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でっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっか!!!
シュートシティの第一印象がこれだった。
駅を降りて広大な広場に立った瞬間、俺はあまりのデカさと広さに声を漏らしそうになる。デカい土地なんてハロンタウンで見慣れているけど、こっちはデカさのジャンルが違う。
古風なレンガ造りの建物が立ち並ぶ街並み、魔女の宅急便でしか見たことないような時計台。目の前の広場には巨大なアーマーガア像。……なんでアーマーガア? ガラルの交通手段として栄えてるから?
それから遠くには一周三十分以上かかりそうなバカでかい観覧車、もちろんこの街に来た目的である巨大なスタジアムもある。さらに、街中を走るモノレールやバンバドロタクシーもあった。こんだけデカい街だし交通手段も豊富だ。
なんつーか……東京やニューヨークみたいな大都会っていうより、レトロとモダンの入り混じったロンドンっぽいよな。前世でもロンドンなんて行ったことはないけど、めっちゃ良い雰囲気。俺、こういう街好きだ。
「でかっ!! でかすぎるぞ!! 兄貴達はこんな街でバトルをするのか!?」
「マサル、マサル!! あれ見てあれ!! でっかい観覧車!! 私、あれに乗りたい!!」
「落ち着け二人とも」
ユウリとホップが年相応の子供の様に目をキラッキラさせながら今にも駆け出してしまいそうだ。絶対単独行動なんかするなよ二人とも。この街で迷子になったら見つけるのにどれだけ苦労すると思ってんだ。
そもそも、なんで俺達がこのシュートシティへやってきたのかというと……簡単に言うとダンデくんとソニアちゃんの応援だ。ジムチャレンジに参加した二人はそのまま破竹の勢いでジムリーダー達を倒し、二人とも八個のジムバッジを手に入れてセミファイナルトーナメントへ進出したんだ。
正直、ソニアちゃんは途中でリタイアするかもと思ってたんだけど……存外、彼女にもバトルの才能があったらしい。
ダンデくんとソニアちゃん以外にセミファイナルトーナメントに進出したのはルリナちゃんっていう褐色の可愛らしい女の子とキバナくんっていう顔面600族のイケメンだ。おいダンデくん、絶対キバナくんに負けんなよ? イケメンでポケモンバトルも強いとか許されざるよ。あ、でもトウヤさんは許します。あの殺意に満ちた目がたまらないので。
あと例年のジムチャレンジ突破者は一人か二人らしく、今年は四人なのでかなり豊作の年とのこと。っつーか、一人とか二人ってトーナメントになんねえじゃん。
「三人とも、まずはホテルにチェックインしましょう」
「わかったぞ!」
そして当然、俺達お子様だけで来ているわけはなく、ホップママとホップ祖父母も一緒に来ている。ホップパパは明日からのトーナメントには間に合うとのことだ。日程は、明日がセミファイナルトーナメント、明後日がジムリーダー達を含むファイナルトーナメント、明々後日がファイナルトーナメントの優勝者と現チャンピオンの試合、という流れになっている。
俺達は前日入りしたから今日は一日フリーで自由行動になってるけど……ホップとユウリの手綱をちゃんと握っておかないと大変なことになるな。ふっ、これも年上転生者の苦悩か。
「どうしたのマサル? バカみたいな顔して?」
「失礼だなおい」
俺の苦悩に満ちたアンニュイな表情をバカみたいと言いやがってこの幼女。ユウリの頭をぐしゃぐしゃにしてやると「きゃーっ♪」と言いながら喜んでいた。大分テンション上がってんな。
「マサル!! あそこに『おいしんボブ』があるぞ!!」
「あとで行こうな」
「マサル!! あっちに可愛い『カフェ』があるよ!!」
「あとで行こうな」
シュートシティの街並みを歩きながら、ホップとユウリは色々なお店に目移りしている。気持ちはわかる。ハロンタウンやブラッシータウンにはない店ばっかりだからな。だけどな、このシュートシティがどれだけ栄えていようともウチの牧場より美味いモーモーミルクなんてあるわけないんだよ。
俺はユウリが勝手に走り出してしまわないようにしっかり彼女の手を握っておくことにする。もうあれだな、こいつには首輪とリードもあった方がいいかもしんないな。目を輝かせてキョロキョロしているユウリを見ながら俺は苦笑するのだった。
