えちえち可愛いカナリィちゃん√の
中編ということはつまり……後編があるということです。
屈辱だ。
昨日は僕の人生史上最大の屈辱を味わった日だった。あんなクソダサTシャツを着せられただけじゃなくその格好でクソダサポーズまで取らされるなんて……!!
その上、そんな僕の醜態を大勢のギャラリーと配信で全世界に晒してしまうなんて!!
絶対掲示板で好き勝手書かれてるだろ!! ざsxdcvfgbhんjmk、l。;・yヴいbじゅのkml!!
「この勝負も賭けもカナリィから持ち掛けた。……あれ? マサルって実はあんまり悪くない?」
僕と同じようにTシャツを着せられたムクちゃんまでこんなことを言う始末。まあムクちゃんは普段からクソデカシャンデラ帽子をかぶっててバトルの時とポケモンをメガシンカさせる時にクソダサポーズを取るから……。もしかしてマサルとムクちゃんって実は血が繋がってたりしないだろうな。
ふんっ……! こんな日は何もかも忘れてゲームに没頭するに限る。今日は収録も配信もやらないっすよ。ストレス解消のためにモンスターをハントするゲームをやるっす!
あ^~低クエストの野良マルチに参加して最強装備で無双するのが気持ちええんじゃ~。これが異世界転生ものの主人公の気分ってやつかな。おらっ! もっとカナリィちゃんをもてはやせ!
今日はもうご飯なんて食べずにエナドリキメてピザポテトを筆頭にお菓子をだらだら食べながら無双ゲーでストレス解消する! 一日中部屋に引きこもるからな! マサルとは顔を会わせないからな!
そう意気込んで冷蔵庫から取り出したエナドリを一気にキメたところだった。
部屋の外から食欲をそそるとてつもなく良い匂いが漂ってきていることに気付いてしまった。
こ、こここ……この匂いは……!?
待て待て落ち着けカナリィ。僕はたった今魂に誓ったはずだろう? 今日は一日中引きこもってお菓子を貪りながら異世界転生主人公ムーブでストレスを解消するって! ……あ、ヤバい。お腹が鳴りそう。
くそーっ! 誰だこんな良い匂いを漂わせた料理を作っているのは! 絶対あいつだ! マサルに違いない! マサルめ……君はつくづく思い通りにならない男だな!
言っておくが、僕は絶対に屈しない!
こんな良い匂いになんて絶対に屈しないんだからぁ!
カナリィ√【中編】
『劇場版名探偵ムク~生殺与奪の
「あ、カナリィさん。おはようございます!」
「……おはよ」
ガレージにやってくると、マサルが三つのでかい鍋を効率よく混ぜながら炊き出しみたいなことをやっていた。じーちゃんや工務店のみんなは楽しそうにご飯を大盛によそって鍋の中に入っているものをご飯の上にかけている。
……カレーだ。僕が思った通り、やっぱりカレーだった。だけど僕はもう今さらツッコんだりしない。だって昨日もそうだったから。昨日も僕が起きた時にマサルは大量のサンドウィッチをみんなに振舞っていたから。
そして僕は別にこの良い匂いに屈したわけじゃない。
ほら、その……あれっすよ。こんなところで火を使うと火災報知器が誤作動とか起こすかもしれないでしょだから僕は大丈夫かどうかちゃんと確認しに来ただけで決してカレーの匂いにつられたわけじゃないそうこれは工務店を守るための正当なる行動なんだ。
……カレーの匂いになんてつられてないよ? つられてないっすよ? つられてないっつってんだろ!!
「カナリィさん、ご飯まだでしたよね? 甘口、中辛、辛口の三種類用意しましたけど、どれにします?」
「……辛口」
三つの鍋は辛さでわけてたのか。こういうところの気遣いはできるんだなこの男……。それになんだそのヨクバリスエプロンは!! もっとこう……可愛いポケモンとか格好良いポケモンはたくさんいるだろ!! なんで絶妙にぶちゃいくなポケモンをチョイスした!!
