このッ…クソ運営がぁぁ!   作:mnomno

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ひと月前には書けてたけど面白くならないからもっと面白くならないかとごちゃごちゃ考えてたらはや12月…
もうとりあえず投稿していくことにしました読み流してもらえれば幸いですm(__)m


ダンジョン攻略

「あっ藤さんと…し、新藤理事ッ⁉ 失礼いたしました!」

 

声をかけてきた職員をジロリと一瞥して部屋に入っていく従兄弟…

相変わらずの不愛想

 

蛇に睨まれたカエルになっちゃった顔見知りに声をかける

「よおっす。どうしたそんな顔して?従兄弟もどうせそんな気にしてないだろうから安心しなって」

実際に顔も覚えてないだろうしね

 

「いや…無理ですよ!あの人に気安く声かけるとか、マジで心臓止まるかと思いました……」

馴れ馴れしく声を掛けちゃったせいか真っ青な顔で溜息をつきながら尋ねてくる

 

「で、藤さん今日どうしたんですか休みでしたよね? 一門の方が二人も来るなんて珍しいですね…」

「あぁ、ちょっとな。これからトラブル起こりそうなところ見つけたから先に対処しとこうと思って」

「…まぁ従兄弟だけでも十分なんだけど一応俺もってなってさ。ほんと心配しすぎだよね?」

 

「あ~、ソウデスネー」

そこで言いよどむのやめてよ、俺がおかしいこと言ってるみたいじゃん?

 

「まぁそういう訳でこれから兄貴と二人でお仕事って訳…あぁめんどくさ」

「んな感じでこれからそっちも大きいヤマになるだろうから覚悟しといてねー」

「はははっ、それは…ちょっと怖いですね」

 

その言葉に引き攣った顔で返す職員くん

まいつもより規模が大きいだけだから大丈夫大丈夫♪

てか規模が違うとはいえうちの職員たちがやってる仕事との延長戦みたいなもんだからさ

 

「まぁこれから暫くそっちも忙しくなるから頑張れ。夜食とか差し入れするからさー」

「分かりました、みんなにも声かけておきます!」

「よろしく~」

 

手を振りながら部屋に入った

 

 

 

「あんなのに構っても時間の無駄だろ」

 

従兄弟から痛烈なご挨拶ぅ…

こちらに顔も向けずにモニターから必要な情報を纏めている兄貴から人を人とも思わない言葉が放たれる

 

まぁ上層部の人間は下の者をゴミの様に扱うものも多いから、ちゃんと人として認識している従兄弟はまだマシな方なんだけど

なんというか~他にも言い方があるよねって話

 

職業柄もあるから何とも言えないけど

 

「その言い方は……いやまぁ能力的にはそうだけど。でもほらパーティとかで盛り上げてくれるし、話していると俺らと全然違う発想とかあって参考になることも多いよ」

「お前が開くようになったイベントか…俺たちが居ればどうとでもなるのにそれなり金を払って能無しどもを飼っておく意味が分からんな」

「うちに入ってくる一ってみんな優秀なはずなんですけど?」

 

年収も良くて時間の拘束も少ない半世紀前には絶滅したと言われているホワイト企業だぞここ…

だからアーコロジー内で暮らしている人間でも優秀なやつしか入ることが出来ない。だから能力は優秀なはずなんだけど

 

「まぁ良い後片づけくらい任せられるからな。しかし次から次へとキリがない…ゴミが」

「それは同感…幾らでも沸いてくるからキリがないのよね……ってことで今日はここ、経路とか全部抜いといたから好きに料理できるよ」

 

既に見つけてから準備していたデータを送る。

 

「相変わらず、遊んでばかりのくせに仕事は早いな」

息を吐きながら受け取ったデータに目を通して…そのまま俺に視線を向けてくる

 

「あれ、なんか間違ってるとこあった?」

「そうではない…」

言葉を区切り本題を切り出された。

 

 

「ユグドラシルとか言ったか…お前入れ込んでるな?」

「貧民の娯楽の癖してそこらの大企業並みに堅いプロテクトってなんだ?俺でも手間取ったぞ…」

 

「あーっ、オープンワールドのMMOって余計なことしてくるヤツ(ハッカー)が多いからさ。そんなゴミのせいでユグドラシルが無くなったら悲しすぎるからちょっと、ね?」

「それで俺も反撃を食らったんだが?…まさか1ゲーム如きでアーコロジーでの最高刑*1まで引っ張り出してくるとはな…」

 

あー、あれに引っ掛かりそうになったのね

 

「それはごめん!でも奥まで見ようとしないとそんな重くならないはずだけど?」

「はぁ…お前なぁ…」

従兄弟が顔を顰め頭が痛そうにしている。

 

「まぁいい。この件お前も手伝え!それでチャラにしてやる…とっとと終わらせるぞ」

「あー、それで俺も呼ばれたのね!」

 

それから従兄弟と二人で駄弁りながらお仕事した。

なんで俺が呼ばれた理由も分かったしとっとと終わらせて休みをエンジョイしよ♪

従兄弟と協力したので今回も殆ど抵抗されることなく終わる。後のことはうちの優秀な職員たちへ放り投げた。

 

「後片づけをしておけ」

「いつも通りよろしくー」

「「「はい!」」」

 

後ろから作業をしている社員たちの声を聴きながら従兄弟一緒に帰路についた。

よ-し!これにて俺たちが出張る仕事は終わり、大きな山も片付いたことで暫くは俺を必要とする仕事は来なくなるはず…

 

つまり一か月はユグドラシルに集中できるってこと!

ダンジョン攻略・新フィールドバッチ来いだぜ!

 

 

 

「急な予定が出来たやつは今この場で言え」

ギルメンたち揃った目の前で御曹司の容赦ない言葉が響く。

 

「居ないな…よし今からアルゴノーツは『白夜の暗黒街』の攻略に向かう」

「あの運営のことだ…何が起きるか分からん気を引き締めろ」

相変わらず言葉を飾らない御曹司、そんな御曹司の話をギルメンも慣れた様子で聞いてる。

今日は珍しく殆どのメンバーの予定が合った。

俺や兎っ子やピエロなんかは予定合わせられるんだけど他のメンツはなんやかんや言って忙しい奴多いので確認は大事。

 

攻略途中に時間が来たんで抜けます!なんてされたら堪ったもんじゃないからな。

俺がこの日の為にどれだけ準備してきたと思っているんだ

 

「以前この裏カジノに挑んだギルドが言うには『金が幾らあっても足りねぇ…やってられるかこんなもん!』だそうだ」

 

「全員攻略の為にカンストまで貯めているとは思うが…。運営のことだ何をしてくるか分からん金貨が枯渇したときに備えて俺、アーミー、ナルシスト、ギースを別の班に分け対応する。NPC及びサポートNPCからは徴収されないことが確認したがそれでも自分の所持金には注意しておけ」

 

そうこのダンジョンは中に入るだけでユグドラシル通貨を消費し続ける『散財』という特殊な状態異常を付与してくる。

『散財』は重ね掛け出来きカジノの奥に進んだりよりレアなモンスターがホップする場所だと高レベルプレイヤーですら顔を顰める金貨を時間経過で奪っていく状態異常だ

 

それなのに遅延させることが目的の仕掛けやトラップが多く配置されて*2ユグドラシル通貨を消費させてくる為前に挑んだギルドは途中で財布が空っぽになりあわやギルド拠点の維持に必要な金貨すら失うところだったらしい。

一度でも破産するとダンジョンに挑む資格がなくなるのか?それとも他の要因で撤退せざるを得なくなったのか?

