書く習慣付けないと二話構成で次は早めに投稿できるはず
リアルの主人公陣営の紹介回です
クロスかオリキャラしか出てこないので興味ない方はごめんねm(__)m
小奇麗な店々が立ち並ぶブティック街
富裕層御用達のこの地区は心地よい気温が維持され行きかう人もアーコロジーでも上品で落ち着いた人で溢れているエリア
そんな場所に相応しくない荒々さを纏った男たちが数人
「あのアマどこ行きやがったッ!」
「逃げ足だけ早ぇ…捕まえたらただじゃ」
「おい、このままじゃ女ひとり捕まえられないって烙印をおされるぞ――意味分かってんのか⁉」
荒くれものの苛立ちの混じった怒号が飛びかう中、無線からある声が届く
『…
『『『『はっ!』』』』
その絶対的な命令を境にあれだけ浮足だっていた男たちが規律だって捜索していく……姿が遠くに見えた。
「なんだってのよ!もうっ‼」
傍受していた無線から聞こえてくる追跡者たちの声に思わず受話器を叩きつける。
私はチエル・アメリ―。
欧州を中心にして世界でも名の知れたアパレル企業一家の直系でここ東京アーコロジーの責任者をしている。
多くの職人を抱えることでオーダーメイドに対応しており富裕層間でのブランドを確立して、ある程度政治に顔を利かせられる程度には影響力を持つ企業の支部長。
元々は日本アーコロジーの内情を探るために派遣された欧州諜報機関一族でアパレル会社経営はおまけだっだんだけど…
今では本業と副業が入れ替わってそっちとの繋がりも薄くなっている。
まぁ薄くなっているとはいえそっちの仕事をしていない訳ではないんだけど…
そうしているうちに持っていたランプの灯りが一つ消えた。
「ヤバっ!」
このランプは私の所有しているダミーの拠点の深部へ侵入者があった時に消えるようになっている。そしてこのランプが先ほどからどんどん消えている
一つ二つなら敵対企業の嫌がらせもあり得るけど…こんなに効率的に潰されていくのならもうプロの組織が動いている。
それも一企業の仕業ではなく
そう幾ら人数を集めたところで私に無線を抜かれる程度の素人の追跡が私がここまで追い込められる訳がないのだ。
「てか、なんで私が狙われてるの?それも規模からして相当な人数が動いてるはず――」
アジトが潰された際に手に入れた手がかりから相手が欧州アーコロジーであることは分かった。
だけど他所のアーコロジー内でこれほどの人数を動員してまで私を捕獲しようとしている意図が読めない。
心当たりがあるとすれば例の任務だけど…
「まだ任務中よ⁉」
「しかもやっと本人に接触出来るってところで邪魔してくるって…マジ意味が分かんない!」
欧州アーコロジー同士の戦争で切羽詰まってるのか他のアーコロジーからの支援しろなんて馬鹿げた指令が届いたのがもう1年前。
それで元は欧州の間諜一族だった私にもそれの指令(無茶ぶり?)は届けられ、流石に一つのアーコロジーから目を付けられるのは面倒だし協力する姿勢だけは見せとこうと影響力をもつ人物を探してたら見つけたのが我らが御曹司こと十神白夜。
東アジアのアーコロジーを牛耳る財閥の御曹司が何故か大衆向けのVRMMOなんかをしているという真偽不明な情報を確かめる為に実際にユグドラシルにログインしてみたら…マジで本人が遊んでたっていう衝撃の事実からショートした頭を再起動させ戦略を練る事2週間
今や本業となっている会社経営とかやること色々あったけど日本どころかアジアにまで影響を及ぼせる財閥の次期党首とコネを持てるかもしれないとあらばやることは一つ
というか仲間内で戦争し始めた落ち目の欧州のアーコロジーより十神財閥に付いた方が良いし、仮にそんな関係にならなくても彼とコネを持てるなら…
と白夜とのコネクションを繋ごうと画策してようやく本人に直接接触出来る機会を得たのが先日。
おっしゃ気合を入れてくぞーと仕事を調整していた時に突然の襲撃が来たという訳っ!
