お久しぶりです。
ナンジャモ√という名のパルデア編ダイジェスト兼ギャグ回です。
「ルールル ルルル ルールル♪ ドンナモンジャTV特別企画『マサルの部屋』はっじまるよ~!」
「その不協和音みたいな謎ハミングでオープニング乗っ取るな!」
「オープニングどころか配信そのものを乗っ取る気なんだよなぁ」
「余計悪いよ!!」
「……あなたの夢はムゲンダイナ! 何者なんじゃ!? でんTマンだよ! おはこんハロチャオ~♪」
「僕よりちょっと良いこと言ってる感あるあいさつでなんか腹立つな!!」
長い長い人生において、誰もが一度や二度は苦渋や屈辱を味わい、辛酸を舐めるような経験をするだろう。もちろん僕だって例外じゃない。
それなりに知名度のあるインフルエンサーとして。それなりに実力のあるポケモントレーナーとして。パルデアのジムリーダーとして。
屈辱を味わったことなんて一度や二度では済まない。
そんな僕が……。
そんな僕が……!!
人生で最も屈辱を味わった出来事……それに起因しているのが目の前にいるこの男なんだ!!
あの日の屈辱を、絶望を、己の無力さを……!!
僕は一日だって忘れたことはない!!
今日こそは!
今日こそは!!
絶対に君を屈服させてやるんだからな!!!
ナンジャモ√【前編】ドンナモンジャTV特別企画「マサルの部屋」~グルーシャ怒涛の高額スパチャ編~
「皆のもの~! 今日は前回この僕を屈辱的に辱めたマサル氏へのリベンジマッチだぞー! マサル氏が膝をついて僕に屈する瞬間を見たいかー!?」
「視聴者の皆様。今日は性懲りもなくこの俺にリベンジしに来たナンジャモさんを返り討ちにするぞー! ナンジャモさんが体を張ってクソダサTシャツを着て涙目でぐぬぬ顔を晒している瞬間をまた見たいかー!?」
「なんで僕よりマサル氏を応援するコメントの方が多いんだよ!!」
「あ、
「なんで君が勝手に決めてるんだ!?」
「俺がこの配信に出たのはお金のためなんかじゃない。全ては……視聴者の笑顔のため!」
「代わりに僕の笑顔が奪われてるけどな!!」
「視聴者を笑顔にした金で食う飯は美味いか?」
「美味いに決まってんじゃん! 何言ってんの!?」
うぬぬお~……か、開幕からかっ飛ばしやがってこの男……!! だが僕はこの程度で取り乱したりはしない!! ここで露骨に反応すればマサル氏の思うつぼだという事を僕は嫌というほど知っている!! ここは冷静に、いつもの僕らしく振舞えばいいんだ。
……オーケーナンジャモ。クールにいこうぜ。
「えー、今回はドンナモンジャTV三十周年記念配信ということで……」
「君は僕を何歳だと思ってるんだ!! アラフォーか!? アラフィフか!? 口に出したら戦争だぞ!!」
「あれ? でもハッコウシティでナンジャモさんは何年も動画配信をやっててその頃から姿が変わってなくて年齢不詳って噂が流れてますよ」
「……嘘だろおい」
確かに年齢は公表してないけれども! それでも君よりは年上のおねーさんなんだからな! というか仮に僕がアラフォーやアラフィフだとしたら……そんな歳になってもこんな痛い格好と言動してるやべー女になっちゃうだろ!!
「まあまあナンジャモさん。年齢なんて些細なことですよ。ガラルには七十年ジムリーダーを務めたフェアリーば……フェアリーお姉さんもいますし、噂じゃカロスには三千年生きてる人がいるって話ですよ」
「比較対象がおかしいって!! っていうか三千年って何!? 樹齢どころかそれもう伝説のポケモンじゃん!!」
「俺のムゲンダイナも三千年以上生きてますからね。同期ですよ同期」
「同期とかそんなレベルじゃな……はっ!?」
「どうしましたナンジャモさん?」
いつの間にかマサル氏のペースに巻き込まれてる。くそー……この少年はいつもこうだ。配信だけじゃなくて頻繁に僕のところを訪ねてきてはアオキ氏に教えてもらった美味しいごはん屋さんに連れて行ってくれて……って違う違う!! そうじゃないだろ僕!!
