【完結】すごいよ!! マサルくん   作:わへい

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英雄達の凱旋

 体を支配していた重圧がなくなった。

 

 ムゲンダイナとぶつかり合う、黒と白の伝説。

 

 ゼクロムとレシラム。

 

 その背に跨る、トウコさんとN。

 

 そして、ムゲンダイナの攻撃から身を挺して俺達を守ってくれたメタグロス。

 

 来てくれた。本当に来てくれたんだ。

 

 それを理解した瞬間、俺は体中から力が抜け、心の底から安堵した。

 

 安堵した理由は、俺の命が助かったから、じゃない。

 

 俺のポケモン達の命が助かったから。

 

「バカっ! お前らなんでボールに戻らなかった! 俺の言うこと無視しやがって……!」

「ふぃあっ!」

 

 俺がそう言うと、ニンフィアが怒ったように俺に突進してきた。受け止めてやると、怒っていた表情が崩れ、ぽろぽろと大粒の涙を流し始める。近寄ってきたバンギラスとシャンデラも、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

 そうか……そうだよな。

 

 お前達だって怒るよな。怖かったよな。

 

 自分達が死ぬかもしれなかったからじゃない。

 

 俺が。俺だけが、お前達を庇って死ぬかもしれなかったから。

 

 それが一番怖かったんだよな。

 

「ごめん。ごめんな……俺、もう二度とあんなことやらないから」

「ふぃあ~お……」

「……多分」

「ふぃあっ!」

 

 ニンフィアに腕を甘噛みされた。バカなことをやった自覚はある。無茶なことをやった自覚はある。あんなことをしても、お前達が悲しむだけだってわかってた。だけど、それでも……たとえ自分の命に代えてでも、お前達を守りたかった。お前達に生きていてほしかったんだ。

 

「今日のようなことが起これば、俺はきっと今日と同じことをする」

 

 わかっている。俺は自分がそういう人間だということをわかっている。

 

「だから……こんなことをしなくてもいいように、もっともっと強くなろう。もちろん、一緒にな」

 

 それが、これからの俺達にできること。もう二度と、お前達を泣かせたりしないくらいに強くなることを誓うよ。

 

「君がメガストーンを託された理由がわかったよ。君達の素晴らしい絆を見せてもらった」

「大丈夫かマサル!!」

 

 ダイゴさんが優雅に歩いてきているのとは対照的に、ダンデくんとリザードンが焦ったように駆け寄ってきた。

 

「俺達は大丈夫だ。さっきまでは身動きできなかったくらい体が重たかったけど、今はそれもない」

「ああ、俺もだ。だが、技は……」

 

 リザードンが首をふるふると横に振る。俺もインテレオン達を一瞥するも、リザードンと同じような反応だった。どうやら、体は自由になったものの依然として技は封じられたままらしい。

 

「ダイゴさん、助けていただいてありがとうございます。メタグロスが庇ってくれなかったら……間違いなく俺達は死んでいました」

「ギリギリになって申し訳なかったね。本当はもっと早く合流するつもりだったんだけど……シュートシティでトウコちゃんとあの緑髪の男の子との間でひと悶着あって」

 

 ああ、ずっと探してた相手……トウコさんからすれば、行く先々で散々邪魔されて最終的に分かり合えたと思ったら勝手に満足して勝手にどっか行って……こっちの気持ちなんてお構いなしに勝ち逃げされたようなもんだからな。ぶん殴られててもおかしくねえよ。

 

 

 

 

 

 

「これでもうマサル達は大丈夫だ。さあレシラム、もうひと踏ん張りといこうか。()()()()()()()()()ムゲンダイナに攻撃するのは気が引けるが、このまま感情のままに暴れさせてもあの子のためにならないからね」

「……N。そういえばあんた、マサルをやけに高く評価してたけれど、あんた達そんなに仲が良かったの?」

「マサルは……うん、そうだね。マサルは僕に初めて『トモダチ』と言ってくれた()だから。僕にとって、初めての人間の『トモダチ』だから」

「……は? ───はぁ?」

「それにマサルは───僕の父になってくれたかもしれなかった存在だ」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

 

 

 

 

 

「これがメガシンカ……噂には聞いていたが、まさかムゲンダイナの攻撃を弾き返すとは……」

「いやぁ、結構ギリギリだったよ。ゼクロムとレシラムの一撃がなければさすがに危なかった」

「ダイゴさんのメタグロスも……」

「うん。どうやら技を出せないみたいだね」

 

 尋ねてみるも、ダイゴさんのメタグロスでもダメらしい。メガシンカしてても技が使えないとか……今のところムゲンダイナとやり合えているのはゼクロムとレシラムだけ。あの二体は規格外の伝説ポケモンだからムゲンダイナのわけわかんねえ技封じも効かないんだろう。

 

「ダンデくん、どうする?」

「……悔しいが、今の俺達に対抗策はない。今はゼクロムとレシラムの二体のおかげでムゲンダイナの気がこちらから逸れているが、もう一度狙われたらひとたまりもないだろう。一旦退いて体勢を立て直す」

「それが賢明だね。あのカラクリをどうにかしない限り、僕達じゃ手も足も出ない。いやぁ、とんでもないねムゲンダイナは。グラードンとカイオーガだって、大陸を海に沈めるか海を干上がらせるかだったのに……まさか技を封じるとはね。3000年前に隕石とともに飛来したらしいし、興味が尽きないポケモンだ」

 

 どうやらダンデくんとダイゴさんの考えは同じらしい。うん、しゃーないな。ここにいたってムゲンダイナの的になるだけなんだから。ってか、ダイゴさんはずいぶん呑気なこと言ってるけどグラードンとカイオーガだって大概ですからね?

