〈ラタトスク〉、DEM、そして六喰……それぞれが違う思想、目的を持つ、三つの陣営。初めに行動を…接近を行ったのは侑理達が乗る〈フラクシナス〉であり、排除という形で攻撃を仕掛けたのは六喰であり……小競り合いではない、本格的な『戦い』の火蓋を切ったのは、DEMの空中艦隊だった。
「琴里。〈バンダースナッチ〉はこっちでも確認したよ。どっちを優先する?」
「艦隊の方をお願い。〈バンダースナッチ〉は無視していい…って訳じゃないけど、流石に火力が違い過ぎるわ」
「了解」
艦載機の様に…というか実際、艦載機として各艦から出撃した〈バンダースナッチ〉部隊を強化された視力で確認した侑理は、琴里とやり取りを交わす。
ちらりと視線を動かせば、広大な宇宙の中で、士道が六喰と対峙している。一度目と同じ、一対一で…されど今、士道の手にはある天使が握られている。鍵の様な意匠を持つ、錫杖型の天使──〈
無論それは、本物の〈
(正に、天使には天使で対抗する…って事だよね。真那も上手く潜伏出来たみたいだし……うちも、始めよう)
既に、先制攻撃として〈ゲーティア〉…エレンからの砲撃は行われていた。収束魔力砲の一撃により、〈フラクシナス〉は
「……よし」
十分に、目一杯まで魔力を充填した上で放った、最大出力の一撃。魔力の閃光が漆黒の宇宙を駆け抜け、〈フラクシナス〉を包囲するべく動いていた艦の
それは、侑理の全力を込めた一発。射線上には細かなスペースデブリが存在していた為、100%の威力では届いていないだろうが…それでも半端な防御であれば即座に貫けるだけの光芒であった筈。…しかし、DEM艦の
されどそれは分かっていた事。
「よ、っと」
宇宙…無重力である事を活かし、出来るだけスラスターは使わず慣性移動。伸ばした手を引っ掛けるようにしてデブリを掴み、そのデブリに身を寄せる。そして〈オルムスファング〉を構えようとした直後、ほんの少し前まで侑理がいた場所…そこにあった別のデブリがDEM艦からの長距離攻撃で粉々に砕け散る。
そう。侑理は先程まで、そのデブリに身を隠して狙撃をしていた。狙撃手はどこから撃たれるか分からない、という状態を維持するのが重要であり、同時に居場所のバレた狙撃手は優先的に狙われるのが必然である為、不意討ちの一射目と、まだ不意討ちによる混乱が残っているであろう二射目を放った時点で、場所を移す事が必要だと判断をした。その結果、予想通り最初の狙撃ポイントは吹き飛ばされ…やはり欲張るのは危険だと内心でほっとしながら、再び銃口を空中艦へ向ける。慣性移動を用いたのも、向こうからの探知を逃れる為。
「侑理、大丈夫?」
「勿論。そっちは……」
「勝つわ。持てる手の全てを尽くしてね」
短いやり取りを琴里と交わし、三射目を撃ち込む。今度はその場で二度目の狙撃を行う事なく、デブリを蹴ってまた移動する。
琴里の言葉に、普段の余裕はなかった。あるのは緊張感と…言葉通り、全身全霊を尽くすのだという意思。だがそれも当然の事。琴里が、〈フラクシナス〉が打倒しようとしている〈ゲーティア〉は、世界最強の
(複雑だな…複雑だけど……やるしか、ない)
これまでも侑理が、或いは誰かがエレンと相対する事はあったが、そのどれもが勝利を目的としたものではない、基本は時間稼ぎが出来ればいいというものだった。勝とうとするのは無謀だという共通認識と、勝つ事が絶対条件になるような状況下にこれまでならなかった事が、それを許してくれていた。
