日本国召喚〜Orbital War〜   作:ガバガバ宇宙開発センター

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Launch09〜閣下たちの憂鬱〜

 

中央暦1643年10月8日

チエイズ王国 グラ・バルカス帝国 海軍基地

 

 チエイズ王国の海軍基地では、未だ海兵が瓦礫の撤去や損害の修復を行っており、復旧作業中だった。

 前日の攻撃では、船だけでなく港湾設備も多大な被害を被っていた。クレーンは崩れ、倉庫はボロボロ、燃料貯蔵庫は炎上。宿舎のいくつかは屋根がなかった。

 海将ミレケネスは大穴が空いて風通しが良くなった会議室にて、他の海将達と今後の計画について議論していた。

 

「敵艦隊が進出してきてるですって?」

 

 しかしそんな時、一人の下士官が息を切らして報告を持ってきた。彼の青ざめた表情からして事態は深刻なようだ。

 

「は、はい。先ほど陸軍の地上レーダーより観測されました。方位022、速力30ノットです」

「その方角からだと我が本隊ではなさそうね……内訳は?」

「レーダー反射から見るに、空母1、巡洋艦7、不明な大型艦が1。艦隊は前衛と後衛に分かれており、後衛には輸送艦と思しき反応が9隻います」

「輸送艦……いや、揚陸艦か?まさか、この基地を狙って──」

 

 ミレケネスは敵の陣容を分析しようとしたが、その直後、基地に大爆発の音が轟く。空気が震え、会議室の床も相当震えた。ミレケネスは立ち上がり廊下に出て、近くの士官に問いただす。

 

「何事だ!?」

「て、敵の攻撃です!低空より誘導弾が多数侵入!!」

「倉庫と宿舎がやられました!さらに陸軍の駐屯地にも多数の攻撃が!!」

 

 次々と悲惨な報告が入ってくる。どうやら敵は我々が総崩れになった隙を狙い、一気に攻撃してこの島を奪い取るつもりらしい。だとしたら一度助かった自分たちの身も危ない。

 

「ミレケネス閣下!」

 

 通信担当の士官がミレケネスを呼んで駆け込んできた。

 

「陸軍の警備師団長から連絡です!敵の上陸に備え、海軍の陸戦隊を貸して欲しいとのこと!」

「……分かったわ。直ちに陸戦隊を招集、生き残った将兵にも武装させてちょうだい」

「はっ!」

「いい、聞いたかしら?敵はこれから上陸してくるわ!我々も戦うわよ!」

 

 彼女の指示を受け、海軍の将兵達も残った武器庫から武器や兵器をかき集め、陸戦に備え始める。

 陸軍の警備師団は正直当てにならないかも知れない。敵がもし上陸部隊を伴っているならば、きっと精鋭が相手だろう。練度も装備も優れたものを使ってるに違いない。

 そんなことを考えながら、ミレケネスも武器を手に取り、ついでに手榴弾を一つ手に取った。最悪の場合は玉砕すらも覚悟しなければならないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央暦1643年10月8日

チエイズ王国 とある砂浜

 

 夜が明け、戦いは更なる展開を迎える。

 チエイズ王国を囲む青い海に、灰色の艦隊がいた。中央にいるのは、海上自衛隊の船だった。真四角の甲板が特徴的で、多数の航空機を搭載している。

 彼女──護衛艦「かが」は護衛隊群と海上輸送隊を伴い、チエイズ王国のある島の方へとまっすぐ進んでいた。

 チエイズに駐屯するグラ・バルカス帝国軍は、先ほどのミサイル攻撃によって多大な損害を被り、混乱していた。

 日本側はこの機を逃さず、作戦は第二段階へと移る。「かが」に新しく設けられたカタパルトが唸り、無機質な三角翼のUAVが接続される。

 

「アトム01、カタパルトクリア。発進どうぞ」

『了解カタパルト。発艦する』

 

 カタパルトが穿たれ、UAVが射出された。甲板から海上に出たUAVは、小型ジェットエンジンをフルで稼働させ、そのまま艦隊上空へと飛び上がる。

 「かが」の甲板上では、忙しくUAVの離着艦が繰り返されていた。次から次へ、エレベーターから上がったUAVが順次並べられる。

 そして電磁カタパルトに繋がれると、UAVは次々と発艦していった。

 

「アトム、ドラミの各隊は順次発艦。上陸地点を支援せよ」

「現在現地の天候は晴れ、雲量3、風は北北東へ2ノット、飛行計画に変更はなし」

 

