このッ…クソ運営がぁぁ!   作:mnomno

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クソ運営がぁぁ!

 

「この…っ!クソ運営がァァ~!!!」

 

今日も男の部屋には運営への怨嗟の声が鳴り響いた。

 

 

 

「あんな今イベント限定!なんて告知しやがったのに!なぁ~にが『ご好評の為に常設イベントとして開催することに致しました。これからもユグドラシルの世界を思う存分冒険されてください』だぁ!?」

「こっちがどれだけあのイベントに注ぎ込んだと思ってんだ!景品表示法違反だろ!消費者庁コラボ早よしろ!!」

 

だだっ広い応接間にて男はもう数えきれないほどの運営への怨嗟の声を吐き出される

 

 

あぁ、紹介が遅れたな、俺は藤原大輝。

アーコロジーの中でも裕福な家に生まれた勝ち組ってやつだ

代々続く(つまり技術を独占してるってことだが)アーコロジーの基幹となるメインシステムを担当していて、俺が今いる第4アーコロジーは俺とその会社で受け持っている。

そういう訳でお偉いさんとの伝手もあれば副業もあるし金もそこそこ稼いでるし、振るえる権力も財力もそれなりにあるって訳だ。

とはいえ年に1~2度ある程度のお偉いさんの所に顔出したりする以外は基本的にこの部屋に缶詰め…

俺が出張る仕事は殆どないんだが…それこそ俺が出向く案件は緊急性も高くて普通の頭してるヤツじゃ荷が重いモノばっかのせいであんま離れる訳にもいかないってね

 

文字通りそれ専用に頭を弄ってないと話にならないんだよ

だからここのアーコロジーを運営するためにここに常に俺か従兄弟のどちらかが待機していないといけないのだが…

 

す っ ご い ヒ マ !

 

いや、マジでやることないのよ

殆どの仕事は社員が終わらせるし、俺と従兄弟までくる仕事は月に1つあるかないかといったところ

それも念のために呼ばれるって感じだから…

でも万が一のアーコロジーの危機に備えて俺か従兄弟1人はここに待機してなきゃなんないの!

つまり俺は人生の4割くらいを代わり映えのしない同じ部屋で過ごさないといけないわけで…

 

ゲロ吐くほどヒマ!

 

だから使うに使えない金を良さげな新技術に投資してみたり、職場で焼き肉パーティ開いたり、無駄に会社の福利厚生を充実させたり⋯あと社員集めて脱出ゲーム開いてみたり、今や珍しい紙の本を集めて図書館を開いてみたり、人呼んで昔の映画放映したり、パーティしたり…

 

色々な方法で暇を潰してたんだが、正直やり尽くしたよ…

 

あぁー暇い。

ネットサーフィンも飽きた。映画や漫画も読み尽くした。ゲームも大体やり尽くしたからなー

 

 

そんな時に俺が見つけたのが本格VMMOユグドラシル

 

初の3DグラでのMMO、壮大なエリアを巡る旅、あり得ないほどのアイテムに職業、外見を自由にカスタム出来るなどなど…

 

コンソール操作だけ教えられ後は好きにしろと放り出される糞みたいなチュートリアルだったけどな!

今までにないやり込み要素の塊に俺は最高にワクワクした。

そして数年後、俺はユグドラシル屈指の廃人と化していた

 

 

因 み に

俺がやり始めた時にちょうど2周年記念のイベントで初心者キャンペーンなんてものはなかった。

2周年ガチャをブン回して大量の課金アイテムとレア装備を手に入れた、が…

 

「ニュービーがそんなもん装備してんじゃねぇよ」

「俺らが有効に使ってやるからなw」

「良い授業料になったろ?」

 

と、ユグドラシルのありがたい先輩方にご指導ご鞭撻を頂いた(後にきっちりお礼参りしてやったが)

 

 

………くそ運営がッ!

こんなん放置しといて新規ユーザーが入ってくると思うなよ!

