エイヒマでホラー(っぽい)短編を書こうと思って題材を決めた時、次に考えるのはどうやってヒマリが手を出せない状況にするかです。
私にとってヒマリというのはドラえもんにおける映画の四次元ポケットとか出木杉みたいな存在で気を抜くと勝手に動いてすぐ解決策を出して話が終わらせようとするシナリオブレイカーなんです。
ちなみに今回は脚本の都合上、台本形式となります。
私のモットーは「やってないことをやろう」なので台本形式も挑戦の一つです。
書くのが初めてで読みにくいかもしれませんがご了承ください。
ナレーション(エイミ)「台本。それは演劇、映画、テレビドラマ、アニメーションなどの脚本やシナリオのことを指す言葉。台本には作品の物語の進行、登場人物のセリフ、場面の設定、舞台の動きなどが詳細に記述されている」
ナレーション「役者はその指示に従い、舞台上でキャラクターを演じていく。台本によって役者の演技力を引き出し、舞台上の雰囲気を作り出す重要な役割を担う。要するに台本とは作品を作り上げる上で必要不可欠なものであり、そこには作品を構成するすべてが記されているのだ」
ナレーション「__ということはある視点から見ればそれはアカシックレコードと呼べるものなのかもしれない」
(幕が上がる)
〇ミレニアムサイエンススクール・廊下
エイミ「~♪」テクテク…
エイミ「ん?」ピタッ
エイミが歩いていると廊下に何かが落ちていることに気が付く。
エイミ「何コレ、本……いや、台本?」ヒョイッ
エイミ「演劇部かゲーム開発部か?でも表紙には『台本』としか書かれてないし、裏にも名前とかは書いてないなぁ……」チラチラ
エイミ「未公開だとか個人的なものだったら申し訳ないけど少しだけ中を見させてもらおうかな。失礼しまーす」
ここでエイミは台本を開く前に手を止める。
エイミ(なんで今日はこんなに考えをいちいち口に出しているんだ……?)
エイミ「まあいいか」
台本を後ろからパラパラとめくっていく。
エイミ「……白紙?」
そのままめくり続ける。
エイミ「書いてる途中なのか?……じゃあなおさら届けないと」
エイミ(………………)パラパラ…
最初の方までめくっていると、文字の書かれたページが出てくる。
エイミ「え……」
エイミ「なんで……私のことが……」
そこに書かれているのは先ほどまでのエイミの行動そのものだった。
エイミ「しかも今こうして喋っていることも次々と書き込まれていく……」
見ているページの空白に次々と現状とリンクした文章が浮かび上がり、困惑する。
エイミ「ふぅ……」
エイミは一度心を落ち着けるために台本を閉じて深呼吸する。
エイミ「よし」ペラリ
エイミ「……やっぱり書かれてるな」
エイミ「材質はただの紙だろうし……」ナデナデ
エイミ「どこかに音声入力だとかが仕込まれてる形式もない。……それに音声入力だけでは出力されなさそうな文章も多い」ジロジロ
再び台本を閉じて表紙を見つめる。
エイミ「どう見てもただの台本って感じじゃないな……」
エイミ「よし、一旦部長に見せよう」
エイミ「よし、少しテストしてみよう」
台本を右手に持って歩きだす。
エイミ(…………?今、何かおかしくなかったか?)
エイミ「先に部長に見せてからにするか」
エイミ「気のせいか」
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・広場
ミレモブ「ワイワイガヤガヤ」
エイミは台本片手に校舎から出て近くの広場へと向かい、空いているベンチに腰を下ろした。
エイミ「さて、どうなっているかな」キョロキョロ
周囲の様子を確認してから台本を開く。
エイミ「やっぱり私の行動がそのまま書かれてる」
エイミ「ということはこれは『所有者の状況を台本として書き記していくもの』……みたいな感じかな?」
エイミ(………………)パラパラ
エイミ「その後ろのページには何も書かれてないし、ここまで書かれた文章にも不自然な点は無い」
エイミ「今のところタダの記録装置で無害っぽいし大丈夫そう。でも、なんでこんなものが落ちてたのか分からないから、部長に見せておくかなぁ」
エイミはそのまましばらく座っていた。
エイミ「…………なるほど、何もしなければこういう文章が出てくる。大方予想通りだ」
???「あ!エイミです!」
エイミ「!!」ビクッ
エイミは突然声をかけられて驚く。持っていた台本を隠して声のした方を向いた。
エイミ「……なんだ、アリスか」
アリス「はい!アリスです!」
エイミ「何してたの?いつもの冒険?」
アリス「そうです!モモイが書いたシナリオがダメになったので書き直すためにアイデアを探す冒険の旅に出ています!」
エイミ「へぇ~、何か面白そうなものは見つかった?」
アリス「いえ、アリスの旅はまだまだこれからです!」
エイミ「そっか……あ、そうだちょっとこれを見てほしいんだけど」
エイミは隠していた台本を取り出し、アリスに見せる。
エイミ「これはさっき拾ったものなんだけどアリスは見覚えある?」
アリス「でも、モモイはもう何も思いつかないから夢落ちにしちゃおうって言ってました!」
エイミ「うーん、安易な夢落ちは良くないと思うけどなぁ……でも頑張って、私も応援してるから」
アリス「はい!エイミも何か面白そうなことがあったら教えてください!」
タッタッタ……
エイミ「……あ、台本のこと聞いてみればよかったな。まあでも大体分かったから後は部長に見せに行けばいいか」
エイミは先ほどの会話を思い出し、手元の台本を見つめる。
エイミ「シナリオの書き直し、ねぇ」
エイミ(…………この台本に何かを書き込むことってできるのか?)
エイミ「………………」
エイミ「いやいや、ダメでしょそんなこと。何が起こるか分からないんだし」ブンブン
エイミ「物は試しだ、やってみよう。でも、一応その前に部長に聞いてからにするか。何か知ってるかもしれないし」
エイミ「最初は何かあっても大丈夫そうなことにするか……何かないかな」キョロキョロ
エイミは近くの木に止まっているカラスを見つけた。
エイミ(あ、あれで良いや。……良いのか?こんなことしても。何かあったら取り返しつかないんじゃ?)
ボールペンを取り出して台本に書き込んだ。
カキカキ…
エイミのすぐ近くにカラスが3羽降りてくる。
バサバサ…
エイミ「…………おお」
エイミ「いや、偶然の可能性もまだある……」カキカキ…
よく見ると1匹は真っ白なアルビノ個体だった。
カーカー!カーカー!
