僕の心のヤバイやつ 鞍馬祢音と山田杏奈の邂逅 作:北村 貴之
桜井景和は就活中の大学生である。
現在は都内のマンションで姉と2人で暮らしている。
180cmの中肉中背の、至って普通の青年だ。
そんな桜井景和だが、「デザイアグランプリ」に参加し、狸の仮面ライダー「仮面ライダータイクーン」として、己の願いを叶えるために戦っていた。
ある出来事をきっかけに道を踏み外すしてしまった時期があったのだが、デザイアグランプリで知り合った仲間たちにより立ち直り、「本当の仮面ライダー」の意味を見出し、現在に至っている。
彼の願いは「世界平和」。
穏やかそうな見た目の彼らしい願いだ。
そんな桜井景和は、現在どうしているのかというと…。
「はァ…。こりゃまた落ちたかな」
気落ちした表情で、トボトボと歩く景和。
黒いリクルートスーツを身に纏っていた彼は、今日はとある企業の面接を受けていたようだ。
だが、彼の発言を聞く限り、どうやら景和は面接でうまく話すことができなかったようだ。
鞄を片手に、少し寂しい道を歩く景和。
そんな彼の耳に、ある声が聞こえてきた。
「?」
景和は気になる様子を見せた。
猫や動物の鳴き声ではなく、複数人の人間の声だった。
「誰だ?」
景和はひとりこんな道を歩いていたため、このような複数人の会話に違和感を感じていた。
声の聞こえる方向へと、景和は導かれるかのように歩いていく。
声の正体に気づいた景和。
彼の目に映っていたのは…。
「ち、ちょ、やめてください…」
女の子の声だ。
景和は女の子がいることを確認できた。
黒く長い髪に、制服姿だった。
かなり背が高く、姉よりも高そうに見える。
どこかの学生のようだ。
彼の目には、その学生の女の子以外にも人間が3人ほど映っていた。
その人物はいうと…。
「んなこと言わずに来てよ〜」
「欲しいモン全部おごってやるからさァ」
「ぜってぇ楽しいから!損はさせねぇからさぁ」
いかにもいかがわしい外見の男性たちが、女の子にたかっていた。
女の子は嫌がっていた。
それもそうだろう。
見知らぬ男たちにこうも絡まれたら、嫌にもなる。
しかもここは路地裏だ。
誰も助けを呼ばず、逃げることもできずにいる女の子に、景和はいてもたってもいられなくなった。
(あの子…。困ってるみたいだな)
景和は鞄からある物を取り出し、それを腰に巻きつけた。
それは「デザイアドライバー」だった。
そして懐から「IDコア」を取り出すと、それをデザイアドライバーにセットした。
さらに、黒い大型のレイズバックルをスロットに装填した。
「多少乱暴にはなるが、仕方がない…!」
景和は少し渋い顔を浮かべそう言った。
「Set avenge」
デザイアドライバーから音声が鳴る。
「変身っ!」
景和はそう叫び、男たちのもとへと走っていった。
走る景和を包むかのように、黒い装甲が景和の全身に貼り付くように装着されていく。
「Black general! Bujin sword!!」
音声が鳴り、景和の姿が「仮面ライダータイクーン ブジンソード」へと変わった。
狸を彷彿とさせる、赤い複眼が目立つ漆黒のマスク、戦国時代の甲冑を思わせる黒い装甲が特徴的な仮面ライダーだ。
手には太刀「武刃」を装備している。
タイクーンは男たちに斬りかかりに行く。
突如現れたタイクーンに、男たちは驚きの声をあげた。
「な、なんだテメェ!?」
「その子から離れろっ!」
タイクーンはそう答えると、男たちを一瞬で斬りつけた。
「ぐあッ!!」
武刃の斬撃で男はたち吹き飛ばされたあと、壁に叩きつけられた。
それを見た他の男たちは、タイクーンに恐れをなして逃げていった。
「お、覚えてろ…!」
タイクーンは変身を解き景和の姿に戻った。
そして、先程襲われていた女の子の元へと駆け寄る。
「だ、大丈夫か?」
景和は女の子に声をかける。
女の子は怯えながらも、景和にこう答えた。
「はい…。大丈夫です」
「そうか、ならよかった」
景和はひと安心すると、女の子からゆっくりと離れた。
そしてそのまま去ろうとしたのだが…。
「あの…」
女の子に呼び止められたため、景和は立ち止まった。
「ん?」
「その…」
何か言いたげな様子の女の子。
「さ、先程はありがとうございました…」
「礼には及ばないよ。しかし、こんな場所をほっつき歩いてたら危ないよ。俺ならまだしも、君なら狙われてしまうかもしれないしね」
「え、あ、はい…」
「…じゃあ、帰り道なら俺をボディガードで雇ってみないか?お代はとらないよ」
景和は女の子が心配だった。
先程の男たちを退けたのはよかったが、またいつ狙われるか、わからないからだ。
景和の提案に女の子は少し戸惑っていた。
(まあ、この人悪そうに見えないし…。いいかな)
女の子はそう思うと、景和にこう言ってきた。
「あ…。それではお願いできますか?」
それを聞いた景和は、にっこりと笑みを浮かべた。
「よし、そうと決まれば…。俺と一緒に行こう。あ、自己紹介がまだだったね。俺は桜井景和。仮面ライダータイクーンだ」
「かめん…。ライダー?」
仮面ライダーという単語を知っている素振りを見せる女の子。
「ああ。世界平和のために日夜戦い続ける…。狸なヒーローってとこかな」
少々自慢げに話す景和。
「世界…、平和…」
女の子はそう呟く。
「あ、わたしは山田杏奈っていいます。これでも中学生なんです」
「え?にしても結構背が高いんだな」
女の子が中学生だったことに驚く景和。
いかにも高校生くらいの見た目であったが、発育が良いのかそう見えていた。
お持ちの胸は年齢に不似合いの大きさだった。
(うむ…。祢音ちゃんや姉ちゃんよりも高そうだな)
景和の姉はなかなかの高身長なのだが、山田の背の高さは姉よりも大きいと感じていた。
女の子は自己紹介すると、
「じゃあ景和さん…。お願いします」
と頭を下げた。
景和は山田を見ていたのだが、彼は一瞬ではあったが、ブラウスに包まれた胸が揺れたような錯覚を覚えた。
(まっ、気の所為よな…)
景和は山田の乳揺れを気にしないようにした。
そして、2人は一緒に歩き始めた。