ようこそ実力至上主義の実験場へ   作:ゼリアサイ8世

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生徒会の先輩達 三年生編

 俺たちはその後二、三年のクラスに加え特別校舎なんかも見て周り、やはり監視カメラが多いことを確認した。むしろ学内の方が比率で言えばあるまである。

 まぁ生徒たちの監視のためにやっているんだろうから当然っちゃ当然だな。

 

 外では異常な数の監視カメラといえど逃れようと思えば逃れられる範囲しか見張れてなかったからな。

 

 そして俺たちは最後に体育館に向かおうとしていたんだが、俺は体育館の入り口近くにおそらく入学式で一年に配ったりして使うのであろう資料を中に入れようとしている団子を二つ作っているちんちくりんな()()()()()先輩を見つけた。

 

 俺はその人を見つけると同時に走り出していた。俺は走り出すと同時に大声でその人に呼びかける。

 

 

 

()()()()()()()()()()()!!!」

 

 俺のその声に反応して俺の先輩は振り返ってくれる。

 

「えっ!そのこえぇぇぇぇぇ〜!!!!!何やってるんですか!?」

 

 橘先輩は先輩に向けて綺麗に90度のお辞儀をしている俺を見て大層な驚きをしている。橘先輩にこれをするのは当然なのになぜ驚いているのだろうか?

 

「お久しぶりです。橘先輩!」

 

「はい、お久しぶりです。、、、じゃなくてですね!今すぐそれをやめてください!」

 

「はい!退学すればいいんですね!」

 

「違います!そのお辞儀ですよ〜〜〜!!!」

 

 俺の大学宣言に焦って止めてくれる先輩。やっぱり優しいな〜と俺は思った。ちなみに退学云々もお辞儀に関しても冗談だ。まぁ尊敬してるし、それくらいしたい心理があるのは本当だ。

 

「わかってますよ橘先輩。ところで、先輩この学校だったんですね!知ってたら無理にでも潜入して会いに行ったのに」

 

「だから教えなかったんですよ!、、、というか知樹くんまた私をからかいましたね!」

 

 怒った様子の先輩はほっぺを膨らませており、その姿はあまりにも小動物すぎて余計に嗜虐心を高まらせるが流石に可哀想なのでやめておこう。再開したばかりなわけだし。

 

「とにかく入学おめでとうございます。会長しか今年来た一年生の情報は知らないので私でも知りませんでしたよ、知樹くんが入学してたなんて」

 

「なるほど!つまり会長は邪魔者というわけで!」

 

「違いますよ!」

 

 そんな感じのやり取りをしていると背後から黒いオーラを俺は感じだ。このオーラをまさか1日のうちに二回も食らうことになろうとは思ってもいなかった。

 それも間違いなく同一人物だ。さて、どうしたものかな?

 

「まぁまぁ落ち着けってなぁ、落ち着けって」

 

「それを言うのでしたらこちらを見られては?」

 

 今現在俺は背後のブラックオーラをなんとか癒しの先輩を見ることで耐えている状態だ。もし先輩がいなくなったりしたら俺はちびってしまうかもしれない。

 ちなみに立ち位置的に橘先輩はブラックオーラの持ち主を見ているはずだが相当怯えている様子だ。

 これは俺からきつく言わなくてはな。

 

「坂柳!先輩がビビってるからやめなさい!」

 

「いいからこちらを向いてください」

 

「はい!」

 

 あまりの圧に俺は坂柳の方を見なくてはならなくなった。ちびりそうになる自分を先輩の前だぞという理性がなんとか持ち堪えさせる。

 

「何か言うことは?」

 

「すみませんでした」

 

 俺がそう言うと坂柳はあっさり許したのかオーラは消えていた。以前も謝るとすぐに許してくれたので、案外こいつは謝ると許してくれるのかもしれない。まぁだからといって謝りを軽くするわけにもいかないけどな。

 

「松雄知樹のことに関してはいつものことです。私は気にしません。ところでそちらの女性は?」

 

 森下は当然だが初対面の立花先輩のことが気になる様子だ。まぁ先輩は可愛いからね。でも先輩に一番可愛がられるのは俺さ。

 ところで俺は森下にいつものことと言われるぐらいになってしまったらしいのだがどうすれば良いのだろうか?

