日本国召喚〜Orbital War〜   作:ガバガバ宇宙開発センター

9 / 15
ギリギリでしたが投稿できました。
あとそれから、「召喚世界は月が二つある」という事に気づきましたので天体ページを修正しておきました。


Launch07〜鎌を振り下ろす〜

中央暦1643年10月7日

チエイズ王国 グラ・バルカス帝国海軍 第1先遣艦隊

 

 夜、誰もが寝静まって人の営みが消えかかる頃。

 辺りは暗く、光はこの港以外にはほとんど見られず、空には満天の星空が輝いていた。まるで船乗りを導くように広がるその星々に照らされ、史上最大の艦隊は補給作業を続けていた。

 補給作業は間もなく終わる予定だ。艦隊は出港の準備が始まっており、交代で半舷上陸をしていた乗組員たちももうほとんど戻ってきている。

 そんな艦隊を統括する大戦艦"バルサー"艦橋下にて、艦隊司令官ミレケネスは海を見据えながら司令官席に座っていた。すでに仮眠は済ませており、これから出港する艦隊の様子をここで見守っていたのだ。

 と、ミレケネスが眠気覚ましにコーヒーでも持ってこようかと思ったとき、傍らの参謀デルンジャが見張りからの報告を伝える。

 

「司令、見張りから報告。2時の方向に流星群だそうです」

「あら、珍しいわね。どれどれ……」

 

 デルンジャからそう伝えられ、ミレケネスはゆっくりと席から立ち上がって、双眼鏡を手に艦橋の窓から空を見た。

 すると確かに、艦から見て二時の方向に流星群が見えた。綺麗な青い尾を引き、かんかんと光る流星が沢山落ちていくのが目に映る。その綺麗な流星を見て、ミレケネスやほかの参謀たちも感化される。流星が落ちていく度、思わず「おお……」と声を上げた。

 

「綺麗ね。あれほど沢山の火球は滅多に見られないでしょうに」

「美しいですな。まるで我らの旅路を祝っているようです」

「自然の神秘、というやつですな」

 

 多くの将校たちは、流星群というイベントを見て各々の感想を漏らす。やはり異世界でもこういう天体イベントは尽きないものなのだと感心しつつも、ある若手将校が縁起でもないことを言い始める。

 

「うーむ、私は何か嫌な予感がします。火球は不吉のシンボルでもありますし……」

「ほ、報告!」

 

 だが彼の不吉な言葉は、通信士官の報告により遮られた。

 どたどたと、艦橋の扉をノックもせずに入ってきた通信士官は慌てた様子で司令官に報告する。

 

「司令、日本国からの警告文を繰り返し受信しました。"日本国より警告、直ちに引き返すべし、さもなくば攻撃する"……と」

「ほう?」

 

 ついに日本国が表に出て来た。

 敵と対峙したのを皮切りに、ミレケネスは観光気分から艦隊司令へと切り替わる。帽子をそろえ、報告して来た通信士官に向き直る。

 

「わざわざ位置を露呈するような降伏勧告を出すなんて、奴ら馬鹿なのかしら。で、発信源は?」

「それが……見つからないのです」

「なんですって?」

 

 そんなはずはない。ミレケネスは思わず聞き返した。

 しかし通信士官は首を横に振い、通信が送られて来た状況を詳しく伝える。

 

「すべて位置が大幅にずれています。しかも不可解なことに、そのうちの一つはこの港からと算出されました」

「もしかして潜水艦?いや、それにしたって位置がずれているのはおかしいわ。港のやつはまさか工作員が……」

「現地人の人払いはしているはずです。周辺の警備は陸軍警備師団の担当ですが……」

 

 ミレケネスは考えを巡らせる。

 もし潜水艦、または工作員がいるとしたら、こうして港で流暢に補給を待っている時間はないかもしれない。

 潜水艦の魚雷は、物によっては港の港湾施設を破壊する威力だってある。工作員に関しては、今すぐ動かなければ取り逃す可能性だってあった。

 わずかな時間でそう考えたミレケネスは、即座に部下に命令を飛ばす。

 

「補給は後!この港は敵潜水艦に囲まれている可能性があるわ!対潜駆逐艦を湾外に出し、敵潜水艦を燻り出しなさい!」

「はっ!」

「陸軍の警備師団にも連絡を!現地人の中に工作員が紛れている可能性がある、こっちも燻り出すのよ!」

「はいっ!」

 