「皆のもの! 今回は配信者生活で磨き上げ鍛え抜いたトーク力でマサル氏を言い負かしてやるぞ~!」
「急に本題ぶっこんできましたね。ってか、そんなこと考えてたんですか? てっきりとんでもない無茶振りアトラクションでもやらされるかと思ってましたよ」
「いや、君の身体能力だと僕の考えたアトラクションなんて鼻歌交じりで攻略されると思ってね」
「体を張るのはナンジャモさんの得意分野ですもんね。シビルドンとの『ぬるぬるオイルタイマン相撲』は歴史に残る名勝負でした」
「ガチで初期の企画じゃん!? うぎゃー!! やめてやめて恥ずかしい!! あの頃は……あの頃は生き残るためにとにかく必死だったんじゃ~……」
「ナンジャモさん的にはちょっとエロいハプニングとか期待しての企画だったんでしょうけどエロさなんて微塵もないめちゃくちゃ白熱した手に汗握る良い戦いになってあの時の俺は純粋にナンジャモさんを応援してましたよ何よりナンジャモさんの勝利への執念が宿ったあのギラついた目を見た日から俺はナンジャモさんのファンです」
「急に早口になったな君!? っていうかコメントの量すごっ!? なんでみんな超絶初期で黎明期の企画を知ってるんだよ!!」
あの頃は本当に……本当に体を張った企画が多かった。話題になるためなら、法に触れない範囲で、人様に迷惑をかけない範囲でなんでもやってきたからね。あの時代に身に付けた屈強なメンタルが今の僕を形作っていると言っても過言じゃない。
……って違う違う!! こんな話をしたいんじゃないよ!!
お、おのれマサル氏~!!
だけど僕は屈しない。その程度では屈しない。僕の鍛え上げられたメンタルはこの程度は揺らがない!!
「じゃあそろそろ本題に入りましょうか。……皆様こんにちは。今日のお客様は今大人気の動画配信者さんでいらっしゃいます、ま、昔なんかはねテレビに出たいって方が多かったのですけれども、今の時代はもうテレビに出るだけでなく自ら動画を撮影しそれを全世界に配信していくという。このような所にもね、時代の変化を大きく感じられますね。今大人気とね、言われている配信者さんの中でも、なんとジムリーダーをやっていらっしゃるそうです。まあどうしたらこんな風なお仕事ができるようになるのでしょう。またどうしたらこのお仕事を続けていくことができるのでしょう。色々なね、企画をやっていらっしゃるのでそれを視聴させていただくんですけれど、またジムリーダーとしてバトルもやっていらっしゃって、ものすごい数のお手紙が皆様から寄せられるということでございます。本当にわたくしがね、テレビに噛り付いていた時代は『配信者さんってなんですか?』っていう感じだったんですけれども、えー、今や配信者さんはなりたい職業のナンバーワン。時代というのは本当にわからないものですけれど、本日のお客様ナンジャモさんです」
「怖い怖い怖い怖い! 急に何なのそのキャラ!? っていうかなんで君が仕切って君の企画みたいになってるんだよ!!」
「それではね、早速色々とお話を伺っていきたいのですけれども。ナンジャモさんは有名な一発ギャグをお持ちでございましたね。あの『おはこんハロチャオ~』という。実際にやってみてくださる?」
「一発ギャグじゃないよ!? あいさつだよあいさつ!!」
「実際にやってみてくださる?」
「冒頭でやったじゃん!! 何でもう一回やる必要があるの!?」
「『おはこんハロチャオ』は一発芸ではなくあいさつだとおっしゃっりましたけれども、一体どういう意味がこめられているのでしょうか? 『おは』は『おはよう』、『こん』は『こんにちは』『こんばんは』、これは時差を考慮してみなさまは視聴する時間帯を踏まえての意味が込められているのでしょうけれども」
「全部自分で言ってんじゃん!! 僕が説明する必要ある!?」
「『ハロチャオ』という部分にはどういう意味がこめられているのでしょうか?」
「いや……『ハロチャオ』にはそこまで深い意味はないというか……『ハロー』と『チャオ』をくっつけたら可愛いかなって」
「どういったところが可愛いと思われましたの?」
「『ハロチャオ』って語感が良くてノリも良い……って!! なんでこんなことを細かく説明しなきゃならないんだ!! 普通に恥ずかしいだろ!!」
「続いて『あなたの目玉にエレキネット』というフレーズがございまして……『エレキネット』は電気のネットで相手を捕まえる技でございますが、これは視聴者の視線をあなたの配信に釘付けにするということを『あなたの目玉にエレキネット』というフレーズで表現していらっしゃるように思えるのですが」
「だから全部君が説明しちゃってるじゃん!! 僕が口を挟む余地どこ!?」
よくもまあペラペラペラペラペラペラと!! よく回る口だなおい!!
