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最終回です。
「イヌヌヌワン!!」
「ふぃあ~おっ♪」
ガラル人の朝は早い。
早朝四時、俺は生まれた時から一緒に生活している愛犬である「わたぱち」と我が家のアイドルであるニンフィアの鳴き声と共に起床する。胸に結構な重さと圧迫感を感じながら目を開けると、俺の上に乗って舌を出しながら「へっへっへっ」と呼吸をしている愛犬がおり、我が家のアイドルは嬉しそうに俺に頬擦りしていた。
「おはよう。わたぱち、ニンフィア」
俺はベッドから起き上がり、部屋のカーテンを開けて大きく伸びをする。まだ日は昇っていないものの、空はどんどん白みを帯び始めており、世界に一日の始まりを告げようとしていた。
今日も今日とて俺の一日は牧場での農作業から始まる。いつものように顔を洗い、外に出て牧場の空気を、ハロンタウンの自然豊かな空気を目いっぱい吸い込み軽くストレッチをして体をほぐす。
「よし、行くぞわたぱち、ニンフィア!」
「イヌヌワン!」
「ふぃあ~お」
寝起きの運動も兼ねて、小走りで広大な牧場内を移動する。わたぱちとニンフィアも楽しそうな表情で俺と並走していて、しばらく走っていると日課の見回りをしているウーラオスを見つけた。
「ウーラオス、おはよう」
「べあくあ!」
このウーラオス(連撃の型)は俺がマスタード師匠の下で修業をしている際に出会ったポケモン、ダクマが進化した姿だ。水と格闘の複合タイプで我がパーティーの物理アタッカーとして大いに活躍してくれている。
ウーラオスは同じ格闘タイプであるじいちゃんのカイリキーや父さんのキテルグマと特に仲良しだ。
それにしても……そうか。
マスタード師匠の下で修業してから一年半以上。
ユウリがチャンピオンになってから、二年。
俺は───十六歳になっていた。
そして、今日。この日。
俺は、俺達は再び旅に出る。
すごいよ!! マサルくん
最終話
あの日から二年。
俺達の生活は平穏そのもの……とはいかなかった。いや、別にブラックナイトみたいなとんでもねえ事件がまた起こったわけじゃないんだどな。
色々あったんだよ、この二年間の間に。
まず、ユウリがチャンピオンになってから数ヶ月後、俺はヨロイ島に住んでいるマスタード師匠の下で修業をすることになったんだ。ユウリはチャンピオン業務が忙しかったので残念ながら不参加だったものの、サイトウちゃん、おもしれー女クララパイセン、お労しい男セイボリーさん達と楽しく修業していた。
修業の内容は「ひたすらワシと戦え!」みたいなバトル漫画にありがちなものじゃなく、超高速で動き回るヤドンを捕まえたり、キノコ探しをしたりと一風変わったものだった。
特に、ヤドンを捕まえるのは結構苦戦して……サイトウちゃんなんかは馬鹿正直に真正面から追いかけ回すという脳筋戦法を取っていて、俺はそんなサイトウちゃんを尻目にせこせこと捕獲用の罠を設置していたところ、なぜかサイトウちゃんが罠にかかって涙目になるということが何度もあった。
クララパイセンは最初こそぶりっ子してたものの、すぐに本性がバレてセイボリーさんとよく口汚い罵り合いをしていた。
「パイセンのリーグカード背景が歪んでて草」
「あぁん? なんか文句あんのかよぉ!?」
「ふっ。クララパイセンは加工なんかしなくても美人ですよ」
「君に言われても嬉しくねぇんだよ。ホップきゅん連れてこいや!」
俺とパイセンは大体こんな感じの関係。パイセンは珍しい毒タイプの使い手なのでムゲンダイナには滅法優しかった。
セイボリーさんはセイボリーさんで代々エスパータイプのジムを営む由緒正しい家系であるものの、超能力者としては落ちこぼれだったらしく、家庭環境があまりよくなかったらしい。
「ワタクシはね、何を言われても動じないヤドンのことを尊敬しているのですよ」
涙出るわこんなん。ヨロイ島に遊びに来たホップも含めて、俺達男三人は熱い友情を育むのだった。
で、俺が修業に勤しんでいる間、ユウリは何をしていたかというと……。
「
「ウルォーード!」
「ウルゥーード!」
そこで俺はウールー達を誘導しているザシアンとザマゼンタに声をかけた。なんでザシアンとザマゼンタが俺の家の牧場で牧羊犬をやっているのかというと……ザシアンがユウリのポケモンに、ザマゼンタがホップのポケモンになったからだ。
話を少し戻して、俺がヨロイ島で修業している間、ユウリとホップは(二重の意味で)頭のおかしなガラル王族とのいざこざに巻き込まれていたらしい。なんでも、ザシアンとザマゼンタを暴走させて王族達にとって都合の悪い歴史を抹消しようとしたとかなんとか。
で、色々あってユウリとホップはザシアンとザマゼンタに認められてそれぞれの主になったってわけ。
ユウリはチャンピオン業務で色々忙しく、バトルをする機会も減ったからポケモン達が運動不足にならないよう俺の家の牧場でポケモン達を放し飼いにすることも多いんだ。俺も基本的にポケモン達は牧場で好きに過ごさせてるし、それはホップも同じ。だからウチの牧場には普通にガラルの英雄がウロウロしている。
伝説のポケモンを牧羊犬扱いするのは、最初はいささか抵抗があったけどザシアンとザマゼンタも楽しそうにしているから問題なし。二体ともよく近所の人からおやつをもらってたりちびっ子達を背中に乗せて走り回ってたりするし。会いに行けるアイドルならぬ会いに行ける伝説だな。ノリが良い伝説で何より。
っつーか、最近は俺も近所の人達もザシアンとザマゼンタのことを大型犬くらいにしか思ってない気がする。いや、もちろんちゃんと敬意もあるし感謝もしてるよ。ただなあ、俺のカレーができあがるのを待ってる時の二体の顔が……完全にご飯待ちの犬のそれなんだよなぁ。
ああ、そうそう。近所の森に伝説のポケモンが眠っていた件についてなんだけど、どうもばあちゃんの家系が代々まどろみの森を守る役割を持つ一族らしくて、じいちゃんとばあちゃんはザシアンとザマゼンタの正体を知っていたらしい。だから、二年前にブラックナイトが起こったときはユウリ達をスムーズに案内できたんだってさ。
俺は全然知らんかったけどな!!