表面上は全力で白夜にコネを繋ごうとしているんだから欧州アーコロジーへの叛意がバレルわけないし、私が裏切ろうとしていてもだからといって他国でこんな大規模に行動してくるのはリスクもコストもかかり過ぎる。
というか何をしたら現在戦争真っ只中の欧州第アーコロジーが本腰を入れて昔所属していた一スパイを潰しに来るの?
もし私が欧州アーコロジーから国家反逆罪として認定されていてもこんな大規模に追われることはないはずなのにっ
じゃあ欧州勢力に見せかけた白夜側からの追手?
もし仮に白夜に私の下心がバレていたとしてもここまでされるかと言われるとNOだ。
幼少期から自分を利用しようとしてくる相手はごまんといたはず…よくも悪くも私だけこんな対応される理由がない。
――ぶっ殺してでも私とは会いたくないってんなら話は変わるけどね!
ユグドラシルでちょくちょく煽ってたけどそんな事で殺しに掛かってくるほど短気ではないでしょ!常識的に考えて⁉
てことで反撃の機を見図るためにも一時的に白夜に身を隠して貰おうとオフ会に向かっているのが今
「チエル様、準備が整いました」
「よし、行くわよ…って亜美、その恰好は――」
よく私が使っている服へと着替えている彼女を見て、悟った。
「~~~ッ!ごめん!」
「いえ、私の命はあなたに拾われました…あなたに幸運があることを」
そう言って他の使用人たちと車に乗り込んでいく。
私は暫く離れたところから別人へと変装してタクシーを使って向かう。
まさか私が1人でこんな無防備なものを使うなんて考えもしていないだろうし、欧州からのスパイは堂々と交通規制なんて敷けないから
反対の方向に進み敢えて大通りでタクシーを拾う
『どこまでですか?』
「港区のリゾートエリア手前まで」
『畏まりました』
人工音声とともに目的地が表示され静かに車が動き出す。
「まだだ…」
東京アーコロジーだって間諜組織はある。
今欧州のスパイが表立って動けていないのもそれが理由。彼らの狙いは私なんだから亜美たちが捕まっても情報を吐かせるために命までは取らない…その前に奴らを制圧すれば彼女たちを取り戻せる。
ここは白夜の財閥のお膝元。彼の協力を得られれば今ある全ての盤面をひっくり返せ…る
あれ?ここ数日の緊張が解けたからか、眠気が…
てか、あの素人集団はなんで私追ってきてるのよ‼
あれが、無かったら…もっと楽だった……のに
うつらうつらする中、カチカチと電子音が鳴って…
ディスプレイに表示された行先が変わっていくのが見えた
「いやぁオフ会楽しみだな~」
俺がこんな風に出掛けることなんて年に1~2回ほど偉い人たちに顔見せにいくのを除けば会社のレクリエーションの確認の為に現場に行ったくらいだからな
つまり殆ど出かけることがない。
ましてや違うアーコロジーに行くのは富裕層でもなかなかないんだよね
旅行費とかアーコロジー間の関係とかもあるけど場所が違ったら自分の権力が全く及ばないことがあるからね
「っと同調完了…おはよ」
脳の処理が負荷が掛かり完了したことが分かる、起き上がって来た人影に話しかけた。
「…あぁ、おはよう。はぁ毎回思うけど性能低すぎるだろコイツら。もっとマシなの用意してくれよ」
「悪い悪い。でも残ってるのでマシなのがそれくらいだったんだよ」
「なら仕方ないか…バック取ってくれ」
「はいよ、最後の晩餐楽しんでな~」
「言い方ぁ⁉」
ツッコまれながら必要なものが入ったバックを渡し俺は自分を見送った。
「化粧よし!ドレスよし!」
「今日の為に色々と準備したんだもの情けない姿は見せられないわ」
ユグドラシルでのオフ会当日待ち合わせ場所で着飾った自分の姿を見て気合を入れる。
「でも流石に緊張するわ…あのビルって国際会議とかでも使われてる超一流のリゾートエリアじゃない」
「私あの辺り行ったことすらないんだけど!」
幼い時から周りの子供も大人も私のご機嫌取りをしてきた。
そんな環境に置かれ続け肥大化した私のプライドを粉々に砕き、今までの価値観を一変させてくるアイツら。
会社の名前を出しても微動だにせず、逆に何気ない会話でけちょんけちょんに凹ましてくる天上人ども…
分かってる。あいつらからしたら私なんて取るに足らない小娘でしかないって…
でも私だって意地がある
無視されたままじゃ終わらせない。会社を継いで大きくしてアイツらの視界に入り込んでやるんだ!