しかし、今は違う。士道が六喰と対峙している以上、退く訳にはいかず、まだ心が封印されている…一切感情が動いていない現状を打破しようとしている状態である為、まだまだかなりの時間がかかる。そしてもし仮に攻略を一時中断し、士道を回収して離脱する事が出来たとしても、その場合待っているのは恐らく、六喰がエレンに討たれる結末か、六喰が宇宙のどこかに逃げてしまう結果のどちらか。他の可能性もゼロではない…が、だとしても再度の接触、再攻略は、困難どころか不可能になってしまってもおかしくない。故に今、琴里に…〈フラクシナス〉に求められているのは、攻略を続行する為の勝利。
勝たねばならない。それは本当に分かっている。分かっているが……〈フラクシナス〉が勝つという事は即ち、エレンが負けるという事。逆にエレンが勝てば、状況は致命的になる。無力化されるだけならまだしも、もし再び撃墜されようものなら…皆の命が、少なくとも人間であるクルーの命が失われる。即ち、絶対に負けられない戦いであり、その為に侑理も支援をしているのだが…それでもやはり、心の底で侑理はこうも思ってしまった。…エレンの負ける姿は見たくないと。
「…やっぱり、うちは……」
半ば無意識的に漏れた声。だがそれは雑念だ、と侑理は頭を振り、自らの戦いに、狙撃に意識を戻す。空中艦に向け、魔力の光芒を打ち込んでは場所を移る。
侑理の狙撃は、一度もDEM艦の
「──漸く見つけた」
そう、思った時だった。狙撃という、普段より視界が狭くなる状態を補う為に、範囲を大きく拡大させていた
本能的に、侑理は身を預けていたスペースデブリに膝蹴りを入れ、その反動でデブリから離れる。直後、目の前を魔力の刃が斬り裂き、デブリを一撃で両断する。
「これ以上は、させないよ」
「……っ…アルテミシアさん……!」
追撃から逃れるべく、これまでは控えていたスラスターでの移動を全開にする。
回避された事を大して気に留める様子もなく、静かに構え直す女性。騎士を思わせる、白と紫のCR-ユニットを纏った──アルテミシア・ベル・アシュクロクト。
「ここからあの威力の狙撃を撃ち込むなんて、やるね」
「そちらこそ、流石の技量ですね…」
真っ二つにされた衝撃でどこかへと流れていくスペースデブリをちらりと見やり、視線をアルテミシアへ戻す。彼女が手にしているのは、大型のレイザーブレイド。外見からして、彼女が纏っているのはエレンの装備同様特別仕様のCR-ユニットだろうが、CR-ユニットの性能を十全に引き出すには、それに見合う力を持った
「さてと。一応訊いておくけど、投降するつもりはないかな?貴女は精霊じゃないし、出来る事なら傷付けたくはないんだけど」
「……心遣い、感謝します。でも、そういう事なら…そちらもこの場は退いてくれませんか?うち達は、貴女達との戦いを望んでいる訳じゃありません」
「それは出来ない相談だね。…つまり、そういう事でしょ?」
アルテミシアからの問いに、無言で頷く。問いに対し、出来ないであろう問いで返す。それが答え。受け入れられないのは、お互い様。
数秒の静寂。侑理は構える事なく、しかしいつでも撃てるように武装へ魔力を充填させる。そしてアルテミシアは、微かに前傾姿勢となり…次の瞬間、アルテミシアの姿がぶれる。まだ距離のあった状態から、一瞬で近距離にまで詰めてくる。
「……ッ!」
間一髪、横薙ぎに放たれた斬撃を後退して躱し、〈オルムススケイル〉の銃口を向けると同時に撃つ。弾かれるような動きでアルテミシアが横へと避ければ、そのまま撃って追撃を掛ける。
軽やかに躱しながら、宇宙を跳ねるように飛びながら、アルテミシアは再度距離を詰めてくる。〈オルムススケイル〉の射撃では彼女を捉えきる事は出来ないが、それは初めから分かっていた事。故に再び刃を振るわれる直前で、侑理は〈オルムスファング〉を振り上げる。踏み込もうとするアルテミシアに対し、拡散射撃を叩き込む。
「お、っと…!今のは少し、ひやりとしたよ」
「こっちはひやりとしっ放しですけどね…ッ!」
