日本国召喚〜Orbital War〜   作:ガバガバ宇宙開発センター

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今回も毎日投稿できました。


中央暦1644年
Launch11〜航空宇宙自衛隊〜


中央暦1644年1月15日

日本国 航空宇宙自衛隊 入間基地

 

 年を跨ぎ、新世界は中央暦1644年になった。

 日本国は去年の戦いでグラ・バルカス帝国に対して大打撃を与え、彼の国との停戦が実現した。グラ・バルカスは他の交戦国とも停戦を結び、世界は新たな局面を迎えつつある。

 こうしてやっと本腰を入れて改革に臨めるようになった航空自衛隊は、この日、新しい組織への改変を宣言することとなった。

 

「情報収集・監視・通信など、宇宙空間の利用は戦略的に極めて重要であります」

 

 航空宇宙自衛隊、再編成記念式典。

 華やかに飾り付けられた、埼玉県入間基地にある式典会場の壇上にて、日本国の武田 内閣総理大臣は宇宙空間の重要性を強調した。

 

「新惑星における宇宙空間は、まだまだ未知の領域が多く、広大であります。その宇宙空間を監視、追跡し、その空間を防衛するためにも、より一層、航空宇宙自衛隊の存在は重要なのです」

 

 武田首相は式典会場に集まった航空宇宙自衛隊の幹部たちの前にて、繰り返し宇宙空間の重要性を説いた。今回の再編成は日本の防衛戦略にとって、重要な転換点だからだ。

 武田首相の演説が終わると、今度は航空宇宙自衛隊の新幕僚長が壇上に上がった。

 爽やかなオールバックの髪型の三津木が、航空宇宙自衛隊の幕僚長の階級章を引っ提げて、壇上に立つ。

 

「この度、航空宇宙自衛隊の幕僚長に就任した三津木だ。我々の作戦領域は、これからどんどん宇宙へと広がっていく。名称の変更はその第一歩に過ぎない。これから我々は、本当の意味で、宇宙へと繰り出していくのだ」

 

 三津木幕僚長は新しい組織として船出する自衛官たちに、改めて組織再編の意義を投げかける。自衛官たちは真剣な目つきでそれを聞いていた。

 

「宇宙は未知だ、危険がつきものかもしれない。しかし、私も君たちも、この日本を守りたいという気持ちは一緒のはずだ。恐れることはない、共に宇宙へと羽ばたこう!無限の宇宙が君たちを待っている!以上だ!」

「三津木 新幕僚長に敬礼!!」

 

 演説が終わると、自衛官たちが三津木に敬礼した。それと同時に、式典会場に音楽隊の演奏が響き渡る。

 式典は自衛隊歌の「平和の誓い」を、航空宇宙自衛隊にちなんだ新しい歌詞で合唱し、幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央暦1644年1月22日

日本国 種子島宇宙センター

 

 晴れ渡る空と、なだらかな海。

 種子島の今日の天気は晴れで、風も強くないなだらかな日であった。

 種子島にある宇宙センターでは、ここ最近になって敷地が広がっている。既存のVABとロケット発射場に加え、新たな敷地に二個の発射場とVABが建設中だ。JAXAはこの拡大により、H3ロケットの発射頻度をさらに向上させようとしている。

 そして今日もまた、射場にH3ロケットが設置されていた。その先端には例の「らいちょう」が取り付けられ、発射の時を待っていた。

 

『……35……34……33……32』

「ウォーターカーテン展開」

『…15……14……13……12……11……』

「フライトモード、オン」

『……7……6……5……4……』

「メインエンジンスタート」

『3……2……1……』

「SRB-A点火、リフトオフ!」

 

 H3ロケットがメインエンジンから火炎を吹き荒れる。その膨大な推力により機体はゆっくりと持ち上がり、射場から離れていった。

 発射の様子は、ロケットの丘展望台からが一番よく見えた。かつてのH2シリーズを含め、数多くの日本製ロケットの様子を見守ってきたのがこの丘だ。最近では皇太子カバルにも感動を与え、彼の人生にも多大な影響を与えている。文明圏外からこの発射を見に来る観光客も大勢いた。

 

「"らいちょう3号"を搭載したH-3ロケット13号機は、2020年1月22日午前11時12分、種子島宇宙センターから打ち上げられました」

 