 それはそれとして森下の質問に答えてやるとしよう。

 

「こちらのお方は橘茜先輩だ。俺が元いた学校の一年生時の元締めで、今はこの学校で生徒会に所属している」

 

「元締めではなく、生徒会長です!」

 

「意味合いは同じようなものでしょう?」

 

「印象が違うんです!」

 

 とまぁこんなふうに二人に橘先輩の紹介をしてやったわけだ。そして二人は橘先輩に向けて軽い会釈をすると名乗り始めた。

 

「よろしくお願いします、橘先輩」

「よろしくお願いします、橘茜先輩」

 

 こうして二人とも挨拶をしたわけだ。どちらもよろしくお願いしますを最初に言っていて、あとの部分だけが違うのだが、字面だけでもどちらがどちらのセリフなのかわかってしまうんだろうな。

 

「はい、よろしくお願いしますね!そういえば松雄くん、なんで私が生徒会に入ってるって知ってるんですか?」

 

「ん?あぁそれなら俺の脳内のイマジナリー橘先輩が言ったからですよ。「私は生徒会で皆んなのためになることをするんだ!」ってね。加えて、、ん?」

 

 俺がそう言っていると橘先輩含めて全員が引いているのが目に映る。だがはっきり言って心外だ。他の人間のイマジナリーならまだしも橘先輩のイマジナリーだぞ。生じて然るべきだろうに。

 それと森下に引かれるのだけはマジで納得いかないからな。

 

「お前らがそんな目で見てられるのは橘先輩を知らないからだぞ。先輩からも言ってやってくださいよ!」

 

「その橘先輩も引いていることお気づきになっては?松雄君」

 

 ぐぅの音も出ない正論を叩きつけてくるのは誰か?当然坂柳だ。というわけで橘先輩も元々は用事もあった様子だし、時間的にもそろそろ帰らなくてはならないだろうと俺は思い、それを口にしようとした瞬間だった。

 

 体育館からメガネをかけたいかにも生徒会長っぽい人が出てきた。

 

「橘、いつまで、、、ん?お前は、」

 

 その会長みたいな人は俺を見ると少し悩んだ様子を見せてから近づいてきた。

 

「松雄知樹だな」

 

 早速名前を呼ばれて驚いている俺に対して会長っぽい人はその説明をしだした。

 

「ふっ、名前を知っているのが意外か?俺はこの学校の生徒会長であり、堀北学という。お前について知っているのは生徒会長としての権利だ」

 

 と、わざわざ説明をしてくれた堀北生徒会長だが、正直そんなに説明されずとも橘先輩の話的にもそんな感じだろうというのは読めていたのでなんだが気まずい感じを俺だけが勝手にしてしまっていた。

 

「そりゃご丁寧にどうもありがとうございます」

 

 俺が礼を言うと堀北生徒会長はその後も畳み掛けるように情報の開示を行なった。

 

「協調性の部分を除けばこの学校の中でも歴代トップクラスの成績を叩き出しており、面白いことにテストの点数は全て90点だったそうだな」

 

「入試の点数まで知ってんのかよ」

 

 思わず声が漏れてしまったが仕方ないというものだろう。何故なら二人の前でこのことを明かされるとは思ってもいなかったからだ。

 

「まぁ点数に関しては偶然揃っただけですよ。それにマーク適当に塗りつぶしただけの問題も多いですし」

 

「そんな話が通るとでも?」

 

「逆に通らないからってなんだよ?」

 

