ようこそ実力至上主義の実験場へ   作:ゼリアサイ8世

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ようこそ平和至上主義のBクラスへ

 俺が覚悟を持ってドアを開けると、ドアを開けた音に反応して何人かが、いやほぼ全員が俺の方を向いてきた。

 

 俺が男子なので恐らく男子のリーダー的存在なのだろう人物がこちらに近づいてくるのが見える。陽キャと関わるのは正直苦手だが、ここは我慢といったところだろう。

 

「お前結構ギリギリに来るんだな!腹でも壊したのか?」

 

 いきなり人にそんなデリカシーのかけらもないことを聞けるとはやはり陽キャは恐ろしいと思いつつも俺はそれに答える。

 

「いや、色々と設備が面白そうなんで学校を見て回っただけだ」

 

「へ〜真面目なんだな!勉強とか困ったら聞いていいか!?」

 

 マジかこいつ、てっきり陽キャはこういうの馬鹿にするタイプだと思っていたんだがな。みんながみんなそうではないということか。

 

「あぁ、俺でよければな。つっても俺も別に普通だぞ」

 

 もちろんこれは嘘なわけだが俺が嘘をつくのにも訳がある。訳というのは単純でまだ俺の実力を明かすのは避けたいからだ。

 生徒会長のせいで坂柳と森下の二人にはバレたものの、あの二人なら無闇に言いふらすこともないだろう。坂柳あたりは悪用する可能性は全然あるが。

 

「と、まだ名前も知らないんだったな!俺は柴田颯、よろしくな!」

 

「あぁ、俺は松雄知樹。よろしくな」

 

 そんなふうに俺が言うと柴田は俺を手招きするような形で男子のグループの方に連れていった。もうあと2分ぐらいで先生も来るはずなんだが今からで大丈夫だろうか?

 

 その後俺はこのクラスの男子の大半と名前程度の紹介を交互にしたあと、流石に先生が来る時に座っていないのはダメだよとピンクの髪をした美少女が呼びかけたことで座る流れが出来上がり、グループは自動的に解散となった。

 

 そしてついに教室のドアが開かれ先生らしき人物が入ってくる。見た目は30代かそこらといった感じで、それなりに美人と言えるだろう。なんか若干顔が赤い気がするんだが、この人まさか前日に酒飲んだらでもしたのか?

 そんなふうに考えていると教卓の前に着いた先生が話し出した。

 

「は〜い、みんな初めまして。私は星之宮知恵。この1年Bクラスの担任だよ」

 

 ふむ、あざといな。

 

「このあと一時間後に入学式があるんだけどね、その前にこの学校についてみんなに知ってもらおうかなって思うの。それさえ終わったら入学式まで後は自由だからみんなちゃんと聞いてね」

 

 そんな風に星之宮先生が言うとみんなの中で喜びとちゃんと聞こうといった感じの雰囲気を感じる。さっきの注意喚起した美少女しかり、このクラスは相当真面目な感じなんだな。

 星之宮先生はまず資料を前列の人達に配って後ろに回すようにした。こうして回ってきた資料は見たところ合格通知の時に送られてきたものと同じもののようだ。正直それなら中身は飽きるほど見たので、一切見ずとも問題ないのだがやる気をアピールするためには開いておいたほうが良いと思うので一応開いておくことにした。

 そして先生の説明が始まる、かと思ったが先生はスマホ?のようなものを手渡してきた。

 そして全員分配り終えると、今度こそ説明が始まった。

 ある程度ざっくりまとめると、この学校では3年間クラス替えはないこと、3年間外部との関わりの一切が絶たれること。大事なのはこれくらいだろう。

 まぁ外部との関わりについては事前にある程度言われていたことなので驚くことではないな。ここまで厳格なものだとは思っていなかったが。

 そして今度はこのスマホ?みたいなものの説明のようだ。

 

「それでみんなにさっき配ったのは学生証って言ってね、開くとみんなの名前だったりがでてくるかと思うからやってみて」

 

 そう言われるがままに俺は端末を開く、すると説明の通り俺の苗が表示されたわけだが一つ気になるものがある。それはこの十万ptと書かれている部分だ。

 まぁ焦らずとも説明はすぐに始まることだろう。

 

「みんなが気になるのはptの部分だよね!先生わかってます!これは見たまんまの10万ptを表していて、このptを使って学内では過ごしてもらうよ()()()()()()()()()p()t()()()()()()()()()()()()()()から大事に使ってね。ちなみにだけど1ptにつき1円の価値だよ」