分からないがあの運営のことだし金が尽きると攻略失敗だと思っておいた方が良いだろう。

 

 

まぁそんな話はさておいて

だからアルゴノーツでは最低でも全員が金貨をカンストさせてからこの裏カジノに挑んでるが、それだけでダンジョンを攻略させてくれるほどユグドラシル運営は甘くない。

前に挑んでたギルドも何か知ってそうな感じだったし…まだギミックがあるのは間違いなさそう。

 

 

「では、最深部で会おう」

そうして御曹司は悟空とチェルシーたちを連れてダンジョンへ入っていった。

 

「おし、じゃあ行こうぜ!」

「任せたよアーミー」

俺は強面とピエロがチームメンバーだ。

 

大雑把に分けると御曹司たちが謎解きや最深部までの通路を見つける探索役、俺たちはピエロの豪運でダンジョンの仕掛けをごり押ししていく切り込み役、ナルシストや婆さんが遊撃役、窓際やカボチャは補助役って感じのチーム編成となっている。

ダンジョンの攻略適正人数より少ないがその分実力と消費する金貨が少なくなるから大丈夫…だと信じたい。

 

もちろんどこのパーティでも攻略出来る実力はあるが、俺らの負担が一番デカいのは事実。

まぁ気楽にいこう、俺には予備の財布もあることだし

 

一階は開けた広間に様々なゲームの台が置いてある感じの大衆用のカジノだった。

廊下や人気のない部屋にモンスターがいて襲い掛かってきたがレベルは50~60程…傭兵NPCも居るとはいえ100レべパーティじゃ苦戦もしない。

まぁダンジョン攻略って詰み要素が酷いだけで攻略自体はレベル100でちゃんとしたクラスに就いてれば攻略できる難易度でしかないからこんなもんだろう。

『散財』のデバフも大したものでもないし流していいかな

 

 

「おっしゃ!いやぁ総取りとは気分が良いぜ~!」

 

その声の先を見ると強面が拳を天に上げてガッツポーズしている。先に進むために必要なゲームをしていたんだけど勝ったみたいだ

…負けて蹲っているNPCたちの姿もあってか競馬場にいる大穴で勝ったおっちゃんにしか見えないな、リザードマンなのに。

 

「凄かったよー。それにこのゲームだけで必要なコイン全部集めちゃうなんて流石!」

「がははっ、そうだろう。いやぁ絶対00が来ると思ったんだよ」

ピエロの賞賛に上機嫌で応える強面、いやマジで大穴狙いだったんかい!

まぁ勝てたなら良いけどさ~

 

 

二階は下より高級感あるカジノだった。

最初に踏み入れた車が数台並走出来るくらいデカい廊下を歩き部屋を巡っていく。

 

VIPが遊べる個室も増えかと思えば、偶に百人以上は入れてステージを鑑賞できそうな大部屋もある。そのすべてが先ほどの階より手が掛かっており、質感も一回に比べて豪華になっている。

トラップなのか檻に入れられていたライオンやトラなどの獣モンスターが襲ってきたが、強面が余裕で倒してもう次の階に行くためのゲームまでたどり着いた。

モノは試しにとお姉ちゃん(・・・・・)をゲームに出してみたけど普通に参加出来たうえディーラーをぼこぼこにしていた。

 

まぁイメージ的に何でも熟しそうてのもあるけど単純に搭載しているAIの性能が違いすぎぃ…!

いやこのカジノのAI性能が悪いってことじゃないんだけど…

見てみて!弟君の為にお姉ちゃん頑張っちゃった♪とばかり差し出されるコインの山に軽く引いた。

 

うん、これは酷い。

寧ろ少し返してきた方が良いかもしれない、他の班の奴らがゲームしに来たときに渡すコイン残ってなさそうだし…

そうやって要らない分をディーラーをしていたNPCに渡して次の部屋へ向か…

 

…って、良いのかよそれ!!

 

いやサポートNPCってユグドラシルで使われてるのと全く規格が違うAI搭載してるけど⁉

カウンティング*3とか素でやってるし、記憶力と計算力が並みのプレイヤーと比べ物にならないよ⁉

 

ガチでやったらうちのギルメンでも大半が勝てねぇけど!アリなのか!?

 

まぁ使えるなら使わせてもらうか。これ先に進むために勝たないといけない勝負全部サポートNPCに任しているだけで終わるのではなかろうか?

仮にもカジノのダンジョンなのにNPCが無双して終わりって…

それでいいのか? なんていうかこう、ダンジョンのコンセプト的に…

ワールド関係は何でもありって有言実行してるけど、こういう所は直した方が良いと思うぞ

もにょもにょとした気分のまま次の階層に進んでいった

 

だけどまぁ…

早い者勝ちなゲームバランス!

意固地とも言える世界観へのこだわり!

頑なにナーフされない【ワールドアイテム】!

 

これでこそユグドラシルと言えるからなぁ、正直そういうとこは嫌いじゃないし…

寧ろ経営陣の考えなんか知るか!俺たちは勝手にやらせてもらう!!って感じでもっと突き抜けて欲しくもある…あぁ〜心が2つあるぅ

 

 

あとこれで上に進んでいくタイプのダンジョンと判明した。

最初に貰った資格証には『5』の数字が、そして今回の資格証には『4』が刻まれていた。

54321って順番に進んでいく感じだろうか?

イベントであったのカジノは全部で4階層に分けられていたけど今は5階層なのかそんなことを考えながら次の階へと進む

 

 

 

「こりゃさっきまでと雰囲気が違うな。―――ちっ、嫌なこと思い出しちまったじゃねぇか」

「なんていうかオペラとかコンサートの会場みたいだよね~」

 

周りを見て2人がそう呟いている。

廊下はカーペットが敷かれ、訪れた客のためかコンシェルジュが各部屋の前に待機している。

部屋の数はぐっと少なくなり、見たところ20を割るだろうか。

 

「アーミー。今どこにいる?」

おっと御曹司からの連絡だ

 

「三階に来たところだ。そっちは?」

「同じく三階にいる。とはいえもう四階へあがるパスは手に入れたがな」

「はははっ、確かに手に入れてるね、いやぁあの案内人の顔面白かったなぁ。見下してた目つきが一転ニコニコでゴマすりし始めたからね~」

「うるさい黙れ!ふん、お前たちはゲームをクリアしてこい次に上がるには複数の証が必要なようだしな」

 

面白がったチェルシーが通話に乱入してきた御曹司が鬱陶しがっているのが分かる。

もうゲーム終わらせたのかと思ってたけどなんか別の方法で上に上がれるようになったっぽいし

 