 

 くそう。この世界の伝説達は世界を滅ぼす力を持ちすぎだろ。まあ、大体人間がいらんことして世界が滅びかける事態になったんだけどな! よく今まで生き残れたな人類!

 

 ……そんなことはどうでもいい。とにかく撤退だ撤退! 今はトウコさん達に任せよう。もしかすると距離を取れば技封じが解除されるかもしれないからな。ただ、そうなると遠距離攻撃でチマチマ削るしかない。

 

 そして、ポケモン達をボールに戻し撤退しようとした時のことだった。

 

「おーーーい! まーさーるー!」

「兄貴ーーー! 来たぞー!」

 

 その場に似つかわしくない呑気な大声が空から聞こえてきた。……空から?

 

 見上げると、リザードンの背に乗っているレッドさん。そのリザードンに首根っこを掴まれて、飼い主に捕まった猫のように運ばれているユウリとホップ。

 

「れ、れ、れ、レッドさんのリザードンだと!? なんて恐れ多いことを……羨ましいぞお前ら!! そこ代われ!!」

「……マサル、俺にもリザードンがいるんだが?」

「ばぎゅあ~」

「う~ん、これは修羅場。マサルくんは罪深い男だね」

 

 ツッコミ(マリィ)不在で収拾がつかなくなりそうになるも、とにもかくにもこれでレッドさんと合流できた。こ、心強すぎる。も、もしかしてレッドさんとムゲンダイナのガチバトルが拝めたりして……。

 

「レッドくん、シュートシティは大丈夫なのかい?」

「……大丈夫」

 

 ダイゴさんが尋ねると、レッドさんは無表情ながらもあっさりと答えた。

 

「……僕が世界で一番信頼するトレーナーに任せてきたから」

 

 この人が世界で一番信頼するトレーナー、か。それはもちろん───

 

 

 

 

 

 同時刻、シュートシティ10番道路側入り口にて。

 

「はっはっは! ダイマックスポケモン達がぞろぞろと。まさかこんな形でガラルのダイマックスとやり合うことになるとはな! ピジョット、フーディン、サイドン、ウインディ、ナッシー、カメックス! 遠慮はいらねえ! 全力全開だ! 行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

「んで、お前ら。剣と盾のポケモンは?」

「いなかった!」

「いなかったぞ!」

 

 おい。

 

「でもねマサル、伝説っぽいところでこんなの拾ったんだよ!」

「……伝説っぽいところってなんだよ」

「伝説っぽいところだぞ!」

「語彙力『ひんし』になってるじゃねえか」

「……伝説っぽいところ。世界の色んな場所にある。わかる」

「そうですよねレッドさん伝説っぽいところってありますよね!」

「マサルの手のひら返しがすごいんだぞ」

 

 バカ野郎。世界中を旅しているレッドさんの言うことが間違っているわけないだろ!

 

「マサルの『てくびドリルライナー』!」

 

 ユウリが調子に乗っていらんことを言いやがったのでヘッドロックでシメておく。とまあ、おふざけばっかしてる場合じゃないので話を聞くと、剣と盾のポケモンはいなかったが、代わりにあるものを拾ってきたらしく、ユウリとホップが鞄から取り出した物は……何やらボロボロの剣と盾だった。

 

「ダイゴさん、なんかわかります?」

「う~ん……こういう考古学的な物はシンオウ地方のシロナさんの専門分野だね。僕はあくまで石マニアだから」

 

 あー、確かに。ダイゴさんは趣味人で別に学者ってわけじゃ……あ、学者で思い出した。

 

「ソニアちゃんは何してんの?」

「伝説っぽいところで一緒に『うおおおー!』って興奮してた!」

「でもナックルシティに着いてレッドさんと合流したら『無理無理! あんなヤバいところに私なんかが行っても何もできないって! それよりも地下プラントをどうにかしてくるから!』って言ってたぞ」

 

 地下プラント……地下プラントなぁ。今はキバナさんがいるけど……。

 

 

 

 

 

 

 同時刻、ナックルシティ地下プラントにて。

 

「よおソニア、丁度いいところに来たな! ワリぃがオリーヴさんの相手してくれねえか? 委員長に尋問しようとしたら邪魔してくるんだよ」

「……ソニア博士。七年前のセミファイナルトーナメント準優勝者。私の邪魔をするというのなら容赦しませんよ。ダストダス、キョダイマックス」

「ちくしょー! 上も下も地獄だな!」

 

 

 

 

 

 

 ソニアちゃんのことは放っておいても大丈夫だ。比較対象がダンデくんだから目立たなかっただけでバトル強いし、なんだかんだやればできる子だってことを俺は知ってる。今はそれよりもこっちの方が緊急事態だ。レッドさんと合流できたとはいえ、伝説ポケモン以外は技を使えない状況なんだから。

 

「……技を使えない? ふーん。おいで、ピカチュウ」

「ぴっか~♪」

 

 俺が状況を簡潔に説明すると、レッドさんがおもむろにピカチュウを呼び出した。

 

「……ボルテッカー」

 

 言葉とともに、ピカチュウが電撃を纏───ったと思った瞬間には目にも止まらぬ速さでムゲンダイナに突撃していた。

 

 雷鳴のような轟音が、鳴り響く。

 

 ピカチュウの強力な一撃を顔の下部分、生物で言う顎のあたりに受けたムゲンダイナが、()()()()

 

 ぴ、ピカ様!?