 

 その説明を受けて真面目なクラスとはいえど多少クラスがざわつき始める。まぁ一高校生にすぎない自分たちに無条件に10万も渡されたわけだし無理もないだろう。この額なら学内の施設の値段がいくらかは知らないが毎日外食でも無理なく暮らせるだろう。事前の資料によれば寮内の設備は基本無料らしいし。

 だが俺が気になるのはこの学校においてptで買えないものは存在しないの部分だ。なんか妙な言い回しなんだよな。普通に現金で買うものをptで買うという説明だけすればいいはずなのにそんなふうに言うということがだ。考えすぎな可能性も全然あるとは思うがな。

 

「10万って額は意外かもしれないけどそれが()()()()()に対する学校側の評価ってことだから気にしないでいいんだよ。もう大体説明し終わったし後はこのptは毎月の初め、つまり1日に振り込まれるってことだけ伝えれば本当に終わりかな。あとは何か質問のある人はいる?」

 

 さて、ここでどう動くかが今後の学園生活の分かれ目になり得るだろう。今までの説明で俺には気になる部分がいくつかあった。そしてそれを今ここで素直に聞いてもいいわけだが、それをすれば俺に注目が集まることは避けられまい。さっきも言ったが俺はあまり実力を明かす気はない。その思想は今の説明を受けてさらに高まった。俺の仮説はまだまだ穴があるものの5割以上は当たっている自信がある。そしてその五割が当たってしまっている時点で俺は少なくとも1年の間ば実力を隠せたらなと考えている。というわけでどうしたものかといった感じだが実は結論はすでに出している。

 

 俺はこの質問の機会を捨てる。

 

 それが結論だ。もし俺以外に疑問に思い聞くやつがいて答えを聞けるならそれで良し、もし気づくやつがいないのであれば坂柳に今度接触して聞けば良いだろう。坂柳の性格的に多少の見返りを求められることはあっても、教えないということはないだろう。あいつは俺相手に楽しみたいと考えている節があるからな。

 とまぁそんな感じで黙りを決め込んだ俺なわけだが、クラスを見渡した感じ特に質問をするわけではなさそうだ。できれば坂柳に頼りたくはなかったが仕方がなさそうだ。

 ちなみに坂柳が疑問に抱いていない可能性については、、考えるだけ無駄だろう。

 

 

 ーーーーー

 

 

 そんなわけで諸々の説明をした星之宮先生は入学式の関係で先に体育館に行くようですぐにいなくなってしまった。そして生徒のみの空間になってしまったわけだがこうなればどうなるかなど分かりきったことだ。

 生徒たちは早速話し始めてしまう。俺も出遅れまいと最初の方に挨拶した男子グループの方に混ざろうと決意するのに1分近くかかりようやく声をかけようと思った時だった。またもやあのピンク髪の美少女がみんなに呼びかけたのだ。ちなみにその少女は教卓の前に先生のように立っており、いかにもクラスのリーダーっぽくなっていたし、様にもなっていた。

 

「いきなりごめんね〜。でもとりあえずまずはみんな一旦自分の席に戻ってもらえないかな」

 

 そう少女が言うとみんな反発することなく少女に従い自身の席へと帰っていった。これはこの少女が美少女だからか、あるいは見るからに善人な感じだからかどちらなのかと考えるがどちらもなのだろうとすぐに考えるのをやめた。

 

「さて!せっかくみんなに呼びかけてまで私がしたかったことと言えば自己紹介の時間だよ!私含めみんなまだ名前知らない子の方が多いんじゃないかな」

 

 簡潔にかつ朗らかな彼女の訴えに誰もが否を示せるわけもなく、俺としても否定する理由がないため受け入れることとした。

 

「まずは私からだよね。私は一之瀬帆波。中学では生徒会長をやってました。よろしくね!」

 

 そういうと彼女は出席番号順と言い、1番から自己紹介をしていくこととなった。

 俺の番が回ってくるまでの間に俺は他の人のものや中学時代のいろいろな自己紹介を参考にする。最もダメなのは名前だけを言って終わりみたいな展開だろう。だからといってはっちゃけ過ぎた場合も大変なリスクがある。成功する分にはいいが、失敗した場合は関わらないほうがいいやつ認定されることは間違いないだろう。

 やはりここは一之瀬同様の名前+αでちょっとした情報を付け足す式が妥当だろう。他の人のも聞く感じではそんなふうな自己紹介が一番多めだしな。

 