と声を大にしてツッコみたい。ツッコみたいがなんだか負けた気がするのでスルーしよう。
だがしかし!! このカレーの出来次第では!! 料理漫画の嫌味ったらしい老害評論家みたいにケチをつけてやるからな!! 覚悟するっすよマサル!!
「どうですか?」
「……美味しい」
甘いものが苦手だから辛口を選んだけど……何だこの絶妙な辛さは!! チョリソーが入っててカレーなめてんのかと言ってやろうと思ったのにこのチョリソーが良いアクセントを出していやがる!! 空腹も相まってスプーンを口に運ぶ手が止まらない!!
「おかわりもありますからね」
「……いただくっす」
ふんっ! 今日のところはこのくらいで勘弁してやるっす!
「マサルー。いるっすかー?」
「はいはい、どうしました?」
その日の夜、僕はマサルの部屋を訪れていた。昼は不覚をとったっすけど、僕は元々夜型人間。つまり、夜こそが僕の能力を最大限引き出せる時間! 朝四時起きの昼型農家ボーイのマサルはその本領を発揮できないはず!
この勝負、もろたでマサル!
「一緒にゲームやんないっすか?」
「配信ですか?」
「いや、ふつーに二人で遊ぶだけっす」
僕が持ち込んだのはピンクの丸い化け物が色んな乗物に乗ってレースやバトルをするゲーム。最近、リメイク版が発売されたけど、僕が持ち込んだのはリメイク前の物……二十年以上前のレトロゲーム。さすがのマサルも二十年も前のレトロゲームはプレイしたことがないはずだ。
だけど僕はゲーム実況者として新旧問わずあらゆるゲームをプレイしてきた。つまり、君が僕に勝てる可能性はゼロパーセント。カナリィちゃんの完璧すぎる勝利の方程式っす!
「わぁ~! エアライドじゃないですか! めっちゃ懐かしい。一時期シティトライアルを無限にプレイしてましたね」
やったことあるんかい!! 何歳だよ君!! 二十年以上も前のゲームだぞ!!
「リメイク版じゃなくあえて旧式を持ってくるあたり、カナリィさん……わかってますね」
「そうっしょ?」
くっ……レトロゲーの良さを共感してくれて嬉しく思っちゃったっす。だけどその程度でどうにかなるほど僕はちょろい女じゃない。君を華麗に打ち負かして「さすがですカナリィさん! さすカナ!」って言わせてみせるっすからね!
そう考えてマサルの部屋に入った瞬間、僕の視界にある物が飛び込んできた。
そのある物とは僕を模したバカでかいぬいぐるみだった。
「なんでこんなもんが君の部屋にあるんすか!?」
「タラゴンさんの渾身の力作アスレチックを完全制覇したら貰いました」
「命の保障ができないあのイカれたアスレチックを!? 君ほんとに人間なんすか!?」
「ロトムグライドは甘え」
「ガラル人すげえ!!」
マサルもヤバいけど僕の知らないところでこんなぬいぐるみを作ってるじーちゃんもヤバい。カナリィぬいって小さいのとか顔だけのだったじゃん! ……って、よく見たら窓際にカナリィぬいが全種類並んでる!!
「このビッグカナリィぬいめっちゃ抱き心地良いんですよ」
「本人を目の前にして抱き心地が良いとか言うな!!」
「まあまあ、ここはひとつ騙されたと思って」
「モデルになった本人がそのぬいぐるみに抱き着くってどんな絵面だよ!!」
で、なんだかんだマサルに言いくるめられてぬいぐるみに抱き着いてみると……びっくりするくらい抱き心地が良かった。僕の抱き枕にしたくらい。
「ちなみに小さい方だと『あおのカナリィぬい』が一番好きです。目が片方<になってるのがよき」
「わかりみ」
マサルの言葉に思わず同意してしまった。でもわかるっすよ。女の子のイラストで顔が(>_<)になってるのすごく好き。
「話変わりますけど、カナリィさんって髪下ろしたら
「
「しょーもな。……今の発言について詳しく解説してくださる?」
生意気なことをほざくマサルのほっぺたを思いきり引っ張ってやる。ふんっ! 確かに今の僕はお風呂上がりの部屋着という激レアカナリィちゃんで……というかもうちょっと別の反応はないんかい!?