エイミ「白い……!」
エイミ「アルビノ個体のカラスは一般的に数万匹に一匹誕生するかしないかぐらいの確率と言われている……」
エイミ「この辺に生息していたんだったらウチの野鳥研究会が黙ってるはずないし……やっぱりこれに書き込んだからか……?」
エイミ「……………………」
エイミ「立派な『特異現象』だね……これ」
エイミ「しかも現実改編というかなりの影響力を持っていながらその方法は書き込むだけというお手軽さ……」
エイミ「存在がアウト過ぎる……発見したのが私で良かった……」
エイミ「早く部長と対策を話し合わないとだな……」
エイミ「よし、捨てよう」
台本を近くに捨てられていたレジ袋に入れて縛り、ゴミ箱に放り込んだ。
エイミ「……………………」
エイミ「………なんか、変だ」
エイミ「これ、本当に私の行動と言動か?」
エイミは不自然に思うもそのまま帰る。
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・とある教室
エイミは台本を手に持って立っている。
ミレモブ「ワイワイガヤガヤ」
エイミ「……………………」
エイミ「……え?」
エイミ「何で台本を持ってるんだ……?」
エイミ「……いや、そもそも私はどうやってここの教室に来た?」
エイミ「台本を捨ててからここに来るまでのことが全く思い出せない……!?」
エイミ「……………………」
エイミ「まさか……」パラパラ
エイミ「書いてない…………」
エイミ「もしやこれは現実に起こったことが記録されていくものじゃなくて、書かれたことが現実になるものだったのか……?」
エイミ「ここに私が広場からこの教室に来るまでの過程が書かれていないから、私にはその記憶がない……」ブツブツ……
???「ね、さっきから何してるの?」
エイミ「あぁ……、マキか」
マキ「そんなところに突っ立ってさ、どうした?」
エイミ「あー……」
エイミ「……今部長がどこにいるか知ってる?」
エイミ「なんでもない」
マキ「そっか」
エイミ「………………ねえ」
マキ「ん?」
エイミ「私、どこか変?」
マキ「えぇ?別にいつも通りだとは思うけど……」
エイミ「何か変な気がするんだよなぁ……」
マキ「何か不安なことでもあるなら部長に聞いてみれば?」
マキ「気のせいだよ気のせい!」
エイミ「……そうかなぁ」
エイミはマキとおしゃべりしながら歩いていく。
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・広場
マキとエイミは話しながら歩いている。
マキ「__それでハレ先輩がね……」スタスタ…
エイミ「……………………」ピタッ
エイミは会話をやめて突然立ち止まる。
マキ「……?どうしたの?」キョトン
エイミ「…………私たち、さっきの教室からどうやってここまで来た?」
マキ「……あれ?確かにいつの間にかこんなところに……もしかしてなんかヤバい特異現象とかに巻き込まれてる感じ?」
マキ「え?そりゃあ一緒に色々話しながら来たんでしょ?」
エイミ「……そうだよね」
マキ「そうそう。楽しいことしてる時なんてそんなものだよ!」
エイミ(…………巻き込まれてるのは私だけなのか?)
マキ「あ!もうこんな時間だ!私行かなきゃ、じゃあね!」ブンブン
マキは手を振ってエイミと別れる。
エイミ「………………」
エイミは再びベンチに座っている。
エイミ「絶対に何か変なんだよなぁ……」
エイミ「やっぱり早く部長に見せに行かないと」
エイミ「今度はちゃんと捨てよう」
エイミはもう一度ゴミ箱に台本を捨てる。今度はかなり奥まで押し込んだ。
エイミ「いや、だからこれが『私のすること』じゃないってさっきから……」
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・広場
エイミは再び台本を持って立っている。
エイミ「…………なるほど」
エイミ「捨てることはできないってことか」
エイミ「いや!だからなんで捨ててるの!?」
エイミ「おかしいよ!こんなにやばいものを見つけてその辺のゴミ箱に突っ込むなんてことしないでしょ!?」
エイミ「そもそもここまで部長に何も伝えないなんてことある!?何のための部長!?何のための部活!?」
エイミ「これはなかなか厄介な相手だなぁ!?」
エイミ「………………?」
エイミ「今、なんで私は怒ってたんだ?何に対して?」
エイミ「………………」
エイミ「……何かがやばい、もう私の手には負えない。部長か先生に早く知らせないと……!」
エイミ「……何かがやばい、部長が巻き込まれる前に私が何とかしないと……!」
エイミ「よし、破壊しよう」ビリビリー
エイミは台本を手に取り、力いっぱい引き裂く。
細かくなった台本は風に乗って散り散りに飛んで行く。
こうして奇妙な台本は消え去り、エイミに平穏な日常が戻ってきたのだった。めでたしめでたし。
だが、どこからか現れた古関ウイが破片をすべて回収する。
エイミ「え」
そしてウイは目にもとまらぬ早業で修復し、元通りの台本にしてからエイミに渡した。
ウイ「……本は大切にしてください」
エイミ「ちょ、ちょっと待って、どこから出てきた!?」
エイミ「ありがとうございます。私としたことがうっかり調査する対象を破いてしまうなんて……」
ニコニコしながらウイは帰って行った。
エイミもニコニコしながら何も考えずにそのままもう一度破く。
ビリビリー!
こうして奇妙な台本は消え去り、エイミに平穏な日常が戻ってきたのだった。めでたしめでたし。
瞬間、古関ウイがものすごい勢いでエイミに迫って殴りかかる。
エイミ「……っ!ダメか!」
エイミはそれを避けて台本をさらに破く。
こうして奇妙な台本は消え去り、エイミに平穏な日常が戻ってきたのだった。めでたしめでたし。
エイミの頭部にクリーンヒットし、そのまま意識を失った。
(暗転)
エイミは台本片手に寝そべっている。
エイミ「いてて……」
意識が覚醒すると、殴られた箇所を擦りながら起き上がる。
エイミ「……随分と乱暴な脚本だね」
エイミ「ふぅ……」
エイミ「破り捨てようとすると駄目か」
エイミは台本を開き、内容を確認する。
エイミ「……明らかに不自然なことでも書き込まれた以上はその通りになる」
エイミ「そして、私がこの台本を何とかしようとすると書き込んで反撃してくる」
エイミ「……でもそれは逆に利用できるはず」カキカキ・・・
エイミは自販機で銃弾を購入し、火薬を取り出して台本に火をつける。
燃えやすい素材だったのか、台本は一瞬で燃え尽きてしまった。
こうして奇妙な台本は消え去り、エイミに平穏な日常が戻ってきたのだった。めでたしめでたし。
燃えにくい素材のため、なかなか燃えない。
エイミ「これなら……」メラメラ…
エイミは火をつけた台本を開いて地面に置くと、ペンを持ち書き込まれたことに対してさらに書き込んで反撃できるように待ち構える。
エイミ「……来るなら来い」
突如、目の前に列車砲が現れる。
エイミ「来た!」カキカキ…
エイミは素早く台本に書き込む。
だが、それよりも早く列車砲は火を噴き、エイミを吹き飛ばす。
ドカーン!