「……っと、おはようレジエレキ」
「じじ♪ じじじ♪」
あ^~エレキがぴょんぴょんするんじゃぁ^~。
バネ仕掛けの玩具のようにぴょんぴょん飛び跳ねながら近づいてきたのはカンムリ雪原で出会った、我がパーティー最速のスピードスター、レジエレキだ。
カンムリ雪原なんてクソ寒いところに行った理由は、簡単に言えばソニアちゃんの調査を手伝うためだ。博士としての知名度が大きく上がったソニアちゃんは、新しい研究のためにカンムリ雪原に目をつけ、俺、ユウリ、ダンデくんという豪華メンバーを率いてカンムリ雪原に乗り込んだんだ。
ちなみにホップはソニアちゃんの助手とトレーナーという二足の草鞋でがんばっていて、カンムリ雪原とは別の場所を調査していたから俺達と一緒じゃなかったんだよな。
んで、意気揚々とカンムリ雪原にやってきた俺達が真っ先に遭遇したのが……元ガラルチャンピオンのピオニーさんと娘さんのシャクヤちゃんだった。ピオニーさんはシャクヤちゃんのために伝説ポケモンツアーなるものを企画しており、シャクヤちゃんは最初乗り気じゃなかったものの、ピオニーさんと知り合いだったダンデくんがノリノリになり、元チャンピオンのダンデくんが同行するからシャクヤちゃんも一緒に参加することになったんだ。
ちなみにシャクヤちゃんはダンデくんだけじゃなく俺やユウリのことも知っていたらしく、終始「でんTマン」と呼ばれ、ピオニーさんには……。
「おう、坊主が第八の
という、訳のわからない理由で俺が探検隊の隊長になり、ピオニーさんが集めた情報を頼りに伝説のポケモン達を探す……ことになったんだけど。
大変だった。
それはもう大変だった。
何が大変だったかというと、俺とピオニーさんが豊穣の王とされる伝説のポケモン、バドレックス(通称バド様)に翻訳機代わりとして操られたからだ。
どんな風に操られていたかというと……。
「マサルとピオニーさんが輝きながら浮いている!!」
目ざとく動画を撮っていたユウリはそう言っていた。動画を後で見せてもらったら本当に輝きながら浮いてたからな。しかもなんだよ「てょわわわぁ~ん!」って! っつーか、二人も操る意味なかったろ! ピオニーさんだけでよかったじゃん!
ただ、バド様曰く「俺がとても操りやすい波長をしていたので思わず」とのことらしい。妖怪ピンク婆といい、俺は催眠系に弱いな!! エロ同人かよ!!