 

 

 

 

俺がユグドラシルを始めてからはや1年、つまりユグドラシルのサービス開始から三年が経ったわけだが

レベル上限が80に達して様々なレアなクラスが発掘され始め、古参も新参も追加された要素を求めてユグドラシルの各地を行脚し始めた頃

 

俺は今アーコロジーでもトップの奴らと一緒にユグドラシルを遊んでいる、みんな時間もあれば金もあり境遇が同じだから忖度しなくていいのが最高

あぁホントこいつらといると気が楽だね

 

…始めたころはもっと多くの人がいるクランに所属してたんだけど、俺の課金額やプレイ時間からアーコロジーでも金を持っている人間だとバレることがあった。

そうなると好奇と嫉妬の視線が絶えなくなる。

 

いや、良い奴は居るんだ

 

「富裕層とかどうかなんて関係ないだろ?そんなことより一緒にクエスト行こうぜ!」

「これ俺にくれるってマジ?くっそ高い奴じゃん。マジかよちょうどこのアイテム作りたかったところでさぁ!」

「あの攻撃タイミング神!いやぁお前が居てくれると心強いな…これ初見クエストクリア出来るかもな!」

 

身分なんか知ったことかってやつ、お祝いで課金アイテム渡したらめっちゃ喜んでくれるやつ、クエストやダンジョン攻略で使えるかどうかしか見てない奴…

まぁ他にも色んなやつがいたが、一緒に遊んでてすげー楽しかった。

 

でもな

 

「なぁ、このクエストやっといてくれよ。どうせ同じとこ行くし時間もあんだろ?」

「アレくれない?さっきガチャめっちゃ引いてたじゃん?余ってるだろうしなら俺に譲ってくれよ」

「…あいつ、アーコロジー内の(こそこそ)」

「おーおー良い身分だな。上級国民さんは!俺ら下のやつが何人居なくなったって気にも留めないんだからよぉ」

「お前らのせいで…っ!アイツが…アイツは…っ!」

 

うんざりだ

 

お前らの不幸に俺らの責任が全くないとは言わないけどさ~

そもアーコロジー内の人間のやったことを全部俺のせいにするのやめろ。

 

ていうかアーコロジー外の人間を使い捨ててるような企業はアーコロジー内では新興の力がない企業ばっかりなんだよね

まともに経営も出来ないから外の人間を使い捨てる――それである程度成果を出せてしまうのが問題なんだよなー

 

そのせいで同じように使い潰す企業が出てきてそれの対処して…と鼬ごっこになってやがる。

人ってのも資源だ。統治する側からしたら短期の成果の為に長期の利益を生み出せる人的資源が失われ続けることは看過できない。もっと効率的にやればいいのにさぁ⋯

だからそんな無為に下級民を消費続けるような企業には規制掛けようとしてるんだが…

色んなところから反対が相次いで実行出来てないんだよな――ホントに嫌気がさすぜ

 

 

はぁ…まぁそんなことよりユグドラシルだ

 

この一年俺は色んなやり方でユグドラシルをプレイしてた。

普通にギルドに所属してる時は周りに合わせて課金もプレイ時間も抑えて遊んでみたり、ロールプレイ専用ギルドでサポートのアンドロイドの役を全力でやって周りをドン引きさせたり、傭兵NPCを引き連れて高難易度ダンジョンをソロプレイしてみたり、終いには人付き合いに面倒臭くなって人を雇ってクラン作ってみたりと色々やった

 

そんなこんなでプレイしてたらとあるクラン*1から声をかけられ、話を聞いた感じ馴染めそうだし今いるクランからそっちに移ったところ。

そこのクランは10人程度しか人がいなかったが、全員がアコロジー内でもそれなりの地位の人間だったため話があった。

 

目の前でガチャしまくってもたかりに来ない。昼間っからプレイしていても誰かしらいて冒険に出れる。立ち振る舞いや思想も洗練されている。

遠慮なく課金出来て、妬みなどもなく遊べるここは天国だった。

 

人数が少ないとはいえ総課金額ならユグドラシルでも群を抜いてる俺たちのギルドはランキングでも一桁に入ることは珍しくなかった。

 

回した回数こそ正義!