「それが!! 夜分にお風呂上がりの可愛い女の子が!! 自分の部屋を訪ねてきた男の反応か!!」
「俺に何を期待してるんですか……いや待てよ、ここでガラル紳士の本領を発揮してカナリィさんの好感度を稼いでおけば後々都合がよさそうだ」
「少しは内心を隠せや」
「ふっ……髪を下ろしたカナリィも素敵だね」
「ごめん。全身の毛穴から緑色の汁を垂れ流して死にそう」
「化け物で草」
マサルは死ぬほど気障なセリフが似合わない。顔は決して悪くない……いやむしろ良い部類なはずなのに、マサルにそういうことを言われても微塵もときめかなかった。
「にしても、カナリィさんって寝間着は普通なんですね。普段着はドスケベなのに」
「ドスっ……!? おい!! ドスケベとはなんだドスケベとは!?」
「あんなお腹丸出しで胸元にキーストーン付けてる服なんてドスケベ以外表現のしようがないのでは? ……まさかカナリィさんは周りからエロい目で見られることに快感を覚える変態だった……?」
「人を痴女みたいに言うなや!! そもそも!! 君にファッションであれこれ言われるのだけは納得いかない!!」
「俺の場合はスポンサーへの配慮っていう誰もが納得する理由がありますからね」
「まるで僕の服装には納得できる理由がないみたいじゃないすか」
「……趣味は人それぞれで良いと思いますよ。俺はこれでも多様な価値観に理解がある人間です。ほら、ピュールも人に強要しなければファッションは自由だと言ってましたし」
「僕だってなぁ! あんな格好してるのには理由があるんだよ! 肌面積多い方が再生数増えるの!」
「サムネホイホイ、いやサ胸ホイホイ……男の悲しき
「そんな同情するような目で僕の胸を見るな!」
エロい目で見られるのは慣れてるけどなんでそんな気の毒そうな視線を向ける!? ほんとに何なんだこの男……十代の男の子なんて四六時中エロいこと考えてる猿じゃないんすか? なんかマサル相手だとものすごく年上の男の人を相手にしてる気分になるっす。
「まあいいっす。とにかく、シティトライアルで勝負っすよ。負けた方が勝った方の言うことを一つ聞くってことで」
「カナリィさんも懲りない人ですね。よっしゃ、俺が勝ったらカナリィさんは今後、動画冒頭のあいさつを『おはこんハロチャオ』にするってことで」
「ふざけんな! ぜってー負けねえっすからね!」
「ふっ、ハロンのハイドラ使いと言われた実力をお見せしましょう」
「ハイドラ(笑)とか。産廃機体乙。ドラグーンの申し子カナリィちゃんの相手じゃないっすね」
「厨マシンで無双して楽しいんか?」
「楽しいっすよ」
「そうだね」
僕が勝ったらマサルに何をさせてやろうか。レトロ激ムズ死にクソゲーのプレイ実況でもやらせるっすかね。そんなマサルを僕は外からひたすら煽り散らかしてやるっす。
というわけでプレイ開始っす! 覚悟しろよマサル!
「はっはー。パーツ見っけ! これでもうカナリィちゃんはドラグーン作れないねぇ~」
「はぁ~!? ふざけんなし! 返せよ! それは僕のドラグーンだ!」
「所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ」
「他のパーツを先に見つけて完成を阻止してやるっす!」
「そんなこと言ってる間に……あ、なんか普通にオールアップが落ちてた」
「そんなんチートっすよチート! ズルすんなし!」
「ちょおっ!? ゲーム中のダイレクトアタックはマナー違反でしょ!? それでもゲーマーなんか?」
「うるせー!」
「あ、カナリィさんの髪めっちゃ良い匂いする」
「嗅ぐな!」
ムカついたからマサルのほっぺたに頭をぐりぐり押し付けているとそんなことを言いやがった。お前……そういうのは心の中にとどめておいて僕にドキッとするところだろ! ほんと情緒がないなこの男!