「あいよ。でも来たばっかだし軽くここの解説頼むわ」

「良いだろう。三階ここから先に行く方法は二つある。そこにある扉を進み中で行われているゲームに勝ち勝ち星を3つ集めるか、金を払ってVIPの身分を得るか。ゲームの方法も闘技場のような場所で出てくるモンスターを倒しながら条件をクリアするものや純粋なギャンブルでの勝ち続けるもの様々だ」

 

コインじゃなくて勝ち星になったな。

てことは最低三回勝たないといけないんけど…こいつ金払いやがったな。

 

「まぁお前たちならどれが来ようと問題ないだろうが他のチームは不安が残るか」

「いや、婆さんと窓際いるし大丈夫だろ?兎っ子とかシスターはカモにされそうだけどあの二人は負けるイメージが浮かばないな」

 

あの二人は『私にはとてもとても…』とか『老体には厳しいよ』とか言いながら最後には良いところを持って行くタイプだ。

…ゲームでもだけど絶対にリアルでは敵に回したくない

 

「・・・・」

何故か御曹司が黙る。

 

けらけらと後ろでチェルシーが笑っている声が聞こえるし…試しに賭けてみて搾り取られてるなこれ

 

「まぁいい。次のステージも同じ形式のようだ勝負に勝って三枚のメダルを集めれば支配人と対面できるらしい。あとここから先は廊下にいるとすごい勢いで金が溶けるさっさと入る部屋を決めて入った方が良いぞ」

 

「先にそれ言えよ!!」

 

御曹司に言われて確認してみるとさっきまでとは比べ物にならないほど減少スピードが上がっている。

 

「しゃーない!どこかいいとこあったか?」

「あぁとりあえずコロシアム行かないかってな」

「ここに描かれてるモンスターを5体同時に倒せだって、アーミーこういうの得意でしょ?」

その部屋の概要を見せてくるピエロ…うんまぁそうなんだけどダンジョンギミックまであの作業させられると思うと気が滅入るな

 

「あぁ、いつもそういうの調整してるからな!はぁ、廊下にいると金凄い減るみたいだからさっさと入ろうぜ」

「げっ、マジじゃねぇか。まだ全然残ってるけどボス戦とか考えると怖いからな」

「うん、早く終わらせよー」

 

 

コロシアムでの依頼はすぐに終わった。

誰が倒しても条件が達成できるって良いな~。いつも攻撃力1のヤツにどうやって高レベルのモンスター同時に倒させてるか悩んでる身からしたら破格な条件だったぜ…

 

その後も強面がアヴェンジャー特性を発動させて無双し、ピエロが運の絡んだゲームをクリアして三つの証が集め階を上がるゲームも俺が終わらせて4階へと上がった。

これからまたゲームさせられて『残念!今までゲームに参加したプレイヤーは参加できませ~ん!』とか言われる可能性もあるからなピエロは温存させとかないと…

 

「…お前らギャンブラーやらない?いいとこ紹介するぜマジで…」

「いや、別に間に合ってるし態々そんなとこ行ってもなぁ」

「うん、ちょっと恐れ多いよねカジノなんて」

「お前にゃ天職だと思うけどなぁ…ってリキャスト終わったかヒール頼むぜ」

「暴れすぎなんだよお前、少しとはいえ魔力も回復するから使いたくなるの分かるけど次はボス戦だし」

 

そんな軽口をたたきながら俺たちは四階へと向かった。

 

 

「やはりお前たちが一番早かったな」

「見てたわよ~!やるわねなんの苦戦もせずにストレートで上がってくるなんてね」

「ゲーム強ぇんだなお前。こんな奴らと一緒に戦えんだろ負ける気がしないぜ」

 

「いや、寛ぎすぎだろお前ら!」

 

御曹司がこの空間の主が如くソファーに腰かけ睥睨し、その隣で悟空が周りにある装飾品などを手に取ってみている。

チェルシーなんかはハリウッド女優が着るようなドレスまで着て寛いでいる。どこから持ってきたんだよそれ…

 

文句を言いながらよく周りを見渡してみるとここは三階より更にグレードの上がった内装に各ゲーム会場のモニターが設置されているようだ

そんな上級VIP御用達のラウンジで当たり前のように寛いでいる御曹司たち

 

「ほぉ…内装も悪くないな。これデザインしたやつ分かってるじゃねぇか!」

「いやぁ、僕なんかがこんな場所にいるの場違い感が凄くて困っちゃうね」

困った顔で落ち着いてないピエロに、置かれているアンティーク品などを鑑定しながら慣れたように給仕から酒を貰っている強面。

 

「ほら慣れだよ!こんなのは幾ら場数を踏んだかってところあるしね。それにそんなにおどおどしてたら舐められてカモにされちゃうぞ~♪」

「うわっ、チェルシーさんびっくりさせないで…ってあれ?」

「やめろ!うちの主力をBANさせる気か」

 

ピエロに後ろからしなだれかかったチェルシーを御曹司がポイっと跳ねのける。

「いったぁ!……って本当にHP減らされてる!えっ、なんでフレンドリーファイア通ってるの⁉」

「ふん、そろそろ帝のやつも来るぞ」

 

チェルシーの問いを全く請け合わずに画面を眺めている。

 

「がはは相変わらずだなアイツ」

「戦闘用の職業構成じゃないのに凄いよね~」

「というかうちでまともにクラス構成してる奴のが少ないだろ…」

 

ユグドラシルは職業の種類が千を超え、その組み合わせは文字通り数千万はある。

しかもそれにユニーク職なんてもんがあるから初見の相手のクラス構成なんてまず分からない。

その中でも分野に特化させたガチビルドとか一発逆転を狙うロマンビルドとか色々あって人それぞれなんだけど…うちはホント好きに配分してるからね

 

ワールドチャンピオンの悟空ですら見栄えの為にあるようなクラス取ってるし…

 

 

なんて考えてたらナルシストのとこがもう終わりそう。

一番目立ってるのはアイツだけど昇格ゲームは全部ばあさんが蹂躙してるっぽい。兎っ子にも分かるようにゲームの解説しながら勝ってるのは山千海千の古強者ってところだ

 

窓際のところは…

こっちはもうちょい掛かりそうだな途中カボチャとシスターがやらかしてその後始末に追われてる。

なんか斜に構えてたアイツも周りへのフォローが板についてきたな。

 

 

「待たせたね、主役の登場さ!」

 

あぁ、五月蠅いのが来た…

三階からつながる扉が開かれナルシストと婆さん、兎っ子たちが入ってきた。

御曹司がいつもと変わらぬテンションでナルシストに問いかける。

 

「どうだ?やる気は出たか?」

「勿論だよ。ここは良いね…」

「多くの人たちが入れる会場に色んな演出が整っているステージ!これからボクの軌跡を彩る最高の舞台になるだろうさ!」

「…そうか、なら良い」

 

まるで舞台の上にいるかのように大仰に、よく響く声で、演出するナルシスト。

その返答に満足したように頷いて座り直す御曹司。

 

