漸く出来た士道達との合流は、二人の士道の存在により、全員が驚き、混乱する展開となった。特に侑理は、真那共々ここまで行動を共にしていた士道が、物語の…同人誌の登場人物である『士道』だったと知り、それはもうびっくりした。しかし同時に、『士道』ではない『士道』だと分かり、しっくりときた部分もあった。
自分と真那が何の作品のキャラクターなのか、十中八九有名ではない作品なのにどうして出てきたのか、最初に襲ってきた魔物の様な異形も、その作品に登場する存在なのか…士道達と合流し、二亜の推測を聞いた後でも、分かっていない事はある。だが、なんであれ士道との合流は果たした。ならば今は…次の目的へと、進むべき。
「そうか、そういう事があったのか……」
ここに、この世界に至るまでの経緯を士道を説明し、それを聞いた『士道』が腕を組む。分かってはいた事だが、『士道』もDEMやウェストコットの事は把握しているようで…そのやり取りが交わされているのか、侑理は折紙の事をちらりと見やりながら琴里へ問う。
「その…何がどうして、折紙さんはあんな格好に……?」
「仕立て屋に、士道への愛がない者には見えない服だと言われて、うっすら服が見えたんだって。…凄いわよね、
「ちょっ、
「いや、でも…私の知ってる有力な
『ちょっとって何!?』
はっきりとは言わないけど…とばかりに濁す琴里に対し、侑理は真那と共に突っ込む。一体琴里は、何がどうだと思っているのだろうか。…気にはなるし、突っ込みはしたものの、具体的な話は聞きたくないと思う侑理だった。
「皆、お待たせ。…結論から言えば、『俺』なら元の世界への出口を作れるらしい」
「……!本当なの?」
「ああ。この空間は天使の…あぁいや、厳密には魔王か。…の力で作られた世界だからな。なら、同じ天使の力でなら打ち破れる筈だ。如何に存在が虚構でも、この世界の中でなら、俺が使える天使は本物だからな」
「ははぁ、そういう事ね。〈
「当然だ。何せ俺は、謂わば二亜の為に生まれたようなものだからな。……でも、俺に出来るのは、あくまでこの世界の出口を作る事だけだ。となると、皆は向こうの世界に戻った瞬間、ウェストコットの真ん前にいるって事になりかねないぞ」
「そんな……じゃあどうしろっていうのよ。私達は今すぐにでも六喰のところにいかないといけないってのに──」
出口が作れるという希望に、侑理達は湧き立つ……が、続く言葉でそう上手くはいかないのだと知らされる。
『士道』の手を借りれば、元の世界に戻る事は出来る。だがそれは戻れるというだけで、〈
だが、それならばどうしたらいいのか。そんな雰囲気となる中…再び二亜が口を開く。
「──そんな事もあろうかと!」
自信を窺わせる、二亜の声。その如何にも策がありそうな発言に、全員が振り向き……
「って、一回言ってみたかったんだよねー。どう?デキる女っぽい?」
「……冗談なら後にしてくれない?」
ご尤もな琴里の返し。しかし二亜はふざけた事を謝罪すると、続けて用意はある事、だから『士道』に出口を作ってほしいのだという事を言う。
一体それはどういう事なのか。用意とは何なのか。侑理も皆も、その答えを求めて二亜を見つめ…二亜は、にっと口角を上げる。
「あたし、ここに呑み込まれる寸前、向こうの世界で〈
「……!って事は──」
「そ。あいつが元の場所でずっと待ち構えてでもいない限り、鉢合わせる可能性は低いって事」
『おおっ!』
今度こそ本当に見えた光明に、精霊達は盛り上がる。凄いぞとかやるではないかとかただの飲んだくれではなかったのですねとかと賛辞の声が巻き起こり(最後のはちょっと違う気もするが)、それに二亜は胸を張る。
付け加える形で発された、ウェストコットが待ち構えている可能性…それを危惧する者はいなかった。何せ彼自身が、今回は別の狙いが…ウッドマン絡みでの目的があると言っていたのだから。無論、それを言ったのは襲撃中の組織の長な訳だが、あの場で吐く価値のある嘘だとは思えないのもまた事実。
そして、話が纏まったところで、『士道』は今すぐやっていいんだな?と問う。それに琴里が頷いて答え…構えると共にを伏せた『士道』は、〈
