その権利を、行使するかは自分次第。

 

「マサル、俺はな───兄貴を超えるぞ」

 

 琥珀色の瞳が、俺を射抜く。

 

「口先だけじゃない。ただの大口なんかじゃない。()()()()()()()()()、俺は来た。俺は、俺の全てを懸けて兄貴に……チャンピオンダンデに勝って、俺が頂点に立つ」

 

 重みが、違う。これまでホップの同じような台詞を俺は何度も聞いてきた。

 

 だが、今この瞬間のホップの言葉は。

 

 それを実現できると思わせるほどに、力強かった。

 

 そうか……ホップ。

 

 お前は、そんな目ができるようになったんだな。

 

「お前はどうなんだ、マサル?」

 

 俺の心を見透かすようにホップが尋ねる。

 

「お前は今、この場に立って、俺と向かい合って、何を思う?」

 

 思うことは、たくさんある。この瞬間の景色を目で見て、空気を肌で感じて、俺の心の奥底で、何かが叫んでいるのがわかる。

 

「変わんねえよ。誰が相手だろうと、俺のやることは変わらない。あいつらを最高に輝かせるために、持てる力の全てを駆使し、俺は俺を全うする。勝敗なんて……()()()()()()()

 

 今までの俺だったら、それで終わっていただろう。

 

「だけどな。お前に負けるつもりなんて、微塵もねえぞホップ」

 

 現実的に考えるだけが、俺じゃない。

 

「チャンピオンになる? ()()()()()()()言え」

 

 俺の言葉に、ホップは頭の後ろで両手を組んで笑った。

 

「安心したぞ、マサル。それでこそ、俺の親友で───ライバルだ」

 

 そんなホップの笑顔を見て、俺も思わず表情を綻ばせる。

 

「マサル。俺はな、お前のことを誰よりも、ユウリよりも理解しているし、俺のことを誰よりも理解しているのは、お前だ」

 

 そう言って、ホップは()()()()()()()()()()()()()()

 

 同じ、癖。

 

 ダンデくんと、同じ癖。

 

「なるほどな」

 

 俺には、わかってしまった。ホップが何を言いたいのか。

 

 ホップが()()()()()()()()()()のか。

 

「どうやら、俺とお前……考えていることは同じらしい」

 

 俺の言葉に、互いが背を向け、距離を取る。

 

 ボールを構え、向き直り。

 

 

 

 

 

 

 ()()()ダイマックスバンドが───輝いた。

 

 

 

 

 

 

「バイウールー!! ダイマックス!!」

「シャンデラ!! ダイマックス!!」

 

 

 

 

 

 

ポケモントレーナーのホップが 勝負をしかけてきた!




 次回 マサルVSホップ

 本当は今回でホップ戦まで終わらせるつもりだったのですが、ホップ戦を執筆している途中で「これ滅茶苦茶長くなるな」と思い分割。

 前半はまるでマリィがメインヒロインのようですが、絶対強者のユウリにこのムーブはできません。でももうすぐユウリが「ひろいんぢから」を爆発させるからな~?(多分) 見とけよ見とけよ~?

 ……今更だけどなんでダイゴさんが当たり前のようにガラルにいてレギュラー面してるんだ? 剣盾に出てた?

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
 
 次回もよろしくお願いします!


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