 H3ロケットは高度を上げていく。カーマンラインを越え、天を貫き、太陽に手が届くくらいの速さで飛んでいく。

 その美しいロケットロードに、人々は目を奪われ感動を覚える。中には宇宙飛行士になろうと志す子供だって居ただろう。

 機体は無事に軌道上に展開した。ロケットが"らいちょう3号"を分離したとき、美しい青色の星が眼下に見えた。

 

「5……4……3……2……1……燃焼終了」

 

 "らいちょう3号"が後部のスラスターから推進剤を勢いよく噴射する。機体はランデブーのため、軌道円を調節すべく加速と減速を繰り返していた。

 

「成功です。"らいちょう3号"は目標とのランデブー軌道に移行しました」

 

 そのうちに、"らいちょう3号"は目標である僕の星へ接近できるようになった。そこからしばらく無重力空間を飛行し、目標へ接近する。

 

「目標を目視で確認、接近します」

「よし、周囲を警戒しつつ接近しろ。例のやつはまた襲ってくるはずだ」

 

 今回、JAXAの管制室には多くの自衛官がいた。最近再編成されたばかりの航空宇宙自衛隊のオペレーターたちだ。

 彼らはJAXAの職員と連携し、周囲の宇宙空間を警戒しながら”らいちょう3号”のコントロールを見守っていた。

 と、管制室に微かな緊張が流れる中。機体の警戒レーダーを確認していた自衛官が、なにかに気付いて声を上げた。

 

「っ!来ました!前方より不明な物体が接近中!」

 

 接近してきたのは大型の物体だった。前回”らいちょう2号”に接近して衝突したアニュンリールの物体よりも、幾分か大きい反応と見受けられた。改良型かもしれない。

 管制室の警戒度が上がるが。しかし、今回の彼らには秘策があった。

 

「来たか。よし、"あめがさ"を展開せよ」

「"あめがさ"、射出します」

 

 航空宇宙自衛隊のオペレーターが、操作端末から”らいちょう3号”に新たな指令を送る。

 すると”らいちょう3号”のカーゴが解放され、内部から人工衛星が二つ、姿を現した。

 人工衛星は金色の耐熱素材に太陽光パネルを張り付けた小型のもので、折りたたまれた白い円錐の機構を持っていた。

 ”らいちょう3号”から射出された人工衛星は、ソーラーパネルと各部に取り付けられたスラスターを展開。冷却ガスを噴射し、らいちょうの後方に展開する。

 

「不明物体、画像に出ます」

 

 ”らいちょう3号”に接近する不明物体が、管制室のモニターに表示される。

 物体は細長い円柱形で、小型ではあるが軌道調節機能を持ち、その先端には武装らしき円筒が取り付けられていた。航空宇宙自衛隊の分析官がその場で画像を拡大し、この場の幹部に進言する。

 

「……やはりキラー衛星です。あの機体、無反動砲らしきものが搭載されています」

「分かってる、"あめがさ"を配置して時間稼ぎだ!目標の回収急げ!」

 

 ”らいちょう3号”が目標の僕の星に接近し、目標の回収を急ぐ。その間、射出された人工衛星が”らいちょう3号”を守るように展開。折り畳まれていた円錐状の機構を展開し始めた。

 その時だった。接近する不明な物体から閃光が迸る。

 

「敵機、発砲!」

 

 管制室に戦慄が走る。不明な物体から発射された無反動の散弾砲は、魔法由来の光の弾を発射し、”らいちょう3号”へと飛来していく。

 しかし、光弾は”らいちょう3号”に到達する前に人工衛星"あめがさ"によって防がれた。"あめがさ"に搭載された円錐状のショックシールドが光弾を受け止め、内部の多重構造で破片を最小限に軽減したのだ。

 

「"あめがさ14号"、ショックシールドにて威力を減衰!"らいちょう3号"にダメージはありません」

「よしっ、止めたぞ!」

 

 そのうちに、”らいちょう3号”は僕の星に接近し、ロボットアームで物体をカーゴに格納していた。内部で僕の星を固定し、ミッションは完了した。

 

「目標の回収完了!カーゴ閉じます!」

「トンズラするぞ。帰還シークエンスに入れ!」

 

 指示を受け、”らいちょう3号”はスラスターを吹かし、現場の宙域から離脱を開始した。機体を加速させ、帰還シークエンスに入る。

 その間、"あめがさ"が”らいちょう3号”を守っていた。不明な物体は二発目の光弾を発射しようとしたが、"あめがさ"にぶつけられて軌道が逸れ、それは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央暦1644年1月23日