これから三日間宿泊することになるホテル「ロンドロゼ」は一言で言えばどちゃくそ高級ホテルだった。一泊何十万円するタイプのヤツだよこれ!? ロビー広っ!? フロントでかっ!? 歴戦のポケモントレーナー並みのオーラを持つフロントスタッフ達……まあ、彼らにとってはここが戦場だからな。俺達みたいなお子様にもものすごく丁寧な対応だし、施設も超一流ならスタッフも超一流ってことか。
ちなみに、ジムチャレンジ参加者はホテル代が無料らしい。あと、セミファイナルトーナメントに進出した参加者の関係者も無料とのこと。でなかったらこんな高級ホテルに泊まれるかい!! 至れり尽くせりだなおい。さすがローズ委員長、金の使いどころをわかってるな。こういうところがガラルでポケモンバトルが興行として成立している理由なんだろう。
「マサル……? やっぱりマサルですね!」
ホップとユウリがロビーの高級ソファできゃっきゃとはしゃいでいるのを離れたところから見守っていると、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。振り返ると、そこにいたのは褐色肌の銀髪美少女……サイトウちゃんだ。
なんでこんなところに……って思ったけど、サイトウちゃんのお父さんはラテラルタウンのジムリーダーだったよな。ファイナルトーナメントに出場するからその応援ってところか。
「おー! サイトウちゃん、久しぶり!」
「お久しぶりです! 元気にしていましたか?」
「元気元気。相変わらず農作業やってキテルグマとどつき合いしてるよ」
「そうですか。さすがですね、毎日鍛錬を怠らないとは……私もあれから、マサルに『ポケモンと戦う』ことを教えてもらってからポケモンに対する向き合い方が変わったんです。人間相手だけではわからないこと、ガラル空手だけではわからないことがたくさんあると学びました」
「……そ、そっか。よ、よかったよ」
まじでサイトウちゃんもポケモンと拳を交えてんのか。軽い気持ちであんなこと言うんじゃなかったな……でも今さら前言撤回するのもおかしな話だし。サイトウちゃんにはこのまま健全に成長していってもらおう! ヨシ!
「あ、紹介しますね。私の相棒のワンリキーです! ほらワンリキー、あいさつをしなさい」
「キキーッ!」
サイトウちゃんの隣にいたワンリキーが丁寧に頭を下げる。このワンリキー、もしやユウリより礼儀正しいのでは?
「この前、ワンリキーと一緒に洞窟でサバイバル訓練をしたんです! 洞窟はいい……視界が悪いからより一層感覚を研ぎ澄ませる修行に向いています」
「……なんにせよ、怪我だけはしないようにな」
「はい、もちろんです!」
サイトウちゃんは眩しいくらいの笑顔で答える。俺の軽はずみな発言のせいで修業キチになってしまったとは……まあ、サイトウちゃんも楽しそうだからいいか。
「よしワンリキー、お近づきの印にウチのモーモーミルクをあげよう」
「キーッ♪」
鞄からモーモーミルクの入った瓶を渡すと、ワンリキーは笑顔になって嬉しそうな声を上げる。可愛いなこいつ。
「サイトウちゃんにはウチの蜂蜜キャンディーと蜂蜜をあげよう。紅茶やホットミルクに入れると美味しいよ」
「わあっ♪ ありがとうございます!」
サイトウちゃんは年頃の女の子らしい可愛い笑顔でものすごく喜んでくれた。うんうん、修行もいいけどどうか女の子らしい部分も忘れないでください。
「そういえば、マサルはどうしてシュートシティに?」
「ああ、俺の友達がセミファイナルトーナメントに残ってるんだよ。だからその応援にな」
「ええ!? すごいじゃないですか!!」
「しかも二人」
「は、ハロンタウンはどんな魔境なのですか……」
実際、四人のうち二人がハロンタウン出身って結構ヤバいよな。ハロンタウンって自然が豊かな普通の田舎町なのに。あ、でもソニアちゃんは正確にはブラッシータウン出身か。……まあ、半分ハロン人みたいなもんだろ。
「くっ……私も負けていられません! お父様の試合を見るだけではなく、私自身ももっと鍛えなければ……! マサル、私はこのままシュートシティの空手道場に出稽古に行ってきます!」
「お、おう……いってらっしゃい」
「それと……約束、覚えてますか?」
「もちろん覚えてるよ。立派なジムリーダーになったサイトウちゃんと、ジムチャレンジでバトルする。忘れるわけないじゃん」