しゃべり足りないのかナルシストは傍にいたチェルシーの元へ向かってる。

「そのドレスも似合っているね今度僕のステージに出ないかい?」

「あー、うん機会があったらいこうかなー」

 

「うんうん、それが良いさ!君の輝きを終わらせるには惜しいから、ね!」

「ありがとうって言っておけばいいかな?」

腰が引けてるチェルシーになおも話続けるナルシスト、彼女の演説は当分終わりそうにない。

 

 

そんなナルシストと一緒に入ってきた兎っ子の顔には疲労が浮かんでいた。

 

「なんなのよコイツ…暫く夢の中に出てきそう」

「おや、もう疲れたのかい?でも、世の中にはいろんな人がいるからねぇ、彼女で慣れておくというのも一つの手さ」

「嘘よ!こんなのが二人も居たらたまらないわ!」

 

婆さんに突っかかていく兎っ子

「そうだねぇあたしもこんな子は初めて見たけど…同じくらい濃い人っていうのは幾らでも見てきたよ」

駄々をこねる兎っ子をなだめる婆さん、言葉の端々に含蓄が滲んでいる。

 

「そうなの?」

「きひひ…まぁ何事も経験、よく見てよく聞いて何事も体験しておくんだね」

「…うん」

 

婆さんから諭された兎っこが適当なところに座ろうとして…

周りの豪華絢爛さに唖然とし、婆さんの隣にちょこんと座った。

 

分かる分かる…

俺も最初パーティとか連れていかれた時あんな感じだったなぁ。いつもの場所と全然雰囲気違うから飲まれちゃうんだよな~

 

 

「おっと私たちが最後でしたか」

「あそこで0が出なかったら僕たちが一番だったカボ!」

「…どうして私の勝負しようとした時に限って皆さん降りてしまわれるのでしょうか?」

 

最後のグループが到着した。三階までサポートNPCたちに昇格ゲームを任せていた窓際たちが到着

カボチャもシスターも何回もゲームに参加していたしそれで遅くなったのだろう。

ゲーム内容に納得がいかないのか二人とも不満をこぼしている。

 

「遅い」

「申し訳ありませんねぇ…これでも急いだのですが」

「ふん、どれくらい消費した?」

 

「お二人もそこそこゲームに参加しましたのでこれほど…途中で補充したので問題ないですよ」

「そうか、これで4チーム全員揃ったな」

 

 

御曹司が立ち上がり俺たちを見回す

 

「俺が勝ったVIP権限にこのダンジョンのほとんどの情報は載ってある。運営はダンジョン攻略中にVIPになるプレイヤーを想定していないようだ。ただ単にこのカジノの設定を順守しているということかもしれんが…結果的に潜入させ情報を抜かせていたチェルシーの価値がなくなったが結果オーライだ」

 

「それ今言わなくても良いでしょ⁉」

後からきたギルメンに御曹司のゲームでの大活躍()を吹き込んでいたチェルシーが釘を刺される。

 

「ふん、最後のボスはこの裏カジノのオーナーだ。打ち倒せば俺たちがこのカジノのオーナーつまりこのダンジョンを拠点と出来る」

「これから先の情報はVIP権限ですら載っていなかった。お前たちも聞いたことがあるだろうがダンジョンのボスを倒すのはダンジョン攻略の7割を占める難易度だと聞く…」

「しかもあの運営のことだ。どんなとんでもギミックが待っているかもわからん」

 

一旦言葉を切って頭が痛そうに沈黙する御曹司

分かる…ボス戦って俺が聞いたやつでさえボスを倒したと思ったら次のボス戦が待ってたとか、ボス戦しようと部屋に入った瞬間に全滅させられたとか、攻略条件を見逃していて一切ダメージが入らなくて撤退だとか…

 

ダンジョンに挑んでは散々酷い目に遭った奴らを知ってるし、俺も流れてくるそんな話を聞いて笑っていた。

 

しかし、今度は俺たちがクソゲーに付き合わされる側!

どんな理不尽を味合わせられるか気が知れたもんじゃねぇ!

 

 

「だが情報も集めるだけ集めた。金貨も暫くアリアドネを発動したとて十分な額を用意している。…行くぞ」

 

「任せて」 「おう」 「腕がなっぜ」

「ボス戦だー!」

「華麗な僕の活躍を記録しておかないとね♪」

「これが…友達との共同作業…」

 

思い思いの言葉を言って気合を入れ直していくメンバーたち

そんな俺もワンマンチームでのボス戦じゃなくてちゃんとしたパーティでのボス戦にテンション上がってくる。

 

オラ運営掛かってこいよ

どんなクソギミックでも真正面からぶっ壊してやんよ

 

 

 

 

「これはこれはようこそお客さま(カモども)

 

 

贅を尽くした舞台

きめ細やかな赤いカーテンが開き、その奥からまるまると太った猫の獣人が出迎える。

 

着ているスーツはきめ細かな装飾が着けられた高級品、片眼にモノクルをかけたいかにも出来る商人といった風貌

そんな猫が慇懃無礼に吐き捨てる。

 

「私はこのカジノの経営者にして支配人『ゴズ』と申します。さて、身の程知らずにも私の(カジノ)を奪いに来た不埒な者たちに慈悲を与えましょう…」

嗤いながらゴズが問いかける。

 

「どうです、私に雇われてみませんか?この地に滞在するうちに理解したでしょうこの地で動く金の量を!それを統括して支配するこのカジノの力を!あなたたちを全員雇ったとしても私の懐は痛みません。ここに来れるだけの実力もあるのでしたら戦力としても充分でしょうしね」

 

まさかの買収の提案!そういうのありなのかよ!?

 

しかも目を通した感じこのカジノで手に入るレアなアイテムも定期的に入手できる悪くない取引

中堅ギルドなら喉から手が出るほど欲しいかもしれないこの契約…

 

しかし俺たちの回答は一つだ

 

「ふん、侮られたものだ。この程度で買えるほど俺たちは安くない」

「ほぉ、そういえば今回の侵入者はオーナー権の購入をしたとかそれなりに財を持っているということですか…しかし私とは比べるべくもない小金持ち(・・・・)本物のお金の使い方を見せてあげましょう!」

「…ふん」

 

 

御曹司からの返しに少し感心したような声を上げながらゴズとの戦闘が始まった。

 

「まずはボスの動きを見るタンクは役割通りに動け!アーミー・ピエロもバフとデバフはリキャストの短い最小限のモノで構わん。後衛組は安置を見極めろ」

「了解っと」

「分かったよー」

 

ギルメンが役割ごとに散らばる。ナルシストが最前線でゴズを挑発(本人的には魅せているらしいが…)、お姉ちゃんが全体攻撃時に防御する形で、兎っ子の良く分からん鳥は後衛組の方へ向かって駆けていく。

 

「ショータイム」

早速ゴズが手に持ったステッキを振りモンスターを召喚してくる。

 

レベルは70から90だが一芸持ちばかりが召喚された

問答無用で周りに状態異常をバラまいたり、殆ど動けない代わりに壁役として無駄に耐性高かったり、能力が低い代わりにフィールドを張ってきたり…

 

にしても数が多い

無駄にHP高くて物理に打たれ強い亀が10匹に飛んで周りに凍傷デバフ撒いてくる蛾が十数匹、この中では一番レベル低いとはいえ魔法を無効化してくるスケリトルドラゴンの上位種が10匹に、倒すと自爆して回りを巻き込んでくるロボが…

 

っていや多すぎだろ! どうなってんだ!?