なんとか……なんとかここから巻き返さねば……またマサル氏に配信を乗っ取られちゃう……!!
うおおおおおおっ!! 勝負はここからだ!!
ナンジャモの本気、見せたろやないかい!!
「ところでナンジャモさんは時折語尾に『ぞよ』を付けることがございますが、あれはパルデア地方特有の方言ですの?」
「うえっ!? いや別に方言とかじゃなくてそーゆー語尾を付けた方が印象に残りやすいというか可愛いというか……」
「どの辺りが可愛いのか詳しく説明してくださる?」
「するかぁっ!! そもそもな!! 僕みたいな配信者のキャラ付けを指摘して裏側を暴こうとするのはこの業界じゃご法度なの!!」
「またナンジャモさんは非常に奇抜なファッションをしていると巷で話題になっていらっしゃいますが……」
「鏡見て言えよこのやろーっ!!」
「失礼な指摘で大変恐縮でございますが、袖の長さを見るにアウターのサイズを間違っていらっしゃるのでは?」
「これはこーゆーデザインなの!! 袖が余ってる方が可愛く見え……あ!! やっぱなし!! 今のなし!! 『どの辺が可愛いのか?』なんて質問は受け付けないからな!!」
「ナンジャモさんの服装は青少年の教育に悪いという意見もございますが……」
「……世の中には教育に悪い情報が溢れてるよねそういった情報を一切遮断するんじゃなくていざ触れてしまった時にどう対処するか情報の取捨選択をするいわば情報リテラシーを子供達に身に付けさせるのが大人の役目じゃないのかなそれに青少年が異性の服装に関心を示すのは健全な反応であってそれを無理に抑えつけようとしたり見えないようにするのはかえって悪影響だと思うよ抑えつけるのではなくそういう感情や欲との正しい向き合い方を教えていくのも大人の役目であってもちろん僕はこういう職業の人間だから自分の服装や言動が周囲にどういう影響を与えるかちゃんと理解しているし最大限気を遣っているつもりだから」
「めちゃ早口でございますね」
マジでその辺はちょーデリケートな部分だからね! 実際そういう意見があることをもちろん把握してるよ。でもなぁ、年頃の男の子が異性をエロい目で見ちゃうのは普通の反応でしょーが。そーゆーのを周りが無理矢理抑えつけたら反動で大人になった時に性犯罪に走ることになるかもしれないでしょ!
それに僕は! こんな格好をしていることで! 僕自身がエロい目で見られることなんぞ合点承知の助!
そーゆー目で見られることに拒否感を覚えるんだったら最初っから配信者なんてやってないわい!
「では続いてナンジャモさんのポケモンさんについてお伺いしていきたいのですが、ナンジャモさんの頭にくっついていらっしゃいますコイルさん達はナンジャモさんの髪と同じ色をしていらっしゃいますね。コイルさん達を自分の髪と同じ色に塗装したのですか?」
「違うよ逆逆!! 僕がコイル達の色に合わせて髪を染めたの!! そんなポケモンを虐待するようなことするわけないじゃん!!」
「申し訳ございません。大変失礼な質問でございました。そうなりますと、このコイルさん達は世にも珍しい色違いの個体ということでございますね」
「そーそー。この子達との出会いで色々あってね。そう、あれは何年前だったかな。まだ僕が配信者になる前の───」
「ナンジャモさんはよく『シビルドン登り』というフレーズを使っていらっしゃいますが手持ちにシビルドンがいらっしゃらないのは何か特別な理由がおありで?」
「なんでこのエピソードを掘り下げようとしないんだよ!! めちゃ良い話なんだぞ!!」
「コイルさん達と同じ髪色に染めるにはやはり専属の美容師さんを雇っていらっしゃるのでしょうか? それだけ長い髪の毛ですと洗髪に大変ご苦労なさってそうですね」
「誰が髪の毛の方を掘り下げろと言った!?」
僕とコイル達との出会いは涙なしでは語れない激エモエピソードなんだぞ!! 僕の好感度が上がるような話題は堂々とスルーしやがってこのやろー!!