近距離から撃ち込んだ射撃は、アルテミシアへと直撃する。…が、
そしてそこからは、機動戦へ移行。侑理が飛び回りながら両手の火器で矢継ぎ早に撃てば、アルテミシアも巧みに飛び、回避と防御を的確に使い分けて逃げる侑理へ追い縋る。その度に侑理も何とか追い払ってはいるが、全く以って余裕はない。気を抜けば、即座に懐に飛び込まれる。
「随分と、執念深いんですね…ッ!もっと、あっさりしてるのかと思ってました……ッ!」
「長距離戦じゃ、君に分があるからね。私は勝つ為の選択をしてるだけ」
突き出した〈オルムスファング〉から魔力の照射を撃ち込めば、アルテミシアはバレルロールで躱しながら突っ込んでくる。照射から連射に切り替え、〈オルムススケイル〉と共に弾幕を形成しても、
決してアルテミシアの動きは、エレンに匹敵するレベルではない。エレンの圧倒的な速さを見てきた事もあり、何とか侑理は見切れている。だが同時に、アルテミシアはゴリ押し一辺倒でもない。確かな技術や経験に裏打ちされた、見事な動きを見せてくる事もあれば、その
「侑理!聞こえていやがりますか、侑理!」
「真那!?」
スラスターをフル稼働させて距離を取ろうとする中、ヘッドセットから聞こえてきたのは真那の声。切羽詰まったその様子から、士道に何かあったのかと思った侑理だが…違う。
「無事でいやがりますか!?狙撃が止まったって事は、何かあったんでしょう!?」
「(そっか、そういう……)無事だよ。無事だけど……困った事に、アルテミシアさんに強襲を掛けられてね…!」
「アルテミシアに!?ちっ…ならもう少しだけ耐えやがって下さい!すぐに真那が──」
「それは駄目だよ、真那…!」
理由を理解した侑理は、真那が言い切る前に否定する。そして真那が息を呑んでいる間に、言葉を続ける。
「だって真那には、万が一の時に士道にぃを守る役目があるでしょ?もしもの時、真那がいなかったら士道にぃはどうなるの?」
「それは、そうかもしれねーですが…だったらせめて、私と交代を……」
「それも駄目だよ。下手に動けば、六喰に見つかる可能性がある。だから真那は、そこにいて。それとも──やっぱりうちの事は、信じられない?」
迫り来るアルテミシアへの迎撃と高速機動はそのままに、通信越しに侑理は問う。この問いに、真那は再び黙り……数秒の沈黙を経て、言った。
「勝手な事、言うんじゃねーです。──私がこれまで、
「…ふふっ、そうだね。真那の、言う通りだよ……!」
胸の中に広がる、充足感。状況は全く変わらないが…焦りが少しだけ、和らぐ。その代わりに、真那に啖呵を切ったのだからという意気込みが湧く。
「──アルテミシアさん!貴女はどうして、DEMに…!」
「理由?妙な事を訊くね。精霊を倒す為、精霊から世界を守る為…それ以外にあると思う?」
「君こそ、どうして〈ラタトスク〉に、精霊に与するの?君は私と、同じだと思ったんだけど」
「同じ……?」
「そう。君も……、──っ…」
「……!」
話しながらでもアルテミシアの攻め手が緩む事はない。むしろ侑理の射撃を真っ向から突破するのは容易ではないと判断したのか、圧を掛けながらも踏み込み過ぎず、侑理が隙を晒すのを待っている。侑理からすれば、迎撃を緩めればすぐに肉薄され、かといって全力で迎撃し続ければ消耗の差で恐らく先にガス欠になるという、苦しい戦況を作り上げられる。このままではジリ貧になるのは明白であり……だがそんな中、不意にアルテミシアの言葉が途切れ、動きのキレも鈍った。
時間にすれば、ほんの一瞬。されど、初めてアルテミシアが見せた明確な隙。それを逃す理由などなく、侑理は一気に反転攻勢。自ら距離を詰め、中距離で彼女に集中砲火を浴びせる。強力な一発で
(何があったのかは分からない…でも、今は……ッ!)