「はい。ミニゲームも俺の勝ち。というわけで罰ゲームの時間だね~」
「は? 誰が一回勝負だなんて言ったっすか? まだまだ夜はこれからっすよ」
「……この負けず嫌いはもはや才能ですね」
「はっはっはー。事前にレギュレーションをしっかり確認しなかったマサルの落ち度っすよ。エアライドだけじゃなくてスマブラとかも持ってきてるんすからね」
「マジで徹夜する気だこの人……」
「今夜は寝かさないっすよ♡」
「それ言う人って大体先に寝落ちするんだよなぁ」
マサルは昔を懐かしむような穏やかな表情でそう言った。……おい、今誰の顔を思い浮かべたんすか? ふん、まあいいっす。僕が満足するまで付き合ってもらうっすからね!
「んんぅ~……」
ぼんやりと目が覚めて最初に気付いたのは、お日様のような心地よい香りの中にほんのりの混じる甘い香り。干したてふかふかのお布団をぎゅっと抱き締め、僕はもう一度この
その瞬間、僕は反射的に勢いよく上半身を起こしていた。
そうだ! 昨日は……昨日というか今日だけど! マサルとずっとゲームしてて……それで、それで……。
ね、ねねねねねね寝落ちした!? こ、この僕が!? 超絶夜型人間のこの僕がゲーム中に寝落ちした!?
いや寝落ち自体はよくあるっすね。モニター付けたままデスクに突っ伏して寝落ちしたことも数えきれないくらいあるし。
って! 問題はそこじゃない! 昨日の夜、僕は自分の部屋に戻った記憶がない……ということは……やっぱりそうだ! マサルの部屋で寝落ちしちゃったんだ! こ、ここここれはもしや!? マサルと一緒に同じベッドで寝ちゃっていうお約束の……!?
そう思って隣を見ると……誰もいなかった。
「いねえのかよ!!」
思わず僕は枕を放り投げる。
だよな! マサルはそういうお約束を悉くぶっ壊す男だもんな!
いやいたらいたで困ってたっすけどね。……うん。
そんなことを考えていたら、マサルが部屋の外からひょっこり顔を出した。
「あ、カナリィさん起きました? おはようございます。といってももう昼ですけどね」
「おはよ。もしかしなくても僕、寝落ちしたっすか?」
「いきなりスイッチが切れたみたいになったんでびっくりしましたよ」
「……起こしてくれてもよかったのに」
「いや、何度も起こしましたよ? でも無理矢理起こそうとしたらカナリィさんが……」
「……僕が?」
マサルがばつが悪そうに苦笑しながら言葉を濁す。おい。昨日の僕は一体何をした?
「俺にめっちゃ噛みついてきたんです。ほら見てここ。跡になってる」
「うわああああああっ!?」
マサルがTシャツの襟元を引っ張って鎖骨のあたりを僕に見せてくる。鎖骨がセクシーっすね。……じゃなくて!! 確かにそこには何かに噛みつかれたらしき赤い跡が残っていた。というかそれ、歯形というよりでっかいキスマークみたい……っておい! やめろやめろ! 何考えてんだ僕!