 フル装備で飛び上がった機体達は、そのまま艦隊上空を旋回してチエイズ王国の上空へと向かっていく。

 そのUAVが向かってく先に、白い砂浜があった。透明度の高い、チエイズ王国特有の美しい海原。時々うねる波によって水底の綺麗さが際立つ。

 海岸線には白いビーチ。プラスチックゴミすらない。自然そのものを残したその長い砂浜は、時期が時期ならバカンスで賑わっていたのかもしれない。

 そのビーチから見えるその洋上に、灰色の艦隊が展開していた。「かが」と同じく甲板を持ちつつも、航空機ではなく戦闘車両を満載したこの船は、海上自衛隊のおおすみ型輸送艦である。

 このビーチには特別な脅威があるわけでもない。強いて言うなら、この海岸には珊瑚礁があるのがネックであった。グラ・バルカス帝国軍もまさかここには上陸できないだろうと思っていたが、日本国はやるつもりだった。

 

「作戦開始!AAV(水陸両用戦闘車輌)、前へ!」

 

 唸り狂うウォータージェットの轟音と共に、上陸作戦が開始された。

 先陣を切るのは陸上自衛隊の精鋭、水陸機動団。

 箱舟のような独特な形状をした水陸両用車、AAV7が隊員達を載せて海を行く。

 内部に鮨詰めにされた隊員たちは、緊張した面持ちで戦いに挑む。

 その遥か後方では、海上自衛隊の護衛艦が上陸地点に艦砲射撃を加えて制圧していた。今のところ、水際迎撃などは見受けられない。制圧は成功してると思いたい。

 海岸線に広がる森は、もうほとんどが焼夷弾で火の海になっていた。この煙は上陸する自分たちをいくらか隠してくれるはずだ。

 

「10秒前です!」

「総員、戦闘用意!!」

 

 AAV7の中で待機していた隊員たちが、手近なものに捕まって上陸と戦闘に備える。隊員達の中には独り言で暗示をかけている者もいた。

 途中、車体がガクンと揺れるがすぐに収まった。海岸の珊瑚礁を突破したのだろう、すぐに砂浜に近づく。

 その数秒後、AAV7は海岸線に到達。キャタピュラが地面を踏んだ。今度はしっかりとした足場に取り付き、車体は安定して上陸できた。

 

「上陸完了!」

「ドア開けぇっ!!」

「ゴー、ゴー、ゴー!」

 

 AAV7の後部ドアが開く。

 隊員たちが一斉に降り、戦闘が開始された。

 その途端、上陸地点から熾烈な機関銃の射撃が加えられた。グラ・バルカス帝国軍の兵士たちからだった。

 どうやらあの火災の中でも、グラ・バルカス帝国の兵士たちは蛸壺の中で生き残っていたようだ。隊員たちに熾烈な雨霰のように十字砲火が加えられる。

 

「攻撃だ!伏せろ伏せろ!」

「AAVを盾にしろ!」

 

 隊員たちの盾になるようにAAV7が前に出る。AAV7に備え付けられた砲座が動く。上部に取り付けられた12.7mm重機関銃が、射撃を開始した。運良く生き残っていた兵士たちは、その弾丸に次々に薙ぎ払われていく。

 

「今だ!ゴーゴーゴー!」

「海岸を制圧しろ!!」

 

 この機を逃さず、隊員たちが前に出る。普通科の隊員たちが先んじて森に突入し、生き残りの兵士たちを薙ぎ払い、蛸壺を掃討。橋頭堡の安全の確保を行う。

 支援のため、AAV7も森の中に入り込む。その車体で椰子の木を薙ぎ倒しながら、力強く進んでいた。

 

「橋頭堡確保!」

「こちら水陸機動団、作戦の第一段階が完了。第二段階へ移ります」

 

 水陸機動団が橋頭堡を確保し、ビーチの安全が確保された。それを合図に、上陸部隊の第二陣がおおすみ型輸送艦からやってきた。

 ゴムのスカートを履いた筏のような、巨大なホバークラフトのLCACが、海岸線に運び込まれる。LCACはビーチに上陸すると、前方の扉を開いて重装備を展開した。

 装備の中には、全備重量44tはあろう10式戦車がいた。10式戦車は一台づつ砂浜のゴム製マットへと降りていく。ズドンという衝撃と共に、戦車がこの島に降り立った。

 戦車はさらに前進すると、椰子の木が薙ぎ倒され、一直線に開拓されたその道に展開した。戦車には第5旅団隷下、第5戦車隊のマークが描かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

護衛艦"かが" 作戦司令室

 