ボスのお付きがチーム単位で出るのは分かる、が指揮官系のボスでもお供は30体くらいだ。そりゃパーティ組めても36人までだからそれくらいになるのに…

こいつ100体近い数のモンスターが召喚してやがる。しかもどいつもこいつもレベルが高い!?

 

「これがお金の力…カジノの財がある限り私は幾らでもこれを生み出せる!ふははっ、あぁ伝えていかねばなりませんね。ここではお互いにスクロールのモンスターを無制限に召喚することが出来ます」

 

「そうあなた達も召喚して宜しいのですよ?あなた方の財が続く限りですけどね」

召喚したモンスターに囲まれて嫌味たらしく笑うゴズ、そこで御曹司から声が飛ぶ。

 

なるほどお互いの召喚条件を緩和しているからいつものボスより取り巻きの数が多いのね。なるほどなるほ…

 

いや、ふざけてんじゃねぇぞ!

 

スクロール使うプレイヤーなんてそんな居ないし、カジノのオーナーで金余らせてるお前が召喚制限取っ払ってるんだから幾らでも召喚されるってことじゃねぇか!

やれやれ譲歩してあげましたみたいな顔してんじゃねぇッ!

 

でもまぁ見た感じ…

 

「アーミー、やれ!」

考えてる途中で御曹司から声が飛ぶ。

 

「あいよ」

持っているスクロールに金貨をつぎ込んで召喚する。

ん~、既に召喚して契約しているモンスターは呼び出せないみたいだな。この場で召喚するならOKって感じかね。

 

20体弱のモンスターが召喚される

流石に一気にこれだけ出すと負担があるな…

 

「ほぉ私に対抗して結構召喚しましたか、短期決戦で行こうというのですかね。しかし数が足りません私を相手をしながらこのモンスターの群れと戦って貰いますよ」

召喚されたモンスターたちがぶつかり合う。こっちにも20体ほど向かってきたを強面たちが対処していく。

 

 

「はぁ?」

呆れた顔で俺たちとモンスターの群れの戦いを見つめるゴズ。

 

まぁそれもそのはず

だって俺が召喚したモンスターが三倍近い数のモンスターを押しとどめているのだから

 

 

仕組みは簡単

 

ゴズの召喚したモンスターは俺が使うこともある召喚モンスターたち

つまりその行動パターンは把握している

 

それを誘導させてやれば同士討ちを誘えるってわけ

てかこいつ召喚したモンスターに指令を出さずに暴れさせてるだけだから俺が何もしなくてもニ十匹くらいは味方のモンスターに攻撃してたんじゃないの?

 

で、こっちに向かってくる奴らに俺が召喚したモンスターを当てて時間稼ぎに徹する。その間に向こうの群れへと召喚NPCをぶつけて同士討ちを誘発させていれば俺たちと相手にするモンスターが極端に少なくなっているわけだ。

 

というかゴズが召喚したモンスターたちが周りを無差別に攻撃するせいで向こうの方は滅茶苦茶になっている。

召喚したモンスター属性をある程度縛っておき、高価なアイテムや装備で耐性を付けている為だろうか?

 

ゴズが召喚したモンスターの攻撃ではゴズへのダメージが入ってない。

 

フレンドリーファイア無視というデメリットありで破壊力やデバフを増してるモンスターばっかりだというのにだ

それで後ろに引き籠って遠距離攻撃でじわじわ削ってくるゴズ

 

やることがこす過ぎる!

 

 

「どこを見ているんだい?僕を見たまえ」 

 

「なっ?」

惚けた顔で同士討ちするモンスターたちを眺めていたゴズがナルシストを意識を向けさせられる。

そんな隙だらけのボスへとピエロと悟空が追撃を仕掛ける。

 

「頼っだぞピエロ!」

「任せて!サプライズジャグリング~♪」

「まずは小手調べだ―――かぁめぇ…かぁめ~波ァ!(次元砲っ!)

「なにッ!?……ぐぅ、っ」

 

ピエロの投げたナイフにこじ開けられ防御力を下げられた場所へ悟空の次元砲が叩き込まれる

弾き飛ばされながら体制を整えるゴズ、しかし少なくないダメージが入った。

 

「くぅ…このッ!」

起き上がったゴズの瞳は怒りに震えているが…

 

「きひひッ…『魔女の一撃』さね」

「お役目カボね…カルマ値極悪の地獄の業火シリーズ『獄炎』」

「主の慈悲に――『ホーリースマイト』」

婆さんの魔法で硬直したゴズに弱点を確かめるために異なる属性とカルマ値の魔法が撃ち込まれる。

 

「ぐぁ…ぁ」

属性無視の地獄の業火で燃やされ、聖属性の魔法を打ち込まれたゴズは体力が一気に半分を切った。

 

「えっ…弱くない?」

「油断するな小娘。召喚してくるモンスターの数が異常だっただろう」

「それにどうせ第二形態やらこいつは前座だとかふざけたギミックがあるぞ」

 

微塵も油断してない御曹司

 

「そ、そうね、ミヨちゃん反撃に備えるわよ!」

兎っ子が自分のNPCへ支持を出す。

 

まぁ俺も同感、こんなんで終わらせてくれるほどユグドラシルのボスは甘くない。

期間限定のイベントボスでさえ厄介極まりないのに、畢竟攻略させなくても良いダンジョンボスとかどんな仕掛けが施されているか知れたことじゃないし…

俺の召喚したモンスターたちも半数がやられて召喚し直し、次に備えようか

 

 

 

「ふふ…ふははっ!」

召喚したモンスターたちが蹂躙され自身の手痛い攻撃を食らったゴズが笑い始める

 

「いいでしょう!もう手加減はしませんよ!!」

言い放ったゴズが羽織ったマントを翻す。すると後ろの扉から金貨の波が押し寄せてきた。

 

「全体攻撃だ!タンク役は前に出ろ帝に近い奴はやつの後ろに!」

 

御曹司が叫び個々人が動き始める。

しかし支配人の後ろから押し寄せる波が全てを押し流した。

単純に金貨の重量のダメージ!そうして『散財』デバフが付与される

 

これがほんとのゴールドラッシュってか

 

…いや物理的に押しつぶしてきてんじゃねぇぞ!

 

だいたいなんで金貨に押しつぶされて『散財』のデバフが付くんだよ!