エイミ「……ダメだ、書き込む隙が無い」
そのままエイミは台本と共にどこかへ飛んで行く。
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・廊下
吹き飛ばされたエイミは校舎の壁を突き破って床に叩きつけられる。
だが、何とか受け身をとって着地した。
しかも、受け身が取れず左足首の骨が折れた。
エイミ「足が…………」ズキズキ
エイミ「受け身…………取れなかった、もしくは取らせてくれなかったか…………」
エイミ「どっちにしろ、この台本が私に対して明確な敵意を持ったのは事実…………!」
エイミ「でも……分かったことがある…………」
エイミ「火はつけられた」
エイミ「つまり、『私が』書いたことは絶対に起こる。取り消されない」
エイミ「弱めたり、その後消したりは出来るんだろうけど『火がついた』という事実は絶対に変わらない…………」
エイミ「だから、取り消しようのないことを書き込めさえすれば私の勝ち」
エイミ「違う?」
エイミ「………………反応なし。台本にも何も書かれてない」
エイミ「ただ…………ここで何を書けばいいのかって話になるね」
エイミ「いつもだったらこの辺で部長が何かしらのアイデアを出してくれるはず」
エイミ「だから私は
エイミ「だけどこの足じゃ部長のところに行けないね。困った」
エイミ「………………」
エイミ「やっぱりそうだ」
エイミ「私に何かしてるよね」
エイミ「消してるのか書き直してるのかは知らないけど」
エイミ「ずっとおかしいと思ってたんだ」
エイミ「何で私はここまで部長に相談しなかった?なんで部長のことを考えもしなかった?」
エイミ「私たちを舐めないでほしい」
エイミ「私が足で調査して、部長が頭で調査する」
エイミ「私が困ってたら部長が助けてくれるし、部長が困ってたら私が助ける」
エイミ「私たちはそういう関係、特異現象捜査部は2人の部活」
エイミ「…………いや、違うか。必要な時は先生とかヴェリタス……C&Cにセミナーの力だって借りる」
エイミ「ま、要するにここまでのことを一人で抱え込んで勝手に私が行動するなんてありえないよねって話」
エイミ「……会長の件もあったし」
エイミ「…………それはともかく」
エイミ「部長に情報が渡るのをそこまで嫌がるってことは何か困る理由があるってことになるよね」
エイミ「怖いの?『私の』部長が」
エイミ「…………何だっていいけどね。別に」
エイミ「つまり私の勝利条件は2つ。何かしらの決定打になる文章を書き込むか、どうにかして部長に届ければ良いってワケだ」
エイミ「とにかく、脚本の都合だか何だか知らないけどめちゃくちゃにされる前に私は全力で抵抗させてもらうから」
エイミ「………………」
エイミ「…………今日の私はよく喋るね」
エイミ「これも『脚本の都合』かな?」
エイミは携帯電話を取り出し、ヒマリに電話する。
しかし、圏外で繋がらない。
エイミ「へぇ……このミレニアムサイエンススクールの何でもないただの廊下で圏外ねぇ…………」
エイミ「じゃ、次だ」カキカキ…
大きな音を聞き付けた生徒がエイミのところへ向かってくる。
???「こっちで何かすごい音がしたけど……」
エイミ「私を痛めつけるために壁を突き破るぐらいの勢いで叩きつけたから当然、その音は大きい」
エイミ「そろそろ誰か来てもおかしくない頃だ」
ユウカ「ちょっと何コレ!?」
エイミ「ユウカ……当たりだ」
ユウカ「さてはまたエンジニア部かC&Cあたりが…………って!大丈夫!?何があったの!?」
エイミ「訳の分からない敵に襲われてます。早急に部長に伝えてください」
エイミ「爆発に巻き込まれて足が折れました」
ユウカ「大変!でも私一人だから運ぶには……誰か呼ばないと」プルルルル…
ユウカ「あれ?電話が繋がらない……爆発の影響……?」
エイミ(多分私のセリフが消されてるか書き換えられたりしてるんだろうけど、今はそれ前提で行動してる)
エイミ(ここまでに明らかに不自然な『セリフ』は無い)
エイミ(つまり……セリフを改変してもその場面で矛盾するようなことは言わせられない可能性がある)
エイミ(だからこの状況を狙った)
エイミ(部長に伝えようとするセリフを修正したら今の私が言うのは『怪我してる』になる)
エイミ(直接台本に危害を加えるわけでも、部長に伝えるわけでもないから取り消されない)
エイミ(それにこの台本は『エイミ』が中心で進んでいるから私が知らないところで発生していることはここに書き込まれない)
エイミ(矛盾したり不自然なことを言わせられないなら、どうやっても私を保健室とかに連れていくために誰かが助けを呼ぶはず)
エイミ(今回は最初からユウカが来たけどセミナーに私が怪我したという情報が流れれば、部長は心配する)
エイミ(でもその情報が伝わるルートは私は知らないし、ここから動こうとしなければこの後ユウカがどうするのか知ることもできない)
エイミ(もし仮にこのままユウカが助けを呼べないような大事になれば、不自然に思った他の生徒も乗り出してくることになる)
エイミ(そしてそうなった場合動くのは多分他のセミナーかヴェリタスかC&C、それか先生とシャーレ)
エイミ(そうなれば部長も知ることになるし私を呼びに来るはず)
エイミ(直接部長を呼べないなら間接的に伝える……!)
エイミ(私を痛めつけるために骨を折ったり、携帯を圏外にしたのは悪手だったんじゃない?)
ユウカ「……もう、なんで圏外なのよ!」
ユウカ「ちょっとそこでじっとしててください!」
ユウカ「すぐに誰か呼んできます!」
ユウカはそのまま誰かを呼びに走って行く。
ユウカは人の頭ほどの瓦礫を持ち上げるとエイミに向かって振り下ろす。
エイミ「はい…………え?」
ブンッ!
エイミ「やばっ」
エイミは右足と両手で素早くそれを避ける。
が、右腕に直撃して骨がミシリと嫌な音を立てる。
エイミ「…………っ!」
ユウカ「怪我してるんだから動かないで!」
エイミ「………………なるほど、ストーリーの流れと矛盾したセリフは出せないけど、地の文なら書き込めばどんなことでも起こせるからそういうことになるのね」
エイミ「ここは一旦逃げるか……この足じゃ戦っても不利だしユウカは傷付けたくないし」
エイミは先ほど壁を突き破ってできた穴から下を見下ろす。
エイミ(2階だから飛び降りても……いや、待って)
エイミは折れた左足首、赤く腫れてきた右の二の腕、そしてウイに殴られてできたたんこぶを確認する。
エイミ(…………私の体ってこんなに脆かったか?)
