このッ…クソ運営がぁぁ!   作:mnomno

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遅れました。
色々試してみたけどあんまり面白くならなかったです…精進せねば


不毛な話し合い

 

三修の看守ギルド拠点

 

三修の看守のギルド拠点はサバンナのような草原が広がる原野だった。

川や砂漠、密林のような環境の違うフィールドがあり、ギルド拠点内に入ると外からは考えられないようなだだっ広い敷地を誇っている。

 

ただ元がそこまで攻略難易度の高くないダンジョンだったこともあり階層は2層だけで

強化はされているのだろうが守護者も元のまま、各エリアにぽつぽつ置かれているといった程度であった。

 

 

そんな荒野のど真ん中で行われている御曹司とギルド長たちの会談はすっかり硬直状態に陥っていた。

 

「そこのギルドに兎っ子が登録されているだろう、脱退させてそちらにある装備を返して欲しい、礼はする」

御曹司から端的に伝えた言葉を聞いたシッガイたちは「確認できていない、そんな装備は知らない、わざわざ時間取ってやったんだからそれくらい寄越せ」という問答を繰り返すばかり。

 

「お前らなぁ…!」

「落ち着け。乗ってやるほどのことでもない」

 

それもそう。シッガイたちは元からまともな交渉をする気がないのだから

 

だから御曹司がシッガイたちがやっていることのユグドラシルへの悪影響や、多少のアイテムを融通するから今すぐ手を引けさもなくば討伐隊が組まれる…

など妥協点を探ろうとして飴と鞭を使い分け交渉しようがシッガイ達からの反応は無しのつぶてだった。

 

このような相手にも長けている御曹司は兎も角、護衛として着いてきた強面はブチ切れそうになっていた。

 

それもそのはず何しろここはギルド拠点のど真ん中。

外からギルド員以外がくればすぐ分かるようになっている上、御曹司と強面以外の周りを十数人の各ギルドメンバーが取り囲み、挑発的な笑みさえ浮かべているのだから。

 

「それで確認は取れただろうか?ギルドのコンソールを確認しに行って30分は経つが」

 

そんなアウェイな中でも普段と何も変わらない御曹司の態度に苛ついたのか、シッガイの隣に立っていた二人が前に出てくる。

 

「ごちゃごちゃ煩せぇんだよ!しらねぇって言ってるだろ?」

「状況も分かってないのか?これだから人を道具としか思ってないボンボンはよ!」

「見逃してやるから、さっさと渡すもの渡して帰りやがれって言ってるんだ」

 

キレて突っかかってきた男は御曹司にガンつけながら不平不満をぶつける。

 

「お前らお偉いさんは良いよな。座ってるだけで金がもらえんだ。必死な思いして働いてる俺らのことなんか指先一つで使い捨てて、それでいて俺たちの何十倍って奪っていきやがる」

「俺たちは限られた時間使ってこんなゲームでちまちま小銭稼ぎしてるのによ。それがどうだ?見てたぜあの三周年のイベント…お前らのとこの奴が一位だったよなぁ?」

「そうだギルドメンバーのアーミーが一位を取っているな」

 

寛いだまま御曹司が答えた。

 

「なぁ、一体幾ら掛かったんだ?あの数日で俺たちが一生かけて稼げるか分からないような金が湯水のように消えていったッ……!」

「あぁ、信じられなかったよ。こんなことがあっていいのか?俺たちはこんなゲームの世界ですら普通に楽しむことが出来ないのか」

 

男の慟哭に賛同するようにヤジが飛ぶ。

 

「ふむ」

御曹司と強面は彼らの言葉を正面から受け止めた。

 

 

「なぁ、どうせお前らは遊んでる今だって口座には勝手に金が貯まっててるんだろ?」

「なら良いじゃないか少しくらい…俺たちにも分けてくれないか?そうだな300万で良い」

 

「断る」

そう提案するギルド長たちにきっぱりと断言した御曹司。

 

「はっ、どうせお前らに取っちゃ端金なんだろうが」

「そうそう、今日を生きるのも大変な俺らに恵んでくれよ」

「知ってるぜ。お前らアーコロジー上級層ってのは一回遊ぶのに数十万、数百万って金出すんだろ?なら良いじゃないかこの程度」

 

「大体ユグドラシルは自由がもっとーなんだぜ。俺たちがやってることも運営が動いてないんだから少なくとも今は合法的なことのはずだぜ?」

 