「──はぁっ!」
直後、剣の軌跡が形となるように、壁が砕かれるように、何もなかった空間へと亀裂が生じる。ここを通れば元の世界に戻れる筈だと、〈
「──さっき言ってた六喰っていうのは、新しい精霊だよな?頑張れよ、「俺」。きっと、その子を救ってあげてくれ」
(え?…あ……)
柔らかな雰囲気と声。しかし侑理は、そんな『士道』の言葉に疑問を抱き…すぐに気付く。
『士道』は六喰の存在を知らない。それは、考えてみれば当然の事。何せ、『士道』は同人誌の中の存在であり、その同人誌は年末に作られた、この場にいる誰も六喰を知らない段階で描かれた物語なのだから。思えば先程『士道』が二亜をしげしげと見つめていたのも、同人誌に描かれた二亜は、侑理達がまだ今程彼女を理解していなかった事と、作品内に自分が出てきたら純粋な気持ちで読めなくなるだろうという事から、殆ど描写がなかった…即ち『士道』からしてもまだよく分からない存在だったからなのだろう。
「……?侑理?」
呼び掛けに士道が黙る中、今度は琴里が『士道』と言葉を交わす。その中で、『士道』の周りには物語の世界の自分達も、精霊達もいる事に気付き、そっちの私達にも宜しく、といって空間の亀裂へと入っていく。
そんな中で、侑理はある思いを抱いていた。その事に気付いたのか、真那が侑理の名を呼び…侑理は一歩、前に出る。亀裂ではなく、『士道』を見る。
「…貴方は、向こうに…うち達の世界に来る事は出来ないの…?」
『へ……?』
その言葉、侑理の言葉に、まだ残っている真那と士道が目を丸くする。『士道』も目を瞬かせた後、困ったように頬を掻く。
「侑理…来るも何も、こちらの兄様が……」
「うん、分かってる。こっちの士道にぃはあくまで創作の世界の存在だって事も、仮に来られたとしても、その場合『士道にぃ』が二人いる事になっちゃう事も。だけど…それじゃあこっちの士道にぃの『未来』はどこにあるの?こっちの士道にぃに…うち等と同じ、明日はあるの……?」
「それは……」
振り向き、問い掛けた侑理の言葉に、今度は真那が黙り込む。自分の発言が無茶な話である事など、十分理解している。しかし理解はしていても、納得は出来なかった。短い時間だとしても、同じ時を過ごした…自分達を助けてくれて、力になってくれて、妹と呼んでくれた『士道』が、一人の生きている人間と同じにしか思えない彼が、二亜をよく知らず、六喰を何も知らず、あの同人誌で描かれた以上のものを何も持たないまま『完結』してしまう事が…どうしても、飲み込めなかった。
結果、訪れたのは沈黙。真那が浮かべているのは、やりきれないような表情。その面持ちで、真那を困らせてしまった事に気付いた侑理の心にはじわじわと罪悪感が広がっていき……だがそんな侑理の背中に、一つの声が掛けられる。
「…ありがとな、侑理。俺の事を思ってくれて。俺の未来を、願ってくれて」
「……っ…士道にぃ…」
「けど、そうする訳にはいかねぇよ。侑理の言った問題もそうだが…それ以上に、俺には大切な人達がいる。精霊の皆、家族や友達…それに侑理が、真那がいる。だから俺にとっては、こっちが俺の世界なんだ。俺の生きる場所なんだ」
ゆっくりと振り向けば、向けられていたのは優しげな…されど真っ直ぐな瞳。元の世界であろうと、物語の世界であろうと変わらない、士道という人間らしい言葉。その言葉で、それを言われる事で、やっと気付いた。『士道』の言う通り、『士道』は一人ではないのだと。そして、見た目返す侑理へ向けて、『士道』は穏やかな声のまま更に言う。
「でも、確かに『俺』の物語が終わっているのは事実だ。今の俺は、六喰って子に会う事も、未来に進む事もない。──だから、また作ってくれたら嬉しいな。続編でもいい。短縮した皆との物語でもいい。どんな形でも、また物語を描いてくれれば……俺もまた、皆と新しい景色を見られる。皆と、歩んでいける」
それは、侑理の思いを叶えられる唯一の方法。物語の世界の『士道』が、『未来』を掴む事の出来る答え。同時にもしかするとその言葉は、単に侑理を納得させるというだけではなく、『士道』自身の本当の願いかもしれないもので……