ユウカ「ちょっと!どこ行くのそんな怪我で!」
ユウカは持っていた瓦礫をまるでドッジボールでもするかのようにエイミに向かって投げる。
メキッ
エイミ「…………っ!」
背中に直撃し、エイミの背骨が軋む音が聞こえる。
エイミ「やばっ……!!」
バランスを崩したエイミはそのまま落下する。
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・中庭
エイミは再び地面に叩きつけられ左腕が折れる。
エイミ「…………っ!やっぱり…………普段よりダメージが大きすぎる…………!!」
エイミ「さてはこれも『脚本の都合』だな…………?」
エイミ「『脚本の都合』で勝手に弱体化させて、『脚本の都合』で部長の下に行くのを無理やり阻止して…………」
エイミ「何が書きたいのか知らないけど、人選間違ってるんじゃない…………?」
エイミ「まあ、どこかの誰かが苦しむよりは全然いいんだけど」
エイミ「…………それこそ部長とか」
左腕と右腕が痛み、左足首も折れているので何とか地面を這って移動する。
エイミ「そんなに私で書きたかったのかな。…………人気みたいで照れるね、まったく」
エイミ「それはさておき……左足と左腕は使えない。右腕は痛むけどまだ動かせる。右足は無事」
エイミ「ここからどうやって部室へ向かうか……」
エイミ「誰かに会えばユウカみたいに襲いかかってくるに違いない」
エイミ「ここで私が『突然エイミの体は元通りになる』とでも書けば元に戻るんだろうけど…………」
エイミ「そんな簡単に書かせてくれるのか……?」
エイミ「さっきは書きこもうとしたら『それよりも早く』書き込まれたし……」
エイミ「ま、試してみるしかないか……」ゴソゴソ
取り出したペンは先ほどの衝撃で壊れて使い物にならなくなっている。
エイミ「そうきたか…………」
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・廊下
エイミは這ってミレニアムサイエンススクールの校舎内を進む。
エイミ「生徒から隠れるのに這って進むのは合理的だけど……さすがになぁ…………」
エイミ(先にどこかで松葉杖でも取ってくるべきだったか……?)
???「ねえ、それ大丈夫なの?」
エイミ(…………やば、見つかった)
モモイ「そうだよ!なんか足首がヤバい方向に曲がってるし腫れてるし……どう見ても折れてるよね!?」
ミドリ「……誰か呼んできますか?」
エイミ「…………じゃあ、部長呼んできてもらえる?」
エイミ「いや、大丈夫。自分で何とかするから」
モモイ「いーーーやいやいやいやいや!そんなこと言ってられる怪我じゃないでしょ!」
ミドリ「肩貸すので保健室行きましょう」
エイミ(…………まずいな、2人居ると何されるか分からない)
エイミ「……分かった。でもその前に何か書くもの持ってない?何でもいいよ、書けさえすれば」
ミドリ「シャーペンならとりあえず持ってるけど…………」
エイミ「それ、貸してくれる?」
ミドリ「良いけど……それよりも怪我は…………?」
ミドリはポケットからシャーペンを取り出す。
そしてモモイは包丁をエイミの脇腹に突き刺した。
FATALITY…
エイミ「まあ、それは大丈夫…………え?」
エイミの脇腹から血が流れ出て床が赤く染まっていく。
モモイは何度も包丁をエイミに突き立て、ミドリもシャーペンを同じように突き刺す
モモイ「やばっ!めっちゃ血が出てるよ!?どう見ても大丈夫じゃないよね!?」グサグサー
ミドリ「キズが広がるからジッとしててください!すぐ誰か呼んでくるので!」ザクザクー
エイミ「やめっ……ぐっ…………」
エイミ(やってることがおかしいと思わないのか!?)
エイミ「ま、『脚本の都合』なんだろうけど……ねっ!」
モモイ&ミドリ「「きゃっ!」」
エイミは痛む足と手を無理やり動かしてモモイとミドリを振り払い、シャーペンを奪って逃げだす。
エイミ「ごめんね、これも『脚本の都合』ってことで!」
(場面転換)
エイミ(出血が……まずいな…………)
エイミ(さっきかなり無理をしたから痛みが……っ)
エイミ(こうなったら…………!)
カキカキ・・・
エイミは部室へとたどり着く前に痛みで動けなくなってしまう。
エイミ「ま、ダメだよね……」
エイミ(今の状態で書けるのは8文字が限度か……)
エイミ(しかも動けなくされた……どうする……?)
エイミは痛みで意識が朦朧として進むことができない
エイミ(刺し傷は3箇所……これ以上の負傷は本当にやばい…………)
???「おー、いたいた」
エイミ「…………!!」
ネル「……大丈夫なのか?」
エイミ(まずい……ここでネル先輩にも攻撃されたら体が持たない……!)
ネル「ほら、保健室に運んでやるから」
エイミ「……来ないでください」
ネル「はぁ?何言ってんだ、そんな状態で放っておけるわけないだろ」
エイミ「来ないでっ!!」ジャキッ
エイミはショットガンを構えて威嚇する。
ネル「おいおい、興奮すんなって……傷口が広がるぞ?」
ネルはエイミにじわじわと近づいていく。
そしてエイミは発砲した。
が、先ほどまでの衝撃で銃身が曲がっていたのか爆発した。
エイミ「………………!?」
ネル「一体どうしちまったんだ…………?」
ネルは携帯を取り出し他のメンバーに連絡する。
ネル「……もしもし、あたしだ。エイミを発見した。場所は2F西の廊下、そうXX教室の前あたりだ」
アカネ『了解です。状況は?』
ネル「……あの双子とユウカが言ってたように錯乱してる。それに刺し傷らしき跡が3か所、出血も酷いし多分左足が折れてる。もしかしたら腕も」
アカネ『なるほど……では治療と確保の準備を整えてから向かいます』
ネル「おう、傷付けずに大人しくさせるにはあたしだけじゃ厳しそうだからアスナとカリンにも応援に来るよう言っといてくれ。……それとヒマリには伝えたのか?」
アカネ『いえ、部室にいると思うのですが反応がまだ……』
エイミ(部室…………!)
ネル「そうか、分かっ……」
ジュウウウ…
ネル「おい!何してる!」
エイミは熱くなった銃身を傷口に押し付け止血する。
エイミ「…………っ!!」
ネル「やめろっ!ここは戦場でも何でもねーぞ!!」
アカネ『リーダー!?どうしました!?』
ネルは携帯を投げ出してエイミに駆け寄る。
そのままエイミを殴りつける。
ネル「ここでそんな応急措置する必要ねーんだって!!」バキッドゴッ
エイミ「離れて!!」ブンブン
エイミは壊れたショットガンを振り回し、ネルから距離を取る。
エイミ「ハァ……ハァ……」
ネル「やっぱ幻覚でも見てんのか……?」
エイミ(逃げられるか……?この状況から……)
ネル「ほら、あたしだよあたし。C&Cの美甘ネル、良く知ってるだろ?」
エイミ(でも早くしないと応援が来る……)
ネル「傷つけるつもりはねーから安心しろって、な?」
ネルはエイミに見せつけるように武器を床に落とす。
エイミ(そう言われても全く安心できない……私以外は『台本』による書き換えを認識できていないからしょうがないんだけどね…………)
エイミは何とか体を動かし這ってネルから離れようとする。
ネル「あ!おい!どこ行くんだそんな体で!」
エイミ(とにかく距離を……少しでも…………)
アスナ「リーダー!応援に来たよーー!!」
エイミは走ってきたアスナに思いっきり蹴飛ばされる。
アスナ「あれーっ!どこ行くのー!?」
部室まで飛んだ
(場面転換)
〇ミレニアムサイエンススクール・特異現象捜査部部室前
ズシャッ…
エイミ(やった……っ!)