彼らは交渉なんかよりアーコロジー上層部の人間への妬みと劣等感から、御曹司たちへ会社への不満やいちゃもん、終いにはリアルマネーをせびり始めた。

 

数人からの要求だったのがギルド全体からの要求となったとき、こめかみを二度叩いて御曹司は席を立った。

 

「否定はせん!アーコロジー内の遊技施設を貸切るとそのくらい金が掛かる。そして外にいるお前たちより俺たちの方が時間も余裕もあることは事実だ」

「「「…っ!」」」

 

ばっさりと言い切られた事実に周りにいたモノたちが怒りに言葉を詰まらせた。

「なら寄越せよ!お前たちが俺たちから奪った分の金も時間も全部な」

 

「甘えるな!」

 

「アーコロジー内、それも上層部の人間の収入が高いのは事実だ。しかしけっしてアーコロジー上層部の人間がお前たちの考えているように何もせずとも成果を得られるはずない」

「それはアーコロジーの外だろうと中だろうと変わらない」

 

「寧ろヒエラルキーが決められている下層と違って上層部ではその立場が常に流動し続ける(・・・・・・・・・・・)*1

 

「そしてその追放されコンプレックスに塗れた人間こそが、その立場を使って下層の人間を弄び、使い潰す…」

「よく心当たりがあるだろう?『相沢猛』『三宅勝司』『斎藤善助』――お前たちは特にな」

 

「なっ!?」

リアルでの名前を呼ばれたギルド長たちが絶句した。

そして自分以外の二人の反応から御曹司が確信を持って言ってることを理解させられた。

 

「ふん、責任を人に擦り付ける能力だけは認めてやろう。長い自己紹介ご苦労だったな」

軽蔑の目が三人へ突き刺さる。

 

「な、何言ってやがる!?…適当に口から出まかせ言いやがって…」

「俺たちが上層部の人間だとそんな証拠がどこに?」

「お、俺たちはアーコロジー外の人間だ。適当な名前で呼んで…」

 

わなわなと唇を震わせていたギルド長たちが叫びながら否定する彼ら…

その動揺している姿に少し周りのギルドメンバーたちも不信感を覚え始め…

 

 

誰も口を利けない空気を切り裂くように伝達役が乗り込んできた。

 

「シッガイさんッ襲撃です!!」

「…なんだと?」

 

「100以上の高レベルのモンスターが!?拠点NPCたちも駆り出していますがとても持ちません」

「ロールプレイガチ勢の護空が課金拳使ってまで暴れてます!」

 

その報告を聞いて慌ててコンソールで確認するシッガイ。

拠点との外縁部から数キロほど進んだところには大量のモンスターや金色に光る超人に押し流されるギルメンたちが映っていた。

 

「は、ぁ……?」

あり得ない光景とあり得ない報告に唖然とするしかない。

更に周りに控えていた『三修の看守』のギルドメンバーたちもその光景を見てしまいパニックになる。

 

 

「は…っ!超位魔法だ*2…超位魔法を使え!モンスターしかいないなら遠距離から5発くらい打ち込めば消し炭に出来るはず」

 

一番最初に立ち直ったシッガイがいまだ動けていないメンバーたちに指示を出し、超位魔法を使えるメンバーが急いで出ていった。

 

「ふぅ、これで…」

まだギルド員たちは浮足立っているがこの襲撃を対処してから説得すればいい。

 

 

「俺のことは放っておいて良いのか?」

 

そこには先ほどまでと全く変わらない御曹司が温度のない目で三修の看守のギルド員たちを睥睨していた。

 

 

まるで襲撃が分かっていた態度で慌てる俺たちの様子を見ている御曹司の様子に今の状況を引き起こしたのだと理解する。

 

「そうだよなぁ。このタイミングでの襲撃なんて私が犯人ですって言ってるようなもんだよな…」

「トラブルと後が面倒だと放っておいやったのによ、殺せ!リスボーン地点を変更させてレベルも装備も奪ってやる!」

 

周りのギルドメンバーたちがスキルを発動させて、リザードマンと御曹司を狙い撃つ。

 

煙が晴れた時、戦士職だけあってリザードマンは無事だったが御曹司はズタボロ。

今に消えるところだった。

 

集中砲火を浴びた御曹司の身体が崩れていく。

そして姿を維持できなくなった黒い影となって消滅した。

 

「ドッペル、ゲンガー!?」

「いつの間に入れ替わったッ!?」

目を見開いで叫ぶ三人。

 

「襲撃されてお前たちの気が逸れた時だ。そして…」

ギルド員たちから少し離れた場所に現れた御曹司がスクロールを取り出した。

 