 俺と堀北会長はここで完全に目線を合わせた上で向かい合う形となる。俺の口調からも察せる通り正直二人の間の空気感は最悪のものであったと言えると思う。

 俺の堀北会長へのタメ口に何か思ったのか橘先輩が口にする。

 

「ちょっと松雄くん!会長に対してなんで口の聞き方するんですか!?」

 

「黙っていろ橘」

 

 そんな俺への注意をわざわざ止めて堀北会長は改めて俺と向かい合う。正直橘先輩に命令しているこの男のことは気に食わなくなる一方なのだがどうしたものか。

 

「俺がお前のことをこうまで覚えているのはひとえにお前を生徒会に誘いたいからだ。どうだやってみないか?」

 

「えぇ〜〜〜!!いきなりの勧誘ですか!?」

 

 堀北会長からのいきなりの勧誘に俺は驚いていた。それと今の反応をしたのは俺ではなく橘先輩のいつものオーバーリアクションだ。やっぱり可愛い先輩である。

 そして俺は意外な提案を出されたことに正直困惑しつつも回答を出す。

 

「橘先輩と同じ組織に入れることは光栄だし興味もありまくりなんですけどね、あんまりそういった業務を高校ではやらないって決めてたんでお断りですね」

 

「そうか」

 

 その俺の返答に本当に望んでいたのか分からないほどにあっさりと返事する堀北会長。変にしつこいのも嫌だったがここまで何もないとなるとそれはそれで本当に入ってもらいたかったのかと疑問に思ってしまうものだ。

 まぁ多分興味半分くらいでの誘いな気は初めからしていたのでそこまで気にする必要もないだろう。

 ちなみに俺が断ったことを残念そうにしている橘先輩が見えて俺は正直嬉しかったぞ。

 

 そして堀北会長は俺が誘いを断るとすぐに今度は坂柳の方を向いて話し出した。

 

「坂柳有栖。足に先天性の疾患を患いながらも頭脳面において天才と称される少女。入試では全教科満点を獲得している」

 

「ふふっ、噂に名高い生徒会長に覚えていただけてるとは光栄です」

 

 坂柳は華麗に礼を堀北会長にしながらそう答える。やはり絵になる女だと俺は改めて思うのだった。

 その後堀北会長は坂柳を生徒会に勧誘するわけでもなく、今度は森下の方を向いた。

 

「お前は、、森下藍だな」

 

「それで問題ありませんよ、堀北学生徒会長」

 

 俺はここで興味がかなり沸いていた。何への興味と言えば森下の実績のようなものがなんなのかだ。坂柳は話してる時からいかにもな天才って感じがしていたから堀北会長の言った全教科満点とかの情報もすごいとは思いつつも特に意外でもなんでもない。だが森下に関しては別だ。予想がつかなすぎる。案外身体能力面で実績を残していたりするんだろうか?何事も予想外なこの女ならありえると思ってしまう。

 

「お前は、、特に何もないな」

 

 

 何もないんかい!

 

 

「入試はそつがなく、面接では多少異色を出したもののユーモアの範囲内とされたそうだな」

 

 まさかの何もなし、というまたもや森下に裏をつかれる俺は一瞬コントの如くずっこけそうになるのを堪えながら話を聞き続ける。

 

「なかなか面白い三人だ。今年の一年生は特に強者が多いようだが、お前達はその中でも強者となるだろうな」

 

 その言葉に俺は何かを返す気にもならなかったが坂柳達は反応していた。

 

「「当然です」」

 

 ここで二人の発言が完全に一致する。二人とも丁寧な口調かつ自身に絶対の自信を持つタイプなためそうなったのだろう。

 

 そのハモった二人の返答を聞き堀北会長は満足したように少し笑ってから橘先輩が元々持っていたが話すために地面に置いた資料を持ち上げる。

 