「え、えへへ……よかった、です」
サイトウちゃんは恥ずかしそうに頬を赤く染めながら俯いた。サイトウちゃんは真面目でストイックだし、いつか立派なジムリーダーになれると思うけど、問題は俺がカブさんを倒してラテラルタウンまで辿り着けるかどうかなんだよな。でも、そんな格好悪いことをサイトウちゃんに言えるわけない。とにかく、俺は俺にできることを精一杯やろう。
「あ、そうだマサル! 連絡先、交換しましょう! 私もスマホを買ってもらったんです!」
「そうなんだ。ちょっと待ってな……QRコードを……」
こうしてサイトウちゃんと連絡先を交換した後、彼女は空手道場へと向かっていった。本当に真面目だよなぁ、あの子……
「マサル!! このソファすっごいよ!! ふっかふっかでこんなに跳ねる!!」
「他のお客さんの迷惑になるからやめんか!!」
嬉しそうにソファでぴょんぴょんしているユウリを見て、こいつにサイトウちゃんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいと思うのだった。
「はわぁ~……マホミル可愛い~♪」
「ろとわふ~」
「おいしんボブ」でお昼ご飯を食べ、俺達お子様組三人は自由行動となったのでデザートを食べるために「バトルカフェ」へとやってくる。何やら物騒な名前だけど、どうも店長にポケモンバトルで勝てば美味しいスイーツをプレゼントしてくれるとのこと。
当然、俺達はポケモンを持っていないので普通のお客さんとしてスイーツを楽しむことにしたんだけど、ユウリがショーケースの近くにいたマホミル(おそらく店長のポケモン)にメロメロを食らってしまったらしい。確かにマホミルは可愛いよな。進化したマホイップも超可愛いし。可愛いは正義。
「ほらユウリ、いつまでもそこにいたら他のお客さんに迷惑だからこっちに来い」
「あ~ん、マホミル~」
ユウリの首根っこを掴んでホップが取ってくれた席へと連れて行く。ユウリだけじゃなくてマホミルもめちゃくちゃ寂しそうな顔してるな。この短時間でもう懐かれたのか。まあ、俺だってポケモンに懐かれる能力
「ユウリ、メニュー見てみろよ。どれもすごく美味しそうだぞ!」
「わあっ! ほんとだ~! 美味しそうだし綺麗で可愛い~!」
ユウリは寂しそうにしていた表情から一変、俺のカレーを食べる時と同じくらい目を輝かせてメニューを食い入るように見ている。ほんとに表情がコロコロ変わるヤツやな。俺はもう何を食べるか決めてるし、ちょっと店長さんと話をしておくか。
「───って感じで、ウチで扱ってる蜂蜜やモーモーミルクの品質はどこにも負けない自負があるんで、よかったらこの名刺に連絡ください。一応、じいちゃんがウチの『ガーベラ牧場』の責任者なんで」
「ありがとう。この品質の物はめったにお目にかかれないよ。是非ともウチに卸してほしいな」
店長さんに試供品を渡して営業をかけると中々に好感触だった。バトルカフェはシュートシティだけじゃなくて色んな街にあるらしいから、うまくいけば販路を拡大できる。まあ、こっから先はじいちゃんや父さんの仕事だけどな。
「マサル~! このパフェすっごく美味しいよ!」
「よかったな。……口の周りクリームだらけになってんじゃねえか」
「えへへ、拭いて~」
「しょうがねえなあもう……」
ユウリの口の周りを拭いてやったり、俺が注文したケーキをユウリに一口食わせてやったり……だめだなぁ、俺ってなんだかんだユウリを甘やかしてる気がする。こういうのはホップの役目だったはずなのに。
「この後どうするよ?」
「観覧車!」
「観覧車もいいけど、俺はちょっとブティックに寄っていきたいぞ。新しいTシャツを何枚か買いたいんだ」
「俺も靴が欲しいから先にブティックに行くか。ユウリもそれでいいな?」
「服……あんまり興味ない」
おい、それでいいんか女の子。いかんな、ちょっとこの二年間でユウリをワイルドに育てすぎたかもしれない。でも確かに、ユウリってお洒落するより食い気の方が勝ってるからな~。いつも俺達と一緒に泥だらけになってるから、服だって基本的には汚れて大丈夫なものばっかりでそんなに気をつかってなかったっぽいし。
どうするよ、このままユウリがファッションに全く興味がないまま成長して年がら年中クソダサジャージで過ごすようになったら。今日だってユウリママが選んでくれた服らしいし……いざとなったらホップが嫁に貰ってくれるから大丈夫か。