「アーミーも梧空も囮に過ぎん。お前たちの相手をするのは俺一人で十分だ」

 

そうして取り出したのは一枚の最高級のスクロール。一回しか使えないくせに凄まじい素材と金貨を消費して作られる特製のそれは、どんな魔法でも(・・・・・・・)込めることが出来る逸品。

勿論御曹司の手に握られたそれも込められた魔法は最上級の…

 

「お前たちには過ぎたものだが…」

「俺の配下を傷つけっ貶めた報いだ…受け取れ!」

 

「はっ、馬鹿が超位魔法なんて発動させねぇよ!」

何をするのか知らないが使われる前に魔法の発動ごと潰せばいい。

ランサーのスキルで御曹司ごと貫く…

 

シッガイの投げた槍が御曹司を貫く前に、強く握りしめたスクロールが燃え尽きた。

「なっ!?超位魔法じゃないッ!」

 

込められていた魔法が数百人・数千人が収まるだろうフィールドその全域に顕現した

 

「こんな広い範囲で…あり、得ない」

「待っt…」

 

…御曹司がユグドラシルで築いた人脈の一つに魔法狂いで有名な傭兵の長が居た。

レベル100が解禁される前からユグドラシルにある殆どの魔法を収めていた傭兵

世界からその偉業を認められたその男は最上級職の解放と同時に一つの頂きを冠した。

 

己のMP上限の大半と引き換えに発動し、戦場すべてを飲み込む災禍

その名を…

 

 大 災 厄 !(グランド・カタストロフ)

 

 

突如として現れた災厄はフィールドにいたすべてのプレイヤーを飲み込み進む。

そして…その奥に鎮座していたギルド武器を噛み砕いた。

 

 

【ギルド武器が破壊されました】

【『三修の看守』『厳冬の荒野』『ニューピー牧場』はペナルティとしてギルド拠点を復旧させるまでの間全てのギルド機能が凍結されます】

 

 

 

えーっと…俺だ。

そうそう、ずっと連鎖トレインの作業をしていたんだが…

 

苦労して集めたモンスターを連れていったら、なんか凄まじい攻撃でまとめて消滅されたんですけど…

とっさにお姉ちゃんが庇ってくれたけど、俺と姉には全く効いてないってことは御曹司の攻撃だよなこれ?

でも俺が連れてきたモンスターたちはきっちり消滅したわけで…

 

こんな魔法あるならモンスタートレイン必要だった?

…必要だったんだろうな~

 

はぁ…

 

「バカな。俺たちがたった4人に…」

蘇生アイテムで蘇ってるギルドの人たちが呆然と虚空を見上げている。

 

そうだよな。

アナウンスからしてギルド武器ごと逝ったみたいだし。

バグを悪用して初心や中堅ソロとかから金貨とかアイテムとか色々と巻き上げていたとはいえ所詮は中堅ギルドだしこんなもんだろ…

同情して…

 

…いや、庇えねぇわ。何やってくれてるんだよお前ら!

ほんとユグドラシルはプレイヤーの自由度高すぎて害悪行為やりたい放題なんだよ

マジで初心者狩りしてるヤツは邪魔ぁ!

 

お前たちのせいで昔ゲーセンの格ゲーみたいな扱い受けてるからなユグドラシル‼

PK推奨するくらいなら良いけど、今のゲーム構造だと初心者狩り推奨してるのと一緒だからな!

なんで放っておいてるんだよクソ運営!

 

 

フィールドにも十数人ほどが蘇生アイテムで復活してきているが聞いているより少ない

…愛想が尽きたのかそのまま別の場所に向かったギルドメンバーも多いようだ。

まぁ、こんなのに関わり続けても良いことないし別のリスポン地点を用意していたってことが答えだろう。

 

「まだだ…!見ろアイツらもボロボロだ。碌なアイテムやスキルも残っていないはずだ!捕まえていうことを聞かせれば…」

 

諦めの悪い男が残ったギルドメンバーを集めて徹底抗戦しようとしている。

もう一仕事残っていたみたいだ。

 

はぁ…めんどいけどその諦めの悪さだけは評価してやるよ。

お望み通りすり潰してやるよゴミ共!…と傭兵NPCを呼び出そうとしたとき、知ってる声が聞こえた。

 

 

「おや、もう終わってしまったのですか?これでも急いできたんですけどねぇ…」

ボロボロになって崩れた拠点の柱から緊張感のない…とても聞き覚えのある声がした。

 