「でかいキスマークみたいですね」
「言うなよ!! 僕も思ってて口には出さなかったのに!!」
「カナリィさんに汚されちゃった」
「それ言うなら僕だって君のイカれたTシャツで汚されたからな」
「イカしたTシャツ?」
「イカれた!!」
話を聞いたら、寝落ちした僕を僕の部屋まで運ぼうとも考えたようだけど、僕が暴れた上に年頃の女の子の部屋に勝手に入るのは良くないと思ってマサルが自分のベッドに僕を寝かせたとのこと。
……そーゆーところは気を遣えるんすね。
「マサルはどこで寝たんすか?」
「ガレージにテント張りました」
「テントまで張る必要あった!?」
寝袋とか持ってるならそれだけでよかったじゃん!! ガレージに行くと、マサルが言った通り立派なテントが設営されていて、マサルのポケモン達がガレージで楽しそうに遊んでいた。……マサルのポケモン、全部見たの初めてっすけど、何なんすかあのぴょんぴょん跳ねてる黄色いの。
「カナリィさん、罰ゲームはどうしますか?」
「罰ゲーム……ああ、そういえばそんな話もしてたっすね」
起きて早々衝撃の事実を立て続けに突き付けられて忘れるところだったっす。寝落ちするまでの記憶が正しければ、僕が勝ち越していたはず。
罰ゲーム……罰ゲーム……。最初はクソ死にげーをプレイさせようかと思ったっすけど、噛みついちゃったり色々迷惑かけたみたいっすから軽めにしてあげよう。カナリィちゃんの優しさに感謝するがいい!
「今日、買い物に付き合ってくれないっすか?」
僕のファンからすれば罰ゲームどころかご褒美っすけどね。ふふん、どうっすかマサル? ミアレの街をこんな美少女と一緒に歩けるなんて───
「ってなんだその微妙な表情!?」
「だって……あんなドスケベな服着てるカナリィさんと一緒に歩いて噂されたら恥ずかしいし……」
「そのTシャツ着てる君と歩く僕の方が恥ずかしいわ!!」
「じゃあなんで誘ってくれたんです? ……やっぱりカナリィさんって恥ずかしさに快感を覚えるドスケベ変態痴女なんじゃ……」
「違わいアホ!! ミアレに来たばかりの君に街を案内してあげようっていう純粋な優しさだよ!!」
「あらやだ。カナリィさんったらなんて素敵なのかしら。さすカナ!」
「ふふーん♪ もっと褒め称えてくれてもいいんすよ?」
「じゃあご飯食べたら行きますか」
「そうっすね。……ちゃんとまともな服に着替えてよ?」
「カナリィさんこそ」
「僕のあれはあくまで動画用の衣装だからな!」
マサルが作ってくれた朝ご飯を食べて部屋で身支度を整えてガレージに戻ると、普通の服に着替えたマサルがいた。……ほう? 今年のメンズトレンドのステンカラーコートっすか。まともな服も持ってるじゃないっすか。
「うおっ、なんかめっちゃパンク系美少女がおる!」
「どうっすか?」
「とてもよき」
「だろー?」
「もうちょいゴシック感が増せば地雷系になりますね」
「そういうのはムクの担当」
「なるほど。ってか、ウィッグとメガネまでつけてガチですね。……変装するためにマスク外す人、初めて見ました」
「これで誰も僕とはわかんないっしょ?」
「ピュールとムクちゃんとマニーならわかりそう」
そんなこんなでマサルと一緒にお出かけするのだった。
「カナリィさん、ミアレでお土産向けの名物って何かありますか?」
「だったらミアレガレット一択っすね。日持ちするし、種類もたくさんあるから喜ばれるっすよ。ご実家用すか?」
「実家とか友達とか幼馴染とかリーグ関係者とかその他諸々……」
「ほほう? 幼馴染とな? 何やらアオハルの波動を感じるっすねぇ。何をやってる子なんすか?」
「チャンピオンと四天王」
「嘘つけぇ!!」
「嘘じゃないですよ」
ガラルのチャンピオンって……確かあれだろ。数年前まで無敵のダンデが頂点に君臨してて、遂に負けたってカロスでもニュースになってたんだからな。そんな大物とマサルが幼馴染とかありえないっすよ!
と思って調べたところ、ガラル現チャンピオンユウリのインタビューやジムチャレンジ時代のマサルとユウリの死闘が普通にネットに転がっていた。さらに、数年前のガラル滅亡の危機を救った英雄の一人で四天王……あれ? マサルって僕が思ってるより遥かに大物だった? こんな能天気な顔してる男が?