 

 

 

そして三周年記念イベントが始まる

 

「きたぁぁ~ッ!?」

 

運営から周年の肝いりとして発表され、実装されるユグドラシル初となるワールドアイテム(・・・・・・・・)【流転し交差する縁】

あぁ、俺が叫んでるのはこれのせいだ

 

三周年限定イベント、初めて見るレアリティ、それもパートナーNPCを作れる限定アイテムともなれば競争は過熱した。

当時も傭兵NPCは存在してたけどなんていうか量産品のモブキャラみたいな感じで種類も少なかったんだよね。

そんな中プレイヤーキャラと同じように様々な職業に出来て、外装はカスタムし放題、旅のお供にも出来るなんてアイテムが出てきたんだ。

そりゃあプレイヤーなら誰しも大盛り上がりするさ

 

「お前はどんなキャラを作る?」

「いや俺は昔のゲームのこのキャラを…」

「いやオリジナルキャラでしょ?」

「僕は老境の武人みたいなキャラ作ってみたいなー」

 

だけどイベントが進むにつれて不穏な雰囲気になっていった。

俺たちはてっきりイベントの条件を満たしたらそのアイテムが獲得できると思っていた。そりゃあ初めて聞くレアリティだし周年記念だし課金も集会もマシマシにしないといけないとは覚悟していたさ。

だが、それを乗り越えたのなら誰もがパートナーNPCを作れると…そう思っていた。

 

でもそのアイテムの欄の隣にはこう書かれてあった「/1」

 

最初は俺たちも笑いながら言い合っていたよ。

 

「おひとり様一つ限りなんだろうな~」

「そりゃあそうだろ!何個もあったらパーティ組めちまうじゃん(笑)」

「解析してるやつが言っていたがデータ量がボス並みにあるらしいな」

「へぇ、もうサーバー代相当掛けてるってのによくやるよ」

 

だが、運営から表示されたランキング報酬を見て唖然とした。

完全な個人戦のイベントで順位によって報酬が変化する。周年イベだけあって素材や金貨は美味しかったが驚いたのは1位の欄

 

個人ランキング報酬

一位 【流転し交差する縁】

2~10位 最上級アイテムボックス×10 金貨1億枚

11~100位 最上位アイテムボックス×8~

 

 

1位しかアイテムは配らない…だとっ⁉

 

あんだけパートナーNPCが造れると宣伝しておいて?

現役プレイヤー数が10万を超えるユグドラシルで?

イベント報酬で、一人…だけ?

 

その時掲示板を見ていた俺たちの心は一つになった。

 

「この…っ!クソ運営ぃぃ~!!」

 

 

 

3周年限定アイテムで

今まで見たことないレアリティの

冒険に連れて行けて自分だけのNPC

 

 

「つまり――何を意味する?」

「理解できぬ」

「しかしこれは――」

 

そうして

札束の殴り合いが始まった

 

 

ガチャで出る専用アイテムを限凸させるのは当たり前

スタミナや回数制限のあるクエストを課金石で叩き割るのも当然

グループを組んでの妨害・妨害阻止

 

これらを整えたうえで周回に次ぐ周回の末――

 

俺はワールドアイテム【流転し交差する縁】を勝ち取った…

 

「二人ともありがと…ありがとなぁ」

「あぁ…それにしてもよく一位取れたな」

「ほんとほんと。いや発表あったときマジで正気を疑ったぜあのクソ運営」

「あぁ、今クレーム殺到してるらしいぜ。残当だがな」

 

手伝ってくれた友人った地とイベントの完走を祝いあった。

 

「うぉぉ…うっ……」

「おい、大丈夫か?ていうかお前。もしかしなくてもここ一週間ずっと…」

「・・・・」

「ログアウトしちゃった」

 

 

報酬を確認して安心した俺はそのまま寝落ちた。

よく考えるとこの時、俺が必要になる事態が起きていたらこのアーコロジーごと崩壊したかもしれないという事実…

起きてからここ一週間の報告を聞きながら肝が冷えた。

 

これで最後だから大丈夫…大丈夫(震え声)

 

 

そして俺はパ-トナーNPCを作った。

 

キャラクターは暇つぶしにやってたソシャゲから借りてきた。

もはや古典と化してるくらい古いゲームだったが出てくるキャラみんな個性的で好きだったやつだ。もう版権も切れてるし彼女なら何があっても守ってくれる気がしたからね

 

これからずっと一緒にいるんだから性能は大事。

俺は中衛でサポート職(指揮官系統)だから頼れる前衛が欲しいんだよな。

外装も良いとこに発注して――えっ衣装用のデータ多いな何着も衣装付けられるじゃん!