ぐ、ぐぬぬ……完全に主導権をマサル氏に握られてしまってる。この辺で無理矢理にでも奪い返さないと築き上げてきた僕のイメージが崩壊してしまう!!
もっとこう……僕の可愛さとか格好良さとかをアピールできる空気にしなければ!!
「せっかくさ、ガラル四天王のマサル氏が来てくれてるんだからバトルの話とかしようよ」
「バトルと言えばパルデア特有のテラスタル現象が非常に興味深いですね。テラスタルオーブという特殊な道具を使いポケモンの形態を変化させる……ただ、ポケモンをテラスタルさせる瞬間はトレーナーさんにも多大な負荷がかかるようで」
「そうなんだよ~。あの瞬間って結構力入れて踏ん張っておかないとこけちゃいそうになるんだよね~」
「いつも愛らしい笑顔を振りまいているナンジャモさんがテラスタルさせる瞬間に見せるキリっとした真剣な表情……普段とのギャップも相まって非常に格好良いと評判ですね」
「あ、ほんと? フヒヒ……ちゃんと見てくれてる人は見てくれてるんだね~」
なんだよ。マサル氏もちゃんと僕のこと褒められるじゃん。はっ!? もしかしてマサル氏は普通に僕のことを褒めると恥ずかしいからこんなわけわかんないキャラで照れを誤魔化そうとしてるんじゃ……なんだよマサル氏って結構可愛いところがある───
「ただ、バトル中のあの謎ステップにはどのような意味があるのでしょうか? ちょっとここで実演しながら解説してくださる?」
「君はそーやってすぐ僕の心を弄ぶよな!?」
「時間も押してまいりましたので最後に……余りに余ったアウターの長い袖を体の前で固結びされたナンジャモさんがいかにしてその状況を打破するかをじっくり眺めながらエンディングと───」
「させねーよ!! とゆーかなんで君が配信を締めようとしてるんだ!?」
「それでは皆様、来週のこの時間にまたお会いしましょう」
「二度と呼ぶかぁ!!」
こうしてマサル氏VS僕の白熱したトークバトルは……まあ、引き分けってところかな?
ふ、ふんっ! 今日のところはこのくらいで勘弁してやんよ!!
「じゃあナンジャモさん、お疲れ様です! かんぱーい!」
「かんぱーい! ……ほんとに好き勝手やってくれやがったなこのやろこのやろーっ!」
「だってナンジャモさんがちゃんと台本用意しないから」
「台本を!! 用意したところで!! 君が素直に従うとは思えない!!」
配信が無事に……無事に? 終わってマサル氏と打ち上げにやってくる。ここはマサル氏がアオキ氏に教えてもらったハッコウシティにある個室居酒屋だ。路地の奥にあってあんまり人通りがない隠れた名店……なんでアオキ氏は僕よりハッコウシティの美味しいお店に詳しいの?
「いやー、袖を固結びされたナンジャモさんはなかなか味わい深かったですね。……アウターが脱げて危うく放送禁止になるところでしたけど」
「僕がそんな醜態を晒すわけないだろ……って言いたいところだけど、ぶっちゃけ危なかった。熱くなりすぎちゃったのは反省だね」
「どんな企画でも全力でぶつかっていくのはナンジャモさんの良いところですよ。それに、服が脱げたところでナンジャモさんのアカウントがBANされるだけですから」
「それ僕にとって死活問題!!」
副業とはいえ結構な収入があるんだからな!! その収入源がなくなったら君に責任が取れるのかおい!! って追及したいけど、追及したらしたでマサル氏がマジでとんでもない方法で責任を取りかねないからこれ以上何か言うのはやめておこう。ナイス判断僕。
「あ、グルーシャさんからメール来た」
「……君、グルーシャ氏と仲良いよね。僕、彼とは同じジムリーダーでそれなりに長い付き合いだけど未だにめちゃくちゃ壁を感じるよ」
「だってあたし、グルーシャさんとよく似てるんですもの」
「どこが!?」
君みたいなとんちき野郎と夢女子量産クールビューティーイケメングルーシャ氏のどこが似てるって言うんだよ!? グルーシャ氏のファンに怒られるぞ!!