 

 う、嘘だろ!? 技を普通に出しただけじゃなくて……100メートルくらいありそうなムゲンダイナの巨体を一撃で揺るがした!? 

 

「え!? 何何!? 何が起こったの!?」

「……あれが、カントーの英雄レッド」

 

 上空でトウコさんとNも焦っとるやんけ。

 

 お、俺とダンデくんが二人がかりで手も足も出なかったのに……いくらレシラムとゼクロムの援護があるとはいえヤバすぎだろこの人達!!

 

「……ぴっかぁ~」

「……頭にたんこぶができてる。技を()()()()()()()けど、威力がいつもより低い」

 

 戻ってきたピカチュウは涙目で頭をさすっていた。

 

 ……規格外すぎる。レッドさんもだけど、あの巨体に突撃してたんこぶ一つで済んだピカ様の耐久力よ。もうこのピカ様は伝説ポケモンと同等ということでよろしいか?

 

「お? ムゲンダイナがこっちを見てるぞ」

「ほんとだ~。正面から見るとガメノデスみたーい」

「どうやらムゲンダイナはレッドくん達をゼクロムやレシラムと同等の脅威とみなしたようだね」

 

 ホップ、ユウリ、ダイゴさんが呑気な口調でそう言った。いや悠長にそんなこと言っとる場合か!? ムゲンダイナへの攻撃手段は確保できたけど、あいつからの攻撃を防ぐ手段はまだ───

 

「……大丈夫。()()()に任せて」

 

 レッドさんはそう言って、一つのモンスターボールを取り出し。

 

 あるポケモンの名を、呼んだ。

 

 

 

 

 

 

「……()()()()()

 

 

 

 

 

 

 紫色の長い尾。白い体毛。人型に近い二足歩行。四肢は細長く、鋭く冷たい目つき。

 

 幻のポケモンである「ミュウ」の遺伝子を改造されて生み出されたとされているが、その出自は定かではない。

 

 ずっとずっと、長い年月、ハナダの洞窟最深部で眠るように瞑想を続けていたポケモン。

 

 間違いなく、カントーで最強の……いや。

 

 種族としての強さなら、世界でも五本の指に入るであろう生きた伝説。

 

 そんな伝説が……俺の、目の前に。

 

 ミュウツーの姿を見て、ムゲンダイナが再び莫大なエネルギーを集束させ始める。レシラムとゼクロムの攻撃に対して無防備になりながらも、ムゲンダイナはミュウツーの……レッドさんの排除を最優先と判断したんだ。

 

「……みんな、ちゃんと守るから」

 

 レッドさんが一歩前に出ると、ミュウツーがレッドさんを庇うように立ち、ムゲンダイナに向けて右手をかざす。

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

「……バリアー」

 

 

 

 

 

 

 ムゲンダイナから放たれた莫大なエネルギー破を、ミュウツーによって創り出された堅牢な防壁が、防ぐ。

 

 目を覆いたくなるような眩い閃光に轟音、地震のような地鳴り。俺はとっさにユウリを守るように抱きしめていた。

 

「……すごいね。ミュウツーの『バリアー』を壊せるポケモンなんて今までいなかった」

 

 ガラスが割れるような音とともに、透明な防壁が砕け散った。だが、それだけ。()()()()だ。

 

 壊されたのは、堅牢な防壁一枚だけ。ミュウツーも、レッドさんも、もちろん俺達も健在だ。

 

「これが、ミュウツー……。いや、カントーの───マサラタウンのレッドか」

 

 ダンデくんがポツリと呟いた。ダンデくんはその立場上、伝説のポケモン達と出会う機会なんてなかっただろうからな。俺はレッドさん贔屓だけど、ダンデくんがポケモントレーナーとしてレッドさんに劣っているだなんて思わない。

 

 レッドさんのピカ様は規格外の特異個体ではあるが、ダンデくんのリザードンだって大概だ。ピカ様が技を出せたのだって、ムゲンダイナの注意がレシラムとゼクロムに向いていたからだろうしな。俺とダンデくんだけを封殺しようとしていた状況とは全然違う。

 

「……守りはこれで大丈夫。ただ、いくらミュウツーでも攻撃に回るだけの余裕はない」

 

 いや、あの……あれを防げるだけでも十分過ぎます。少なくとも命の心配をしなくてよくなったので。ってか、今思ったけど、()()()()()()()()からミュウツーを呼び出してましたよね?

 

 ……シルフカンパニーの社長からもらったマスターボールは使わなかったんすか?

 

 モンスターボールでミュウツーを捕まえるって……()()ミュウツーが完全にレッドさんに対して忠誠を誓ってるってことっすよね?