で、最終的にバド様はダンデくんの手持ちになり、ダンデくんのパーティーが大幅に強化されることになるのだった。
ああ、話が逸れたけど、その伝説ツアーの最中にレジエレキと遭遇したんだ。他のレジシリーズも見つけたんだけど、なぜかレジエレキだけ俺についてきたんだよな。理由はわからん。もしかしたらバド様と同じく波長が合ったのかもしれねえな。
ちなみに他のレジシリーズは図鑑に登録だけした後、もう一度遺跡に封印しておいた。伝説系がほいほい闊歩するとろくなことにならないからな。
他にも、サンダー、フリーザー、ファイヤーの伝説の三鳥に会えるとのことでテンション爆上げだったが、実際に遭遇したのは空を飛ばず地上を爆走する山チョコボ、氷タイプとは違う意味の冷たさで目からビームを出す鳥、しば漬けみたいな色合いの邪悪なポケモンだった。
俺はかなりがっかりするも、珍しいポケモンには違いないので、襲いかかってきた三鳥を返り討ちにして図鑑にだけ登録しておくことにした。
なんやかんやありながらも珍しいポケモンをたくさん見ることができて充実したツアーにはなったんだ。ソニアちゃんも大満足だったし。
ピオニーさんとはそれからも仲良くしてて、ピオニーさんのもう一人の娘さん……パルデアに留学してて諸事情で一時的に休学中のボタンちゃん(通称ボタちゃん)とも知り合うことになった。休学理由はよく知らない。まあ、人生色々あるからな。
「おはよう、ムゲンダイナ」
「♪」
俺の姿を見つけるなり、ムゲンダイナが嬉しそうに俺に向かって飛んでくる。この二年でムゲンダイナもずいぶんみんなと仲良くなったな。ザシアンとザマゼンタを見ても怖がらなくなったし。
ムゲンダイナのこの特殊なフォルムは子供達、特に男の子の心にクリティカルヒットしたようで少年達から絶大な人気を誇っている。最初こそ子供達に怯えることもあったけれど、今では子供達とも仲良く遊んでいる。
ムゲンダイナは身体は大きいものの甘えたがりで甘口のカレーが大好物というなんとも可愛らしいポケモンだ。
ああ、そうそう。なんかもうウチの牧場が伝説のバーゲンセールみたいになってて、今でこそ落ち着いてるけどユウリがチャンピオンになったばかりの頃は結構大変だったんだ。
なんせ、あの年のジムチャレンジを賑わせたチャレンジャー達に加えて新チャンピオンと前チャンピオンが住んでる町なんだからな。一時期はそんな俺達に会おうとする人達が殺到して……ブラッシータウンもハロンタウンも基本的にはのどかな田舎町だからそれだけたくさんの人達を受け入れるキャパシティや宿泊施設もなく、どうしようか頭を悩ませていたところに救いの手を差し伸べてくれたのが俺のスポンサーであるでんT会社だ。
でんT会社の社長が多額の資金を投入して、ハロンタウンにコテージと温泉付きの広いキャンプ場を作ってくれたんだ。土地だけは余ってたし、宿泊道具は基本的にお客さんが持ってきてくれるからホテルや旅館を建てるよりもコストがかからない。ブラッシータウンの駅からも近く、交通アクセスも良好。しかもガラルはキャンプブームかつハロンタウンは自然豊かで伝説のポケモン達に気軽にお目にかかれる……人気が出ないわけがない。
このキャンプ場のおかげで観光客の宿泊施設問題を一気に解決することができたんだ。ほんとスポンサー様には頭が上がりませんです。はい。ついでに「田舎でろくなバイトがない!」と嘆いていた若者達のバイト先にもなりました。
あと、でんT会社の社長がまたとち狂って毎年一着おかしなTシャツを作るのが恒例行事になって、Tシャツにデザインされるポケモンは俺の手持ち(進化前含む)をネットの投票で選ぶって形を取ったら……この世界でもコイルが一位になったんだ。やっぱネットの匿名投票はダメだな。
去年の投票はそんな感じでネットの住民の玩具にされた結果、コイルTシャツが世に出回り、俺はパルデアに行ったらこのTシャツをナンジャモに着せてやろうと固く心に誓うのだった。
ちなみに今年の俺の手持ち人気一位はムゲンダイナで、小学校の家庭科のブラックドラゴンみたいなデザインだったから少年達に大人気になり、ムゲンダイナもTシャツを見て大喜びしてたんだ。ジバコイルは俺とコイルTシャツを見て「なんやこいつ」みたいな顔してたけど。
話を戻して、ハロンタウンに限らず、観光客が増えると治安の問題とか色々発生するんだけど……現チャンピオン、前チャンピオン、セミファイナルトーナメント出場者二人が住む町で悪さをするような輩は現れなかった。たぶんハロンタウンはガラルで一番治安が良い町だと思う。
ちなみに温泉はザシアンとザマゼンタが「ここ掘れワンワン」したところを調査して掘ったら出てきた。どうも、真の源泉はまどろみの森奥深くにあるとのことで、それがハロンタウンの地下にまで浸透していたようだ。ザシアンとザマゼンタはまどろみの森で生活していた頃はそっちの源泉に入ってたみたいだけど、今はもうウチの牧場で牧羊犬やってるからいちいち森の奥まで行くのが面倒臭いらしく、人間達に近場を掘らせたかったらしい。
それでいいのか伝説のポケモン。
まあとにかく、人間用の温泉とポケモン用の露天風呂を造れたので、それがハロンタウンの新しい観光名所になったんだ。マクワさん、メロンさんごめん……英雄の湯っていう肩書、こっちでも使わせてもらいます。