それはそれとして、ユウリには最低限の興味を持ってもらう必要がある。あ~……ソニアちゃんがこの場にいたらよかったんだけど、さすがに明日からトーナメントのソニアちゃんを付き合わせるのは悪いしな。
「ユウリにもっと可愛くなってほしいから一緒にブティックに行こう。な?」
「えへへ~。しょうがないなぁ~、マサルがそこまで言うなら付き合ってあげる」
ユウリはふにゃふにゃとだらしない笑顔を浮かべてそう言った。
ちょろすぎるだろこの幼女と思ったけどその気になってくれたならなんでもいい。ホップもダンデくんと違って服のセンスはあるからな。俺とホップの二人でユウリをコーディネートしてやろう。
「この『まるくびスウェット』はどうだ? ユウリはよく動くし、スキニーと合わせれば動きやすさと可愛らしさを両立できると思うぞ」
「スウェットと合わせるならこっちのプリーツミニスカンツの方が好きだな。でも俺はもっと女の子らしい可愛さ前面のこのリボンワンピースを推す」
「確かにこれもユウリに似合いそうだぞ」
「ね~、二人ともまだ~?」
ブティックに行って俺とホップは自分達の買い物をすぐに終わらせてユウリを着せ替え人形にしている。ホップと二人で「あーでもないこーでもない」と言い合いつつ、時に店員さんにアドバイスを貰いながらユウリの服を選んでいる。当の本人は最初は楽しんでいたけど、だんだん飽きてきたらしく、俺とホップの方が盛り上がってるというね。
そうか、これが自分の娘にはできるだけ可愛くなってほしいっていう世のお父さんの心理なんだな。
どうやら俺の精神面もかなり成長したらしい。
「あ、これ可愛い~! マサル、ホップ! 私、これにする!」
「お、なんだユウリ。やっとユウリも可愛い服に興味が───」
俺とホップが熱く語り合っているのをよそに、ユウリが嬉しそうな笑顔で俺達の元に一着の服……服? を持ってくる。
「ユウリ、これって……」
「うん。イーブイの着ぐるみパジャマ! 可愛いでしょ? 私、イーブイ大好き! えへへ、これにしよ~っと」
ユウリが持ってきたのはそれはそれはあざといイーブイの着ぐるみパジャマだった。完全に予想外で立ち尽くしていた俺とホップの心情なんて露知らず、ユウリは鼻歌交じりで試着室へ入っていく。
「どうどう? 今の私、すっごく可愛くない?」
そして着替え終わったユウリが満面の笑みで俺達を見ながらそう言った。うん、可愛い。可愛いよ。イーブイ自体もすっごい可愛いポケモンだし、ユウリもワイルドなところを除けば見た目は可愛い幼女だからな。可愛い×可愛い=超可愛いの方程式が成り立つのも当然だ。
「ああ、すごくよく似合ってて可愛いぞ」
「ありがとー、ホップ! ねえ、マサルは? マサルはどう思う?」
「うん、可愛い可愛い」
「うへへ~♪」
素直に褒めるのもなんだか癪だったので、頭をわしゃわしゃしてやるとユウリはだらしない笑顔を浮かべた。こいつ、だんだん犬っぽくなってきてないか。
「あ、マサルとホップが選んでくれた服も買うね。さっきママに電話したらポケペイをいっぱいチャージしてくれたんだ」
そういや、ユウリの家も結構なお金持ちだったよな。ユウリパパは別の地方に単身赴任してるっぽくてまだ会ったことはないけど。
どうしよう、久しぶりにユウリと再会したパパさんが「ユウリはガラルに来て野蛮になった」って言い出したら。……む、娘さんの新たな一面ですよ! いや、ここは素直に謝罪会見だな。
嬉しそうな笑顔で服の支払いをしているユウリを見ながら、俺は心の中でユウリパパに頭を下げるのだった。
それからも三人でシュートシティの散策を行った。いくらハロンタウンで野山を駆け回っている俺達とはいえ、このシュートシティは子供の足で探索するには広すぎる。ユウリの要望で観覧車に乗ったり、マクロコスモスの本社であるローズタワーを間近で眺めたり(コナンの映画だと絶対爆発するヤツ)、一足早くスタジアムを見学したりと、とりあえず主要なポイントは抑えることができた。
「ユウリ、完全に寝ちゃったぞ」
「しゃーない。朝からずっとフルパワーだったからな。むしろよくここまで持った方だよ」
日が傾き始めた頃、俺は電池切れになったユウリをおんぶしながらホップの隣を歩く。スタジアムを出るくらいからユウリの足取りが危うくて、帰りのモノレールの中で完全に力尽きてしまったらしい。俺の背中で寝るのはいいけど涎を垂らしたりすんなよ。