「サインくれてやってもええんやで?」
「転売するっす」
「最低だこの女」
ガラルの現チャンピオンユウリ……ふーん? めっちゃ可愛い女の子っすね。バトルの時は凛々しいけどインタビューはたどたどしいというかポンコツ臭が隠し切れていないというか。マサルはこんな可愛い女の子と幼馴染なんすね。……ふーん?
それにしてもエグイ強さしてるっすねユウリ。あのダンデに勝つなんて……というかマサルもユウリと互角に渡り合ってたし、何なんすかこの男。
でも、そんなマサルはガラルを離れて一人ミアレシティへとやって来た。
幼い頃からずっと一緒にいた女の子が自分を遥かに上回る才能の持ち主で、そんな天才と比較されながらジムチャレンジ時代を過ごし、努力だけでは埋めようがない差を思い知り、どうにもならない壁にぶち当たって……そういう努力と才能の間で葛藤し続けているのかもしれない。だからマサルは大切な幼馴染から離れて、一人で旅を始め───
「あ、そういう少年漫画みたいな苦悩と葛藤は数年前に全部終わらせちゃってるんで」
マサルがダブルピースしながらそう言った。ちょっとでも君に同情した僕がバカだったよ!!
「じゃあなんで一人で旅してんすか!! 流れ的にユウリと一緒に旅をしてハッピーエンドだったろ!!」
「チャンピオンをほいほい連れ回す訳にはいかんでしょ」
「なんでそういうところだけ常識的なんだ!!」
確かにチャンピオンは多忙だろうけど……もうちょっとこう、なんかあるだろ! 漫画だったらユウリが完全にヒロインポジっすよ! ユウリのことを何とも思って……。
「あ、こういうのあいつ好きそうだな」
思っていないわけじゃないらしい。ユウリのためにお土産を選んでいる時とか、ユウリに連絡をしている時の顔が、びっくりするくらい優しかった。……ふーん? 君もそういう顔ができるんすね。……ふーん。
それからマサルとは色んな話をした。ガラルのジムチャレンジのこと、旅に出るきっかけ、憧れているトレーナー、パルデアで何をしているのか、ミアレの次はどこに行くのか。
マサルは楽しそうに話してくれた。
世界を旅する、か。そんなの、考えたこともなかったっすね。
僕も大概好き放題生きてるっすけど、なんとなく……マサルの生き方を羨ましいと思ってしまった。
自分の目で見て肌で感じる。ネットの世界だけではわからないこともたくさんあるんだろうな……。
「すげえ。ブティックがこんなに並んでる……さすが大都会ミアレ。住みたくはないけど観光や買い物には最適だ」
「地元民の目の前で住みたくないとか言うな」
「なんもかんもワイルドゾーンが悪い」
「それな」
今もワイルドゾーンは増え続けてるし……この先どうなっちゃうんすかねぇこの街は。
「カナリィさんってああいうガーリー系の服は持ってないんですか?」
ブティックの前をぶらぶら歩いていると、マサルがショーウィンドウに飾られてある服を指差して尋ねてきた。
「着ないっすね。持ってるのはこういうパンク系かきれいめだけっす」
「ほう? ならばマサルガーリーセレクションでカナリィさんを着飾るしかないな」
「君のセンスとか嫌な予感しかしないんだが? だったら僕はマサルが普段着ないようなカナリィちゃんパンクロックセレクションで対抗するっすよ」
「この俺にファッションバトルを挑もうというのかね?」
「勝てる気しかしない」
話の流れでファッションバトルをすることになった。制限時間は一時間。トータルコーディネートで予算は五万円以内。負けた方は勝った方の言うことを一つ聞く! 今のところ、バトルではマサルが勝ってゲームでは僕が勝ってるから一勝一敗。
……なんか、マサルとはこんな勝負ばかりしてる気がするっす。
まあいっか。マサルとこうやって勝負するの楽しいし。
さて、勝ったらどんなお願いを聞いてもらうっすかね~♪
