日本国召喚〜Orbital War〜 作:ガバガバ宇宙開発センター
なら私が作るぜ!という見切り発車です。
Launch01〜不吉を呼ぶ雷鳥〜
中央暦1643年7月15日
日本国 種子島宇宙センター
日本国が異世界に転移してから数年後。
戦国の世の時には鉄砲の伝来、今日では宇宙開発の一大拠点として、日本の革新を牽引してきたこの種子島にて、また歴史的なロケットが打ち上げられようとしていた。
多くの人々が、その様子を今か今かと機体を込めて見守っている。彼らから対岸に見えるそのロケットは、白と淡いオレンジに彩られた日本の新型ローンチヴィークル──H-3ロケットだ。
今回打ち上げられるH-3ロケットの先端には、白と黒に彩られた大型の機体が取り付けられていた。新型の往還機が今日本格的に打ち上げられるのだ。
その機体の見た目は、耐熱タイルと滑らかな機首、そして主翼が伸びている。宇宙船に詳しい日本人が見れば、かのスペースシャトルのようだと連想するだろう。しかしこの機体は無人であり、人は搭乗していない。
『……35……34……33……32』
「ウォーターカーテン展開」
『…15……14……13……12……11……』
「フライトモード、オン」
『……7……6……5……4……』
「メインエンジンスタート」
『3……2……1……』
「SRB-A点火、リフトオフ!」
カウントダウンと同時に、ロケットの一段目エンジンが点火された。液体燃料を燃やし尽くし、白い煙が発射台から噴火のように広がっていく。
推力を得たH3ロケットが、ゆっくりと発射台から離れる。機体の速度は次第に上がっていき、発射台から大空へと飛び上がった。
次第に速度が上がり、どんどん高度を上げていく。雲を突き抜け、H-3ロケットは天高く上る。地上からはロケットロードと、エンジンの光だけが見えている。見えるロケットはもはや豆粒のような小ささになっていた。
「SRB燃焼終了。ブースターをジェットソン」
H-3ロケットの側面に取り付けられたブースターユニットが、燃焼を終了しパージされる。切り離された6基のブースターは、花が開くよう規則的に落下していった。
「現在、機体はカーマンラインを通過中」
エンジンが機体を天と宇宙の境目まで連れていく。それからしばらくして、第一段目エンジンが燃焼を終了した。
「第一段、燃焼終了。ジェットソン」
一段目エンジンが切り離され、落下していく。それと同時に第二段目エンジンの『LE-7』が点火され、さらに高いところへ機体を連れていく。
大気圏を突破した。無重力の空間を浮かぶように放り出される感覚。機体は上昇エネルギーを糧に、放物線を描いて飛んでいく。
「第二段、燃焼開始します」
第二段が点火された時、ロケットは残りの燃料を用いて水平に加速し始めた。衛星は星に対して水平に加速することで、周回軌道へと移行できる。
真空空間での効率が高い『LE-7』により、加速は順調に進んでいく。機体はやがて星の周回軌道へと達していく。
「第二段、燃焼終了」
機体の加速が終了。地上では管制室が静まり返る中、機体が新惑星の周回軌道に入ったことが確認できた。機体は予定の軌道に達し、周回軌道に入る。
「"らいちょう一号"、分離します」
二段目エンジンと往還機を繋ぐセパレーターが分離された。切り離された無人往還機は、そのまま宇宙空間に放り出される。
往還機も衛星周回軌道に乗った。二段目エンジンは逆噴射を行い、海上に落下処分される軌道に突入していく。残った往還機は、今回行われる重要なミッションに遷移するため、周回を続けた。
無人往還機"らいちょう"。それがこの機体に付けられた名前だ。
スペースシャトルと似た構造の主翼と滑らかな胴体、そして11tまでの物資を搭載可能なカーゴベイを備えている。本家スペースシャトルよりも小型だが、日本が初めて保有した往還機にしては大型で意欲的と言えるかもしれない。
今回、機体は新惑星を一周しながら軌道傾斜角を調節した後、ある目標に向けて軌道の微調節を開始する。後部スラスターから微量のガスを噴射し、目標へのランデブー軌道へと加速していく。らいちょうの方が楕円を描いて接近する、いわゆるホーマン遷移軌道だ。
「遷移完了。目標へ接近」
