日本国召喚〜Orbital War〜   作:ガバガバ宇宙開発センター

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08の話を書き直しました。
こちらでお話を進めたいと思います。


Launch08〜皇帝の夜〜

 

中央暦1643年10月7日夜

チエイズ王国 港近くの海岸

 

 波打ちつける白い砂浜。

 今は夜で、二つの月明かりに照らされ白が際立ちより一層美しい海岸に見えた。

 その海岸に、打ち付けられるようにしてミレケネスがたどり着いた。

 主席参謀のデルンジャの肩を借り、なんとか岸までたどり着いたミレケネスは、口から飲み込んだ海水を吐き出して嗚咽した。

 

「ぜぇっ、はぁ……はぁ……っ」

「司令、大丈夫ですか!?」

「おい、誰かタオルを!!」

 

 部下たちが叫ぶと、周囲に同じように流れ着いた水兵たちの救護に当たっていた陸軍の兵士たちが、ミレケネスに乾いたタオルを持って来た。

 ミレケネスは冷える体にタオルを当て、朦朧とする意識の中で泳いだことを思い出し、デルンジャに尋ねた。

 

「な、何が起こったの……」

「潜水艦からの雷撃です。やはり我々は待ち伏せされていました」

 

 デルンジャが詳しい状況を説明する。

 どうやら艦隊が港を脱出しようとした時、潜んでいた潜水艦から一斉雷撃を受けたらしい。

 ミレケネスはその時に頭を打って気絶してしまったようだ。元々前にも一度頭を打って血を流しており、それを根性で堪えていたのでこれは致し方ない。

 だがミレケネスはそれよりも、駆逐艦による対潜掃討を命じたはずなのに潜水艦がまだいたことに驚いた。デルンジャに問いただす。

 

「駆逐艦が爆雷を投下してたはずじゃ……」

「どうやら効果はなかったようです。今もなお、艦隊は攻撃を受けています」

 

 デルンジャが後ろを指差すと、海岸線から見える位置で今もなお、対潜水艦戦闘が続けられていた。まだ生きている駆逐艦が爆雷を投射するが、また一隻、また一隻と逆に喰われていく。

 

「……海岸が近くて助かったわね」

「どうしますか?」

「どうするもこうするも、これじゃあ本隊が来るまで何もできないわ。とりあえず港に戻りましょ、寒いし……」

 

 そう言ってミレケネスは、近くでまだ機能を保っている基地の方へと歩み出した。他の兵士たちもそれに続き、陸軍の兵士たちが案内することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

グラ・バルカス帝国 連合艦隊 旗艦グレード・アトラスター

 

 一方で、グラ・バルカス帝国海軍、連合艦隊の本隊の方はまだ西方の海域にいた。

 二つの月明かりに照らされ、澄んだ波を征く旗艦グレード・アトラスターにて、夜間にも関わらず緊急で会議が行われていた。

 書類を手に持った士官が、現場で起こった報告を読み上げる。会議室には沈黙が流れていた。

 

「……以上が、全滅した先遣第1、第2艦隊からの報告です」

「嘘、だろ……」

 

 司令官のカイザルは、第1、第2先遣艦隊の壊滅の報を聞き怪訝な顔をしていた。他の艦隊幹部たちも唖然としており、言葉が出なかった。

 

「さ、幸いにも……!両艦隊とも港が近かったため、艦隊将兵は泳いで岸に渡り、ミレケネス閣下以下大多数が生存しているようです!」

「そうか、それはよかった。だが今はそれどころではない……」

 

 かつての同期が生きていることを密かに安心しつつも、カイザルは頭を切り替え戦況を案ずる。

 どうやら報告を聞くに、日本国は遠隔地から攻撃して来たようだ。確かに以前より、日本国に関してはその技術力のレベルが推測できずにいた。遠隔地から攻撃する事も不可能ではないのかもしれない。

 しかし流石に、日本の勢力圏外からも攻撃されるとは思っていなかった。だが現実に起こったことなのだから信じるしかない。

 

「敵の攻撃は勢力圏よりも遠隔から可能ということがわかった。しかも報告を聞く限り、超高高度から一方的に撃たれたそうだ。これじゃ防げないしどうしようもないぞ」

「弾切れの可能性は?」

「考えにくいだろ……」

「敵の所在については?」

 

 カイザルたちの視線が士官に集まるが、彼は首を振った。

 