 

 わかっちゃいたが、本当にとんでもねえなこの人。

 

「さて、レッドくんのおかげで撤退する必要がなくなった。だけど戦況は未だ五分五分。レシラム、ゼクロム、ミュウツーのおかげで拮抗してはいるものの、()()()()()()()。僕のメタグロスもまだ攻撃を出せないみたいだしね」

 

 そう。ダイゴさんの言うように戦況を五分五分にまで持ち込んだものの、伝説三体がかりでムゲンダイナをここに留めることで精一杯であることには変わりない。ムゲンダイナはその名の通り、無限のエネルギーをプラントから供給されている状態であるため、持久戦になれば不利になるのはこちらだ。

 

 いくらミュウツー達といえど、強力な技を何十発も連発すればムゲンダイナより先に体力が尽きるに違いない。

 

 ここは言わば、ムゲンダイナがその力を最大限発揮できるホームグラウンド。ここがガラルでなければ、ダイマックスエネルギーがない他の地方であればとうに倒せていたはずだ。

 

 現に、俺とダンデくんで一度は追い詰めたんだからな。

 

「俺達のポケモンが戦闘に参加できればその火力を補える。3000年前がどういう状況だったかはわからないが、一度はムゲンダイナを鎮めることに成功したんだ。鍵となるのはやはり、3000年前の英雄……剣と盾のポケモンだろう。ホップ、ユウリ。その剣と盾を見つけた場所には他に何か手掛かりになりそうなものはなかったか?」

「う~ん……なかったよね?」

「ああ。なかったぞ。古代文字が書かれた石碑でもあればソニアに解読してもらおうと思ってたんだけどな」

 

 ダンデくんが尋ねるも、二人の答えは芳しくない。っつーか、本当にこのボロボロの剣と盾が過去の英雄に関係してるのか? まったくの見当違いって線も……。

 

「……その剣と盾が鍵になるはず」

 

 見当違いなわけねえよなあ! レッドさんが言うんだから間違いねえ!

 

「よし二人共! こういうのは剣と盾を並べて置いて何かしらの儀式をすれば伝説のポケモンがやってくるってのがお決まりだ!」

「マサルが急にやる気出したぞ」

「さっきまで胡散臭そうな目で剣と盾を見てたのに……」

 

 やかましい。

 

「儀式って何をすればいいんだ?」

「何だろうね? 踊ってみる、とか? ───はっ!! 私すごいこと思いついたよマサル!!」

「レッドさん、なんか意見ありません?」

「無視すんなーーーっ!!」

 

 ユウリがギャオって俺に頭突きをかましてきたのでとりあえず話だけ聞いてやることにする。変な意見だったら即却下してレッドさん達に意見を求めるからな。

 

「謎は全て解けた!! 見た目は美少女、頭脳は大人! 名探偵ユウリがじっちゃんの名に懸けて名推理を披露しよう!」

 

 はよ言えや。

 

「3000年前の英雄……剣と盾のポケモン。つまり、剣と盾をモチーフにしたポケモンが英雄達を呼び覚ます舞を披露すればいいんだよ!」

「剣と盾をモチーフにしたポケモン? あ、わかったぞ! ギルガルドのことだな!」

「ふっふっふ。その通りだよホプソンくん。ギルガルドが英雄達を呼び覚ます舞……『つるぎのまい』と『たてのまい』を披露するのだ!」

「さすがだぞ! ポケモンが技を使えないっていうことと『たてのまい』なんて技がないことを除けば完璧な推理だな!」

「えへへ~♪ でしょでしょ! どうマサル? 美少女名探偵ユウリちゃんの完璧な推理! 惚れ直した?」

「ダイゴさん、何か意見ありません?」

「なんでさっきから無視するんだーーーっ!!」

 

 再びユウリが頭突きをぶちかましてくる。お前な……こうしている間にもムゲンダイナとレシラム、ゼクロムは激闘を繰り広げてて攻撃の余波をミュウツーさんが全部防いでくれてるんだからもうちょっと真面目に……いや、大真面目に考えた結果なんだろう。

 

「がんばってギルガルド! たとえ技が使えなくても剣と盾の誇りを胸に抱いて舞えば伝説は必ず応えてくれる!」

「そうだぞギルガルド! 兄貴のポケモンなんだから技を使えようが使えまいが関係ないぞ!」

「……ギルガルド。俺達は長年苦楽を共にしてきた。だから俺は、お前を信じてるぜ」

 

 ユウリとホップだけじゃなくダンデくんも乗ってきた。……ダンデくんって基本的に天然だからなぁ。ギルガルドめっちゃ困ってんじゃん。でもご主人様から「信じてる」なんて言われたらやるしかねえもんな。

 

 ツッコミ不在の弊害よ。マリィが恋しい。

 

「ガラルの実力者には天然しかいないのかい?」

 

 ダイゴさんも人のこと言えないっすけどね。

 

 そんなこんなで、ギルガルドは技が使えない状況で「ブレードフォルム」になり「つるぎのまい」っぽい動きをしながらボロボロの剣と盾の周囲をぐるぐる移動した後、「シールドフォルム」になり「たてのまい」という存在しない謎の踊りを披露することになるのだった。

 

 結果は当然……。

 

「……何も起こらないね」

「……何も起こらないぞ」

「……何も起こらないな」

 

 そらそうよ。これで何か起こってたら……あ、でもよく考えたらホウエン地方のレジシリーズが封印されてた洞窟で、封印を解くために特定の動きや特定の技を使うみたいなのがあったから目の付け所は悪くない……のか?