アニュンリール皇国 皇都マギカレギア

 

 裏の魔導都市こと、皇都マギカレギア。

 この日も天を貫く円錐状のビルが立ち並び、幾何学模様の窓が太陽の光を反射し、煌めいていた。

 そんな都市の中心地。政治中枢のオラナタ城の執務室にて、()()()()()()()の長官ヒスタスパは、皇帝ザラストラに報告を行なっていた。

 

「僕の星がまた一基、日本国によって回収されてしまいました」

 

 ヒスタスパは残念な報告を皇帝に伝えざる得なかった。

 事実として、先日の宇宙空間での戦闘にて、日本国の"らいちょう3号"は僕の星の回収をアニュンリールの妨害下の中でも成功させていた。

 皇帝ザラストラの眉が曇る。皇帝の煌めやかな目が、少しばかり鋭くヒスタスパに向けられる。

 

「ふむ。最近日本国への衛星攻撃は失敗続きなようだな」

「申し訳ありません……」

「まあいい。それで、何が原因かわかるか?」

 

 皇帝は叱りつけるよりも対策を求めた。ヒスタスパは衛星攻撃が通用しなくなった理由と原因として、現在判明している情報を述べる。

 

「日本軍が宇宙空間に本格介入を始めたようです。デブリを防ぐことが可能なシールドを衛星に搭載し、我々の攻撃を防いでいます」

「日本軍が介入か……奴ら宇宙空間の戦略性に本腰を入れたな。打開策はないのか?」

「今のところは……やはり衛星の攻撃力に制限があるのが辛いところです」

「だろうな。デブリが最小限になるよう、接近して無反動の魔導散弾砲を撃ち込む衛星を作ってみたは良いが……今度は防がれてしまうようになったか」

 

 ザラストラは顎に手を当て、低く唸る。

 アニュンリールの目的は僕の星の保護だ。デブリの影響を考えると、コントロールが効かない遠距離からの直撃は危険すぎると考えた。

 そこで、至近距離から散弾を撃ち込む衛星を開発して今回打ち上げたものの、今度は日本国の防衛衛星に防がれる程度の攻撃力に下がってしまったようだ。

 

「やはりもっと強力な武装を積んだ衛星を打ち上げたいです。もしくは、有人宇宙船による直接的な拿捕や攻撃を目論むか……」

「どちらをやるにせよ、今のリトス級魔導飛翔体では無理があるな」

「日本国はグラ・バルカスとの戦いで衛星軌道上から艦隊を攻撃したそうです。これが事実ならば、我が国の本土はすでに奴らの射程圏内……いつ攻撃されてもおかしくありません」

 

 ヒスタスパは外交部から流れてきた情報に懸念を示していた。

 それは日本国がグラ・バルカスを攻撃するのに衛星軌道上から誘導弾をぶちまけたというものであり、ザラストラも同じ懸念を示している。

 これが事実ならば、アニュンリールの本土も射程圏内ということになる。彼らは何かしらの理由で躊躇しているのかもしれないが、もし攻撃が起これば、アニュンリールは反撃できない。

 

「奴らに遅れを取るようなことは許されん。これは魔帝のみならず我が国の危機でもある。ロケット・衛星の能力向上と、有人武装宇宙船の開発を急げ」

「ははっ」

「よし。それから、攻撃型魔導飛翔体に関しての進捗はどうなっている?」

 

 ヒスタスパに釘を刺して下げると、ザラストラは次の話に移った。空軍のバルガス大将が、ヒスタスパの代わりに一歩前に出て報告をする。

 

「はっ。前回、ミリシアルを射程に捉えた攻撃型魔導飛翔体"アルギラ2世"の弾道飛行に成功したことを受け、これより日本国を射程に納めた攻撃型魔導飛翔体"アルギラ3世"の開発に取り組みます」

 

 バルガス大将は、現在空軍で開発が進んでいる大陸間攻撃兵器について、その進捗を述べた。

 今のところ、"アルギラ2世"は量産が承認され間も無く配備が開始される予定だ。これでアニュンリールはいつでもミリシアルを攻撃できることになる。

 

「うむ、そっちは順調なようだな。この調子で頼むぞ」

「ははっ」

 

 いずれは日本国まで射程に納めた機体を開発するとし、バルガス大将はより一層の開発促進を誓い、報告は幕を閉じた。

 




次回もお楽しみにです!
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