 

衣装データには困らないし幾つか発注しとこ…

 

 

あっ、この衣装もダメなのね。昔のゲームって過激なのも多いからな~

おっ設定とか書き込めるのか、まぁこれはゲームのモノをそのまま流用して…

NPCののAIもカスタマイズ出来るらしく、知り合いのところに外注したものを組み込む。

 

なんか成長していくやつらしいけどそっちは詳しくないから一番いいヤツを頼んで、それから装備は余ってる最上級データクリスタルをトレードして手に入った七色鉱を使った盾を――

いやぁ作ってるときが一番楽しいよね。やりたい事があふれて止まらね~♪

 

 

あの地獄の周年イベから数か月後

 

外装から思考AIまでもあらゆるものがカスタマイズ可能なサポートNPCを創るのは相当な期間が必要だった。

もうちょいやり込みたかったけど

 

「これがサポートNPC…」

「作り込みが凄いよ!他のどのユグドラシルのNPCより繊細で奇麗だよ!」

「俺は強さが気になるぜ。ワールドアイテムってユグドラの最終目標みたいなアイテムなんだろ?」

「」

 

金にも時間にも糸目を掛けなかったサポートNPCの完成度は圧巻の一言で、ギルドの人や友人たちから絶賛された。

 

戦闘においてもユグドラシルのポンコツAIと異なり、上位ギルドのメンバー並の判断が出来る。

ぶっちゃけ一人で二キャラ扱ってるようなもんだ。

 

ワールドアイテムで作られただけあって種族や職業もPLと全く同じで、まだ色々改造の余地はあるがーー

一先ずこれで満足した。

 

でも呼んでも偶に反応しない時があるんだよな。

大体クランや町の中でのことだから困らないんだけど何故?

 

 

そうして知り合いを周り終わって冒険でもパートナーNPCが居ることに慣れて来たところで運営から一つアナウンスがあった。

 

どうやら3周年記念イベントが常設化されるらしい。

パートナーNPCイベは前回行われたイベントの順位によってボーナスが違う。

開催されるごとにイベボーナスが更新され、前々回までのイベントボーナス品は使用できるらしい。

 

「惜しかった人にもチャンス上げちゃう感謝してよねby運営」ってことだろうが…

 

「げ、元気出せよ」

「ほら、これで全員でパートナーNPC作って冒険出来るようになったから…」

 

周年記念で煽りに煽って散々課金させた挙句…

その3か月後にはアレ常設化するから欲しい人はまた頑張ってねっと

 

うん…せめて周年毎とかにしろや!

なんだよ今イベントないからやっとくかーみたいに雑に開催してんじゃねぇぞ!!

あの時、初めてのレアリティ&パートナーNPCを作れる

そ し て 一位の人しか貰えないということにどれだけ恐れおののいたか

 

俺だけじゃない!

あのイベントで2位どころか10位までのやつがどれだけ課金したと思ってんだ!!

なのにまたすぐに開くんで許して…だと?

殺すぞ!ああぁぁ~っ!

 

「この…っ!クソ運営ぃがぁぁ~!!」

 

広い部屋に男の咆哮が響いた。

 

*1
当時はギルドが実装されていなかった




どうしてこんなのを書いてしまったのか…

クロスオーバーのキャラの扱いについて どの程度までクロス要素を出するのがいいか

  • がっつり描写する
  • 誰なのか分かるくらい
  • それとなく分かるくらい
  • 知ってる人は分かるかも?くらい
  • 完全オリジナルで
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