 

 それはそれとしてギルガルドがめっちゃしょぼーんとして落ち込んでるけど。

 

「気にすんなギルガルド。お前は何も悪くねえよ。悪いのはこっちのヘボ探偵だ」

「誰がへボ探偵かーーーっ!! はっ!! でもマサルは私が美少女である部分は否定しなかった!! もぉ~、どれだけ私のこと好きなの~?」

「脳みそ迷宮入りしてんのか?」

「……この反応。ちょっとリーフに似てるかも───」

 

 レッドさんがそう言った瞬間、爆音が炸裂した。どうやらムゲンダイナが俺達に向かって放ったエネルギー波をミュウツーが防いだらしい。……このアホのせいで忘れかけてたが、今ってガラルの危機だからな!!

 

「レッドさん、なんか案ありません?」

 

 俺がそう尋ねると、レッドさんは首を傾げつつ空を指差した。

 

「……空に掲げてみたら?」

「え~? ゲームや漫画じゃないんですよ~?」

「ベタベタだぞ」

「バカ野郎お前ら何言ってんだレッドさんが間違うわけないだろさっさと空に掲げやがれ!!」

「……マサル」

「マサルがレッドさんばっかり贔屓するから兄貴が嫉妬してるぞ」

「マサルのレッドさん厄介オタク~!」

 

 危機感ないのかこいつら。言いたくねえが、俺さっき死ぬ寸前まで追い詰められてたんだからな!

 

 いいからはよせんかい! 俺は二人の尻を蹴っ飛ばす勢いでボロボロの剣と盾を空に掲げさせる。二人とも最後まで訝し気な表情を浮かべていたものの、剣と盾を空に向かって掲げた瞬間。

 

 剣と盾が眩い程の光を放ち始め、まるで意思を持っているかのように宙へと浮かび上がった。

 

「う、嘘でしょ!? こんなベタなやり方で!?」

「やっぱりレッドさんに間違いなんてないんだ」

「……」

「兄貴、変なところで対抗心を燃やすのはどうかと思うぞ」

 

 剣が切り裂くような青い光を、盾が燃え盛るような赤い光を放ちながら空へと吸い込まれていく。それにいち早く反応したのはムゲンダイナ。ゼクロム、レシラムとの攻防から剣と盾へ意識が移った。

 

 イッシュの伝説を相手にしながらも、()()()を優先させるってことはやっぱり……。

 

「何あれ!? おっきい光が落ちてくるよ!」

「流れ星か!?」

 

 遥か上空、ムゲンダイナの周囲を渦巻く不気味などす黒い暗雲よりもさらに高度から、剣と盾と()()()()()()()が飛来する。

 

 そして、ムゲンダイナはゼクロム、レシラム、ミュウツーを完全に無視し、空に瞬く二つに光に向かって莫大なエネルギー波を放った。

 

 上空で衝突する三色の閃光。思わず目を覆いたくなるほどの光の中心から。

 

 ゆっくりと、青い光と赤い光が、俺達に向かって降下してくる。

 

 その神々しいまでの光の中から現れたのは───二体のポケモン。

 

 剣のポケモン「ザシアン」は口に黄金の剣を咥え、顔には剣と同色の騎士の兜。首元からは束になったオレンジ色の長い毛。背中には翼のような黄金の装飾。淡い青色の体毛が、それら全てを際立たせていた。

 

 盾のポケモン「ザマゼンタ」はザシアンとは対照的に、原色のような深く濃い青色の体毛。体の前面が金色と赤の煌びやかな盾状の体毛で覆われており、猛々しい獅子のような印象を与えている。

 

 これが……3000年前にブラックナイトを封じたガラルの英雄達。

 

「お前達がまどろみの森で会ったのはこのポケモンか?」

「う~ん、多分。でも、剣を咥えてなかったしもうちょっとシュッとしたワンちゃんだったような……あんなおっきな剣を咥えて顎は疲れないのかな~?」

「何言ってるんだユウリ、伝説のポケモンなんだぞ! この程度で顎が疲れるわけないんだぞ!」

「うん、そうだよね! 伝説だもんね!」

 

 ユウリとホップの言葉に、ザマゼンタがこちらを振り返って俺達とザシアンを交互に見比べていた。心なしか笑っているようにも……あ、ザシアンがザマゼンタを睨んだらザマゼンタが微妙に縮こまった気がする。そういう力関係?

 

 っつーか、この威圧感……覚えてるぞ。七年前のあの日、ソニアちゃんをまどろみの森へ助けに行ったあの日。姿は見えなかったが霧の奥から感じたのと同じだ。じいちゃんが言ってたのはこのポケモン達のことだったんだな。

 

「すごい存在感だね……レシラムやゼクロム、ミュウツーにも匹敵する」

 

 ダイゴさんが顎に手を当てて二体を観察しながらそう言った。突如現れた二体のポケモン達に、上空を旋回しているゼクロムとレシラム……トウコさん達も事の成り行きを見守っている。

 

 剣と盾のポケモンを前にしてムゲンダイナは───

 

「怯えている、のか……?」

 

 ダンデくんがぽつりと呟いた。これまで猛威を振るってきたムゲンダイナ。ゼクロム達三体の伝説を相手にしてきたムゲンダイナが……ザシアンとザマゼンタを前にして、じっと動かなくなっていた。

 

「ムゲンダイナにしてみれば3000年前に自分を打ち破ったトラウマだ。当然だろうけど……」

 