 その命令を合図に、部下たちが艦隊に指示を出す。そのうちに、艦隊に対日戦に備えて少数だけ組み込まれていた対潜駆逐艦が湾外に先行し、対潜哨戒を開始する。

 駆逐艦の捜索を囮にしつつ、艦隊は出港準備を整えていた。今すぐにでも港から出ないと危ないと判断したため、緊急出港することになった。すでに炉には火を入れてあるので、準備ができた船から出港する。

 

「全く、一体奴らどこから我々を監視して……」

「れ、レーダーに反応ありッ──距離1.000.000、高度80.000に飛行物体多数!」

「なんですって!?」

 

 だがその時、今度はレーダーの監視員が悲鳴のような声を上げた。旗艦バルサーに搭載された大型艦用のレーダーが、超上空から飛来する目標を探知したのだ。

 

「なんて高高度にいるんだ!なんだそれは、飛行機械なのか?重爆か!?」

「わ、分かりません……現時点では不明!」

「目標はいきなり高高度に現れました!飛行物体はまっすぐこちらに向かって来ます!速度は……さ、3000ノット以上ッ!!」

「3000ノットだとぉ!?」

 

 目標が突っ込んでくるそのとてつもない速度に、艦橋要員たちはまずその数値を疑い、狼狽する。

 

「……デルンジャ、これは敵の攻撃だと思うかしら?」

「意図的にこちらに向かっているのならば、間違いありません。我々は隕石によって破壊されるようなものです」

 

 主席参謀のデルンジャは、相手の速度からその威力を想像し、ミレケネスに忌憚なく伝えた。レーダー上の数値が正しければ、戦艦ですらも一撃で大破する攻撃力だろう。

 ミレケネスはデルンジャの予想を聞き、全力で命令を下す。

 

「全艦に通達、これは敵の攻撃だ!なんとしてでも叩き落とせ!!」

「りょ、了解!!」

「対空戦闘ヨーイ!!」

 

 一気に艦内が騒がしくなる。出港準備を整えていた乗組員たちが、一斉にそれぞれの持ち場について対空戦闘に備える。港の方もサーチライトが照らされ、緊迫が流れ始めた。

 目標がさらに接近する中、ミレケネスは艦長に問いただす。

 

「艦長、主砲で迎撃できるかしら?」

「やってみます。確率は五分五分と言ったところですが……」

「やるしかないわ」

「了解です──甲板乗員は退避せよ!これより主砲による迎撃を試みる!」

 

 バルサーの艦長、レスポート大佐がマイクを手に取りそう言った。

 その号令を合図に、甲板で銃座に取り付いていた乗組員が艦内への退避を始める。主砲の衝撃波は人間の生命を脅かすほどなので、こうした措置が完了するまで主砲は撃てない。

 幸いにも、退避はすぐに完了した。

 

「各甲板長より退避完了の報告来ました!」

「主砲、照準完了!」

「主砲、発射用意……撃てっ!!」

「発射ぁ!!」

 

 退避完了と共に、レスポート艦長が主砲発射の合図を送る。それと同時に、バルサーの41cm連装砲が4発、流れ星が見えた空に向かって盛大に放たれた。

 砲弾は高い放物線を描いて飛んでいき、三号対空炸裂弾が目標に対して壁を作るように破裂した。内部から小弾がまき散らされ、それが更なる爆発と破片をまき散らす。

 

「砲弾炸裂!目標は……け、健在です!」

「何っ」

「第一波があと十秒で本艦に到達します!」

 

 しかし、目標はその爆風をすり抜けた。何機かは破片で損傷していたが、勢いを止めるには至らなかったのだ。

 レーダー監視員から悲鳴のような報告が上がる。レスポート艦長は一瞬死を覚悟し、即座にマイクを取って叫んだ。

 

「総員、衝撃に備えっ!!」

 

 艦橋要員を含めた全員が、身近な何かに摑まって衝撃に備える。

 その直後、流星は旗艦バルサーへと着弾した。艦橋がひっくり返るのではないかと思うくらいの衝撃が、大戦艦を揺らしてその衝撃を露わにした。

 

「ぐわっ!!」

「うわぁっ!!」

 

 摑まるのが遅かった人員はその場に倒れ、転倒して頭を打ったりした。

 艦内でも同じような光景が広がる。転倒するだけならまだしも、爆風に飲まれて蒸発したり、火災に飲み込まれるなど凄惨を極めた。

 

「くっ……」

「司令、大丈夫ですか!?」

「私は問題ないわ。損害は?」

 

 艦内に火災警報が鳴っている。あちこちからブザーが鳴っているのが、艦橋からでもわかった。

 どうやらかなり損害は大きいらしい。レスポート艦長が報告を求めて叫ぶ。

 