「う~ん……生き様が、かな?」
「少なくともグルーシャ氏は君と違って僕をいじくり倒して楽しむような趣味はない」
「え? でもグルーシャさんってナンジャモさんの昔の体張った企画の方が好きって言ってましたよ」
「あれー!? 意外と厄介古参ファンだったかー!?」
「……故障してダウナーだった時期にナンジャモさんの企画を見て元気をもらってたらしいです」
「う、うーん……僕の黒歴史ともいえる企画達でグルーシャ氏の笑顔を取り戻せたんだったら、それはそれで喜ばしいけど……すっげー複雑!!」
「だからナンジャモさんは定期的にああいう企画をやるべきなんですよ確かに最近は色々規制が入ったり法整備されて昔のような企画がやりづらくなったのは確かですでもナンジャモさんのそういう姿を望んでいる人が一定数いるわけで新規ファンを獲得しファン層を広げていくことはとても大事ですでもそれ以上に黎明期からずっと応援し続けていた古参ファン達も同じくらい大事なわけであってああ別に今のドンナモンジャTVを否定してるわけじゃないですよ今みたいにナンジャモさんの可愛らしさと華やかさを前面に押し出した企画もあれはあれで時代に合わせた立派な戦略で確かな需要を獲得していますし」
「めちゃ早口になったな君!?」
「グルーシャさんもこんな感じの長文を送ってきてます」
「知りとうなかったそんな事実!!」
厄介古参ファン同士通じるところがあるのかな? だからマサル氏とグルーシャ氏は仲が良い……? 二人とも僕のファンであることは素直に嬉しい。嬉しいが!! それと同時に僕の天敵にもなりそうで!! こんなん情緒ぐちゃぐちゃになるで。
ん? あれ……? でもさっきマサル氏が早口で捲し立ててた時……。
「僕の事『可愛い』って言ったよね?」
「……ツラは可愛いっすね。ツラは」
「またまたぁ~。そんな恥ずかしがらなくてもいいってマサル氏ぃ~。あ、もしかしてぇ~、早口であんなにペラペラ喋ってたのもぉ~、僕のことを『可愛い』って褒めたかったのに素直になれなくってぇ~、ああやって誤魔化しながら照れ隠ししてたってことぉ~?」
おらっ!! 食らえっ!! 僕の必殺上目遣い腕つんつんボディタッチ攻撃!! これにはさすがのマサル氏もこうかばつ───
「……はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~」
「グルーシャ氏と
おうそのクソデカ溜息やめろや。これをやれば大抵の人はちやほやしてくれるのになんなんだお前は!! これでも僕は割と男の人に声を掛けられることも多いんだからな!!
「違うんすよ。ナンジャモさんが可愛いなんてのは当たり前じゃないですか。でもね、そんなナンジャモさんが!! 鬼気迫る表情で!! あのギラついた眼で!! 体を張って!! 困難に立ち向かう姿が!! どれだけ尊いのかを!!もっとたくさんの人に知ってほしいんです!!」
「マ、マサル氏……そこまで僕のことを考えて───」
「あと単純にナンジャモさんが苦しんでいる姿からしか得られない栄養がある」
「おめーマジで『10まんボルト』食らわすぞ」
僕とマサル氏は大体いつもこんな感じだ。年頃の男女が二人で食事をしてるって言うのにちーっともそんな感じになりはしない。ま、こーやって気兼ねなく接することができる異性っていうのは僕にとっても貴重な存在だからありがたいといえばありがたい。
それはそれとして!! 僕を微塵も意識していない態度には物申したいけどね!!
容姿には自信があるし背は低いけどおっぱいだってそこそこあるんだぞこのやろーっ!!