ああそうそう。肝心なこのキャンプ場の管理人なんだけど、でんT会社の社長と巨乳営業お姉さんに「若くて体力があって年中暇そうにしててポケモンへの理解が深い都合の良い人材いない?」って相談されたからボールガイを推薦したらマジでボールガイが採用されたんだ。
でんT会社は服飾関係の会社だし、そういう仕事をしたくて入社した社員に「君、明日からキャンプ場の管理人ね!」とか言ったら絶対辞めるもんな。俺なら辞める。というわけでボールガイが雇われたって感じだ。で、ボールガイもでんT会社の社員って扱いだからこれで無職じゃなくなって大喜び。
配信も続けていて、キャンプ場にやってくる野生のポケモンを紹介したり「ザシザマの一日」や「むげんだいなちゃんかんさつにっき」が人気のコーナーになっている。あいつ変な方向で才能を開花させたよな。
あと、ダイゴさんがハロンタウンに別荘を建てたからその別荘の管理もボールガイがやっている。
……ダイゴさんの別荘で思い出したわ。去年、その別荘で「第一回
会員の中にはパルデア四天王の幼女がいて、その付き添いとして夢女子を量産してそうなイケメン女子(同じくパルデア四天王)が来ていた。確かにこんな幼女を一人で怪しい集会に来させるわけにはいかんわな。
「まいど! チリちゃんやで~!」
「チリちゃんさん!」
「どっちかにせんかい!」
で、その日のメインの議題は「ドドゲザンとブリジュラス」についてで、特別ゲストとしてマリィとキバナさんを招き(マリィはすごく嫌そうにしていた)マリィのキリキザンをドドゲザンに、キバナさんのジュラルドンをブリジュラスに進化させて大いに盛り上がったんだ。
「キリキザンを進化させてくれたんはありがたかったけど……なんであたしを狂人達の宴に巻き込んだと!?」
「ごめんて」
「……今度マリィのお願いも聞いてもらうけんね」
「はい」
マリィとも変わらず仲良くやってて、ユウリ達と時々スパイクタウンに遊びに行ったり、ハロンタウンに招いたりしてる。モルペコに貰った木の実を庭に植えたら思いの外早く成長しててモルペコもご機嫌だったな。
そうそう。スパイクタウンと言えば、ユウリがチャンピオン権限を駆使して、第一回カレーフェスをスパイクタウンで開催したんだ。あいつが色んなカレーを食いたいだけのイベントになりかねなかったけど、イベント自体は大成功でスパイクタウンも大いに盛り上がった。ネズさんとかマキシマイザズのライブも一緒にやって、すげー楽しいイベントだった。
もう一人の同期ビートとも仲良く……仲良く? やってる。アラベスクタウンのジムに遊びに行ったらビートは嫌そうな顔するけど、ポプラさんは歓迎してくれていつも俺達にお菓子をくれた。ビートの口の悪さも相変わらず健在だ。
ビートで思い出した。ビートが尊敬するローズ元委員長の裁判が終わって、最終的に執行猶予付きの判決になったんだ。ローズさんが否認や黙秘せず取り調べに協力的なこと、これまでのガラルに対する貢献、減刑を求める世論、色々な要素が重なった結果だ。
そして、裁判が終わって俺がローズさんにポケモンを返した時……。
「私はもう一度、自分の足でガラルをゆっくりと見て回ろうと思います」
憑き物の落ちたような笑顔でローズさんはそう言っていた。オリーヴさんやダンデくんと定期的に連絡を取っているらしく、どうやら楽しく旅をしているようだ。うん、ダイエットにもなって丁度良いと思いますよ。
ダンデくんといえば、ガラルに新しくできたバトル施設の責任者になったんだ。施設名は「バトルタワー」というまんま過ぎる名前だけどシンプルでわかりやすい。シュートシティにあるローズタワーの受付や最上階を改装して、誰でも気軽にバトルができる施設になっている。
ダンデくん曰く「ガラルのポケモンバトルをもっともっと盛り上げるため」の施設で、タイミングが合えばジムリーダー達ともバトルできる。俺も何回か遊びに行ったけど……なかなかの魔境だった。ダンデくんともバトルして普通に負けたわ。っつーか、ダンデくんはチャンピオンの責務から解放されて
……チャンピオン時代より強いんじゃねえの?
ただ、チャンピオンとはまた違った忙しさや苦労はあるものの、以前のような仮初の笑顔を見せることはなくなって楽しそうにしているから、これはこれでよかったんだろうな。
バトルといえば、ジムチャレンジの他に新しいポケモンバトルの大会が開催されたんだ。
大会の名前は「ガラルスタートーナメント」
その名の通り、ガラルの有力なトレーナー達が一発勝負のトーナメントで頂点を目指す大会だ。ソロバトル部門とタッグバトル部門があり、去年と今年、二回開催されたんだ。
俺の結果は……ソロバトル部門は二年連続一回戦敗退。
いや、相手が悪かったんだよ! 第一回大会の初戦はバド様擁するダンデくんであと一歩まで追い詰めるも惜敗。今年の大会初戦はウーラオス擁するマスタード師匠であと一歩まで追い詰めるもこれまた敗退。
我ながらくじ運が悪すぎた。
タッグバトル部門は、第一回はユウリと組んで決勝戦でホップ、ダンデくんコンビを撃破し優勝。第二回はホップと組んで初戦でユウリ、マリィコンビと当たり惜敗。
俺のガラスタの戦績は極端だな!!