「いえ。敵艦隊の情報はおろか、現地工作員からも、日本軍出撃の情報はつかめていないそうです」

「なんという事だ……」

「じゃ、じゃあ、一体どこから攻撃して来たんだ!?」

 

 艦隊幹部たちは敵の能力の仕組みが分からず、その悔しさを拳にぶつけた。しかし机が空く叩かれるだけであった。

 

「カイザル司令、どうしますか?チエイズとグルートでの補給なしでは我々の航続距離が足りません」

「敵の攻撃は、我々の前線基地まで届くと推測されます。そのため、リーム王国の手札ももはや使い物になりません」

「一応、補給艦を使い潰せば最寄りの基地に帰還できなくはないですが……」

 

 その中で、冷静な士官たちはカイザル司令に向き直り、あらためて指示を請う。カイザル司令は腕を組んでしばらく悩んだのち、結論を出す。

 

「……どうするもこうするも、敵はチエイズとグルートまで攻撃できるんだろ?今から行ってもタコ殴りにされるだけじゃないか」

「ですが、撤退すれば帝王府からなんと言われるか……」

「そうです!これでカイザル閣下が責任を問われるのは納得いきません!」

 

 こうしてグラ・バルカス帝国海軍連合艦隊は、一気に日本国勢力圏を落とす算段を諦め、しばらく会議に徹するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ

 

 古き良き古城と天を貫く摩天楼の街、帝都ラグナ。

 第三文明圏がすでに朝に入っているのに対し、ここでは時差によりまだ深夜を回った頃だった。

 夜であるにもかかわらず、空はどんよりと曇っているのがわかる。市街地の外れに建てられた工場からの排煙が、町中に光化学スモッグをもたらしているからだ。

 日本では国内の法律で一発ですっぱ抜かれるような濃度の化学汚染が、この町では日常茶飯事であった。だが帝都市民はそれが日常なのでもはや気にする人はいなかった。

 

「よし、これは向こうに」

「はい」

 

 そんな帝都ラグナにて、帝国の政治中枢であるニヴルス城で、皇帝グラルークスは執務作業をしていた。

 深夜にも関わらず、皇帝グラ・ルークスは熱心にあらゆる執務仕事をこなし、目が疲れるのもお構いなしに作業を続けていた。

 

「……皇帝陛下、少し休まれてはいかがでしょうか?このところ睡眠時間も削られているようではありませんか……お体に触りますよ」

 

 皇族一族を補佐する王款庁の執事は、そう言って皇帝グラ・ルークスの身体を心配し、休むよう促す。

 確かに深夜まで仕事を続けるのは身体に触る。付き添っている自分は問題ないが、グラ・ルークスは皇帝なので健康も大事なはずだ。

 だがグラ・ルークスは一瞬執事に向き直ると、また目線を書類に戻し、また仕事を続けた。彼は若干窶れた声で口を開く。

 

「……そんな暇はない。私も忙しいんだ」

「で、ですが……」

「いいか?帝国は今重大な局面を迎えているんだぞ。皇帝たる私が休むわけにはいかないのだ」

「…………」

 

 そう言って皇帝は執務作業を続ける。無理して仕事をしているようにしか見えず、執事はますますグラ・ルークスの身体が心配になった。

 

「(陛下はこのところ仕事ばかりだ。やはりあの噂は本当なのだろうか……)」

 

 執事は最近召使の間で噂になっていたことを思い出し、余計に心配になる。

 なんでも、グラ・ルークスは日本に拉致された息子──皇太子カバルが心配で夜も眠れていないそうだ。

 少し前に、皇帝が寝室で魘されているのを聞いてしまった女中からの噂だ。今は皇帝らしく強気に振る舞っているが、本当は父親として、息子を最前線に送り出したことを後悔しているのではないか。そんな気がした。

 そしてそんな無駄な時間を過ごすくらいなら、と。皇帝は眠らずに仕事を済ませようとしている節がある。まるで心配事をよそに片付けるように。

 

「そういえば、あの妙なラジオの電波、犯人は特定できたのか?」

「いえ、続報は一切聞きませんね」

 

 グラ・ルークスが思い出したかのようにそう言った。妙なラジオ電波とは、今日の昼頃に全国各地のラジオ局が流した、奇妙な電波の事だった。

 その時間、普通のラジオ放送を流していた各地の電波が、何者かによってジャックされ、日本国のプロパガンダが流れたのだ。

 放送されたのは以下の文だ。

 