今日はその第一歩
何も期待してないだろうアイツらに立派な淑女なんだって見せつけてやる!
その為にお父さんに言って衣装やリムジンなんかも最高級のヤツを借りてきた。
ふふーん、我ながら良いデキじゃない?
ドレス姿でリムジンにお婆ちゃんを招き入れるところを想像する。
『どうぞ会場まで案内するわ』
『おや、これはご丁寧に。ありがとうねぇ
『ふふっこれくらい当然よ。ホストとして案内することだってあるんだから‼』
「見違えたよ、最近の若い子は偉いんだねぇ」
よしっ、これでいつも私を子供扱いして構ってくるお婆ちゃんだって見直してくれるはず
(コンコン)
「お邪魔するよ。――おやおや、ドレス似合っているじゃないか」
一目でオーダーメイドと分かる衣装を着た老婆が入ってくる。
「は、初めまして桜井理事。本日は私が案内を務めてさせて頂きます。車を用意しているのでそちらまで…」
衰えた身体に見合わない眼力に少し気おされながらも挨拶をする。
ちょっと噛んだけどこのままエスコートして…
「おやその車でいくのかい?」
「えっ?」
何か間違えた?
おばあちゃんの言いあぐねているその姿に少し不安になってくる。
「あそこ車で行くと検査厳しくて時間がねぇ…」
「そうなの?」
思わず素で聞き返しちゃった私にニコリと笑うと。
「ふふっ、そう肩ひじ張らなくていいさ。今日はゲームの友達とのオフ会なんだからね無礼講さね」
「…分かった。えっと、どうしよう?」
「ヘリをチャーターしてきたからそれでいいよ。ほら屋上まで行くよ」
「えっヘリ?チャーター?」
混乱したままお婆ちゃんについていくと10人以上乗れるデカいヘリが止まっていた。
凄い大きい⁉てか初めてヘリコプターに乗るんだけどぉ!
「来ましたね。おっと様になってるじゃないですか。見違えましたよ」
座席で本を読んでいる小太りなおっさんから親し気に声をかけられた。
「えっ誰?」
「ははっ、窓際ですよ窓際。行先も同じでしたので桜井さんとお話ししながら来まして」
「有意義な話だったね」
「えぇ私としても悪い話ではなかったです。これからもお付き合い宜しくお願いしますよ」
「ふぁわ~~♡」
乗り込むと身体が座席沈みこむ。借りてきたリムジンも凄かったけどこの座席も凄い…なんていうか、その…ふかふかだ。
ヘリの音も気にならないし、外をみると町が小さくなっていく…
あっ、あそこ私の家!
(…すっ)
外の景色に目を輝かせていると生暖かい視線を感じて振り向く
温かい目で様子を見守っている二人と目が合った
「ち、違うから!」
顔が熱い。でも二人のこんな視線にも耐えられず否定の言葉が口をついてでる。
「はい、分かってますよ」
「私たちしかいないんだからもっと騒いでいいのにねぇ」
そんな二人の親戚の子供がはしゃいでるところを見るようなほほえましい視線に耐え切れず
「そんなんじゃないからーッ!」
空に少女の叫び声が響いた。
風が頬を撫でていく。
「ん…っ」
ぼんやりとした意識が徐々にはっきりして…
台風もかくやといわんばかりの強風が吹きつけられる
「いや、息苦しいわ、よ!…ってなにこれ!?」
跳ね起きようとしたけどミノムシみたいに糸で身体が縛られていてほとんど身動きが取れない。
かろうじて動かせる首を動かして状況の把握に努める
とはいっても私が捕まっている時点で答えは一つしかないだろう。
あのヤクザみたいなやつらに捕まっている方がまだ出し抜ける芽があって嬉しいけど…
と思いながら周りを見回す。
拘束で流れていく景色、吹っ飛んで見遠しが良くなった天井、散乱した窓ガラスに窓枠、助手席から見つめてくる男性…
「あっ、お姉さん起きた。この車の行先ってどこなのか知ってる?」
「えっと…港区の十神リゾート…」
「それなら良かったーいや東京湾って書いてたからもしかしてと思ってたんだよね。いやぁ助かったなー」
この混沌とした状況の中でまるで明日の天気を聞くように訪ねてくる男に普通に答えてしまう。
「いや待って待って!ちょっと状況に頭が追い付かないんだけど!!」
「てか、東京湾⁉ほんとだ行先が東京湾になってるんですけど!」
よく見ると私の全身を縛ってる糸も水に30分くらいで溶けてくるのものでそういう下着とか衣装に使われたりする。あと裏の業界では自然な溺死に見せかける為に使われたり……っ!つまり
沈められる!車ごと東京湾にフライアウェイさせられるぅ⁉
なんとか脱出しないと…ってあれ?