 俺はそう言いながらも違和感を覚えていた。これだけの力を持ったムゲンダイナならば、ザシアンとザマゼンタという存在を前にした瞬間、3000年前と同じ轍を踏まないよう力の限り暴れ回ってもおかしくない。

 

 おかしくないはずなのに。

 

 もしかすると……いや、本当に仮定の話になってしまうが。

 

 ムゲンダイナは、俺達が思っているよりも───ずっとずっと臆病な生き物なのかもしれない。

 

 ……だとしても。

 

「悪いなムゲンダイナ。今のお前をこのまま放置するわけにはいかねえんだ」

 

 俺の言葉に応えるように、ザシアンとザマゼンタが雄叫びを上げた。

 

 その瞬間、ビリビリと肌を通して伝わってくる空気の振動を感じるとともに、周囲を支配していた()()()()()()()が、消えた。

 

「今なら、使()()()!!」

 

 確信した俺はボールを構えるが、それよりも早くムゲンダイナが行動を起こした。現れた二体の伝説の雄叫びに触発されたようにエネルギー波を放つ。

 

「メタグロス、まもる」

 

 メガシンカしたメタグロスが庇うように最前線に出ると同時、ザマゼンタがメタグロスの隣に並び立った。盾の英雄の名を持つザマゼンタは、エネルギーは一身に浴びながらも微動だにしない。そして、メガシンカした今のメタグロスなら───

 

「僕の相棒は、伝説にだって引けを取らない」

 

 ダイゴさんの言葉通り、盾の伝説に並び立った鋼の要塞は、完全にその一撃を防ぎ切った。

 

 と同時にザシアンが動いた。三メートル近い巨体からは想像もつかない俊敏な動きでムゲンダイナへと迫る。だけどムゲンダイナもただ茫然とザシアンの攻撃を待ち受けているわけじゃない。

 

 威力を捨て、発動速度に特化したエネルギー波をザシアンに向けて放った。

 

「……援護して。ミュウツー、サイコブレイク」

 

 だがそのエネルギー波をミュウツーの一撃が相殺する。そして、攻撃後の一瞬の隙を突いたザシアンが巨大な黄金の剣を振るい、ムゲンダイナを切り裂いた。

 

 ムゲンダイナから断末魔のような悲鳴が響き渡る。これまで伝説達の攻撃を散々受け続けてきたムゲンダイナをたった一撃で……。

 

「これが、剣と盾の英雄……」

 

 だが、感心してるだけじゃねえ。ザシアンとザマゼンタが味方に付いたことで、明確に()()()()()()

 

 この勝機を、逃す理由はない。

 

「合わせなさいN! クロスサンダー!」

「レシラム、クロスフレイム」

 

 イッシュの英雄と王が動く。彼らが使役する黒と白の伝説が再び、神の雷と聖なる青い炎を。

 

「……おいで、リザードン」

「行くぞ! リザードン!」

 

 次に動いたのは、カントーが誇る最強のチャンピオンとガラルが誇る最強のチャンピオン。

 

 二人が選んだポケモンは奇しくも、紅蓮の炎を操る赤き龍。

 

「……れんごく」

「れんごく!!」

 

 ムゲンダイナの巨体を、悲鳴ごと地獄の業火が飲み込んだ。……なんつー威力だよ。離れた場所にいる俺達でさえ突き刺すような熱さで肌が痛え。口を開けたら喉が焼けそうだ。

 

 だがこれで、ムゲンダイナの動きが止まった。手のひらに見える巨大な頭部がうなだれるように下がっていて、目に見えて弱ってきているのがわかる。あともう一息。

 

「すごい連携だぞ! マサル、ユウリ! 俺達も最強の合体技で参戦だ!」

「うん! ハロンの幼馴染トリオパワーを見せちゃうよ!」

「お前らな……。確かに巨大化した敵に合体技で対抗するのは戦隊物のお約束だけど、そんな都合の良い技が……」

 

 いやあったわ一つだけ。まさかナックルシティで変なおっさんに教えてもらった技を使う機会がくるとは……。ってか、こいつらよくそんな技のことを覚えてたな。へっ、やるじゃねーか。確かに二人の言う通り、ここは俺達のコンビネーションをこの上なく発揮できる最高の場面───

 

「ホップ! 技名は何にしようか? 私は『ウルトラユウリちゃんアタック~マサホプを添えて~』がいいと思う!」

「いや、ここはシンプルに『ハロンのきずな』がいいと思うぞ!」

「覚えてねえのかよ!! 俺の感心を返せや!!」

 

 このクソほど真面目な局面で何言ってんだこいつら。話が進まないから俺が全部説明してやると、二人は「あー、そういえばそんな技があったな」みたいな反応をしやがった。ユウリはともかくなんでホップまで急にIQが下がってんだよ……。

 

 とにかくやるぞ! 指咥えて見てるだけで、ここまできてレッドさん達におんぶにだっこで終わってたまるか。俺達だってジムチャレンジを通して信じられないくらいに成長したんだ。

 

 この戦いに割って入るだけの実力はあると自負している。

 

 今こそ、俺達の旅の集大成を。

 

「インテレオン!!」

「エースバーン!!」

「ゴリランダー!!」

 

 さあ行くぞ相棒。この一撃で、お前達の力で、この戦いに終止符を打つ。

 

 それだけの力をつけてきた。

 

 それだけの鍛錬を積んできた。

 

 だから胸を張れ。

 

 誰が何と言おうと。

 

 お前は世界で一番の相棒だ。

 