ちなみにユウリはソロバトル部門、タッグバトル部門共に二年連続優勝。未だ無敗のバトルクイーンとしてガラルの頂点に君臨している。
そんな風にバトルでは無類の強さを発揮してるユウリだけど、チャンピオンとしての業務にはひーひー言って半泣きになることもあった。そして、そんなユウリの負担を減らすために、ガラルで初の四天王制度が導入されたんだ。
されたっつーか、俺がダンデくんやオリーヴさんに強く要望したからなんだけどな。今までのガラルはチャンピオンへの負担が大きすぎた。確かに、チャンピオンってのは特別な存在だ。それは十分よくわかってる。だからといって、なんでもかんでも背負わせて前のダンデくんみたいに仮初の笑顔しか浮かべられないようになるってのは間違ってると思うんだよな。
だからこその四天王制度。ユウリを孤独にしないための、俺達。
その四天王のメンバーにはもちろん俺も入っている。あとはホップ、ソニアちゃん、ピオニーさんの三人だ。ホップは二つ返事で了承してくれたんだけど、ソニアちゃんは……。
「私が四天王!? 無理無理何言ってんの!? もっとふさわしい人がいるじゃん!! キバナくんとかさ!!」
こんな風にめっちゃ嫌がれてたけど。
「四天王には美人で可愛いお姉さん枠が必要なんだ!!」
「ふ、ふんっ! そんな安い口説き文句で引き受けるほど私はチョロい女じゃないんだからね!」
「……本音を言うと、同性で仲の良い知り合いが側にいればユウリも安心すると思うんだよ。ソニアちゃんしかいないんだ! もちろん、普段は研究を優先させていいからさ!」
「う、うぅ……わかったよ。なんだかんだマサルにもユウリにも調査を手伝ってもらったからね」
こんな感じで説得してソニアちゃんに四天王入りしてもらった。マリィはさすがにジムリーダーになったばかりだから無理。このタイミングで引き抜いたらネズさんに殺されかねない。
ピオニーさんは頼れる大人枠。それに、元チャンピオンだからリーグのことは俺達以上によくわかってて、トレーナーとしての経験も豊富。これ以上ないくらい適任だった。
「もうリーグに関わるつもりはなかったんだがなぁ……隊長のお願いとあっちゃ断れねえ!!」
やっぱ良い人だよ。いつかローズさんと和解できる日が来るといいな。
というわけで、「現チャンピオンを最も追い詰めた男でありムゲンダイナを従える俺」「ブラックナイト収束の立役者で盾の英雄に認められたホップ」「ガラルの歴史を変える世紀の大発見をしたソニア博士」「元チャンピオンである鋼の大将ピオニーさん」という錚々たるメンバーを集めることに成功したんだ。
その甲斐もあって、ユウリが孤高を拗らせたり、チャンピオン故の孤独に悩まされたりということもない。仕事の面では俺達でしっかりサポートして……仕事以外の部分では俺が支えているからな。
そういや、俺が四天王の人材集めに奔走している時に、新しい出会いがあったんだ。
「ライジングボルテッカーズ」っていう冒険家チームで、黒いレックウザの情報と、ナックルシティの古城に用があってガラルへやってきたらしい。黒いレックウザなんているんだな。厨二心が擽られそうだ。
で、そのライジングボルテッカーズには俺より年下の少年少女がいて、ガラルではお目にかかれない珍しいポケモンを持っていた。
「じゃあリコはセキエイ学園に入学早々年上のイケメン二人に遭遇することになったのか。少女漫画の主人公かな?」
「ほあっ!? そ、そんなこと考えるわけないじゃないですか! (……考えてたけど)」
「ほーん? 内気で引っ込み思案な自分が持っている不思議なペンダントをいきなり見ず知らずのイケメンが狙ってきてそれを別のイケメンが助けてくれてそのまま飛行船に乗って一緒に冒険……その一連の流れの中で! 自分がまるでヒロインのようだと! 微塵も考えなかったと! アルセウスに誓えるんだな!」
「あっあっあっ……」
「おーい、フリードくーん! リコがな~」
「ぎゃああああああああっ!! 何を言おうとしてるんですか!!」
「おっ、なんだ? リコはもうマサルと仲良くなってんじゃねえか」
「仲良くないです! マサルさんは私が見張ってないとダメなんです!」
「束縛の激しい激重彼女みたいなこと言ってやがんな……」
内気で人見知りするタイプと思ったけど、リコはかなり良い反応をしてくれる女の子だった。ブラッシータウンのリコちゃんと名前が被ってるからややこしいがな。あと、フリードくんはものすっごいイケボだった。キバナさんとタメ張るくらい。ガラルでジムリーダーやったら夢女子を量産すると思う。
「う、うぅ……ニャオハぁ……」
「悪いなリコ。ニャオハはウチの牧場のモーモーミルクの虜になったんだ」
「フニャァ……」
「ほあああああああっ!! こ、これが噂に聞くNTR……」
「へっ、おもしれー女」
「マサルさんに言われても嬉しくないですよぉ……」
弄り倒すだけじゃさすがに可哀想だったので、ホウエン出身のカブさんを紹介し、ついでにレックウザと同じドラゴンタイプのムゲンダイナも見せてあげることにしたんだ。
「俺の知り合いならムゲンダイナを見て『レックウザっぽいってことで探検達成にしとくか!』って言うだろうな」
「どれだけアバウトな人なんですか!?」