「スタジアム……本当にすごかったよなぁ。俺もいつかあんな場所でバトルしたいぞ」
「まずはジムチャレンジに参加しねーとな。といっても、誰かに推薦してもらわなきゃいけないけど」
「兄貴がチャンピオンになって俺を推薦してくれるから大丈夫だ! あ、もちろんマサルとユウリもだぞ。俺達三人でガラルの歴史に名を刻むんだ!」
「あ、うん。まあ、ほどほどにな」
「なんだよマサル。ノリが悪いぞ」
すまんホップ。俺はもうサイトウちゃんからジムチャレンジの内定をいただいてるんです。だけど今そんなことを言う空気でもないし黙っておこう。何年か経って、本当にホップとユウリも推薦された時に言えばいいな。
それにしても、ジムチャレンジ……ジムチャレンジなぁ。どういうパーティ編成にするか悩みどころだよな。ゲームだと手当たり次第に捕まえてレベルを上げて強いヤツや推しを選抜すればよかったけど、残念ながらジムチャレンジには期限があるからあんまり悠長なことはできない。その年のジムリーダーのタイプに合わせて編成して候補をある程度絞っておいた方がいいよな。あと、なるべくタイプが偏り過ぎないようにしないと途中で詰む。それからフェアリー婆対策で鋼タイプを絶対に一匹は入れる!!
「どうしたマサル、難しい顔して?」
「ん? ああ、どんなパーティにしようかなーって考えてたんだよ」
「さすがだぞ! もうそんなことまで意識しているのか! 自分だけのパーティ……相棒のウールーは絶対に入れるぞ! マサルはわたぱちを連れて行くのか?」
「いや、あいつは連れて行かない。あくまでわたぱちはウチの牧羊犬だからな」
俺がジムチャレンジに参加している間にわたぱちが牧場を留守にすると色々と大変になるくらい立派に成長したからな、あいつは。ただ、ジムチャレンジでしばらく俺が家に帰らなかったら寂しがるだろうなぁ。やべえな、今から俺も寂しくなってきたわ。
そんなことを考えながらしばらく歩いてホテル「ロンドロゼ」の入り口が見えてきたとき、俺はあることに気付いた……気付いてしまった。
「……ホップ、やばい」
「なんだ?」
「俺のリュックに『炎の男カブさんモデル超限定タオル』があるかどうか確認してくれ」
ユウリを背負っている関係で俺とユウリの荷物はホップが全部持っている。ホップは俺の言う通りリュックを開けて中を確認すると、ものすごく気の毒な表情になって首を横に振った。
「入ってないぞ」
「まじで!?」
「んぅ~、マサル……うるしゃい……」
思った以上に大きな声が出てしまい、ユウリは寝ぼけながら俺の首に回していた腕にぎゅっと力を込めて耳を甘噛みしてきやがった。おいやめろアナコンダユウリ。今は貴様の相手をしている場合ではないのだ。
「どこに置いてきた……? あ~……スタジアムだ。スタジアムでジムリーダーのパネルの前で写真を撮った時にタオルを出したからその時に……。ホップ!! 俺、今からスタジアムに戻るわ!!」
「え? い、今からか? じゃあ、俺もついていくぞ」
「気持ちは嬉しいけど、ユウリを一人にする方が面倒なことになる。起きた時に俺もホップもいなかったら絶対不機嫌になるだろ?」
「……そうだな」
俺の言葉にホップが苦笑する。くっそー、一生の不覚だ。まさかこの俺がカブさんの限定タオルを置き忘れてくるとは……もしかしたら誰かに盗られてるかもしんないけど、親切な誰かが忘れ物としてスタジアムのスタッフさんに届けてくれている可能性が一パーセントでもあるのなら、諦めるわけにはいかない!!
「母さん達に『マサルは遅れる』って伝えておくからな。気を付けて行ってこいよ」
「悪いなホップ、あと頼むわ」
そして俺はホテルの部屋にユウリを寝かしつけた後、再びスタジアムへと向かうのだった。
剣盾の着せ替えシステムは神!
新しい街に着いたらストーリーそっちのけでブティックと美容院を何度も往復しましたね。
SVの着せ替えシステム……? ほら、SVはストーリー重視だから(震え声)
あと、私は基本的にポケモンの一週目は男主人公を選択するのですが、剣盾は初めて一週目から女主人公を選択しました。
それくらいユウリのキャラデザに惹かれたんですよね。
次回はやっとあの子を出せます。
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!