 

 

 

 

 

「みずのちかい!!」

「ほのおのちかい!!」

「くさのちかい!!」

 

 

 

 

 

 

 激流の柱。猛火の柱。深緑の柱。

 

 この技は、単体でこそそれなりの威力でしかない技だが。

 

 同種の()()()()と組み合わせることで。

 

 その真価を、発揮する。

 

 (しか)して、この技の威力は───伝説にだって届きうる。

 

 

 

 

 

 

 耳を(つんざ)くような断末魔。ここまでの戦いの中で最大級の悲痛な叫び。そんな叫び声と共に、ムゲンダイナの全身が眩い白光に包まれた。一瞬、ムゲンダイナが内包している全てのエネルギーを炸裂させるのかと思い警戒したが、ダンデくんとレッドさんに手で制される。

 

 光が収まり、その中から現れたのは……。

 

「ち、ちっちゃくなっちゃった!」

「それでも大きいぞ。二十メートルくらいありそうだ」

 

 俺とダンデくんが()()()()()()()ムゲンダイナ。手のひらのような形をしていた頭部も、その全長も、元の通りに戻っている。

 

 つまり、あの形態を()()()()()()()()()()()()ということ。

 

 つまり、ムゲンダイナを本当の意味で追い詰めたということ。

 

 ならば、俺達にできることは一つ。

 

 一つだけの、はずなのに。

 

 ザシアンとザマゼンタに、俺達に怯えている様子のムゲンダイナは。

 

 あれだけの猛威を振るっていたムゲンダイナは。

 

 まるで何も知らない無垢な子供のようで。

 

 その巨体に似つかわしくないほど、()()()()()()

 

「ダンデくん、レッドさん───みんな」

 

 ほとんど無意識の内に、俺は声を発していた。

 

 自分でも、驚くくらい……透き通るような声だった。

 

「あいつのことは、ムゲンダイナのことは───俺に任せてほしい」

 

 その言葉に、全員の視線が俺に集まる。いつの間にかゼクロムとレシラムの背に乗っていたトウコさんとNも降りてきていた。

 

「自分でも……何言ってんだ、って思ってる。こんな状況で、俺より優れた人達がいる中で何を言っているんだ、って」

 

 だけど。

 

 それでも。

 

 今ここで、俺は自分の意思を伝えられなければ、必ず一生後悔する。わかってるんだ。だって俺は、そんな後悔を抱えたまま、一度はその生涯を終えた人間なんだから。

 

「ムゲンダイナがどういう存在なのか、この目で見て、肌で感じて、わかった。災厄と呼ばれる理由がわかった。3000年前に封印することしかできなかった理由がわかった。だけど、それがムゲンダイナの全てじゃない。それ()、わかったんだ」

 

 ムゲンダイナがただただ理不尽な存在で、感情なんて何一つ持たない、災いをまき散らすだけの冷酷な生き物。

 

 そうでないことが、わかった。

 

「ムゲンダイナは、ただ怯えていたんだ。無理もねえよ。いきなり永い眠りから叩き起こされて、無理矢理に膨大なエネルギーをその身にぶち込まれて、強いポケモン達やトレーナー、3000年前の英雄達と戦わされて……ムゲンダイナにしてみれば、目が覚めたらわけのわかんねえ状況になってたんだ。()()()()()()()()のは、生物として当然の反応だ」

 

 もしかすると、3000年前も同じだったのかもしれない。推察でしかないが、隕石と共に飛来してこの星にやってきたムゲンダイナは、混乱のあまりその力を制御できず暴走させてしまったのではないだろうか。

 

 証拠はない。そんなもんねえよ。3000年前の真実なんか誰にもわかりはしない。

 

 だけど、わかることだって、ある。

 

 俺だからわかる。

 

 理解できないままに、()()()()()()()()()俺だからわかる。

 

 そして、ムゲンダイナに命を奪われかけた俺だからわかる。

 

 あれはただの、生物として当たり前の()()()()に過ぎなかったのだと。

 

「確かに、過ぎた力だ。ムゲンダイナが持つ力は、生物に許されるには、過剰過ぎるほどに強大だ」

 

 けれど。

 

「力そのものに、()()()()

 

 要は、使い方の問題だ。どんな便利な力だって、使い方を誤ればそれは時として他者を傷つける凶器となる。それは何も、ポケモンに限った話じゃない。俺達の身近にある全てが、そうなる可能性を秘めている。

 

「ムゲンダイナは、その有り余る力を制御する術を知らない。ただ己の身を守ろうとする行為ですら、相手を傷つけることになってしまう」

 

 本当にムゲンダイナが残忍な性格の生物であれば、今この瞬間にも最後の抵抗を見せていたはずだ。たとえば、この場で最も力のない存在を道連れにするとか、な。

 

 だが、今のムゲンダイナはそんな素振りを微塵も見せない。それどころか、親に叱られる子供のように縮こまっている。

 

「マサル、君ならムゲンダイナの力を制御することができると言うのか?」

 

 ダンデくんが尋ねる。その目は、チャンピオンとしてのものでも、よく知る幼馴染としてのものでもない。

 

 ただ一人の───としての。

 

「ムゲンダイナがその強大な力を制御できない一番の原因はきっと、()()()()()()()()()()()からだ」

 

 それは何も、力の使い方だけじゃない。

 