「あ、そういえばナンジャモさん」
「なんじゃ!?」
「ずっと聞きたかったんすけど、あれだけ『シビルドン登り』って言いながらなんで手持ちにシビルドンがいないんです?」
「あ~、それ聞くぅ? 聞いちゃうぅ? しょーがないな~、マサル氏がどうしても聞きたいって言うからぁ~」
「やっぱ面倒そうなんでいいっすわ」
「聞けや!!」
僕がシビルドンを連れていないのにはね……すごくすごく大きな理由があるんだよ。それは!! 僕の
「マサル氏にはわかんない感覚かもだけどね~」
「いやめっちゃわかりますわ」
「過去一僕に共感してくれたな!?」
マサル氏が腕を組んでうんうん頷いている。ま、まさか共感してもらえるとは思わなかった。
ん? 待てよ……そこまで僕に共感してくれたってことは、マサル氏にも推しがいるってことだよね?
おいおいおい。
おいおいおいおい。
おいおいおいおいおいおい。
マサル氏の推しって……これ完全に僕の事じゃん。だってマサル氏って僕の事すっげー雑に扱うけどなんだかんだ初期の頃の企画から見てくれてて僕の配信を盛り上げるのに尽力してくれてこーやってよくご飯にも誘ってくれて……。
おいおいおいおいおいおいおいおいマサルくんよぉ。
君、なんだかんだ僕の事大好きだろ?
今までの態度も!! 僕の扱いも!! 全ては推しへ愛情の裏返しだとすれば!! 説明がつく!!
謎は全て解けた!!
「なぁ~んだ。マサル氏って僕のことを推してくれて───」
「は? 俺の最推しはカブさんですよ。自惚れないでください」
「うぐおあああああああああああああっ!!」
「あっこらっ!! 人を噛もうとするな!!」
僕の自慢のギザッ歯で首筋に噛みついて消えない跡をつけてやる!! マーキングだマーキング!! この跡を見る度に僕のことを思い出すがいい!!
マサル氏に襲い掛かるも、マサル氏のふざけた腕力には微塵も敵わずコブラツイストで撃退されるのだった。
「ナンジャモさんすみませんって。今日は俺が奢りますから~」
「ふーんだ。僕はそれだけで許すような安い女じゃないんだからね」
「今度アオキさんに教えてもらった隠れ家喫茶店に連れて行ってあげます。コーヒーが絶品らしいですよ」
「……ケーキも付けてくれるなら許そう」
「パフェもいいぞ」
「うむ」
しょーがない。マサル氏がそこまで言うなら許してやろう。心が広くて胸も大きいナンジャモさんがね!
「で、ナンジャモさんの推しって誰なんですか?」
「ん? ああ、カナリィ氏っていう僕と同じ電気使いのゲーム実況者だよ」
「カナリィ……知らないですね。どんな子なんです?」
「一言でいうなら……褐色巨乳えちえち僕っ子毒舌ゲーム実況者」
「なんだその属性モリモリ女。ネジ抜きコイルマシマシ二色頭ドスケベインナーギザッ歯僕っ子配信者のナンジャモさん並みじゃないすか」
「君も人のこと言えないよ」
カナリィ氏のメインはゲーム実況だから厳密に言うと僕とは畑違いだけど同じ電気使いだったり共通点は色々あるんだ彼女の僕にはできない炎上スレスレの毒舌は一度聞くと癖になるしクソゲーに発狂して白目剥いて言語能力を失った彼女からしか得られない栄養がある。
「めちゃ早口じゃないすか」
「君も人のこと言えないよ」
そんなカナリィ氏の相棒がシビルドンなんだ!! 彼女と同じポケモンを僕ごときが連れ歩くなんてそんなおこがましい真似できるわけない!!
「なるほど。つまりそのカナリィも……」
「カナリィさん!」
「……カナリィさんもおもしれー女だってことっすね?」
「まずい!! マサル氏がカナリィ氏に興味を示した!! うおおおおおっ!! やらせはせん!! やらせはせんぞ!! カナリィ氏にクソダサTシャツを着せてなるものか!! カナリィ氏の名誉と尊厳は!! 絶対に僕が守り抜いてみせる!!」
「まるでナンジャモさんの名誉と尊厳が失われたみたいな言い方ですね」
「どの口がほざいてんだてめー?」
これ以上カナリィ氏の話題を続けるのはまずい!! マサル氏のことだ……常人には理解のできないとんちきな運命力を発揮してカナリィ氏と遭遇してなんやかんやバトルすることになってカナリィ氏が負けてクソダサTシャツを着る羽目になりかねない!! それだけは絶対に阻止せねば!!