鈍った瞬間、侑理にはアルテミシアの表情が歪んでいたように見えた。何か痛みを感じているような、そんな面持ちだった。しかし今はそれを気に掛けられる状況でもなければ、そうしていられる余裕もない。とにかく今はアルテミシアを退ける為、目一杯の射撃を叩き込む。
これが凡百の
「足りないよ。それじゃあ、私には……届かない」
弾かれ四散する光弾の様子から
瞬時に、本当に一瞬で肉薄してきたアルテミシアは、レイザーブレイドを振るう。既に侑理は、彼女の剣の間合いに入っており……されどアルテミシアなら反撃に繋げてくるだろうと、侑理は予見していた。だからこそ、冷静に彼女の踏み込みと太刀筋を見切り…着実に、下がって避ける。そうしてアルテミシアが振り抜いたタイミングを突く形で、〈オルムスファング〉による単射の一撃を……
「──ふッ…!」
「な……ッ!?」
そう、思った時だった。振り抜かれたレイザーブレイドが、まるで燕返しのように鋭く振り上げられたのは。更にその動作の中でアルテミシアは手を離し、レイザーブレイドを侑理に向けて投げ放ってきたのは。
強化された膂力だけではない、
(あ、危なかっ──)
「まだだよ」
正に間一髪。投擲故にギリギリの反応でも弾く事が出来たが、もし掴んだままの刺突だったのなら防げたかどうか……そんな思考が、凌いだ事による安堵が脳内に浮かんだ時──気付けばアルテミシアは、侑理の懐に飛び込んでいた。
投擲は囮。この接近こそが本命。そう気付いたのと、アルテミシアの蹴撃が襲い掛かってしたのはほぼ同時。侑理は
「これで、終わり」
随意領域《テリトリー》への負荷による脳のダメージと、蹴りで跳ね飛ばされた事によって視界が大きく揺さ振られる。その視界の中では、アルテミシアが更に接近を仕掛ける姿を見せ……同時に侑理が弾き飛ばした筈のレイザーブレイドが、吸い込まれるようにしてアルテミシアの下へと戻っていく。
無論それは、偶然などではない。アルテミシアは先程とは逆に
(避け、られない……ッ!)
姿勢が崩れている今、回避は困難。防御をしたとしても、今の状態からでは受け止めきれずに斬り裂かれる可能性が高い。もう、確実な対処は間に合わない。直感的に、侑理はそう感じた。もう嘗ての自分ではないからこそ、分かってしまった。
手元に戻った剣を魔力の光で煌めかせ、アルテミシアは迫ってくる。彼女の間合いに入るのは目前。もう選択を考える時間はない。故に、だからこそ…侑理は避けない。防ぎもしない。その上で──諦めない。
「まだ……終わるもんかッ!」
「……っ!」
踏み込まれる寸前、侑理は〈オルムスファング〉のトリガーを引く。アルテミシアは一瞬怪訝そうな顔を見せつつも、対応するような素振りを見せない。…当然だ。何せ〈オルムスファング〉の銃口は、明後日の方向を向いているのだから。
放ったのも、単なる光線。アルテミシアに当たる訳などなく、いよいよアルテミシアは蹴り飛ばされた勢いを利用して下がる侑理を間合いに捉える。そして彼女の刃は振り出され──無数の礫が、背後からアルテミシアの
「これは、さっきの……!」
「そういう事、です…ッ!」
目を見開くアルテミシアへ、魔力刃を出力した〈オルムススケイル〉で斬り掛かる。瞬時に防御へ移った彼女と斬り結ぶ。
援護ではない。偶然でもない。アルテミシアを襲った礫は、スペースデブリの残骸。──侑理が射撃を撃ち込み、砕いたデブリの破片。最初から、これが狙いだった。侑理の射撃を真正面から難なく凌げるような実力者でも、意識外からの衝撃に対しては万全な状況で受けられない…そんな
「成る程、確かに強いね…もう一人の子共々、エレンが油断するなと言う訳だ……!」
「アルテミシアさんこそ、本当に……!」
強い、と侑理が言い切る前に、アルテミシアは押し返してくる。近接格闘戦で明らかに不利である為、ならばと侑理はすぐに飛び退く。元より怯んだ隙を突く為の攻撃、防がれたのならそれに執着をする理由はない。
(もう、同じ手は通用しない筈。短期決戦で決められる相手じゃないのも明白。なら、どうする……?)