「3000年前にこの星にやってきて、英雄達と戦い封印された。そして今、無理矢理目覚めさせられてもう一度英雄達と戦った。何も知らないままに、ただただ、戦いの記憶だけがムゲンダイナには蓄積されている。この星にやってきてからのムゲンダイナはきっと、戦い以外のものを、何も知らない。そう……ムゲンダイナは、知らないんだよ。自分のことを、ガラルのことを、自分が()()()この世界のことを」

 

 俺だって、ムゲンダイナに偉そうなことを言えるほどこの世界を知っているわけじゃない。

 

 だからこそ。

 

「俺も、もっと知りたいと思う」

 

 ムゲンダイナのことを。

 

 この世界のことを。

 

「ダンデくんは俺に聞いたよな。『俺ならムゲンダイナの力を制御することができるのか?』って。答えは───()()だ」

 

 その言葉に、ダンデくんが目を丸くした。

 

「俺は、ムゲンダイナと一緒に世界を旅して、たくさんのことを()()()知りたいと思う。その旅の中で、少しずつ世界のことを、自分のことを知っていく中で……自分の力の使い方を、自分の力との向き合い方をゆっくり覚えていってほしい。力を制御するのは、()()()()()。ムゲンダイナ自身だよ」

 

 だから俺は、ダンデくんの問いにノーと答えたんだ。

 

「……どうして」

 

 そこで、俺の話を静かに聞いてくれていたレッドさんが口を開く。

 

「……どうして君は、そこまで?」

 

 レッドさんの漆黒の瞳が俺を射抜いた。

 

 言葉足らずの問いであったが、俺にはレッドさんの言わんとすることがわかっていた。

 

 そして、その問いに対する答えを、俺は持っている。

 

 

 

 

 

 

「だって俺は───()()()()()()()()()だから」

 

 

 

 

 

 

 これ以上ない、答え。

 

 俺が用意できる、最高の答え。

 

 その言葉を聞いて、レッドさんは。

 

 初めて俺に、優しく微笑んでくれた。

 

 そして。

 

 レッドさんは、背負っていたリュックの中からおもむろに()()()()()()を取り出し。

 

 静かに俺に差し出した。

 

「……これって」

 

 紫色に「M」の文字。上部の両サイドには赤い球体が描かれている。

 

「……七年前にヤマブキシティで()()()()()()()()()()()()()()()()()マスターボール。僕には使う機会がなかったけれど、これは───君が持つにふさわしい」

 

 心の奥底から熱いものがこみ上げてくる。

 

 俺は、託されたんだ。

 

 世界最高のポケモントレーナーから。

 

 その魂を、託されたんだ。

 

 震えそうになる手を必死で堪え、俺は、マスターボールを受け取った。

 

 その重みを、確かに理解し、周囲を見回す。

 

 ユウリが。

 

 ホップが。

 

 ダンデくんが。

 

 ダイゴさんが。

 

 トウコさんが。

 

 Nが。

 

 そして。

 

 レッドさんが。

 

 俺を、見ていた。

 

 わかってる。

 

 俺は、自分のやるべきことをわかってる。

 

 託された魂をその手に。

 

 俺は振り返った。

 

 剣のポケモン、ザシアンが。

 

 盾のポケモン、ザマゼンタが。

 

 静かに佇み、俺を見つめている。

 

 逸らさない。

 

 英雄達の、心を見透かすような目から。

 

 俺は決して、己の目を逸らさない。

 

 どれくらい、そうしていただろうか。

 

 実際には、数秒に満たない時間だったかもしれない。

 

 だけど俺には、永遠に感じていた。伝説達との視線の交錯を。

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 ガラルの英雄達が───道を空けた。

 

 

 

 

 

 

 俺はその道を、一歩一歩踏みしめるように進む。

 

 この一歩は、俺の人生を。

 

 ムゲンダイナの運命を。

 

 ガラルの未来を変える、大いなる一歩。

 

 俺はその一歩の重みをその身に背負い、ムゲンダイナに歩み寄る。

 

 一歩、また一歩と。

 

 近づけども。

 

 ムゲンダイナは───逃げなかった。

 

「もう二度と、誰にもお前のことを───厄災だなんて呼ばせやしない」

 

 手を伸ばせば届きそうなほどの距離に、ムゲンダイナがいる。

 

 その瞳を、俺は真っ直ぐに見据え。

 

 ボールを差し出し、告げた。

 

 

 

 

 

 

「俺と一緒に行こう。ムゲンダイナ」




 レッドさんから魂のマスターボールを受け継ぎ、ムゲンダイナゲットだぜ!

 でも、めっちゃ真面目なシーンなのにこいつでんT着てるんだよな……。

 さてさて、ガラルにとって特大の地雷であるムゲンダイナが手持ちになったわけで、普通なら厄災ポケモンなんて一個人じゃなくてポケモンリーグ管理や研究所行きになりそうですが……。

ダンデ「マサルからムゲンダイナを取り上げる? ……ほう?」
トウコ「マサルのバックに誰がついているかわかってないみたいね」
ダイゴ「僕を敵に回すというのかな?」
レッド「……」

色んな人達「\(^o^)/オワタ」

 Nは表立って動けないけどマサルを色々支援してくれるでしょう。

 次回は事件の後処理からです。自首したローズと留置所でねっとり面会すると思います。

 ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 評価、感想、ここすき等お待ちしております!

 次回もよろしくお願いします!

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