僕の心のヤバイやつ 鞍馬祢音と山田杏奈の邂逅 作:北村 貴之
ここは東京都目黒区に存在する、とある中学校。
この中学校の図書室で、ひとりの少女がスマホを横向きにして動画を見ている様子を見せていた。
動画を見ている少女の名は山田杏奈という。
黒いロングヘアに中学生とは思えないスタイルをした美少女だった。
身長は170cm超えであり、いかにも中学生離れした身体の持ち主だ。
そんな彼女であるが、雑誌モデルとしても活動しているそうだ。
今日は仕事がないため、中学生として学校にいる山田。
彼女がスマホでどのような動画を見ているのか。
山田がスマホを眺めている様子を、クラスメイトである少年、市川京太郎も気になる様子で、彼女に気づかれぬよう見守っていた…。
☆山田が最近はまっている動画の中身
「ごきげんよう〜、祢音です!ピカリっ!」
動画の冒頭から、とある商業施設をバックに、明朗快活な様子の少女が挨拶した。
ふんわりとしたセミロングの茶髪に、フリル付きのシャツ、青色のフレアスカートという出で立ちだった。
彼女の名は鞍馬祢音という少女である。
山田が最近はまっているという「スーパーセレブ祢音TV」の動画チャンネルの投稿主である。
今日はある場所で配信を行っているようだ。
「今日はですね〜…、兵庫県は加古川市に来ています!」
鞍馬祢音は笑顔でカメラに語りかけた。
彼女は東京から数百キロメートル離れた近畿地方にいるようだ。
兵庫県の加古川市にいるという。
神戸市より西よりに離れた場所にある都市だ。
一体なぜ祢音がこのような場所にいるのだろうか。
「で、なぜ私がここ加古川に来ているかというとですね…。実はこの商業施設施設の中にあるおもちゃ屋さんの常連さんであるという動画投稿者の方がですね、いるんじゃないかと思って今回ここに来てるんです!」
祢音がなぜここに来ているのかの説明をした。
小柄であるが、整った可愛らしい顔つきをしているため、着ている服も相まってなんとも愛らしい姿だ。
「その方とお会いして、一緒に生コラボしたいなって!」
なんと、祢音は動画を撮影しながら、おもちゃ屋にいるとある動画投稿者を探しているという。
一体どのような人物なのか。
「ねえ、リモートでコラボするより生共演したほうが、話題になるよね?」
カメラで撮影していると思われる人物に話しかけるかのように喋る祢音。
そんな彼女に反応したかのように、スタッフと思われる男の声が聞こえてきた。
「ここにいるとは限らないと思うけど…」
比較的若い男性の声だった。
画面には映ってはいないが、祢音はどうやらスタッフも同行してここに来ているようだ。
「でも出会えたらラッキーでしょ?さ、行こ!」
祢音はスタッフと共に、商業施設の中に入っていった。
商業施設の中は子供連れの家族や若いカップルが散見された。
祢音とスタッフはエスカレーターで上の階に上がり、目的地であるおもちゃ屋に向かっていった。
いかにもな雰囲気を出した入口が特徴的なおもちゃ屋の前に来た祢音たち。
「じゃ、行こっか」
おもちゃ屋の中を歩きながら、目的の人物を探す祢音。
だがどうやら目当ての人物はいなかったようだ。
「あー、やっぱりいなかったかー」
祢音はがっくりと肩を落とした。
するとカメラがスタッフがよろめいた影響か、画面いっぱいに祢音のバストアップの映像になった。
彼女のほどよく発育した胸が強調されたアングルだ。
「もう、どこ撮ってんの!」
カメラに気づき、思わずしかめた表情を見せる祢音。
しかめっ面も実にかわいらしい。
「ご、ごめんごめん!」
スタッフと思しき男が祢音に謝罪する声が聞こえてきた。
「はぁ〜…。数分かけて歩いてみたけどやっぱりいませんでしたね…」
がっかりした祢音に、男性が声をかけてきた。
先程謝罪した男とは別の人物のようだった。
彼も動画内に姿は映っていない。
「店員さんに聞いてみたらどうなんだ?」
「あ…。そっか。そうしよっと」
男性からのアドバイスを受けてケロッとした顔をした祢音。
こうして、彼女は店内にいた店員に声をかけた。
近くにいた、女性店員に声をかけてみた。
「じ、実はですね…。こちらに坊主頭でガタイの良い男性が常連で来ていると聞いてこちらに来たんですけど…。見てはいないですか?」
「はあ、ガタイの良い男…。ですか…」
女性店員は少し考え込んだ様子を見せた後、すぐに合点がいったようだった。
「もしかして、先日銃のおもちゃを買っていった坊主頭の男性が来ていたと思うんですが…」
「え!?知ってるんですか!?」
女性店員の口から出てきた名前に驚く祢音だった。
嬉しさと驚きの混じった顔をして目を光らせる。
どうやらこの店員はその投稿者を知っているようだ。
女性店員は続けてこう話した。
「いまは見かけなくなったと思うんですけど、あれ以来私は、見てないと思いますね」
「そ…、そうなんですか!ありがとうございます」
思わぬ情報を得た祢音。
だがここで、ある疑問が生まれたようだ。
「でもなんで突然ここに来なくなったんでしょう?」
「わかりません…」
女性店員が少し困ったような顔をした。
祢音が察したような表情をする。
「ごめんなさい、お忙しい中。ありがとうございます!」
祢音は店員に頭を下げてその場を後にした。
祢音はひとまず入口に戻るようで、スタッフも彼女に続く。
祢音は少し残念そうな顔をしたが、
「皆さんごめんなさい…。せっかく現地に赴いて生コラボができると思ったんですけど…。まあ仕方がないよね…!」
と言って元気そうにカメラ越しに話した。
「それでは今回の配信はこれでひとまずおわり!動画も投稿するからそっちもみてね〜。では!」
とカメラに向かって語りかけた後、画面が切り替わった。
配信はこれで終了した。
鞍馬祢音の配信を見終えた山田。
間近で彼女を見ていた市川には気づいていた様子を見せていた。
「市川、何見てたのよ」
そう声をかけられた市川が諦めたような顔でやってくる。
片目が髪で隠れた地味な少年だ。
「お前が最近ハマってる配信者って誰だ?」
シンプルな質問に少しがっかりする山田だが、ここはちゃんと答えてあげることにした。
「あら、知らんの?鞍馬祢音」
「あ~…。確か鞍馬財閥の…」
鞍馬祢音が鞍馬財閥の令嬢であることを、市川は知っていたようだ。
「知っていたのか」
「悪いのか…?」
「いいや…」
市川は手短に返事をすると、すぐに話を元に戻した。
「で、その鞍馬祢音っていま…」
「聞いてたと思うけど兵庫県にいるって」
先程見た配信の内容を教える山田。どうやら市川はこの手の界隈については無知のようだ。
呆れた顔をする市川とは対照的に、笑顔を浮かべている山田。
「会えたらいいよな、その鞍馬祢音に」
とりあえず、鞍馬祢音に会ってみたい山田に、市川は優しげに声をかけた。
はたして、山田と市川は祢音に会うことができるだろうか…。