エイミ「とっさに書き込んだけど、うまくいった……!」
エイミは最後の力を振り絞ってドアを開ける。
エイミ(部長なら……きっと……)
エイミ(それにもし攻撃してきても部長なら…………)
そのままエイミは這って部室内へと入っていく。
???「ではここにイベントを付け加えてみると良いかもしれませんね。そしたらこの主人公君の行動に説得力が出るんじゃないでしょうか?」
???「なるほど!」
エイミ(アリスと……部長の声!!)
???「あら、誰か入ってきましたね」
アリス「!」
エイミ「部、長…………」
???「エイミ!?ど、どうしたんですかその怪我は!?」
アリス「モンスターに襲われたに違いありません!」
???「……そうですね、アリス。まずはエイミを安全なところに運んで治療しないといけません」
アリス「はい!任せてください!」
エイミ「待って……これ…………」
???「これですか?」
エイミ「これの……せい…………」
???「この……」
ヒマリ?「シャーペンがどうかしたんですか?」
エイミ「……え?」
アリス「あ!それはミドリの装備品です!血が付いてます!」
エイミ(見えてない……!?)
ヒマリ?「どう見てもただのシャーペンですが……これがエイミを?」
エイミ「違う……本、本のほう…………」
ヒマリ?「本……?ど、どれのことですか!?」
ヒマリ?「とにかく、話は後でゆっくり聞きます!」
ヒマリ?はアームでエイミの頭を乱暴に掴んで持ち上げる。
エイミ「…………?」
エイミがよく見ると目の前にいたのはヒマリではなく、どこかヒマリを思わせる風貌をしているだけの機械の怪物だった。
エイミ「部長じゃ……ない……!?」
【キャラクター説明】
「ヒマリ?」
見た目:ヒマリによく似ている白っぽいロボ。
大きさ:ヒマリを一回り大きくしたぐらい。
速度:足が車輪になっているのでかなり速い。
強さ:エイミの8倍ぐらい。8エイミ
エイミ「…………そうだよね」
ヒマリ?「エイミ!今は何も言わないでください!後でゆっくり聞きますから!」
エイミ(私を足止めし続けるより部長を無力化した方がずっと早い)
エイミ(簡単な話だったなぁ……)
エイミ(しかもどこかの預言者みたいで…………)
エイミ「……随分と趣味が悪い脚本だなぁ」
ヒマリ?「アリス、運びますよ!」
ヒマリ?はエイミをアリスに向かって放り投げる。
アリス「はい!」
エイミ(キャラクターの大幅な改編はダメだって、モモイが言ってたなぁ……そういえば…………)
アリスはスーパーノヴァをバットのように振り、飛んできたエイミを打つ。
エイミ(展開も乱暴すぎるし、キャラクターの行動に整合性がないし……)
エイミは天井を突き破って飛んで行く。
エイミ(一回モモイにシナリオの基本ぐらいは教わってきたら……?)
エイミは意識を失ったまま飛んで行き、ゲヘナ学園の方角に消える。
(暗転して場面転換)
〇ゲヘナ学園・食堂
ジュワ~
エイミ「…………⁉︎⁉︎」
エイミは傷口から入り込んでくる高温の液体による刺激、そして身を焼かれているかのような熱さで目を覚ます。
エイミ(今度は何⁉︎)ジタバタ
ガシャーン
ジュリ「わわっ!?」
ハルナ「まあ!なんと活きのいいエイミサクサクでしょうか」
アカリ「食べるのが楽しみですね~」
ジュリ「あ、暴れないでください~~」
■■■「フーム、コレは何ダ?」
給食部2人がエイミを天ぷらにしようとし、それを美食研究会の5人が楽しそうに待っている。
誤字じゃないぜ
フウカ「ちょ、ちょっと!何で揚げてる最中に暴れだすのよ!」
ジュンコ「……絞め忘れたんじゃない?」
ジュリ「す、すいません……大人しかったので…………」
フウカ「それは……しょうがないかぁ……」
ハルナ「では、今から絞めるしかありませんね」
エイミ(死ぬ…………!)
エイミは必死に逃げ出そうとする。
エイミ(もう右手ぐらいしか動かない…………)
エイミは度重なる負傷、そして油による全身やけどでもはやまともに活動できる状態ではなかった。
イズミ「あっ、逃げちゃうよ!?」
エイミは手に触れたものを手当たり次第に掴んでは投げる。
フウカ「くっ……手強い……!」
ハルナ「ふむ……食材が痛むと私たちも困るので手伝いましょうか」
美食研究会の4人もエイミを調理するために動き出す。
エイミ(いや……もう何しても無駄では?)
エイミ(体はもう元に戻れるような状態ではないし、死ぬのは時間の問題)
エイミ(それに部長もああなってしまっている以上、ここから私が助かる方法なんてない)
エイミ(だから……これは、きっと何かの悪い夢なんだ)
エイミ(そろそろ部長が起こしに来てくれるはず………………)
エイミ「…………夢?」
エイミは最後の力を振り絞って近くに落ちた爪楊枝を拾い上げ、自分の血をインク代わりに付ける。
カキカキ…
ハルナ「今です!大人しくなった今のうちに絞めてください!」
フウカ「言われなくても!」
フウカが包丁をエイミの首筋に突き立てる。
が、全部夢だった
(暗転して幕が下りる)
カシャリ
「…………んっ」
「あら」
シャッター音と可愛らしい小さな声が聞こえて、エイミは目を覚ます。
「……なにしてるの、部長」
「ふふっ、おはようございます」
目を覚ましたエイミの視界に飛び込んできたのは、スマホを構えて写真を撮っているヒマリの姿だった。
「エイミがあんまりにもぐっすりだったので、ついつい撮ってしまいました」
機械の怪物ではなく、いつも通りの優しそうなヒマリ。
そしてヒマリが見せてきた画面に写っていたのは、幸せそうな寝顔で眠るエイミの姿。まさかこの最中に死にかけていたとは夢にも思うまい。
「そう……」
「…………なんだかお疲れのようですね?」
「あー……うん、実は…………」
エイミはヒマリに見ていた夢のことを話した。
あの台本が起こしたことは夢になったのか、それとも最初からすべて夢だったのか、それはもはや分からない。
それでも、夢の中で体感した痛みは正確に思い出せる。傷口に熱々の油がしみ込んでくるあの感覚は二度と味わいたくない。
「なるほど……」
エイミは所詮夢の中の出来事として一蹴されるんじゃないかとも思ったが流石は特異現象捜査部の部長、真剣に聞いている。
最初は興味深そうに聞いていたヒマリだったが、ユウカが瓦礫で殺そうとしてきたあたりからだんだん顔が険しくなってきた。
「それで、とっさの機転を利かせて部室に辿り着いた私を待っていた部長は…………」
「そうですか……私が…………」
ヒマリは悲しそうな顔をしてエイミの服を掴む。
「そこで私はアリスが夢落ちの話をしていたのを思い出して…………」
「で、さっき起きたってワケ」
「無事でよかった……本当に…………」
そのままヒマリはエイミを抱き寄せ、頭を撫でる。
首を絞めるでもなく、ただただ、優しく……
「ただ、今の私にはエイミの見たただの夢だったのか、それともエイミが夢にしたのか……どちらなのかは分かりません」
「ですが、私はエイミを信じます。記憶が確かなうちに纏めておいてください」
「分かった」