 一方で、上陸の要となる第5旅団の()() 弘信 旅団長は、護衛艦"かが"艦内の作戦司令室に居た。

 彼は作戦司令室のモニターの前に釘付けで注視しており、海自幹部たちと共に、上陸の様子を見守っている。

 

「第5戦車隊、橋頭堡への上陸完了。引き続き支援部隊の上陸を急がせます」

「水陸機動団、なおも橋頭堡を拡大中。現在、こちらの損害は軽微です」

 

 山下はひとまず橋頭堡を確保できたことに胸を撫で下ろす。そして帽子を取り、ツーブロックの髪型をひと撫ですると、部下たちに命令を下す。

 

「よし。戦車隊は引き続き橋頭堡の拡大を支援せよ。とにかく進軍だ、道に構うな」

「了解です」

 

 旗艦"かが"の艦橋で同じく指揮をとっていた第4護衛隊群司令官の坂野は、山下の猪突猛進なやり口とその迅速な部隊展開に息を巻いていた。

 転移後初、そして戦後初となる強襲上陸作戦であるこの"E作戦"において、山下の旅団は水陸機動団と共に戦闘団を編成。この作戦の主力を担っている。

 元々主力機甲師団である第7師団が、現在ムー大陸に派遣されている事を受け、その穴埋めとして二つの部隊を戦闘団として統合したのだ。

 しかしこのおかげで、上陸作戦で戦車が提供されることになる。隊員にとって有難いことこの上ないだろう。

 そして山下の采配も功を果たしている。彼は上陸作戦はとにかく速度が重要だと考えているのか、橋頭堡をかなり早いペースで拡大させている。この状況ならば、今回の作戦は上手くいきそうだ。

 だが坂野は同時に、その運命的な偶然を思い出して若干の薄寒さを覚る。ひょっとしたら、陸自の幹部が口々に言っていたあの噂は本当なのかもしれない。

 

 ──まさか本当に彼は()()()()()()()()()()の生まれ変わりなのか?

 

 偶然だと思いたいが、やっぱり名前が一致していて上陸作戦となると、連想せざる得ない。というか上層部も、わざと狙ってこの人事を配置したのではないかと思うくらい、あからさまだった。

 いや、ただの偶然だろう。そうに違いない。

 だがこれで月日まで一緒だったらもう目も当てられないな、と思いつつ、坂野は後ろの"お客様"へと振り向いた。

 

「いかがですか、我が自衛隊の統合作戦指揮は」

 

 坂野の後ろにいたのは、グラ・バルカス帝国皇太子のカバルであった。彼は怪我がほとんど完治し、元気に歩き回れるようになったので、ある目的のために同行させていたのだ。

 彼は「かが」のモニターを口をあんぐり開けながら見ていたが、そのうちにハッと気づいて、意識を取り戻した。

 

「……いや、すまない言葉が出なかった。最初は窓もない会議室に連れてこられてどうするんだと思っていたが、ここは作戦指揮所だったんだな」

「はい。今回はCDCと呼ばれる部屋を指揮所として使っています。本来は搭載される航空機を指揮する場所なのですが、今は陸海空の指揮系統をここに纏めてあります」

「三軍共同作戦か……我が軍では陸軍と海軍が戦場で共闘するなど、滅多に見られなかった。そこに空軍が入ってくるとなれば、尚更大変だろうに」

「ええ、大変です。しかし他部隊と連携しなければ遂行できない作戦もあります。我々が行う作戦は全てそうなのです」

 

 カバルはそれを聞いて感心していた。三軍の連携、それを繋げる高度な電子機器と通信機。これも日本国が持つ力の証なのかと、もう何度驚いたか分からないが、なんとかそれを飲み込んだ。

 日本国という国、最初は調子に乗った小国だと思っていたが、知れば知るほど、自分の国とはあらゆる技術のレベルが違うという現実を思い知らされた。

 街並み、人々の生活、兵器、あの時見て感動したロケットだってそうだ。この国の技術力は天が知れないほど高い。

 そう痛感したカバルであるが、同時にあることを不審に思った。そもそも自分はなぜこの船に連れてこられたのだろうか。

 

「……ところで、今回俺が連れてこられた目的は何かあるのか?まさかと思うが、我が国の将兵が蹂躙されるのをこの目で見ろと?」

「そうではありません。もう少ししたら、貴方の立場から将兵たちを救っていただきたいと思うのです」

 

 坂野からそう言われるが、カバルは彼の言っている真意が分からなかった。

 そこまで言うなら何か目的があるのかと思うのだが、意図が分からず、首を傾げるだけだった。

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