「いいねぇ、それ。だったらその時は、あたしも参加して合同誌にしちゃってみる?」
「え、わ、私に訊かないでよ…!…まぁ、その…続きを書くのは、嫌じゃない…けど……」
「……!?み、皆はもう、先に行ったんじゃ……?」
「は、はい。でも、侑理さん達が中々来ないので、何かあったんじゃないかと思って……」
割って入るように発された、二亜の声と七罪の反応。驚き振り返れば、精霊達がこちらへと戻ってきていて(とはいえ全員ではなく、何人かは亀裂からひょっこりこちらへ顔を出してるだけの状態だった)、四糸乃の言葉で侑理は彼女達を待たせてしまっていたのだと気付く。
「悪いな、皆。つい、侑理と話し込んじまったんだ」
「そんな、話を振ったのはうちの方……」
悪いのは自分だ、と言おうとした侑理の口へ、唇へと『士道』は指を当て、言わなくていいと示す。それからその指を離し…また、笑う。
「さ、侑理も行きな。俺は大丈夫だ。皆ならきっと、って信じてる」
「士道にぃ…。……ありがとね、士道にぃ。貴方は、うちの世界の『士道』ではないのかもしれないけど…やっぱりうちにとっては、貴方も『士道にぃ』だよ」
「当たり前だ。どこの世界だろうと、侑理が侑理である限り、俺は侑理の公式お兄ちゃんだからな」
向けられた笑みに対し、侑理も笑みを返す。そして侑理は『士道』の前を譲り…待ってくれていた真那が、士道へと歩み寄る。
「では、兄様お元気で」
「おう。真那も元気でな。真那からすれば、全力全開ではなかったのかもしれないけど…真那に背中を預ける事が出来て、嬉しかったぜ」
「ふっ、確かに普段のようには戦えなかったですが…兄様と一緒なら、いつでも真那は全力全開です。それから…私の兄様とは少しちげーますが、貴方も最高に頼もしくて格好良かったですよ、兄様」
真那もまた『士道』と言葉を交わし、ポニーテールを揺らす。後ろにいる侑理に、その表情は見えない。だがきっと、一片の曇りもない笑顔を見せていたのだろうと、侑理は思った。
「…じゃあ、先に行くね」
「……ああ」
同じように残っていた士道へと声を掛け、侑理は亀裂へと向かう。どうも士道も、侑理とは別で何か思う事があったようで…されど『士道』は、大丈夫だという目をしていた。だから侑理はそれを信じ、真那と亀裂の前に立つ。そして小さく頷き合い……亀裂へと、足を踏み入れた。
*
「……っ、んっ…」
何かのやり取りをしている声がする。その声に意識を呼び覚まされる形で、侑理は目を覚ます。
「ここは……」
聞こえていたのは、馴染みのある精霊達の声。身体を起こし、見回せば、視界に入ってきたのは戦闘の跡が目立つ廊下。それ等を認識した事で、侑理は物語の世界から戻ってきたのだと理解する。
「そうだ、真那は……」
「はいはい、ここにいやがりますよ」
応えてくれた声に振り向けば、真那は既に立ち上がっていた。どうやら物語の世界に入った時とは逆に、真那の方が先に目を覚ましたらしい。
「一先ずはこれで安心…ってところですかね。まだ、解決はしてねーですが」
「うん。…あれ、そういえばなんでさっきは皆、気を失ってなかったんだろう……」
「さあね。状況から推測するなら、入る時も戻る時も、最初の一回は意識を失う…とかかしら」
真那が差し出してくれた手を握り、立ち上がる。それと共に口にした疑問には、琴里が肩を揺らしつつ答えてくれる。実際のところは分からない。分からないが…戻って来れたのだから、今はそれで十分というもの。
「これで後は、士道だけ」
「皆さんを待たせちまった私達が言える事じゃねーですが…おせーですね、兄様。何やら、表情が曇っているように見えましたが……」
「まあ、待ちましょ。士道だって馬鹿じゃないんだし、もう一度呼びに行く…なんてのも何だか間抜けだもの」
今折紙が言った通り、ここには士道の姿だけがない。十香達は、当然こちら側にも開いている亀裂を見つめており…その間、侑理は真那や折紙、琴里と視線を交わして周囲の警戒に務める。現状戦闘の音は遠いが、だからといって油断していい訳がない。
(…そういえば…向こうの世界とこっちとは、時間の流れが同じじゃない……?)