「あははっ!4人で数十人もいるギルドやっつけちゃうなんて…流石だね♪」

正しく聖女としか言いようのない恰好・容姿の女がその容姿にそぐわぬ声で笑いながら楽しそうに御曹司の傍に着地した。

 

「ユキさんや無辜な方を騙した罰が当たったのでしょう。罪深いあなた方にも主の導きがあらんことを…」

修道服を纏う清廉な乙女が倒れているシッガイやそのメンバーたちに祈りを捧げている。

 

「せっかく新しいクラスのスキルを見せようとしてたのに…残念~!」

相変わらず空気の読めないかぼちゃが新スキルの披露できなかったことを悔やんでいる

 

「みんな無事でよかったよ~っ!」

オーバーな動きでピエロが再開を祝いに来てくれて

 

「・・・・」

周りを睥睨していた巌の如き巨体がその構えを解いた。

 

 

向こうさんは…うん、士気が崩壊して立ち向かうとかそういうレベルじゃないな。

兎っ子もはしゃいでるし、今回の騒動は終わりで良いのかな?

 

「ふん、遅いぞ。それで魔女、頼んでいたモノは?」

「出来てるよ。無駄に色々なクエストがあったからね。幾つか作っておいたよ」

「作っておいた、な…まぁいい早く渡してくれあの小娘が騒ぎ出す前にな」

 

婆さんと御曹司がなにかやり取りしている側で久々に会ったピエロにハイタッチ。

「久しぶりだな。どうだったそっちは?」

 

「うん、アーミーも久しぶり!うーん、最初転移させられた時はどうなるかと思ったけど、すぐみんなと合流出来たからね。すごい楽しかったよ」

「そうか、俺は御曹司と二人旅して…色々とあって大変だったよ」

 

ここに来るまでの苦楽を話し合う。

「俺も入れろよ…ていうか俺と会ったとき嬉しそうでもなんでもなかったよなお前!」

「あの時は疲れてたんだよ…って離せや!」

 

リザードマンが首に手を回してウザがらみしてくる。

あ~~、じゃま!

 

「強面も久しぶりだね。色々聞いたけど大変だったよね。お疲れ様」

「ほんとだぜあの子ウサギのお守りは…まぁ結局俺がやれたことなんて殆ど無かったし…御曹司が解決してくれたからいいんだけどな」

 

「あの娘から目を離さなかっただけで功績ものだ胸を張れ。さもなくばもっと酷い状況になっていただろうからな」

「…そうだな」

「なんで今私を見ながら言ったのよ⁉」

 

「ふん、分かり切ったことだろう」

「まぁまぁ…」

 

陰口?を叩かれていることに気づいた兎っ子がプンプンしながら二人にいいより、御曹司が油に火を注ぎ…

その間にこっそりばあさんが兎っ子の装備に宿っていたモンスターを蘇生させていた。

 

あぁ、所属違うからまとめて吹っ飛ばされたのね。頼んでいたアイテムってそういう…

って、あれ?

 

「ナルシストは?」

一緒にいたギルメンが御曹司の方に行って、一人で佇んでいたシスターに聞いた。

 

「あの方でしたら僕の立つステージは終わってしまったようだと町について早々にログアウトして行きましたよ」

「あぁ、そう…」

 

マイペースが過ぎる…

 

「それよりアーミーさん!チェルシーさんって良い人ですよね!私のことを色眼鏡で見ないでくれて、話していても楽しくて…これが対等な同性の友達なのでしょうね♬」

ウキウキと最近できた友達とここに来るまでの旅路を語るシスターさん。

 

「そうか、それはヨカッタナー」

 

…この後の展開が読めてしまった。

 

「今度リアルでも一緒に……」

俺は嬉しそうに話を続ける彼女に相槌を打ちながらも心の中で十字を切った。

せめて安らかに眠れ。

 

 

あのギルドの連中には婆さんと御曹司が話を付けていて俺の出番ももうないだろうからな。

戻って来た装備とテイムしたモンスターを見て喜んでる兎っ子を見てそう思った。

 

 

*1
財や技術、権力の奪い合いが日々行われていて…その争いに負ければ出世コースから外れることは勿論、場合によっては死ぬかアーコロジーからの追放が待っている

*2
一日に使用回数が決まっている魔法というよりスキルに近い代物。発動には時間が掛かるが戦局を左右するほどのモノが多数ある。戦士職や非戦闘職も扱えるため魔法というよりスキルに近い




次回は周り(主にナザリック)からみた主人公たちの評価
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