「なんでムクちゃんがいるんすか!?」
「どっちのワンピースにするか死ぬほど悩んでて、ムクちゃんに意見を聞こうと写真を送ったらバチクソ長文が返ってきてなんか知らん内に横にいた」
「カナリィにガーリー系を着せるとか……来ない理由がない」
一時間後、集合場所へ戻るとなぜかマサルと一緒にムクちゃんがいた。今日も今日とてシャンデラ帽子がよく目立つ。なんか知らん内に横にいたとかもうホラーっすよそれ。さすがゴーストタイプの使い手。
「マサルとのシャンデラトーク楽しかった。ぶい」
「ヒトモシ時代の出会いから今に至るまで赤裸々に語らされましてね……」
ムクはとてもご機嫌だった。ゴーストタイプってただでさえ使い手が少ないのに、自分と同じシャンデラを持ってるトレーナーがいたら……嬉しいっすよね。
……マサルは僕と同じポケモンを持ってないっすけど。
いや別にねだからと言って何がどうって訳じゃないっすよ。
「マサルマサル。早くカナリィにこのワンピース着せよう。そしてレアカナリィの永久保存版としてあたしのカナリィフォルダに保存して他のカナ友に心の中で一生マウントを取り続ける」
「ムクちゃんも大概良い性格してるよね」
「照れる」
ムクちゃんが恥ずかしそうにもじもじとしていた。マサルは皮肉で言ったんすよ……。というか、マサル今、ムクちゃん「も」って言わなかったっすか? ムクちゃん「も」って。
「じゃあ二人とも服を買ったお店で着替えてもう一回ここに集合審査員はこのあたしというかもうカナリィの勝ちでいい?」
「ムクちゃんが一番気合い入ってるっす……」
「へっ。おもしれー女」
「いえい」
その後、互いが買った服に着替えてなぜか審査員になったムクちゃんの前で着こなしを披露することになった。
「ワンピース……可愛いけど足がスースーして頼りないっす」
「普段から腹出してるのに何言ってんですか」
「お腹出すのと足出すのとでは全然違うの! ってかマサル、普通にパンク系着こなせるってすごいっすね。……あのクソダサTシャツ着てる時点で何を着ても大丈夫か」
「カナリィ……♡ 好き……♡ これは優勝はカナリィ。異論は認めない」
「……あれ? 相手により似合う服を選んだ俺の勝ちじゃないの?」
「ルールは時代に合わせて常に変化するもの」
「えぇー……」
どうやら僕の勝ちみたいっすね。ま、僕の可愛さに勝てると思ってたなんて自惚れもいいところ……ってあれ? もしかしてムクちゃんがルールを捻じ曲げなかったらもしかして僕の負けだった? ……勝ったからヨシ!
「俺の負け……だと……!? カナリィさんめ、次はどんなドスケベな命令を出すつもりだ……」
「一度もそんなお願いしたことないだろ!!」
「えちえちなカナリィも好き」
とはいえ、すぐには思いつかなかったから保留しておいてお願いはまた今度にするっす。
ファッションバトルで忘れかけてたけど、マサルにミアレを案内してる途中だったっすね。あとマサルに見せてあげたい場所は……ミアレのシンボル、プリズムタワーっすね!
「どうっすかマサル! これがミアレのシンボル、プリズムタワー! 高さは三百メートルもあるんすよ!」
「探偵アニメの劇場版で爆破されそう」
「感想の第一声がそれっておかしいだろ!!」
「わかる」
「ムクちゃんも共感すんな!」
こんなクソデカタワーを爆破するなんてフレア団でもやんなかったっすよ!! ……カロス発電所を占拠してミアレシティが停電にはなったけど。
「拡大し続けるワイルドゾーン。完全にリーグ案件なのに干渉してこないカロスポケモンリーグ……そうか! 謎は全て解けた!」
「プリズムタワーは、崩壊する!!」
マサルとムクちゃんが腕を組んだ仁王立ちでそう言い放った。僕はもう何もツッコまないっすよ。というかこの二人、波長が合い過ぎてないっすか?