「あんたどうしてここにいるの?」
よく考えたらおかしい。いやおかしいことだらけだけど!
私を拘束してることを考えるとタクシーを停車させる訳がないのよ、そのまま海に落とせばいいから!
じゃあこいつはどこから入ってきたってことになる訳で…
「えっと…上から?」
彼は困ったように笑い隔壁に閉ざされた空を指さした。
もう見ることのできなくなった美しいオーシャンビュー
全面にわたるモニターでそれを模したリゾートの一角でチェアに寝そべる男が居る。
50近いのにもかかわらず荒事になれた雰囲気持つ男はジュース片手に連絡を受けていた
「キャップ、隆志が帰ってきましたがいかがしますか?」
「おぅ帰って来たか…ってチェルシーのやつに面白いようにあしらわれてんなぁ」
受け取った彼女の逃走経路に部下の捜索内容を見比べて一人ごちる。
そこには自分の部下の捜査記録に加えてチェルシーたちの逃走経路、欧州のスパイたちの足取りまで全てが網羅されていた。
「キャップから仕事を貰っておいてこの体たらく…ケジメ、つけさせますか?」
「いらんいらん。元から保険でやらせてただけだしなアイツにゃ良い経験になるだろ。まぁ本人がどうしてもって言うならペナルティ代わりに出航の準備させといてやれ」
「分かりました」
連絡も終わり、俺もそろそろ会場への準備するかと立ち上がろうとした瞬間…一面海の景色を映していたモニターが切り替わる。
映る光景は首都高を走る一台の車…そうチェルシーたちが乗ってるタクシーだ。
「あぁどうなってんだ…てか誰だコイツ?」
簀巻きにされた彼女の姿が
が、知らないうちに搭乗者が増えてるし車の屋根が吹っ飛んでる。今回の一件に噛んでいた男としても意味が分からない状況だった。
「で、これはどういうことだ…まさか道端で手挙げてたから乗せたってんじゃねぇよな?」
『まさか、乗って来たんだよ80キロで走ってる車にな』
心地よいBGMを奏でていた機械から知らない男の声が応えた。
「はぁ?そんなこと出来る訳ねぇ――とは言わないけどよ。…どうすんだこれ、このまま落とすのか?」
『それなんだけどさぁ。一緒に乗ってるのピエロなんだよなぁ』
人の命が掛かっているにも関わらずまるで今日の献立でも決めるか如き態度の二人
「はぁ!?助けにきたってのか?てかこいつがピエロなのか―――若っ!?」
『彼女とは無関係っぽい。偶々チェルシーがいた車に乗り合わせたってとこ』
『で、ここからが相談なんだけどさ……』
貸し切りのリゾートで声を潜めて話す二人。
暫くして男の声が響いた
「…凄い」
周りから漂うのは高級な合成試料などで使われている合成されたものではない本物の食物の香り
左奥に取り付けられたステージからはオーケストラのまったりとした演奏が為され、一歩踏み出せば下に引かれて居る絨毯が程よい反発を帰してくれる。
少女の口からは煌びやかな会場に感嘆の言葉しか出ない。
…とはいえそんな贅を極めた会場も慣れている者たちにとってはいつもの日常と変わりない
「なんだい…まだ半分も来てないじゃないか」
「御曹司さんは兎も角、帝さんが来てないのは意外でした。てっきりショーのリハーサルでもしていると思っていたのですが」
お上りさんのように周りを見回している兎っ子と違って大人二人は会場ではなくメンバーが全然集まっていないことを見て考察している。
しかし逆に言えば数人は集まっているということであり…
「お嬢さま、こちらを良いかがですか?」
「えぇ、ありがと――ッ!」
そこにいたのは白いベストを羽織った貴公子がグラス片手に微笑んでいた。
「こういう場所は初めて?」