耐久貧弱な俺は姉の後ろへと避難してやり過ごす。

 

金貨の津波が終えると回復の光が飛び交う。

あの攻撃を支えきったタンク職へ緑や白い光が飛び交い体力を回復していく。

 

「ちぃ!今の攻撃は『散財』を付与している。それを引き受けているタンクには余分に付与されている、所持金が10億を切った者はすぐに報告しろ」

ステータスを見るとあの状態異常がさらに増えていた。

それに伴って金貨の消費速度も上がっている…今は良いけど長期戦になって何十にもこれが重なるとやばいかもしれない

 

「まだまだ行きますよ。モンスターなんて幾らでも召喚できるのですから」

消費され力を失ったスクロールが飛び散る

 

同時にさっき倒したモンスターが目の前に現れた。

 

 

 

 

「なかなか…やりますねぇ!」

あれから何回も召喚されるモンスターを削り、隙をついてゴズへとダメージを通し続けているが状況は悪くない(・・・・・・・)

寧ろ俺たちが一方的に押しているまである。

 

あれから何度も全体攻撃を食らい『散財』を重ね掛けされたがギルメンたちはみな健在

これは壁役にサポートNPCが多いということもある。プレイヤー用の状態異常解除とNPC用の状態異常解除手段どちらも取れるので負担が少なく済んでいるからだ

 

召喚してくるモンスターもリキャストタイムがあって、ゴズ本体がそこまで強くないこと。それで俺がモンスターを引き受けている間に悟空たちが直撃を決めてくれるのでゴズのHPがゴリゴリ削れる。

 

普通のパーティだと召喚されるモンスターたちに手間取って攻略に時間が掛かり全体攻撃で所持金を削られ続ける。

さらに途中からしてきた魔法を込められたスクロールや自爆する武器の攻撃で壊滅させられるんだろうな。

 

でも俺が半数のモンスターを抑えることでその間に火力職がゴズ本体をぶん殴れているのが良かったのだろう。

お陰で長期戦になればなるほど強い強面を残しているくらいだ。

 

 

「あと一息といったところか…気を緩めるなよ」

 

「うっす」

「分かってるわ」

「もっと派手に行きたかったのによ」

「フィナーレだね。より美しく魅せようじゃないか!」

 

ということでギルメンたちもまだまだ元気が余っているらしい。

 

「くぅ…あなたさえ居なければ…」

 

またモンスターを召喚される。それと共に巨大なルーレットのボールがこっちに向けて転がってくる

「ハァっ!」

お姉ちゃんに弾かれて消える

 

ふぅ、俺がモンスターを召喚する足止めしているうちに睨まれるようになった。

時たま飛んでくる単体攻撃の対象になり始めヒヤッとする場面もあるが、一時も離れない姉が全てを弾いてくれている。

 

姉という鉄壁のボディガードが居る時点でこの程度攻撃はシャットダウンされる。

前線指揮官のクラスで単体強化した姉は物魔両方の耐性が尋常じゃないからな。全体に向けてバリアを張ることも出来るし対ボス戦のタンクとして完成されていると言っても良い。

 

まぁその代わり攻撃性能はお察しなんだが…

 

 

「君の相手はボク、そうだろう?」

「…-っ!」

 

強制的に意識をナルシストへと向けさせられたゴズ

さっきから幾度となくみた光景、つまり次に来るのは…

 

「こっでトドメだ!」

かめかぁめ~波ァ!(次元砲っ!)

 

 

体力も尽きかけだったゴズは悟空が放った光線の中へと消えて…ポリゴンとなって消滅した。

 

「よしっ!」

「勝ったわ」

カボチャや兎っ子がガッツポーズしている。

 

「あははっ!これで終~わり♪いやぁ~ダンジョンも攻略できたしこれはオフ会が楽しみだね!」

ピエロに変身してデバフをかけていたチェルシーの姿が戻り、御曹司に約束させた祝勝会を嬉しそうに話し始めた。

 

「あはは、僕パーティの経験はあんまりないんだよね」

「私も豪勢な場には不慣れでして…個人的な友達との集まりなんて久しぶりですしどうしましょうか」

隣にいたピエロが少し憂鬱そうに呟いて、シスターと不安を共有している。

 

「なによ、あんまりパーティ行ったことないの? ふふ、なら特別に私が教えてあげるわ!」

ギルドに加入してから人に教えることがほぼ無かった兎っ子が嬉しそうに二人に話しかけに行く。その様子を何とも言えない顔で見ている婆ぁさんと窓際。

 

「なんだ…これは?」

そんな空気の中、御曹司がゴズの後ろにあった扉の上に表示されている数字が減っていくのに気が付いた。

 

「…もしかして」

「いや、まさかな…」

「ヒッヒッヒ…そういうことだろうねぇ…」

 

しかし倒したはずのゴズの報酬は出てこないし、戦闘終了のBGMもない。

そして数字がかっきり100億ほど減ったところで―――

 

 

「ふははっ!お金があれば何でもできるのですよ!!」

 

「モンスターを召喚することも、金貨の波を起こすことも…」

 

 

「命を買うことさえもね」

 

 

億のステージから現れたゴズが俺たちを見てにまりと嗤う

 

 

「「「「「・・・・・」」」」」

唖然とする俺たち

 

ぽかんとしている俺たちを見てゴズが高笑いしながら何事もなかったかのようにモンスターを召喚し始める

 

「・・・・・」

 

いや…だってそうだろ……

 

 

「「「「「ボス蘇生は無法が過ぎる(ます)」」」」」

ギルメンと俺の叫びがとどろいた

 

 

「さぁゲームを続けましょう――おやさっきより動きが鈍っていませんか?」

「っ、ほざくな畜生風情が!」

嫌味たらしい煽りに御曹司が吐き捨て――時計の針が巻き戻った

 

 

目の前には体力が全開しているゴズ

復活するやいなや自分を護るモンスターを再召喚し自分は攻撃の届かない奥から状態異常を付与させる魔法を撃ってくる。

放っておくと厄介なことになるモンスターの群れに数の減った召喚モンスターをぶつけ相殺させる。

 

 

このクソBOSSがぁ!

手持ちが居なくなった為スクロールに金貨を放り込んでモンスターを召喚する

 

なんで復活してきてるんだコイツ⁉

再び召喚されたモンスターたちを捌いていると奥にスクリーンを見る。

 

あそこ表示されている数字は今カジノが持っている金貨の総額なのだろう。で、ゴズは支配人なのだからそれらの金貨を使える?

つまりさっさとあの数字をゼロにして倒さないといけないと???

 

さらにそして現在進行形で俺たちから徴収し増えていく数字を忘れちゃいけない。

今回俺たちが用意しているユグドラシル通貨はざっと1500億*4を優に超える…

所持金が存在しない傭兵NPC分は徴収されないとはいえ全部取られるともう何度復活してくるか考えるのも嫌になるわ!

 

ただでさえ今表示されている数字が何千億を超えているというのになぁ⁉

因みに全体攻撃の金貨の波が3億で、モンスター召喚が一セット10億だ。他にも強烈な攻撃には金貨を消費するためじわじわ数字は減っているとはいえこれは…

 

てか、モンスターを召喚するのにも金は掛かるんだよ

 

つまり今俺の財布から金が消え続けてるって、わけっ!