『我々は日本国である。

グラ・バルカス帝国の国民に告げる。諸君らの敗戦はもはや明確である。我が国への懲罰艦隊は、海上戦力の大損失を意味する。

これは我々の慈悲である。そして我々が本気である事を示す為に、8日午前0時00分をもって、帝都ラグナ、ニヴルス城、カルスライン本社を同時に攻撃する。

これは脅しではない。賢明な国民であれば避難を進言する』

 

 放送の中で、彼らは帝都ラグナを攻撃すると言っていた。しかし帝王府を含め、グラ・バルカスの帝国市民は誰一人としてそれを信じなかった。

 まず第一に、日本国がこの帝都ラグナという、星の反対側に位置するような都市を攻撃することなど不可能だ。

 そのため、これは単なる脅しであると判断され、間もなく予告の時間であるが避難勧告は一切出されていなかった。

 

「この帝都ラグナに敵の工作員が紛れ込んでいるかもしれないのだぞ。警察や防諜情報局は何をやっているのか……」

 

 それよりも、この電波ジャックを引き起こした工作員を捕まえることに帝王府は躍起になっている。発生して数時間が経つが、いまだ捕えられていないらしい

 

「聞いたところによると、電波の発信源は複数箇所あるものの、そのどれもが無人の山奥だったり海の上だったりするなど、混乱を極めているようです」

「偽装電波か……それとも犯人はすでに移動しているのか……どちらにせよ、日本国は生意気なことをしてくれる」

「早く捕まることを願っています」

 

 当たり障りなく執事がそう言うと、グラ・ルークスは万年筆をペン立てに置き、書類から目を離した。疲れた目を擦り、身体を伸ばす。

 

「……少し休むか」

「はい、どうぞ」

 

 そう言ってグラ・ルークスは席を立ち、カーテンを開いて夜のラグナを見た。スモッグの中でも夜景が美しく写り、とても綺麗だ。帝国の繁栄を物語っているようだった。

 だが、そのスモッグの空に何か見えた。光る火球のようなものが、上空からいくつも降っている。

 

「ん……?」

「どうかされましたか?」

「いや、あそこの空に何か光るものが見えた気がしたんだが……」

 

 その直後、轟音が轟いた。

 慌てて二人が窓の外を見ると、工場地帯の一角が激しく爆発し、炎上していた。

 

「なっ……」

「ば、爆発!?」

 

 扉が激しくノックされる。

 グラ・ルークスが「入れ!」と促すと、扉を開けたのは帝王府の職員だった。

 

「どこがやられた!?」

「カルスラインの本社と工場です!上空から飛行物体が突っ込んでいきました!」

「な、なんだと!?防空は何をしていたのだ!!」

「成層圏から高速で飛来してくるので、とても迎撃できません!!」

 

 そう言っている間にも、さらなる爆発音が響く。どうやらこれは攻撃らしく、迎撃も間に合っていない。

 

「くそっ、ここも危ないか……」

「城から避難しましょう!」

「分かっている。全職員はこの城から退避せよ!!」

 

 皇帝グラ・ルークスが非難を呼びかけたことにより、ニヴルス城の職員はすぐさま退避に移った。

 退避してる間、グラ・ルークスは考えを巡らせる。この攻撃は誰がやったのか、まさか帝都が爆撃されるなど。

 まさか日本国がやったのか。いや、奴らとは距離が離れすぎているからそれはない。じゃあ誰が?偶然かもしれないが今は午前0時だった。

 

「急げっ!書類を燃やす暇もないぞ!!」

 

 ニヴルス城の職員らは、証拠隠滅する暇もなく急いで城から脱出しようとする。しかしその時、上空に変な音が聞こえた。

 

「おい、なんだあれは?」

 

 誰かが空を見る。

 そこには火球のような物体が、ニヴルス城に向かって落ちている最中だった。

 

「流星?いや、違う!」

「伏せろぉぉぉぉ!!!」

 

 誰かが叫んだ途端、その流星はニヴルス城に着弾した。

 

「ぐわっ!!」

「陛下!!」

 

 様々な瓦礫が吹き飛ばされる。グラ・ルークスはさっきまで仕事をしていた執事が身を庇い、なんとか危険を回避できた。

 

「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ……」

「こちらです!急いで!!」

 

 職員に促され、グラ・ルークスは急いで車に乗る。そして崩壊が始まったニヴルス城から、なんとか退避できた。

 

 

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