距離を空けた状態で侑理が構え直せば、アルテミシアも侑理の出方を伺ってくる。おかげで落ち着いて思考をする余裕は出来たが…そもそも侑理は支援の狙撃を邪魔された身。こうして時間が経つ事自体、侑理にとっては宜しくない。
更に、戦況自体も芳しくない。侑理は全力で戦っていたのに対し、アルテミシアは本気ではあっても、出し惜しみなしという程ではなかったように見えた上、元々最大出力での狙撃を繰り返していた分、交戦開始した時点で消耗という点では侑理の方が不利だった。
策があれば勝てる、などと言える相手ではない。だが、策も無しに戦えば、負けるか、良くて戦闘が長続きするだけ。どちらにせよ、侑理の望む展開にはなりはしない。そして…アルテミシアに、侑理が策を思い付くだけの時間をくれる様子もなかった。
「…いくよ?」
わざわざ教えてくれたのは、意識を自信に向けさせる為。これ以上侑理に策を考えさせない為。そんな意図が窺える、冷たい声音でアルテミシアは言う。その声に、彼女が向ける斬っ先に、侑理は再び目の前に全力を注がなくてはならなくなる……そう、思った時。
「──侑理、合わせて」
「……!」
突如聞こえた、静かな声。直後に、アルテミシアの背後上方へ白い影が現れる。その影は魔力の光を浴びた刃を…槍を振り下ろし、アルテミシアを強襲する。
寸前のところで
「……不覚。想定以上に反応が早かった」
「折紙さん…!?その、姿は……」
強襲した白い影…一人の少女は、微かに悔しそうな表情を浮かべて侑理の隣へ飛んでくる。白い髪に端正な顔立ちをしたその少女は…見紛う事なき、鳶一折紙。だが、彼女が今纏っているのは、先程まで身に付けていた高校の制服でも、精霊としての限定霊装でもない。アルテミシアのそれとはまた違う甲冑を思わせる、その純白の装いは……間違いなく、CR-ユニット。
「説明は後。アルテミシアの相手は私が受け持つから、侑理は〈フラクシナス〉の支援を」
「いや、でも…アルテミシアさん相手に、一人は……!」
「問題ない。手なら、ある」
脳内で指示を出し、折紙の装備に照合を掛ければ、すぐに結果が表示される。型式番号AW-111──確かにそれは、
確かな実力と冷静な思考、何より恐ろしいまでの精神力を持つ折紙は、心強い増援。今侑理が最優先すべきは〈フラクシナス〉の支援である事も明白。だが折紙の
「……分かりました。折紙さん、ご武運を」
折紙からの無言の首肯を受け取り、侑理はスラスターを駆動させる。すぐにアルテミシアが追ってくるが、そこへ折紙が割って入る。一蹴出来る相手ではないともう分かっているのか、アルテミシアは表情を顰めながらも視線を侑理から外し、折紙と激突する。
大きく距離を取る為に飛ぶ中、視界の端にまた別の光が…限定霊装の光を纏った十香が士道のいる方向へ向かっていくのが見えた。今は通信を閉じている為、〈フラクシナス〉の中で何があったのかは分からないが…それが琴里の、十香や折紙の、精霊達の選択らしい。
それぞれが、それぞれの出来る事に力を尽くしている。全員で、六喰と相対する士道を支えている。そしてそれは、侑理も同じ事。故に折紙とアルテミシアの交戦宙域から十分に距離を離したところで、侑理は再びスペースデブリの一つへと身を預け……超長距離支援を、再開した。