「話は終わりだ。お前たちならおそらく既にこの学校の異質さに気づいているであろうから教えておこう。まず上級生にはそれらの情報について開示するなという施行令がひかれている。故に答えを知りたければ自身の手足を使って辿り着くしかない。お前達ならば心配ないとは思うがな」

 

 俺は上級生への施行令については想像の範囲内ではあったので特に驚くわけでもなく話を聞く。おそらく他二人も同じだったのだろう。特に何か変わった様子は見られない。

 

「それとこれも言っておくがもう最初のホームルームまで10分を切っている急いだほうが良いぞ。特に坂柳はな」

 

 そう言われたことで俺はようやく思い出す。元々もうそろそろ帰ろうと提案しようとしていたことに。

 

「やっば!」

 

 俺は声を出してしまうが、坂柳と森下はそうでもないようだ。だがしまったとは思っているのだろうな。坂柳なんかがこんなことになるのは恐らく相当珍しいのだろう。なんか表情が悔しそうだ。

 

「急ぎましょう松雄知樹」

 

「だな」

 

「はい、そうですね。ところで松雄君は何をなさっておれるのですか?」

 

 坂柳が俺に疑問を抱いているのは俺が坂柳に向けて背を向けてしゃがんでおり、そして手を後ろに向けて出しているからだろう。

 

「ん?見てわからないのか?天才?」

 

 俺が煽るようにそう言うと坂柳はむすっとした様子で答えはじめる。

 

「この私を馬鹿にするような発言をするとは松雄君も調子づいてきたようですね。勿論わかりますとも、それではお言葉に甘えましょうか」

 

 分かりやすく不機嫌になりつつも坂柳は俺の背中に乗ってくれる。つまり俺が何をしていたかと言えば坂柳をおんぶするための構えだったわけだ。

 なんやかんや言いつつもおんぶされるとは可愛らしいなと思いつつも、流石にそんなことを言ったらブラックオーラを発動するのは目に見えてるのでやめておく。

 ちなみに坂柳の杖の方はおんぶで両手を塞がれる俺には持てないので森下が持つことになった。

 

「森下、割とガチ目に走るけどついてこいよ」

 

「安心しなさい、松雄知樹。自慢ではありませんが中学ではクラスの真ん中ぐらいの速さはありました」

 

 それは本当に自慢にならないので前置きはいらないと思うが、森下に対してなのでツッコむだけ無駄だろう。

 

「坂柳、舌噛まないように気をつけろよ」

 

 そう言うと同時に俺は40%ぐらいの力で走り出した。おんぶしているにしては相当な速度を出せている自信が俺にはある。

 そして走る俺になんとかついてくる森下。体育館から一年の教室までは階段こそ難敵ではあるものの距離としてはそう遠くはないのでこの速さなら間に合わないことはないだろう。

 

 そうして走り出してから5分ほどでAクラスの前までたどり着く。俺は坂柳を背から降ろして森下の持ってる杖を渡す。

 

「ありがとうございます。かっこよかったですよ松雄君」

 

 相変わらずこういう男を殺す発言をちゃっかりする坂柳だが、素直に感謝の部分だけを俺は受け取ることにする。

 

「はいはい。それじゃあ俺はもう行くぞ」

 

「えぇ、ではまた」

 

「また、です。松雄知樹」

 

 そして俺は一人寂しくBクラスの方に向かうのだった。つっても1クラス分の距離、つまりお隣さんなので一瞬で寂しさは消えるんだがな。

 

 そして俺はBクラスにすぐに辿り着く。Bクラスのドアは閉まってはいるものの中から笑い声だったりが多くはないがそこそこ聞こえてくる。もしかしたらすでに派閥なんかもできているのかもしれない。そうなると友達を作れないかもしれないので、あの二人と同じクラスでなかったのは悔やむことになるかもしれないな。

 

 そして俺はこれからの1年間をこのクラスで過ごすのだと少し覚悟を固めてからBクラスのドアを開けた。

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