そこでふと気付いた事。思えば侑理は向こうの世界に、そこそこの時間滞在していた。あくまで体感ではあるが、少なくとも数時間は経っている筈で…しかしまだ戦闘の音が聞こえている。〈ラタトスク〉側の戦力が、侑理の想像を大きく超えているという事でなければ、こちらと向こうとでは時間が同期していない可能性が高い。更に言えば、街を移った瞬間環境が大きく変わった事からして、時空そのものが独自のルールを敷かれているのではないかとすら思える。
と、思いながら周囲に気を配り、待つ事数分。不意に亀裂が一瞬揺らぎ…その奥から、遂に士道が姿を現す。
「あ、士道に…いぃ!?」
普通に声を掛けようとし、直後に侑理は驚愕する。しかしそれも仕方のない事。何せ亀裂から現れた士道は、そのままバターン!…と倒れてしまったのだから。
「ちょっ、士道にぃ大丈夫!?」
「案ずるでない、侑理。心配は要らぬ」
「解説。皆戻ってきた時は、最初にこうなっていました」
「そ、そうなの…?でも、どうして……」
「んまぁ、無理矢理こっちへの道を作ったようなものだからね。ちゃんとした手順で行き来するなら、こんな事にはならない……かも?」
ぶっちゃけ自信はない、だってやった事ないし、とばかりに肩を竦める二亜。しかしそうなると、侑理も同様に一度ぶっ倒れてから目を覚ましたという事になる。そう考えてみると、少し身体が痛いような気もするが…特に大怪我は負っていないし、手足もちゃんと動くので、大丈夫だろうと思う事にした。
「しかし、こうして見るとやはり、向こうのシドーは少しだけ違う顔をしていたな。無論、どちらもシドーではあるのだが」
「キリッと感は、あっちのだーりんの方がありましたよねー。でも、柔らかな表情はこっちのだーりんの方が似合いそうっていうか、やっぱりどっちも素敵ですー」
うつ伏せになっていた士道を仰向けに寝かせた十香と美九は、そのまま士道をじーっと見つめる。十香はともかく、美九はこのまま何かしてもおかしくないタイプの女性であり、それを牽制するように琴里も側へ。そして琴里が両膝を床に突けて肩を揺らすと、士道の瞼がぴくりと動き……何を思ったのか、琴里は片手を振り上げる。
「……何してんだ、琴里」
「あら、起きたわね。後一秒遅かったら二〇発目いってたところだったわ」
「……って、十九発も叩いたのかよ!?」
なんとまさかの大嘘に、侑理達はぽかーんとする。すっかり騙された士道はぎょっとした顔で頬を押さえ、そんな士道に対して琴里は冗談だと言いつつ肩を竦めた。…ある意味これも、距離の近い兄妹ならでは…なのかもしれない。
「全く……時間がないって言ってるのに、何をもたもたしてたの?」
「ああ……悪い。でも──もう、大丈夫だ」
立ち上がった士道は、気合を入れ直すように両の頬を自ら叩く。その顔にはもう、先程までの『迷い』というべきものなどなく…琴里はその反応に困惑の様子を見せながらも、問題がないならいいと頷いた。
そして侑理達は、再び〈フラクシナス〉へ向けて走る。念の為、と着装デバイスに触れれば、今度はちゃんと起動してくれる。自身の力を、自身の思ったように扱える…普段は当たり前過ぎて意識する事もないそれの重要さを噛み締めながら、侑理達は遭遇した〈バンダースナッチ〉を撃破しつつ進み…遂に〈フラクシナス〉のある格納庫へと到着する。