 そんなふうに俺がどんな内容を付け足すかまで考え尽くし、ようやく俺の一つ前の人まで自己紹介の順番がたどり着く。次が俺なので今のうちに多少のデモンストレーションをすましておくと、前の人の自己紹介が始まった。

 

「ぼっくんの名前は[[rb:彫縁 > ほりぶち]][[rb:円 > まる]]。ぼっくんは天才すぎてなんでもできてしまうけどみんなが劣等感を感じる必要はないんだぞ〜〜〜、、、はいここはみんなで笑うとこ!なんてね、、、イェイ!」

 

 こうして俺の前の彫縁の自己紹介が終わったわけだが。

 

 

 

 

 彫縁!彫縁〜!

 

 テメェなにやってくれてんだ。イェイ!じゃなんだよ!ただつまんない自己紹介なだけじゃなく空気を冷めさせるし俺もなんかふざけなくちゃいけない空気感出るだろっての!

 

 そんなふうにどうしたものかと悩んでいた俺に声がかかる。

 

「にゃはは〜、次は君の番だけど、、良いかな?」

 

 一之瀬はどうやらこの空気感の中で俺に自己紹介をさせるようだ。まぁ一之瀬に責められる所以はないわけなので文句はないが彫縁はいつか殺す。

 とまぁ間もそこそこ開けたことだし、空気感も少しづつだが戻りつつあるので事前の想定通りの自己紹介できただろう。

 

「ま、ま、松雄知樹です。一之瀬さん同様も、も、元生徒きゃい、、会、、でした」

 

 地獄の空気感で流れで自己紹介するのが難しく噛んでしまったが、どうやらそれがウケたようでクラスで笑い声が出てくる。これはこれで成功と言えるだろう。

 

「そっかぁ、君も生徒会だったんだね。仲良くなれる話題がありそうで良かったよ!それと私にさんはいらないよ」

 

 そんなことを笑顔で言ってくる一之瀬は非常に魅力的だった。俺でさえ見入ってしまいそうになるほどの笑顔だ。俺以外の男子なんて間違いなく惚れてしまうだろう。実際に俺に向けられたわけでもないのに周りの男子はほとんど見入っている。というか女子まで魅了してないかこれ。特に自己紹介で白波だったか名乗ってた女子生徒はやばそうな気がする。

 ちなみに俺の殺すリストに入った彫縁もニヤけているのが前の席なためいやでも目に映る。お前だけはないと思うが言わぬが花というやつだろう。

 

 その後も自己紹介は進み、ちょうどホームルームの開始から一時間経つぐらいで星之宮先生が帰ってきた。どうやら入学式にクラス全員で行くようだ。当然だが。

 

 そんな風に出席番号順に並んで体育館に俺たちは向かう。

 

 

 ーーーーー

 

 

 その後俺達は無事入学式を受け、その後はまた教室に集まってからの解散といった形となった。

 入学式ではいつもおっちょこちょいな橘先輩もキリッとしている姿が見れ、俺が中1の頃に見た橘先輩を思い出したし、これはこれで可愛らしくて良かった。ちなみにCクラスとDクラスは入学式の最中にも関わらず喋っている生徒が多くそいつらが黙るまで無言でいるという恐ろしい生徒会長がいたがこれが中々面白かった。俺があれをやるにはまだまだ経験が足りない。そう感じさせるだけの圧をあの人は放っていた。

 

 そんなこんなの卒業式を終えてからの解散後に俺が向かったのはこの学校内の施設の中で唯一の大型ショッピングモールであるケヤキモールだ。何で?入学式後に買い物なんて疲れることをするかといえば、単に生活用品なんかが寮の部屋には完備されていないからだ。

 

「松雄知樹、歩くのが遅いですよ。先の身体能力はどうしたのです?」

 

 そしてこの喋り方とフルネーム呼びからわかる通り今現在の俺の隣には森下藍がいた。

 

「別に買い物の時ぐらい急がなくてもいいだろうに。つうかお前が勝手に俺についてくって話じゃなかったのか?」

 

「えぇですから合わせています。松雄知樹なら可能であろう速度に」

 

 なぜわざわざBクラスの奴らとではなく、森下とショッピングに来ているのか。それはこいつが帰りの挨拶が終わるとすぐさまにBクラスに突撃してきやがったからだ。森下の動きはあまりに迷いがなく、何よりこいつが「松雄知樹と一緒に回りたいのです」という勘違いされかねない発言をしやがった。そしてそんな発言をされ、クラス中の視線をあんなに浴びた上で断るなどできるはずもなく、なくなく俺はこいつに付き合わされる羽目になったわけだ。