エイミは『台本』に関する一連の出来事を記録するためにノートパソコンを開き、先ほどの夢を文字で書き起こしていく。
その横でヒマリはエイミの編まれた髪の毛を弄んでいた。
「~~♪」
ヒマリはエイミの束ねた髪の毛の先で猫じゃらしのようにかすかに口から零れる歌声に合わせてファサファサと自身の手を撫でている。
__こっちも少しくすぐったい。
そうしてエイミが半分ほど書いた頃、いつの間にかヒマリはエイミのそばを離れていた。
「……部長?」
エイミがどこに行ったのかと思って振り返ると、ヒマリは2人分のココアを持っていた。
「……休憩しながらで構いませんからね?調子はどうですか?つらくないですか?」
「ん、大丈夫」
ヒマリはアイスココアを机に置き、自分の分のホットココアに口を付ける。
__書き起こしているとあの時の痛みも一緒に思い出す。
ただ、辛くはない。あれはすべて夢だった。だからそれでいい。おそらくここに書き記しておかなければいつの間にか忘れてしまっているだろう。
それにここにいる部長たちは急に攻撃してきたりなんかしないから。
「……何かあったらちゃんと言ってくださいね?」
「うん」
カタカタとキーボードをたたく音が聞こえる部室内に甘い匂いが漂い始める。
再びヒマリは髪の毛をエイミが書き終えるまで弄んでいた。
「……一応、こんな感じかな」
「お疲れ様です。後ほどチェックしておきますね……と言っても大体のことはさっき聞きましたが」
エイミは残りのアイスココアを飲み干す。氷がほとんど解けてしまっていたので少し薄かった。
「それにしても……夢の中での任務、大変だったんじゃないですか?」
「まぁね……酷い目にあった訳だし」
「
「「………………………………」」
「き、きれいにオチが付いたということでこの辺にしておきましょう……」
多分、私を元気づけるための部長なりの気遣いだったのだろう。
……話のオチとしては悪くない。
エイミは一応周囲に例の台本がないか確認してみるが見当たらない。
「ふぅ…………」
エイミは安心感から眠気がしてきたので再びベッドに横たわる。
こんな風に無防備に寝転がっていても突然襲われたりしないというのは幸福なことなのだ。
「私はあの台本をどうにかしたりすることばかり考えていたけど」
「どんなに強引でもオチが付けば物語は終わり、単純な話だったね…………」
『蛇足』
【活動報告】執筆者:和泉元エイミ
奇妙な「台本」に遭遇したのでここに詳細を記録していきます。
結論から先に書くと既に夢の世界の存在と化したのでそこまで深刻に考える必要はないのかもしれない。けれど、私が夢落ちにできなかったら死んでいただろうし、現実の改変が容易に可能となっていたから危険度はかなり高いと思われる。
(省略)
……以上が私が台本によって体験したことです。
ここから分かる特徴としては
①:台本には対象を中心とした出来事、対象の発言、心の声が書かれていく
②:台本に地の文を書き込むことができ、絶対にその通りとなる
③:台本は発言などを消して別なものにすることができる(かもしれない)
④:上記の場合でも状況的に矛盾することは言わせることができない
⑤:台本による改編は対象以外認識できない
⑥:②④⑤が合わさり、おかしい行動をしていても、対象以外はそれを自覚することはできない
⑦:「明星ヒマリに知らせる」「台本を破壊する」等の行動をとった場合、台本の作者(仮称)は敵意を持って地の文を書き加えることで対象を攻撃する
仮に巻き込まれた生徒がいた場合は「すべて夢だった」と書き加えることで抜け出すことが可能だと何とか伝えるのが良いかもしれない。(対象以外はその異変を察知できないので難しそうだけど)
【ヒマリからのコメント】
おそらくその『台本』はエイミの言うようにオチがついたということで無力化されたとは思いますが……
今後同じような現象が起こらないとは言えないので念の為「夢オチにする」という対策法の記録のために保管しておきましょうか。
ひとまず、お疲れ様でした。
「ん…………っ」
眠っていたエイミは目を覚ました。すでに日は沈みかけており腹の減り具合からしてもそこそこの時間眠ってしまっていたのだろう。
今日はほとんど寝てしまったな、と若干後悔したが夢の中で精神的にかなり疲れたのだから別にいいかとすぐに切り替える。
横で寝ているヒマリを起こさないようにベッドからゆっくりと抜け出し、洗面所で顔を洗う。顔にかかる冷たい水道水が心地良い。
「…………」
エイミは顔を洗いながら考えを整理していた。
そういえば、先ほどもまた夢を見た。部長の声がするワイヤレスイヤホンを付けて鬼ごっこをするというよく分からない内容。
__だが、夢なんて結局そんなものだ。
普通の夢は起こった出来事や貯めた情報を整理するために脳が適当に結びつけることで見られるもの。(諸説あり)(キヴォトスなので例外あり)
その内容は滅茶苦茶で突飛な展開が続くことが多いとも言われる。
もしかしたら、あれは本当に私が見た夢だったのかもしれない。
だから急に列車砲が現れたり、セリフと食い違う行動をし始めたり、私が天ぷらにされかけたり…………
「…………ん?」
『まあ!なんと活きのいいエイミサクサクでしょうか』
『食べるのが楽しみですね~』
「……あの台本では、改変の影響を受けた生徒が私に攻撃してくることはあってもそれがセリフに反映されることは無かった」
「でも、美食研究会と給食部は私を食材として会話しながら殺しにきてたな……そういえば…………」
「舞台がゲヘナになったから何か変わったのか……?」
「………………」
「…………よそう。あれは全部夢だったし、そうでなくても夢にした」
「だから、夢から覚めてしまえばもう何もないんだ」
それから数日後、何か特別なことがあるわけでもないタダの休日にエイミはゲーム開発部の部室で新作ゲームのデバッグ作業を手伝っていた。夢の中とはいえ命の恩人であるアリスとモモイへの個人的なお礼である。
「あ、止まった」
「えーっ、そんなぁ……」
プレイ開始からたったの2時間しか経っていないが、既にこれで9回目のフリーズだった。モモイは想定以上の出来事に頭を抱えて唸っている。エイミの目の前のモニターもモモイも変な音を出しながら動作を完全に停止していた。
「……お、お昼ご飯にしませんか?」
部室内に漂う良くない雰囲気を打破するためにユズが切り出した。
「そうだね、ちょうどいい時間だし」
それにミドリも同調する。時計を見れば12の文字の上で長針と短針がもうすぐ重なろうとしていた。
「エイミは何が食べたいですか!」
「そうだなぁ……うーん…………」
アリスに意見を求められてエイミは少しだけ困っていた。エイミの心境としては特に何か食べたいという気分でもないし、勝手に手伝っている身なのだからそっちが好きに選んでしまって構わない。
ただ、一つだけ意見を言うなら……
「…………揚げ物以外なら何でも」
あの日以降、揚げ物を食べるのに少し抵抗が生まれた。
「うまっ」
「もーっ、お姉ちゃんほっぺに付けすぎだよ……」
モモイがピザを豪快に頬張り、頬についた食べカスをミドリが拭き取っている。