「ちなみにガラルの元チャンピオン」
「だ、騙されませんよ。元チャンピオンがそんな変人なわけないじゃないですか!」
「現チャンピオンは一日三食カレーにしようとする狂人だ」
「もしかして、ガラルってとんでもない魔境なのでは……?」
そんなこんなで短い間だったが、ライジングボルテッカーズの面々とも仲良くやれたんだ。俺のせいでリコがガラルに偏見を持ったかもしれないけど……縁があればまた会うだろうし、その時に誤解を解いておこう。解ければ。
「ふぃあ~お!」
「ごめんなニンフィア、ちょっと考え事をしてたんだ」
この二年の思い出に耽っていたらニンフィアに飛びつかれた。どうもボーっとしていたらしい。ニンフィアを撫でてやると、わたぱちも「自分も撫でて」と言わんばかりに頭を擦りつけてくる。ほんとに可愛いなお前ら。
俺のポケモン達は色んな仕事を手伝ってくれている。
インテレオンは牧場のカフェでウエイターをやってて、ニンフィアは牧羊犬の代わりをやったりカフェの看板娘をやったり。
バンギラスとウーラオスは牧場やキャンプ場で力仕事を。ジバコイル、シャンデラ、ムゲンダイナは牧場やキャンプ場だけじゃなくてハロンタウンの見回りを。レジエレキは……ぴょんぴょんしてる。
みんなもうすっかりハロンタウンの住人として馴染んでいた。
「インテレオン」
名前を呼ぶと、インテレオンが音もなく俺の前に現れ、膝をついて頭を垂れた。なんか素早さに磨きがかかってねえか? 瞬歩? レジエレキの移動法を見てなんか学んでんのか? なんつーか、スナイパーってより暗殺者とか忍者みてえだな。ゲッコウガかよ。
「朝飯食ったらみんなを集めてくれ。今回はわたぱちも一緒だ」
「うぉれおん!」
そしてまた音もなくその場から消え去った。うーんこの頼りになり過ぎる相棒。
さてさて、俺も朝の日課を終えて飯食ったらお姫様を起こしに行くとしますかね。
「ユウリー、起きろー!」
「うにゃにゃうぅ~ん……」
最早勝手知ったるユウリ宅。俺がノックもせずにユウリの部屋に入ると、案の定まだベッドで寝ているようだった。小さい頃に俺がプレゼントしたミロカロス抱き枕を大事そうに抱きながら。大分くたびれてたから新しいのをプレゼントしようとしたら断固拒否されたんだよな。
「起きねえと置いてくぞ」
「置いてかないで~。ましゃる~抱っこ~」
俺がカーテンを開けると気持ちの良い日光が部屋に入ってくる。日光を浴びてベッドの上で苦しそうにもがくユウリはふにゃふにゃしただらしない寝起きの笑顔で俺に腕を伸ばしてきた。
そのままユウリを抱き起してやり、ぼさぼさになっていた髪を手櫛で軽く梳いてやる。
「髪、伸びたな」
「一回ロングにしてみたかったんだ~。でもね……」
「でも?」
「手入れが面倒」
「だろうな」
前がボブ気味だったから余計にそう思うだろうな。ユウリの指通りの良い髪を撫でていると、ユウリは俺に抱き着いたまま再びうとうとし始めた。
「マサルも髪伸びたね~。片目が隠れそうだよ~」
「最近忙しくて切る暇なかったからな。どっかのタイミングで切るか……」
「マサルはロングと前のボブどっちが好き?」
「ロングはロングで大人っぽくていいよな。でも、前の見慣れたボブの方が俺は好き」
「ん~……じゃあ私も切る~」
「せっかく伸ばしたのにいいのか?」
「乾かすのに時間かかるし、ロングは冒険には向かない髪型なのだ。それに……えへへ。マサルが前の方が好きって言ってくれたからね」
ユウリはそう言って俺をぎゅっと抱き締める。
こいつは本当にこういうところがずるい。だから俺もこいつをつい甘やかして……いや、それは昔からだったな。俺もとっくに手遅れってことだ。
「ほら、眠気覚ましにシャワー浴びるなり風呂入るなりしてこい」
「……一緒に入る?」
「……ママさーん! ユウリと一緒にお風呂入っていいですかー!?」
「いいわよ~!」
「にょわあああああああっ!! な、何大声でママに聞いてるのっ!! ほんとに入るわけないじゃん!! マサルのあほ!! ばか!! えっち!! えちもん!! 性欲モンスター!!」
「性欲モンスターはお前だろうが。一回男の味を覚えたら猿みたいに盛りやがって」
「だ、だ、だ、誰がお猿さんかぁーーーっ!! ママに聞こえちゃうでしょ!!」
とっくにバレてるけどな。まあいい、あんまりグズグズしてたら電車の時間に遅れる。
俺はユウリを風呂場に放り込み、ユウリが出て来るまでリビングでゴンベと遊ぶことにする。またしばらくゴンベとも会えなくなるからな。今日はいっぱいおやつを持ってきてあげたんだ。
「こんにちはー!」
しばらくゴンベと遊んでいると、ユウリが出て来るよりも先にホップがやってきた。ダンデくんとソニアちゃんも一緒だ。わざわざ俺達の見送りに来てくれたところ悪いけど、ユウリはまだシャワーを浴びております。
「時間は大丈夫なのか?」
「こうなることを見越して遅めの飛行機を予約してある」
「さすがだぞ。ユウリの生態をバッチリわかっているんだな!」
あいつの生態に関しちゃ誰よりも知り尽くしてるよ。
「ダンデくんとソニアちゃんもありがとな。二人とも仕事や研究で忙しいのに」
「他ならぬ君達の門出だ。どんな予定だろうがキャンセルして駆け付けるぜ」