 だがその後俺が理由をちゃんと問い詰めると、本当にただ一緒に回りたいだけだったようでやっぱり読めない女だと俺は思った。ちなみに無理矢理突き合わせている自覚はあるらしく俺に付き添う形で良いとのことだったのだが、今こうして引っ張られているわけだ。

 こいつにはまともな感性があるのかないのかどちらなのだろうか?本当に。

 

「松雄知樹は見ていて何か気づきましたか?」

 

 森下は俺にそう聞いてくるが俺が素直に答える必要性は正直ないだろう。実力を隠そうと考えているわけなので言わないのが正解な気もする。しかしこいつには生徒会長のせいでちょっとした実力もバレているし、カメラとかについても話してしまったわけだし今更だろう。

 と言うわけで俺の感じた疑問を言うことにした。

 

「妙に感じた点は確かにあったな」

 

「無料の商品が売れているからですね?」

 

 どうやら森下も俺が感じた疑問点をしっかりと感じていたらしい。気づいているなら最初から確認だけしてくれれば良いのにと思うが言うだけ無駄だろう。そして俺の中で森下の評価が上がった瞬間でもあった。

 

「そうだ。先生の説明が確かなら今日二、三年生もptを振り込まれたはずだ。それなのにもう無料の商品に手を出すか、普通?見たところ無料の商品には種類にも限りがあるし、質も悪かったしな」

 

「一部の節約家のみが行っているという様子でもなさそうでした。そんなことを考えているはずもないちゃらんぽらんな女まで手を出していましたしね」

 

「となると考えられる可能性は大きく分けて二つだ。二、三年生はptの振込日が一年生とは異なっている。これなら考えなしのちゃらんぽらんが無料商品に手を出していてもおかしくはないだろう。だがまぁ俺はもう一つの可能性の方を推すがね」

 

 俺がそう言うと森下は分かっていますと言わんばかりの表情で俺の発言に割り込みながら話し始める。

 

p()t()()()()()()()()()()()()()()()、ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「森下、お前結構やるな」

 

「それほどでもありますよ」

 

 俺たちはその会話の後少しだけ買い物をしたらすぐに帰った。さっきの会話の前に結構な量の日用品は揃えていたのであれから時間はそうかからなかったのだ。俺と森下は同じエレベーターに乗るものの男子と女子は絶対に違うフロアになっているようで違う階で降りるようになった。ちなみに男子達が下、女子が上なため俺の方が先にエレベーターを降りる形となった。

 

「ではまた」

 

「またです、松雄知樹」

 

 そしてエレベーターに乗ったまま森下は上へと行ってしまった。

 森下は俺が今まで出会ってきた人間の中ではかなりおもしろいぶぶんだったので、いざいなくなると余韻が非常にあることに気づく。これは橘先輩ともう会えないのだと中学一年生の時に落ち込んだ時とも異なる感覚でどちらかといえばテーマパークでまだまだ遊び足りなかったなと後になって後悔する感覚に近いだろう。まぁ俺はそんなもの感じたことはないので実際に正しいのかは知らないがな。

 

 そんな余韻にいつまでも浸るわけにもいかず俺は自身の部屋の前に行った。俺の部屋番号は402号室で比較的エレベーターに近い位置にあり、荷物が多い今日に限っては非常にありがたかった。

 俺は寮のフロントで受け取った鍵を差し込むために一旦荷物を地面に置くことにする。そして鍵を回す。

 ガチャ、と言う音が聞こえる。だがそのあとは妙なことに二つ重なって聞こえた。片方は当然俺の目の前の扉から、もう片方はお隣の4()0()1()()()からのものの様だった。401号室の外側に誰もいないことはさっき402号室に来るまでの間に見ていたので、おそらく中から出てくるための開錠だろうとすぐに予測はついた。

 これからずっとお隣さんになるのだろうから挨拶すらしないは関係なく姿だけでも見ておくかと思い俺はそちらに目を向けながら中の人間が出てくるのを待つ。それからほんの少ししてようやく401号室の主人が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして俺は目にする。

 

 自身にとって()()()()()であり、

 

 ある種の()()を抱く人間でもあり、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()であるとすぐさまに理解させられる存在でもあり、

 

 何より()()()ここにいるはずのない、

 

 

 

 

 

 天使でも悪魔でもない、ただただ()()()()()()()()()()

 




ようやく主人公同士の対面!
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