 

金の切れ目がなんとやら…金貨が尽きれば間違いなくゴズの召喚モンスターにパーティごと飲み込まれる

終わりの見えない持久戦が始まった

 

 

 

「とっとっと消えろ!!」

 

それから苛ついた御曹司の声とともにゴズを魔法が襲う。

 

「うぐっ⁉ですがまだまだ金貨は残ってます」

「ほら復活するまでこれでも食らっていてくださいゴールドラッシュ(金貨の波)

ゴズは最後っ屁として全体攻撃をバラまき死亡した。

 

「ちぃ…タンクに資金補給役を張り付ける。帝は良いとしてアーミーは姉、俺はその他の残金を注視する」

「了解!俺もこのままだとスクロールがなくなる。使える召喚のスクロール持ってる奴いたらくれ!」

一番状態異常を受けて資金とHPが枯渇するタンク役へ御曹司が金貨を供給、ついでに金貨が尽きそうになった場合メンバーへ供給する為の役を買って出た。

その間に俺はみんなからスクロールを受け取る。

 

「あっ、さっきカジノで当たったやつがあるよ」

「俺からも渡しておく、あとどれくらい指揮できそうだ?」

「ん~、まぁこれくらいなら2〜3時間は余裕よ」

ピエロたちからレアなスクロールを受け取り御曹司からは時間の心配をされた。

 

まぁこれくらいなら余裕よ、伊達に頭を弄ってないさ。

22世紀なんて金持ちはみんなデザインベイビーとして遺伝子を弄っていることが当たり前、そんな中で頭を弄ったって明言するくらいにはイカれてるからねうちの一族。

色んな意味で公開できない技術だよほんとに

 

おっ、このスクロールのモンスター珍しい全体バフ出来る奴じゃん。

戦闘終わっても残ってたら複製しよ♪いやぁ、出しているだけで効果があるヤツって当たりなんだよね~

そんなこと考えているうちにゴズが復活した。

 

 

「さぁ勝負はこれからですよ」

もう何度目となるのだろう何事もなかったかのようにゴズがステージに現れた。

 

 

 


 

「ふふっ、お強いですね…しかしその攻勢も何時まで続きますか?」

何度も倒されその度復活してくるゴズ

 

「おめぇ、いい加減に負けを認めな!だせぇぞ」

「最後に勝てばいいのですよ…お金が尽きない限り私は不滅なのですから」

「それにあなた達も余裕が無くなってきているでしょう?『散財』のデバフで資金は徴収され続け召喚されるモンスターに払うお金もそこを尽いてきているはずです…尽きるはずですよね?」

「……あれ?」

 

 

悟空と強面にぼこぼこにされながら嫌みを吐いてはタコ殴りにされているゴズ…ほんとウザい。

 

コイツのやってることを羅列すると交換不可ヤドリギまいて元気のかけらゾンビアタックしてくる。

なんだ この 酷い姿

 

「ダンジョンのボスの姿か? これが……」

 

 

このコンセプトを考えて実装しやがったクソ運営は切に〇んで欲しい…

開発もやばいと思ったのかゴズが復活する度に最大HPが削られる仕様で…このおかげで火力は足りている。

 

が、戦闘開始から二時間経過しているダンジョンに入ってから4時間が経過している。

…いい加減疲れが出ているメンバーもいるし、婆さんとか兎っ子とかにはちょっとした拷問だろこれ!

 

つうか何が召喚し放題だ!

こんなにモンスター呼んでたら金貨より先にスクロールが無くなるわ!

1パーティで数百枚も持ってる訳ねぇだろうがよぉ!

金勝負に持ち込みたいならそういうところ考慮しとけよクソ運営ッ!!

 

はぁ…散々愚痴ったがそろそろスクロールが切れてきた。

戦闘でほぼ出番がない生産職組が分析した結果、資金がない状態でゴズの攻撃を受けると『散財』のデバフの代わりに特攻として火力が上がるみたいでね

ヘタするとゴズの攻撃全部に特攻が乗るなんてこともあり得る。

逆にいうとそれくらいアイツの素の攻撃力が低いってことでもあるがその条件を満たしてしまえば一瞬で終わるのは俺たちだ

 

 

「ふふっ…良い表情になってきましたね。それも仕方ありません!しょせん世の中金が全てッ!」

「貧乏人にとって一度しかないチャンスだろうと金持ちならばチップさえ払えば幾らでも挑戦できるうちの一つでしかないなどこの世にはザラにあるのですよ!!」

ニタニタと嗤いながら披露している俺たちを眺めるゴズの戯言を無視

 

「…アーミー、スクロールの在庫はどうだ?」

「あと三回分ってとこ。幾らこいつの体力が元の20%も無くなったとはいえ倒し切るのは無理だな」

「そうか、全体に金貨を配っているギースの所持金も切れてきたようだし始めよう」

御曹司やピエロたち数人が戦闘から離脱した。

 

「諦めもつきましたか? ふふっ、あなた達は頑張りましたよ。ほんとに私が一体何度蘇生したことやら――」

「あれ?全員所持金をカンストさせていたとしてもこれだけ時間が経てば破産している…あれ?」

 

なんか呟いてるゴズからの攻撃が緩んだ

 

「なんで言われてもな」

「見せた方が早いよー」

「それもそうですね」

 

そうこうしているうちに御曹司が懐から一枚のカードを取り出す

 

ゴズの顔が引き攣った

「そ、それは…まさか…ッ⁉」

目の前にあるそれが信じられないのか震え声で聞いてくるゴズ

 

 

まぁそれもしょうがない。

こんなとこ(大衆用ゲーム)でお目にかかる事なんてないからな

 

御曹司が取り出したものは一世紀前から変わらない名で今まで存続してきた。

漆黒の、限られたものしか持てないカード

その名を―――

 

「ブラックカード」

 

 

そんな貴重なカードが何枚も掲げられた

 

 

さて知っているだろうがユグドラシルは世界観をこれ以上ないほど重視するVRMMOである。

それがユグドラシルを数々のVRゲームを押しのけて頂点に立たせた原因であり凋落させた原因でもある。

そんなユグドラシルは当然のように世界観に準じた縛り要素が多い。

 

例えば最初に種族を選択してしまうとその種族設定に準じたクラス構成にするしかないし、人間種から亜人種や異業種に変化することはできるが異業種は人間種に代わることはできない。

上位の職業を取得する為には必ず獲得条件にある下位の職をカンストさせなければならないし、上位のアイテムを作るには専用のアイテムや職人を集める必要がある、ストーリーも全て明かされていないだけで一貫性をもちメタ読みで隠されていたクエストやダンジョンを見つけることもある。

 

 

つまりユグドラシルでは何かを得るためには必ずスタミナだったりアイテムだったりを消費しないといけない訳で

 

だがそんなユグドラシルに一つだけ明らかに世界観にそぐわないものがある。

だってそうだろう?