「話は変わるけどさ~。マサル氏は今度はどんな大冒険をしてきたわけ?」
「下手くそ過ぎる露骨な話題転換」
「うるへーっ! いいじゃん別に! これ以上カナリィ氏の話題を続けたくないのもあるけど……君の冒険譚って面白いから純粋に聞きたいんだよね」
「なるほど。ガラルの厄ネタたっぷりのお話を聞きたいと」
「僕が消されるからやめーや」
マサル氏がパルデアのあちこちを訪れているのは知っている。まあ彼はパルデアだけじゃなくて世界の色々な所を旅したいと行っていたから、いずれはパルデアを去るのだろうだけれど……。
そういえば、最近マサル氏はアオイ氏やハルト氏達とよく行動しているらしい。あの二人、すごく強かったなぁ。あんなに強い学生さんなんてネモ氏以来じゃないかな。
「俺の最近の冒険……そうですね、一言で言うなら───妹が三人生えてきて不登校集団のアジトにカチコミをかけて秘伝スパイスを追い求めましたね」
「すまないマサル氏。人類に理解できる言語を使ってくれないか」
普通の冒険じゃないとは思ってたけど何一つ話が理解できないんだが!?
「ん? ユウリ、何見てるんだ?」
「あ、ホップ! あのね、ドンナモンジャTVだよ。マサルがゲストに出てたの!」
「またマサルがナンジャモに変な格好をさせてたのか?」
「う~ん……変な格好はさせてなかったけど、マサルは相変わらずマサルだった!」
「元気にやってるなら何よりだぞ」
「そうだね! パルデアの美味しい物たくさん送ってもらわなきゃ!」
「あ、マサル。配信見たよ。うん、やっぱりね、彼女はああいう場面でこそその本領を発揮できるね。今回はトークメインだったけど普段とは違う彼女の姿を一般視聴者にもしっかり見せられたんじゃないかな。いきなり昔みたいな過激な体を張った企画をやると反感を買いやすいから今回みたいな企画で視聴者を慣らしていくのは良い判断だと思う。ああ、そうそう。今回僕が思わず高額スパチャしちゃったけど気を悪くしないでね。君が営利目的で出演しているわけじゃないのはちゃんとわかってるから。ただそれでも、古き良き彼女の姿を思い出させてくれた君にどうしても感謝がしたくてね。あとさ、最近足の調子が良いから今度一緒に滑りに行こうよ。君の身体能力なら今の僕に余裕でついてこられると思うからさ。……待ってるね」
お久しぶりです。
ナンジャモ√の第一話です。本当は一話で終わらせて「カナリィ氏は四話も使ったのに僕は一話であっさり終わらすとはどういうことだ!?」みたいなツッコミをナンジャモにさせようかと思いましたが、メタ過ぎたので没。
相変わらず恋愛の「れ」の字も感じないスタートですが、本当にここから恋愛に発展するんかこいつら?
パルデアではマサルに妹が三人生えてきます。誰になるか色々と予想してみてください。
ちなみにパルデア編をがっつりやるとヒロインはおそらくグルーシャになります。マサルと境遇が似てるから仕方ない。
ポケモン三十周年ということで色々盛り上がっていますね。ぽこあ然りポケマス然り新作然り。
ぽこあはもちろん買いました。主人公のメタモンの名前を「TOKIO」にしてDASH村の開拓をさせています。
ポケマスは人権マサルが猛威を振るっているという記憶が私の頭の中だけにあります。
新作も色々と話題になっていますね。主に御三家や女主人公ちゃんが。女主人公が可愛すぎて男主人公の存在感が薄れてしまう「マサル現象」がまた起こりそうで怖い。これは新作の男主人公もクソダサイ服を着るしかないな!
まだ主人公の名前すら公式発表されていませんが、そのうち新作主人公達とマサルが絡むメタまみれのお話を書くかもしれません。需要があれば。おそらく男主人公くんがひたすらツッコミに回る話になるでしょう。
ではでは、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
評価、感想、ここすき、お気に入り登録等お待ちしてます!
次回のナンジャモ√【後編】お会いしましょう。
X始めました。よろしければフォローお願いします!
ナンジャモ√【後編】に期待してくださる方はこちらをぽちぽちして評価をお願いします!