「いいなぁ。私も他の地方に行ってみたいなぁ~」
この二人の関係性もこの二年で少しは変わって……変わったのか? ダンデくんがかなり天然だからソニアちゃんが振り回されてて、いやそれは昔からだな。三歩進んで二歩下がるどころか三歩進んで三歩下がってる気がする。
むしろホップの方がマリィと良い感じになりつつある気がするな。こっちもこっちで二人とも天然だからどうなるかわかんねえけど。
「あ、みんな来てくれたんだ~!」
「今日出発なのにずいぶんのんびり屋さんね。荷造りはできてるの?」
「ふふ~ん、ソニアちゃん! 私を誰だと思ってるのかな? バッチリできてるよ!」
「昨日の夜に準備が全然できてなくて半泣きで俺に電話してきたのはどこのどいつなんだろうな」
「……ダレダロウネー」
ユウリが俺からさっと目を逸らす。なんで俺がお前の荷造りまで手伝わなきゃいけなかったんだよ。
その後、ユウリママお手製のホットケーキをみんなで食べてブラッシータウンの駅へ向かうことにする。今回の旅は長丁場だ。一年くらいは……来年のチャンピオンカップが始まるまでは帰ってこない予定になってる。だから今回はフルメンバーで各地方へ乗り込むんだ。
インテレオン、シャンデラ、ジバコイル、ニンフィア、バンギラス、ムゲンダイナ、ウーラオス、レジエレキ。んで、愛犬のわたぱちも一緒だ。ゲームだと六体までしか連れ歩けないけど、現実にそんな法律はないからな。六体以上連れ歩いてたら奇異の目で見られるかもしんないが、変な服を着せられてる時点で奇異の目で見られてんだよ。
「俺達がいない間、牧場のことは任せたぞザマゼンタ」
「ウルゥーード!!」
駅までの道中、牧場でウールー達を見守っていたザマゼンタに声をかける。わたぱちと一緒に旅ができるようになったのも、ザマゼンタがハロンタウンに残ってくれるおかげだ。ザシアンはユウリと一緒につれていくけど。
「ザマゼンタも一緒に行ってよかったんだぞ。マサルは俺が一番信頼しているトレーナーだからな」
「ホップ、察してやれ。姉のザシアンがいない間にゆっくり羽を伸ばしておきたいんだ」
「……ああ、なるほどだぞ」
俺がそう言うと、ユウリのボールからザシアンが出てきてジト目でザマゼンタを見ている。いたたまれなくなったのか、ザマゼンタはバツが悪そうな表情を浮かべて俺達から……正確にはザシアンから逃げるように駆け出して行った。
強く生きろよ、ザマゼンタ。
ザマゼンタの哀愁漂う背中を見届け、再び俺達は駅へと向かった。
「あ、マリィだ! ンムゥアアリィィちゃぁぁぁぁん!!」
「どっから声出したと!?」
駅に着くなりマリィを発見したユウリがマリィに抱き着き、もとい飛び掛かった。今日はツインテールじゃなくて髪を下ろしているようだ。マリィもこの二年でぐっと大人っぽくなったな。ネズさんはそんなマリィの成長を喜びながらも悲しんでいて、飲酒量が増えたとエール団のおっさん達が言ってたな。
「ビートも来てくれたんだな」
「ふん、あなた達のアホ面を拝んでおこうと思いましてね。あなた達が他の地方で遊んでいる間に僕は力をつけ、帰って来たあなた達をボコボコにしてあげますから」
「結局、ビートはあれからユウリにもマサルにも一度も勝ててないんだぞ」
「ムゲンダイナでほぼ完封できるからな。毒が効かないクチートも『かえんほうしゃ』で一撃よ」
「ポプラさんからあなたの倒し方を伝授されている最中です。大いなるピンクの力であなたの能力を下げてやりますから覚悟しておいてくださいね」
「なんでフェアリータイプの使い手はトレーナーにダイレクトアタックしてくるんだよ」
あの妖怪婆め。いらんことをビートに教えやがって。また世界各地の
「うら~♪」
「お、モルペコ。元気にしてたか? 色んな地方の美味しい物たくさん送ってやるからな~」
「うらら~♪」
ぽてぽてと歩いてきたモルペコを抱き上げて頭を撫でてやる。前会った時よりちょっと重くなったか? これは果たして身体が成長したのかそれとも太っただけなのか……。
「マリィ、見送りに来てくれてありがとな」
「ええんよ。しばらく会えんくなるから直接顔見たかったし。他の地方のトレーナーになめられんようにガツンとかましてきんしゃい!」
「マリィってだいぶ好戦的だよな」
「エール団に『しぇからしか!』って怒鳴るくらいだぞ。マリィの説教はおっかないんだ」
「でも、そんな好戦的で怒ったら怖いマリィのユニフォームはゴスロリになったんだよねぇ~」
「あ、あれはユウリがデザインしたせいやん!」
「ぬっふっふ~。私との賭けに負けたマリィが悪いのだよ」
今年のガラスタでマリィは準決勝でユウリとあたり、「負けた方が勝った方の言うことを聞く」というありがちな賭けをしたんだ。で、マリィが負けてマリィのユニフォームがゴスロリスタイルになったんだ。ユウリがデザインして形にしたのがでんT会社。ほんとに何でもやるなあの会社。社長は案の定ノリノリだったし。
「来年一年はあのユニフォームやなんて……恥ずかしかっ!」
「いや、去年のへそ出しどころかお腹丸出しユニフォームもめっちゃエロかったけどな」
「しぇ、しぇからしか!」
マリィが顔を真っ赤にして俺をポコポコ叩いてくるのをホップが必死に宥めていた。ほんとなんであんな腹出しユニだったんだろうな。ネズさんもよく許可出したわ。