どこだろうと(・・・・・・)虚空から現れ、何時でも(・・・・・)プレイヤーなら使えて、質量保存の法則に反してアイテムを増やせる(・・・・・・・・・)

 

世界観を最重視しているユグドラシル運営でさえそんな摩訶不思議であり得ない現象を受け入れざるを得なかった。

 

その名も――課金ガチャ

 

無から有を生み出せるということは勿論。ユグドラシル金貨も生み出せる訳で…

 

まぁそんな訳で

ガチャ大会の始まりだ

 

 

「でたアイテムは例の家具を除いて全てギースに送れ。アイテムBOXで換金する」

「スクロール出たら俺にくれ」

 

「はい」「分かった」「あいよー」

「相変わらずチカチカするねぇ…」

戦闘で役割が少ないメンバーがガチャを引き始める。

 

「はっ?いや、まっ…!――させませんよ!」

ゴズが金貨の波で邪魔しようとするが――

 

「お前の相手はおらたちだ!」

「おれも温まってきたぜ、くらえよおらぁ!」

悟空と強面がゴズを攻撃してその隙を与えない

 

「店しまいだ。もってけ!」

俺も今手元にあるスクロールでモンスターを召喚して相手の召喚モンスターたちを攪乱する。

 

 

あっ因みにピエロと御曹司はガチャ大会に強制参加だ。

理由?そんなの決まってるだろ?

 

「どっちが良いの出すか勝負する?」

「…今はそんな場合ではない」

「そうだね、でも今は御曹司が大活躍しちゃうよね。いつもの外れアイテム*5が必要なんだから」

ピエロの悪気ZEROの煽りにこめかみを引く付かせる御曹司

っぷ…笑わせるなよ操作がもたつくだろw

 

「…その喧嘩買ってやる。あ”ぁっ?」

「っ!あははっ そんな、10連で…外れアイテム何個も出すことあるぅ?」

「~~~ッ⁉」

 

「ってピエロそれ流れ星の指輪じゃない!闇鍋だから過去のピックアップもでるって聞いてたけどほんとにでるのね…」

「うん過去のも結構出てくるよ。ほらセラフィムの田楽さんも過去のアイテムが必要になって引いてたし」

「あぁ、あのユグドラシルの課金額の単位を作った人ね…あれは引いたっていうより出したって言った方が良い気がするわ…」

「あれ、見たことない指輪だなぁ。まぁいいやギースに渡して」

「待ちなさいよ!それってウロボロ…」

 

あ”あ”あ”~~ッ!

「うるさいねぇ…今欲しいものが引けてるなら良いじゃないかい」

「…あはは、また引けるから頑張ろ白夜!」

 

「あぁ…あぁぁぁ~ッ!」

 

…前と後ろから絶叫が聞こえてくる

半狂乱になってガチャと攻撃している御曹司とゴズだが甘い

 

「あまり美しくないな。君がこの場所のボスだというならもっと華麗に美しい、そういうもので在って欲しいかなっ!」

「……っ!こんのぉ~!」

 

「へぇこのモンスター召喚できるようになったんだ。ほんと何も言わずに追加するからなー運営」

贈られてくるものの中から最近召喚モンスターに加わったラインナップを眺めているうちに準備は整っていく。

 

 

「ケジメはつけて貰うぜ」

「こんだけ長い間戦ってんなら火力はカンストしてんだ、よっ!」

相手からダメージを貰うたびに火力が上がるアヴェンジャーの特性を持つ強面の通常攻撃がゴズを薙いだ。

 

「くそっ!ゴールドラッシュ!」

HPを全損したゴズが消えるまでの間に全体攻撃を仕掛ける

 

「全体攻撃がくるぞ配置につけ!」

「はい」「わかった」「あいよー」

それを慣れた動きで対処する御曹司

 

奥の数字が減少し始める、が

「必要なものは揃えたな?」

「おぅ」「カンストさせたよ」「充分ですね」

 

俺も補充されたスクロールを見ながら声をかける。

「充分だろ?あとはまたゴズを倒して復活する間に補充していけるだろ」

 

「残り時間は?」

「あと2時間は持つ」

「ならいい」

 

 

「まだだ!まだ私の財は残っています…」

そう言って怨敵を見る目で俺たちを見てくるゴズ

 

「そうか」

その様子を静かに見つめて

 

「奇遇だな俺の残高もまだ残っているぞ」

「……っあ」

 

 

 

それから二時後ステージに立っていたのは

 

「終わったか」

「そうだね。じゃあ舞台の確認に行ってこよう!」

「今からか?ってあいつ…」

御曹司が振り向いたときには走り去っていたナルシスト

 

「元気ですね~いやぁあの若さを私にも分けて欲しいかもしれません」

「本当にねぇ…この長丁場は老骨には堪えたよ」

「んふぁ、眠ぅ…ってなんで二人してこっち見てるのよ⁉」

「気のせいですよ」 「キヒヒ…帰ったらちゃんとご飯食べてよく眠るんだよ」

「だからその生ぬるい目はなんなの」

 

疲れた頭に兎っ子の声はよく響くなぁ

 

「お疲れさまアーミー」

「ご苦労さん。さすがに疲れてるなぁ」

「そっちもお疲れ。4~5時間ぶっ通しだったからな…いや俺が居たから良かったけど復活してくるし難易度バグってただろこいつ」

 

ピエロと強面が労わってくれる。

ずっと頭使いっぱなしだったからぼーっとするなぁ

 

「まっ、そんなことより飯だ飯!感じねぇけどめっちゃ腹減ってるんだろな~」

「だね、初めてのギルド拠点なんだから見て回りたいけど…アクティベートだけして解散かなぁ」

「そんなとこだな。おーい御曹司~」

 

「あぁ分かっている。諸々の確認は後日するとして窓際拠点の登録をして…」

「ひゃっはー!見てよみんな‼この攻略報酬の量ッやばくない?ていうか使った分のユグドラシル金貨も返ってきてるからここのギルド拠点の残高とんでもない事になってるよ‼?」

 

「…ってアレ?」

「「「「「「・・・・・」」」」」」

御曹司が取りまとめて解散までの言葉を掛けようとしたとき報酬を確認してたカボチャが帰ってきた。

 

「このクソ瓜め…チェルシー!」

「はーいはい呼んだー?」

「確認作業を手伝え、窓際もだ。残りはログアウトするも俺たちに付いてくるも施設を確認するも自由にしろ」

 

 

その後ギルド拠点のアクティベートだけ見届けてログアウトした。

頭使いすぎてシナプスがきゅるきゅる言ってるよ

 

あー、それに初のギルド拠点獲得を記念してリアルでオフ会を開くって言ってたから準備しないとな

忙しいぜ全く

 

*1
国家反逆罪

*2
時間稼ぎ目的のギミックやダンジョン内での罰則金や次の層に進むためのゲームの掛け金がやたら高いなど

*3
数学的な掛け方。実際のカジノでは禁止されている場所も多く露骨にやってると怖いお兄さんが声(掛けてくる

*4
5億でレベル100の拠点NPCを蘇生させられる。これは廃人のモモンガでも手痛い出費しかし出せない額でもないらしい

*5
無駄に数のある換金アイテムシリーズ高く売れる

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