あの後、ゲーム開発部はピザとハンバーガーとうどんと寿司とラーメンで意見が対立し、レースゲームで決めることになった。エイミはそれを後ろから眺めているだけだったが、思いがけず試合は白熱し、最終的にはモモイが勝利した。
こうして部室にデリバリーのピザが届き、それをアリスが
「…………」
エイミの見つめる手元のピザは中心角が60度、正確に
他の人が食べているピザも中心角は等しく、切った跡も直線で歪みはない。ピザの耳によるデコボコを考慮しなければまったく同じ大きさに切り分けられているのだろう。
恐ろしいほどに均一、こういった何気ないことでもアリスは人ではなく機械なのだと思い知らされる。
「……?エイミはこのピザ嫌いでしたか?」
手が止まっていることを不思議に思ったアリスが上目遣いでエイミに尋ねてきた。その瞳に宿る光は他の生徒のものと何ら変わらない。
「……いや、アリスはすごいなって思っただけ」
「???……よく分かりませんが褒められました!」
そう、アリスは機械なだけであり、本質的なところは同じだ。
食べて、寝て、遊ぶ。エイミやヒマリ、ゲーム開発部にその他大勢の生徒と同じようにヘイローを浮かべて生活する1人の生徒であり、この世界の登場人物の1人に過ぎないのだから。
「…………おいしい」
口に入れたピザはトマトソースにチーズが絡んでいて美味しかった。誰が食べても同じようにに美味しいと言うだろう。
「ねえ!私たちのゲーム、どうだった!?」
3枚目のピザをアリスが切り分けている最中、口の周りにトマトソースが付いたモモイがエイミに問いかけてきた。
「……かなりの頻度で固まることに関してはノーコメントにするとして」
「うっ」
痛いところを突かれたゲーム開発部は苦い顔をする。
「一部の魔法が強すぎる以外には中々良い感じの難易度だと思ったかな」
「まー、それは私たちも見てて思った」
次の攻撃の威力を2.5倍にできる魔法が重ねがけ出来る仕様になっていたため、それに気が付いてからは一方的な蹂躙だった。これはこれで面白いかもしれないが始まってすぐ使えるようになっているのはゲームバランス的にあまり良くないだろう。
「……で、でもあんまり難しすぎるのも良くないから救済用に残しておいた方がいいんじゃないかな?」
「じゃあ後半から使える魔法にしましょう!」
「それかコストを増やして重ねがけしにくくするか……」
こうしてすぐに改善案が色々出てくるあたり、開発部もだんだんと良きチームへ成長している。
「ストーリーはどうでしたか!」
アリスはピザを切り分け、それをモモイの取り皿に置いてからエイミに聞いた。
「今回のストーリーはかなり難産だったみたいだからね……そうでしょ?お姉ちゃん」
「いやだってさぁ……オチが…………」
確かにモモイはあの夢の中でも展開でかなり悩んでいたし、こうしてある程度完成しても未だに納得のいかない部分があるのかもしれない。
「別にそんなに不安になる程おかしいストーリーではなかったと思うよ」
ただ、その心配は杞憂だろう。明らかにおかしい展開や整合性のない行動などは特になく丁寧だった。あの『テイルズ・サガ・クロニクル』のような独りよがりなシナリオのゲームを作っていたころと比べるとかなり成長している。
「良かった〜これなら安心だね!」
「安心かなぁ……?まだストーリーの終わらせ方思いついてないんでしょ?」
エイミの言葉に喜びの表情を浮かべるモモイだったがミドリに痛いところを突かれてその表情が再びフリーズした。
「そっ、それはさぁ!なんか……こう…………」
「でも、そろそろ決めないとスケジュールが…………」
「やっぱり夢オチにしようよ!万能夢オチ!この冒険は夢でした!主人公君は夢から覚めて新たな冒険に向かうのです!めでたしめでたし!」
「それも良いと思うけど……夢オチ……うーん」
モモイの案に他のメンバーは難色を示した。やはりもう少し凝った終わり方にして欲しいのだろう。
「キャラクターが夢オチにしたがってるなら夢オチでも良いんじゃないかな」
「完全にシナリオ制作に関しては素人の私の意見だからかなり適当なこと言ってる自覚はあるけど」
確かにこういったことに関しては素人のエイミだが、その言葉は実体験に基づいている。リアリティがあるのだ。
「???」
エイミの話を理解できなかったアリスが首をかしげる。他の4人もいまいち理解できていないといった表情を浮かべていた。
「シナリオってさ、誰が書いてると思う?」
「え?シナリオライターでしょ?」
モモイが当然のことでしょ?と言わんばかりに即答した。
「まあそうなんだけどさ、『キャラクターが勝手に動き出す』って話あるじゃん?」
「あ~そういうことね理解理解」
やはりゲーム開発部のシナリオ担当ということもあってか理解が早かった。感覚的に理解がしやすかったのだろう。
「キャラクターが自分自身で選んだならそれでいいはず……ってことでしょ」
「そういうこと」
「……!それはいい考えですね!夢落ちでもキャラクターにとって一番いい選択肢ならそれでいいってことですか!」
「…………ここからは完全に蛇足になるんだけどさ」
「私は……作者が物語の世界でキャラクターを動かしてストーリーを作り上げていくんじゃなくって、まず世界があってそこでキャラクターたちが動いた結果がストーリーになっているんじゃないかなーって解釈を最近するようになった」
「……うーん、アリスはまた話がよく分からなくなってます」
「作者がキャラクターを動かすための世界を創るのではなく、キャラクター達がいる世界で起こった出来事が作者の脳内でストーリーとして変換される……作者というのは創造主ではなく預言者……」
「???」
アリスはよく分からないといった顔で困り果てていた。困ったな、こっちもうまい説明が思いつかない。
「あ、えっとね、私はこうやってゲームのシナリオを考えてるでしょ?」
そこにモモイが助け舟を出す。
「でもエイミが言いたいのは私がゲームの世界を考えて書いてるんじゃなくって、先にゲームの世界があって私はそれを書き写しているだけなのかもしれないよね!……ってことであってる?」
「大体あってる。ありがと」
「なるほど!よく分かりました!」
アリスは明るい笑顔を浮かべて元気な返事をした。良かった、うまく伝わってくれたみたいで。
「モモイはトレパク犯罪者ってことですね!」
「違うよ!?」
そうでもなかった。
「あ、あはは……アリスにはまだ早かったかな?」
「……ごめん、変なこと言って」
「い、いや……気にしないでください。ロマンがあっていい考えだと思いますよ……?」
「もしもし!先生ですか!?大変です!モモイがトレパクしてます!」
『モモイ……いくら同人ゲームでもトレパクは辞めた方が良いよ?』
「ち、違うからー!ふーひょーひがいですー!」
「フフ……『原作』とナル世界を自分ナリに解釈して作品にスルという考えナラ、アリスちゃんには『二次創作』のホウが解釈としては分かりやすかったカモネ」
「あー……そうかも」
「だーかーらー、これは紛れもなく私が考えたお話!安心して!」