数時間の周回を経て、らいちょうは目標へ接近した。目標は、転移当初からこの惑星を周回し続ける謎の人工衛星。光学カメラで捉えられたそれは、青銅がさびたような色をした円柱状の物体。先端に球状の物体が搭載され、後部には四本の脚が伸びている。
らいちょうは機体と目標の相対速度を合わせるべく、遠点上で加速を開始。距離が急速に縮まっていく。目標との相対速度がほぼゼロになった時、機体と目標は完全に並走した。
らいちょうのカーゴが開く。格納されていたロボットアームを伸ばし、目標に接着する。そしてロボットアームを機用に使用し、らいちょうのカーゴにそれを治める。らいちょうは格納庫が大型でペイロードが高く、サンプル回収任務にも対応していたのだった。
「回収完了。帰還シークエンスに入ります」
目標の回収を終えたらいちょうは、帰還のため機体を裏返しの態勢に遷移する。その体制で逆噴射を開始し、機体はゆっくりと減速する。
それが終わると、機体は底面を地表へ向け直し、大気圏突入の態勢に入る。らいちょうはそのまま白いプラズマに包まれ、大気圏へと突入していく。
中央暦1643年7月16日
アニュンリール皇国 皇都マギカレギア 魔帝省
南方世界の長として君臨するアニュンリール皇国。
その意図的に文明水準を偽装し、高度な文明を隠しているこの国の中心地は、この世界で片手の指に入るほど美しく発展していた。
円と曲線を基調とした高層建築物が、摩天楼のように立ち並び魔導車が高速道路を走る姿は、60年代のアメリカ・ニューヨークを思い起こさせる。
もし彼の国が開国をしていたのなら、間違いなくミリシアルのルーンポリスを超え、世界一の魔法都市として輝いていることだろう。
それもこれも、この国が古の魔法帝国の遺産を使って極度に発達したからだった。この国の運命は魔法帝国と共にあると言ってもいい。
「これは……間違いないのか?」
その魔帝の復活を支援する魔帝省の執務室にて、長官ヒスタスパ・デュラムは部下からの報告に眉を顰めた。
「はい。観測データに間違いはありません。惑星軌道上の"僕の星"が、何者かの宇宙機によって回収されたのです」
「あの魔法帝国の遺産を回収されてしまったというのか?そんな、ありえん、こんなことが……」
ヒスタスパはこの報告に激しく狼狽した。僕の星とは、時間転移魔法を用いて逃亡した魔法帝国が、この世界に復活するために必要な座標ビーコンの一種である。魔法帝国はこのビーコンの信号を頼りに、この世界に着陸を果たすのだ。
現在も地上や宇宙空間に多数存在し、それらは経年劣化を防ぐ魔法により、転移から一万年経った今でも稼働している。一部はアニュンリール皇国が回収に成功しており、魔帝省に保管されている。
そして宇宙空間には星を囲むように35基ほどが配備され、こちらも稼働し続けている。しかし、その大切な座標ビーコンが何者かに回収されたという。
回収された事もそうだが、
「長官、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられるか。魔法帝国の遺産で、しかも座標ビーコンだぞ。それがどこの誰ぞに奪われて回収されるなど、あってはならないことなのだぞ!どこのどいつだ、そんなことしたのは!?」
あまりに狼狽しすぎて、ヒスタスパは多少パワハラ気味なのも無視して部下に詰め寄る。部下は少したじろいだが、傍にいた天文学者がかれをフォローした。
「……観測データより、その宇宙機は全て第三文明圏から打ち上げられていることが判明しました。それも、第三文明圏の海上からです」
「第三文明圏だと?」
「はい。今回の案件で怪しいと思われるのが、日本国という国です」
ヒスタスパはその国の名前をどこかで聞いた覚えがあったので、少し考えて思い出そうとする。
「……前にエスペラントの件で報告があったあの国か」
「はい。エスペラントの時と合わせ、ビーコンを解析された場合には……」
「まずいな……いや非常にまずい、宇宙空間にあるビーコンが魔帝復活のカギだというのに、それを回収されでもしたら……」
「我らも皇帝陛下からのお怒りを食らうのでしょうか……」
「それもまずい。いや、しかし隠蔽するというわけにはいかん。ここは私が直接報告を行おう」
ヒスタスパは胃がキリキリと痛むのを感じつつも、なんとか正気を保つ。そしてこの国の長へ、どのようにして報告するべきかを考え始めた。
次回も近いうちに投稿します。
お楽しみに!