「艦内、損害報告!」

『右舷装甲区画貫通!火災が発生しています!現在消火中!』

『主砲バーベット、一番二番ともに亀裂発生!前方主砲は旋回不能です!』

『右舷、対空砲座も全滅です!負傷者多数、今すぐ救援を!』

『各所で負傷者多発!救護が追い付きません!』

 

 艦内は悲惨な状況だった。バルサーの右舷から侵入した3発の滑空弾は、全て主要装甲区画を貫通。内部で威力を発揮し主砲や対空砲座を壊滅させ、大ダメージを与えていた。

 幸いにも浸水は発生していないため、沈むのは免れた。しかし、上部構造物は深刻なダメージによって機能不全になり、戦闘など望めなかった。

 艦橋では、ミレケネスも頭を打って血を流していた。しかし彼女は根性でその痛みに耐え、ゆっくりと椅子から立つ。

 傍らでは、デルンジャが艦隊の状況をメモにまとめていた。ミレケネスにそれを報告する。

 

「司令、今の攻撃で戦艦のうち本艦を含む2隻が大破、巡洋艦は5隻が大破、駆逐艦は10隻沈没。空母は全艦炎上で全滅したも同然です」

「何てことだ、これでは艦隊はボロボロではないか……」

「どうしますか、動ける艦隊はまだいます」

 

 ミレケネスは考えを巡らすが、すぐに結論が出た。

 

「……こんな損害では、日本艦隊とですらまともに戦えん。主力部隊をこうも多数失った以上、ここは撤退する」

「了解です。各艦に撤退を伝達します。よろしいですね?」

「ああ……」

 

 デルンジャが最後の確認を取り、ミレケネスは頷いた。

 そしてバルサーでは総員退艦命令が出され、旗艦の移譲が開始された。幸いにも、ここは港湾内だったので代わりの船はすぐに見つかるだろう。

 

「皆、私の実力不足だ。すまない……」

 

 戦う前に艦隊が機能不全に陥ったことを誰かに詫びながら、ミレケネスはデルンジャの肩を借りながらバルサーの艦橋を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

チエイズ王国 沖合30km地点 海中100m

 

 月明かりすら届かない海底。

 そこに真っ黒な吸音タイルに身を包んだ鋼鉄の鯨が、ゆっくりと港へ向かって進んでいた。

 先ほど、第1先遣艦隊は人工衛星から放たれた警告文を潜水艦の仕業だと思って混乱していたが、実際のところ、海上自衛隊の潜水艦はこの海域に確かに存在していた。

 しかし彼らは警告文を放つわけでもなく、航空宇宙自衛隊の攻撃を待って、とにかく息をひそめて潜り続けていたのだ。

 

「敵艦隊、湾内からこちらに向かってきます。速力25ノット、湾外に出た船から加速しています」

 

 まもなく潜航限界に達するかと思ったその時、敵艦隊に動きがあった。

 海上自衛隊の潜水艦"そうりゅう"の司令室で、艦長の恒星 次男 二等海佐はその戦況をモニターで見据えていた。

 

「逃げるつもりでしょうか」

「ああ。空自……いや、()()()()()()()の攻撃が相当堪えているようだな。必死になって湾外から出ようとしている」

 

 恒星はわずかに言い間違えそうになるが、ぐっと堪えてその名を呼んだ。相変わらず呼びにくい名前だなと思いつつ、副長は苦笑い気味に答える。

 

「そりゃあ、誰だって宇宙から攻撃されたら撤退を選びますよ」

「それもそうだな」

 

 恒星艦長は自分たちの認識外からの攻撃で混乱していたであろう敵に哀れみを向けつつ、そんなふうに言った。

 そう言っている間に、敵艦隊は湾外に次々と脱出していた。間も無く敵はこちらの長魚雷の有効射程に入る。

 

「よし、頃合いだ。攻撃準備!」

 

 その合図とともに、発射管が開放され水が入ってくる。発射管にはあらかじめ装填されていた6本の89式魚雷が、鎌首を携えてその瞬間を待っていた。

 

「すまんな。出口を狙うのは卑怯だと思うが、悪く思うなよ」

 

 恒星艦長は誰に向けるでもなく、独り言のようにそう言った。そしてしばらくの沈黙の後、命令を放つ。

 

「攻撃開始!!」

 

 空気が抜けるような音と共に、魚雷が海中に放たれた。雷速40ノットを超える海神の槍は、敵艦隊が放つその音響目掛けて真っ直ぐ進んでいく。

 




次回もお楽しみにです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。