「──!司令!ご無事で何よりです!」
「ええ、待たせたわね」
艦の外部カメラで侑理達の姿を認識したのか、スピーカーから神奈月の声が聞こえてくる。それに琴里が答えながら、真っ直ぐに艦の底部へと向かい…侑理達は、転送装置で〈フラクシナス〉の艦橋へ。
「……!これって……」
入ってすぐに、侑理は艦橋の異変を…廊下への扉が派手に破壊されている事と、壁面に弾痕らしきものが付いている事に気付く。それに思えば、外部にもダメージらしきものがあった。〈フラクシナス〉は修理と改修を行い、最終調整の段階であった以上、これ等が示す事柄は一つしかない。
「先程、DEMの
「状況が状況だもの、仕方ないわ。けど、その割には扉以外大して被害を受けていないわね。マリア、貴女のおかげかしら?」
「いえ、
『はい……?』
〈フラクシナス〉のAI、マリアの真顔(で言っていそうな)回答に、侑理達は全員がぽかんとなる。神奈月の指示と対応…というのは分かる。中々にアレな性格をしている彼も、副司令という肩書きを持つのだから、高い実力を持っていたとしても何らおかしな事はない。だがその続き、フィギュアと藁人形というのがどうしても分からず…ふとクルーの方を見てみれば、肩に包帯が巻かれている中津川と、まるで小さなぬいぐるみが如く今も藁人形を抱えている椎崎が、何とも複雑そうな顔をしていた。他の面々も、何とも言えない表情だった。
「……まあ、うん。それはまた、改めて報告してもらうとして…状況は?」
取り敢えずその件は流す、という賢明な判断を下した琴里が問えば、神奈月がチュッパチャップスを恭しく差し出しながら答える。侵入したDEMの戦力、被害の状況、それに現在基地上空に滞空している〈アルデバル〉級空中艦の存在を伝えていく。被害状況…特に人的被害を聞いた琴里は顔を曇らせていたものの、マリアの「今は貴女のすべき事を」という言葉でその表情を引き締める。
「──私達は、私達の仕事をするわよ。〈フラクシナス
『はっ!』
状況は、芳しくない。今もDEMからの攻撃は続いていて、この場での戦闘に勝てるかどうかは怪しいところ。ウェストコットが自ら赴いている事や、ウッドマンの発言からして、基地の攻防戦においては敗北を受け入れなければいけないのかもしれない。
しかし、クルー達の士気は低くなかった。琴里が無事戻ってきた事で安心したのか、DEMの
「
「了解。
「
流れるように琴里が指示を出し、クルーがそれに応えながらコンソールに指を走らせる。既に即出撃を想定していたらしく、すぐに発艦準備は完了する。
そこで更に琴里から発される、念の為何かに掴まるようにという言葉。士道達はそれに従い、折紙と二亜はここぞとばかりに士道に掴まるも他の面々に無理矢理引き剥がされ、その様子を侑理は「あっぶな…うちも真那に掴まろうかと思ったけど、やらなくて良かった…」…と内心で思いながらも苦笑いで眺める。そして……
「──〈フラクシナス
『……っ!』
高らかに琴里が言い放ち、準備完了と共に駆動音を鳴らしていた艦体が大きく揺れる。〈フラクシナス〉を包み込む…その運用の要となる