「あっ、あの…そうです」
肩が触れる距離まで自然に迫られ口数が少なくなってしまう
それもそのはず…この男とにもかくにも顔がいい。
よく恋に落ちるという表現をハートを射抜くと言われるが…この男の場合だと顔面偏差値という棍棒でぶん殴ってくるという表現が相応しいだろう
今も乙女心を滅茶苦茶にされた少女が話しかけられてどもりながらも言葉を返すことしか出来ていない
「そんなに肩に力を入れないで…といっても難しいよね。実は僕もこんな凄い会場に来ることなんてないから少し緊張しててね」
「お兄さんも緊張してるんですか?」
「うん、凄いしてる。それにね今日集まっているのは僕なんか及びもつかない凄い人ばかりだからなにか失礼なことがあったらと思うと…怖くて」
先ほどまでの王子様然とした雰囲気が一変…心細そうに呟く貴公子の姿に私と同じだという共感が湧いてくる。
「あ、あの!」
心細いのは私も同じ…だから一緒に回ろうと声を上げようとしたとき
「はぁ…全く悪い男はお呼びじゃないよ」
荷物を預けて帰って来ていた老婆が割って入った。
「これはマダム、悪い男とは手厳しいですね。紛れもない本心だったのですが…」
「そ、そうよ!私たち普通の人にとってこのオフ会がどれだけ重いのかおばあちゃんには分からないわよ」
貴公子の前に立って老婆から庇っている
「すっかり取り込まれてるねぇ…ほれ頼んだよ」
深いため息をついて窓際を呼ぶ老婆
「ここで私に振りますか」
いつの間にかすっかり中間職の悲哀を漂わせている窓際が少女の後ろにいる貴公子へと話かけた。
「――では、《じゃっく》さんお会いするのは初めてですね。これでも鈴木財閥の末席を頂いてる鈴木三郎、プレイヤーネームは…まぁいつも通り《窓際》とお呼びください。今日はよろしくお願いします」
「ご慧眼恐れ入ります。その通りユグドラシルでは《じゃっく》の名で遊ばさせて貰っています。本名は源清隆、日本アーコロジーの歓楽街を受け持っております。若輩者ですがよろしくお願いしたします」
「ふぇっ?」
あっさりと庇っていた少女の横を通り過ぎて名刺を交換する貴公子。
アーコロジーの中でも金が回る歓楽街の取り締まりという言葉に動揺が隠せていないのもそうだが。さっきまであった儚げで弱い雰囲気は無散し、高級感溢れるこの場の空気をものともしないオーラを纏い出したのだから
「だから言ったろう?悪い男だってね」
ポカーンとした少女の頭を老婆がぽんぽん撫で再起動させる
「えっ、待って!あなたが《じゃっく》?あの空気読めない炎魔法狂いのカボチャ~~!?」
「はい、そうですよ。今日も村を燃やしてやるカポ《らびー》も手伝うカポ~♪」
「あぁ~~!その顔でアイツと同じセリフ言わないでイメージが⁉なんか脳がバグりそう?!」
「ふふっ、はい。同じことを御曹司さんからも言われてしまいましてね…それで今日は営業モードで過ごさせてもらっている訳です☆」
目の前の王子さまがあの空気読めない放火魔だという事実が飲み込めなかった少女の本日二度目の絶叫が響いた。
(そわそわ)
「なんなのよ、もう!」
貴公子の幻想を壊されてブロークンハートな兎っ娘は頭を整理するために壁側に避難していた。
仲間が居たと思ったら向こう側だし、なによりあの貴公子があのカボチャという現実に頭が痛かった。
《じゃっく》も今は当然のように《窓際》と《銭婆》と話しているし…やっぱり自分だけ場違いなんじゃないかって思ってしまう。
(そろり…そろり…)
そんな落ち込む兎っ娘に向かう影が一つあった。
その影は現実逃避している兎っ子の前まで来ると…
不思議な呪文を唱えた。