「ワイルドゾーンに対処しないカロスポケモンリーグ……ムク探偵、これは何やら陰謀の香りがしませんか?」
「ムク探偵……とても良い響き。ふふん、臭う。臭うね助手くん。プリズムタワーには何か大きな秘密が隠されているに違いない」
「きっとミアレを……カロスを揺るがす大事件が起こるはずだ」
「最終的にプリズムタワーは崩壊する。それだけは譲れない」
街のシンボルが崩壊するってカロスだけにとどまらない世界的なニュースになるっすよ。それこそ数年前のガラルみたいな……おい、マサルが来たことで変なフラグが立ったんじゃないだろうな?
「なんかムクちゃん、マサルにやたら懐いてるっすね」
「シャンデラ使いに悪いヤツはいない。それにマサルはなんかお兄ちゃんっぽい」
「……シローは?」
「あたしの前でシローの話はしないで。きっとマサルは生き別れになったお兄ちゃんに違いない」
「だってさマサル」
「生きていれば妹の一人や二人、生えてくることはある」
「あるある」
「妹って栽培されてんの?」
マサルがお兄ちゃんか。僕は兄弟がいないからわかんないっすけど……マサルがお兄ちゃんはなんか違うようなきがする。僕に全然優しくないし!
「そういえば、マサルって何歳なの?」
「十七。もうすぐ十八歳になる」
マサルの言葉に、僕とムクちゃんは思わず顔を見合わせていた。ちょっと待って……今年十八歳になるってことは……。
「カナリィより年上」
「……え? マジ?」
「マジ。カナリィは今年十七歳になった」
マサルが驚いたような表情で僕を見る。おい。なんだその反応? 僕が老けて見えたって言いたいんすか? だとしたら戦争だぞ? おぉん?
「嘘だろ。初対面であんなに頼れるお姉さんムーブしてたのに……あ、でもよく考えたらしっかりしてたの初対面の時だけだったな」
「あの言動で僕より年上の君には何も言われたくないっす」
「カナリィちゃんって呼んだ方がいい?」
「鳥肌立ったわ」
「酷くね?」
マサルにちゃん付けで呼ばれるとか……ないわー。ムクちゃんはなんでか平気そう、というか嬉しそうにしてるし。
「じゃあ僕はマサルくんって呼んだ方がいいすか? それとも先輩?」
「……ムクちゃん。今のとてもよきじゃない?」
「うん。自分の方が年上だと思い込んでいた女の子が実は相手の男の子の方が自分よりも年上だったことがわかって緊張と恥じらいを混じらせながら呼び方を変えるシチュエーション……とてもよき」
「僕のどこに緊張と恥じらいがあった?」
「カナリィ。俺のことはお兄ちゃんだと思ってくれてええんやで」
「……マサルパパ。僕、欲しいものがあるっす」
「パパ活じゃん」
「これはパパ活」
僕の必殺上目遣い媚び媚びボイス(じーちゃんに効果抜群)をマサルは安定のスルー。
何かムカついたのでマサルの首を絞めてやることにした。
ぜーったいこれからも呼び捨てにしてやるっす。
カナリィ√が二話でおわりませんでした!(半ギレ)
というわけで後編に続きます。次回で終わらせます。絶対。
今回のお話は……。
・カレーパーティー
・夜通し二人でゲーム大会
・カナリィちゃん、マサルくんのお部屋で寝落ちからのマーキング(歯形)
・お互いに似合う服をプレゼント
・プリズムタワーデート
・マサルの方が年上だとわかって実はドキドキカナリィちゃん!?(大嘘)
うん。イベント盛りだくさんで順調にカナリィの好感度を稼いでいますね(白目)。さすがヒロインの風格!
ムクはおそらくミアレのマリィ枠。妹キャラはよき。
ちなみに私はZAのOPを見た瞬間、「あ、絶対終盤でプリズムタワー崩壊するわ」と確信しました。
それと、DLCは購入しただけでまだプレイできていないので、DLCの内容と矛盾があってもスルーします!
ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!
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