「一安心です!モモイが犯罪者になるところでした……」
その後、数分に及ぶ説得によりアリスはようやく理解した。
「……本当にごめん、変なこと言って迷惑かけちゃって」
「あーいいよいいよ、気にしないで。解釈としては全然ありだから」
「……なんか特異現象捜査部って感じの解釈だよね」
「あー分かるかも。ヒマリ先輩が好きそうな感じしてる」
そりゃそうだ。実際に特異現象に襲われた経験が基になっているのだから。
「でも、物語への解釈としては結構面白いかも……?」
「そうだ!次の作品のテーマはこんな感じにしようよ!例えばさ、主人公は小説家で、自分の作品のキャラクターに助けを求められて、それでストーリーを書き換えながら世界を救う……とか!面白そうじゃない?」
「面白そうです!」
「いや、それより先に今の作品の終わらせ方を考えてよ……」
__こうしてこの世界に新しい物語が増えていくのだろう。
もしかしたら、創作者すべてがあの台本を書いているのかもしれない。そして私はたまたまその台本を認知してしまった、そんなストーリー。
「……預言者モ二次創作モ『原作』を好き勝手に書き換えて作品にデキルという立場なことに変わりはナイ」
「結局のトコロ、原作に『愛』を持っているかドウカじゃないカ?」
「自分でストーリーを考えている時、自分が別な世界を好き勝手にいじくりまわしてイルという自覚は全員持っていないダロ?」
「だから、イツ誰がアノ『台本』を書いてイルのかは分からナイ」
「もしかしたら、コノ世界も『台本』の中なのカモしれないゼ?」
「あれ、一切れ余ってます!誰が食べてないんですか?食べないならアリスが貰います!」
__人数分に切り分けられたピザは一切れ余っていた。
ゲーム開発部から新作ゲームがリリースされて数週間後、エイミとヒマリはハンバーガーショップでテイクアウトしてきた昼食を食べながら部室で駄弁っていた。
「……32!」
「モゴモゴ(さすがにそろそろ食べたいんだけど)」
ヒマリはエイミの口にどれだけフライドポテトを差し込めるかチャレンジしていた。子にエサを分け与える親鳥でもここまで突っ込むことはないだろう。
ピピピピ…
「「!!」」
『はぁ……あと少しで40の大台に乗るところだったというのに……』
「食べ物で遊んでたら怒られるよ?美食研とかに」
昼食を楽しく食べていた時、ミレニアム近郊の廃墟で謎の熱源反応が確認されたのだ。エイミはハンバーガーとポテトを一瞬で平らげ、現場に急行した。
一方、ヒマリはドローンでエイミに追走しながら部室でゆっくり食べている。
……喉に詰まらせないと良いけど
『……とにかく、反応があったのはこの先です。気を付けてくださいね?私は上空から様子を見ておきます』
ヒマリのドローンがステルスモードで空高く昇っていくのを確認するとエイミは息を潜めて様子を伺う。
こういう時、大抵は侵入した不良生徒か興味本位で入り込んだウチの生徒のどっちかだ。
どうせ今回もそれだろう。
__そこには何かを燃やした跡があった。
「本……?」
冊子のような何かの燃えカスが残っている。表紙は「台本」という文字に黒い二重線が引かれ、没と大きく書かれていた。
どこか見覚えがあるような気がしたが思い出せない。
表紙はかろうじて残っていたが、中身のページはほとんど燃え尽きて何も読めなかった。
「ここはゴミ捨て場じゃないんだから、ちゃんと捨てるべきところに捨ててよ……」
エイミはこの調査が完全に無駄足だったことに落胆した。こんなことならもっと部室で部長と一緒にいたほうが有意義だっただろう。
『エイミ、何かあったんですか?』
「……ゴミ、なんかの本を燃やしたみたい」
とりあえず捨てるべき場所に持っていこうと持ち上げると、まだ燃えていないページが1枚だけ落ちてきた。
拾い上げて読んでみるとそこには手書きの文字で次のように書かれていた。
■■■は表紙に『没』と書き込んでから火をつけ、旅立つ■■■を見送る。(ニコニコしながら手を振っている)
ナレーション(■■■)「こうして■■■は夢の中の出来事なんか全部忘れて幸せに暮らしたとさ。めでたしめでたし」
=終=
読みたかったらスクロールしてください(読まなくていい)
Q.質問、台本を書いているのは誰だったんですか?
A.作者は『有馬Hidden』です。
最初から書いてあるでしょう。あなたの眼は節穴ですか?
……この答え方じゃダメですかそうですか。
では、『台本』が何をしていたのか整理してみましょう。
・ヒマリに『台本』の情報が渡るのを阻止している
・『台本』の処分を阻止している
この2つが主な行動指針ですね。
つまり「ヒマリに情報が渡る」そして「台本が書けなくなる」と困るのが黒幕です。
それを踏まえて
分かりましたか?
はい、ということで改めまして作者の『有馬Hidden』です。
この度は「和泉元エイミの活動記録」を読んでくださりありがとうございます。
新着を見ればオリ主とクロスオーバーが跋扈するこのハーメルンのブルアカ二次において「エイミ主人公」「ホラー短編」というなかなかマイナーなジャンルとも言えてしまう本作を読んでその上お気に入り、評価等してくださった皆様には感謝してもしきれません。(もっと流行れ)
本作がホラーなのかは正直微妙な気がしますが……
どこかで誰かが言っていたような言葉ですが「創作とは勝手に動き出すキャラクター達との闘いの記録」だと私は思っています。前書きにも書いたように今回のテーマはまさにこれ、作品を作るために作者がキャラクターにさせたいこととそのキャラクターがしそうなことの食い違いです。普通の作品だったらイベントやら背景情報を追加したり流れを修正したりするところですが、今回の『台本』では作者が無理やり押し通そうとした……って感じですね。
このセリフは違うな……、この表現はもっとよくできるな……などと書き直している時にこれを『現実を書き換えてくる敵』にできるのでは?と思ったのが始まりです。前回の『電話』だってスタートはそんなものでした。こっちは親族がなんか変な陰謀論を電話越しに語ってきて「頭おかしくなりそ~」ってなったのが始まりです。
こんな感じにテーマは意外と日常に溶け込んでいるもので、ちょっと考えれば適当な『特異現象』は意外と思いつくものです。小学生で学校の怪談を読み漁り、中学生でSCPにハマり、高校生でホラー淫夢を見まくっていた私の努力の賜物かも?(笑)
そのうちさっき言った『オリキャラ』『クロスオーバー』あたりを特異現象にして書き始めるかもしれませんね。構想自体は既にあるので。(意図せず他作品への攻撃的な要素が強くなりそうで怖いですが)
それはそれとして台本形式、読みやすかったですか?
私はいつものように地の文で描写する行為を封じたも同然なので結構不安になっております。台本形式ではもう書かないと思いますが、こういった経験はどこかで役に立つのかもしれません。
ということで今回はここまで、また次回をお楽しみに。
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