「っと、そろそろ時間か。うし、行くぞユウリ」
「うんっ! みんな、お見送りありがとね!」
時計を確認すると、あと数分で列車が出発する時刻になっていた。
「二人とも、目一杯楽しんでくるんだぞ! 俺も二人に負けないようにがんばるからな!」
「気を付けて行ってきんしゃい。帰ってきたらたくさんお話聞かせてね」
「ま、せいぜい怪我のないようにしてくださいよ。万全のあなた達に勝たないと意味がないので」
「リーグのことは何も心配しなくていい。俺達に任せておけ」
「珍しいポケモンに出会ったら写真やデータ送ってちょうだいね」
みんなの言葉に、俺とユウリは笑顔を浮かべて手を振りこう言った。
「行ってきます!」と。
列車が出発し、見慣れた町の景色がどんどん遠ざかっていく。寂しさはあるが、それ以上に俺は期待に胸を膨らませていた。
「ねえマサル、最初はパルデアに行くんだよね?」
「ああ、カロスでプラターヌ博士に会ってメガシンカについて教えてもらうのと迷ったけど……ピオニーさんに『復学したボタちゃんがド・心配だから様子を見に行ってくれないか?』って頼まれたからな」
「確か、『オレンジアカデミー』だったよね。ボタちゃん元気にしてるかな~」
「なんか、学校全体で『宝探し』ってイベントをやってるらしい」
「宝探し! 楽しそう! 私もやってみたい!」
部外者が参加できるもんじゃねえだろ。ボタちゃんの宝探しにくっついていくくらいはできるかもしんないけどな。
「マサルはパルデアで何したい?」
「ナンジャモをバトルで負かしてコイルTシャツを着せるのが俺の使命だ。これにはスポンサーもにっこり」
「うーん、これはナンジャモに同情」
「大衆受けの可愛い路線もいいけど、やっぱナンジャモは身体を張ったときにこそポテンシャルを最大限発揮できると思うんだよな」
「厄介古参ファンだね~」
動画のコメント欄見てると結構そういう意見もあるけどな。いつもそういうコメント残してる人がいて……えーっと、確か『グルキン』さんだったか? この人も身体張った昔のナンジャモが好きみたいだし。
そんなことを思い出していると、スマホロトムがふよふよと浮いてメッセージの着信を知らせてきた。
「誰から?」
「……ダイゴさん」
送り主はダイゴさんで、メッセージと一緒に一枚の画像が送られてきている。
「……メタグロスをテラスタルさせてやがる」
「えーっ!? もしかしてダイゴさんって今パルデアにいるの!?」
「そうらしい」
映っていたのは満面の笑みを浮かべるダイゴさんの隣でテラスタルしているメタグロスだった。これでダイゴさんのメタグロスはメガシンカとテラスタルの両方を習得したってことだよな? そういや、ダイゴさんってガラルから帰る時に交渉してダイマックスバンドを手に入れてたし……まさか本当にメガシンカさせた上でテラスタルでタイプを補強してダイマックスさせる気じゃないだろうな。
ダイゴさんだしありえる。
「パルデアでダイゴさんに会うかもね~」
「あの人、一回のインパクトが強すぎるから久しぶりに会った気がしないんだよな」
そこそこの頻度で連絡取り合ってるし。
「トウコさんからもこの前メール来てたな。『いつイッシュに来るの?』って」
「トウコさん! 早く会いたいな~!」
「パルデアの滞在期間は一ヶ月の予定だ。何の事件にも巻き込まれなけりゃな」
「心配性だねマサルは。そんなほいほいブラックナイトみたいな事件が起こるわけないでしょ~」
「だな。んで、パルデアの後はカロスに行って……イッシュはその次。数か月後にはイッシュに行けそうだ」
トウコさんにも会いたいし、できればNにも会いたいな。あとはブルーベリー学園も気になる。バトル特化の学園って話だから、強い生徒がたくさんいるんだろうな。
なお、案の定パルデアで厄介ごとに巻き込まれ、イッシュでは「ヤーコン探検隊」として「伝説の密林に潜む巨大シビルドンを追え! ~タロちゃんを添えて~」という想定外ばかりの旅になるのだった。
「ねえ、マサル」
「あん?」
ユウリが俺の肩にこてんと頭をもたれかけてくる。
「えへへ。こうしてると新婚旅行みたいだね」
「
「まだ……まだかぁ……。フヒッ。じゃあ~マサルくんはぁ~いつプロポーズしてくれるのかしら~?」
「来年のガラスタでお前に勝ったらその場で全国放送プロポーズしてやるよ」
「お、おふっおふっ。ぜ、全国放送ぷろぽーじゅ……ふひゅひひひ……こ、これはしゅごいことになりますよぉマサルくん」
「お前ほんと笑い方気持ち悪いな」
何年経ってもこの笑い方は治らねえなぁ。
呆れつつも、俺はほとんど無意識の内に頬を緩ませ、ユウリの頭を撫でていた。
「ねえ、マサル」
「あん?」
そしてユウリは顔を上げ、幸せいっぱいの満面の笑みを浮かべてこう言った。
「マサルってほんっとーに私のことが大好きだよね!」
その瞬間、何かムカついたので俺はユウリの唇を塞いでやるのだった。
すごいよ!! マサルくん fin
ご愛読ありがとうございました!
後日、エピローグと裏話などの「あとがき」を投稿したいと思います。
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