聖園サナとのファーストコンタクトから数週間が過ぎた現在。
「もう嫌っ!! こんなことやってらんない! 分かんない! つまんない! めんどくさい! それもこれも、全部先生とシエルのせい!!」
“えぇ、私……?”
私は補習授業部の顧問として、部員達の勉強に付き合っていた。サナが過去問を基に問題集を作ってくれたので、私としては比較的やりやすかった。それでも問題を抱えた生徒
丁度今私に不満をぶつけているピンク髪の小柄な生徒は正義実現委員会所属の1年生、
「もう、コハルちゃん。そんな無茶苦茶なことを言ったら、先生が困ってしまうでしょう?あくまで先生とシエルさんは私たちを助けるために来てくださってるんですし……」
そう言って助け船を出してくれたのは2年の
「そもそもコハル様が試験に落ちさえしなければ、このような無様な姿を晒すことはなかったはずです」
「うっ……!! わ、私は正義実現委員会の一員だから! それで、授業に出られないことが多くて―――」
「正義実現委員会に所属している生徒の成績は全て把握しているのですが、試験に合格できなかったのはコハル様だけでした。よって、コハル様は単純に学力が足りていないということになります」
「……」
教育係のシエルもハナコと同じ2年生。口調こそ丁寧で大人しいのだが、この様にかなり辛辣なことを言うのも一度や二度ではない。また、元ホストの秘書を務めているためか、独自の情報網を持っているようだ。
「アズサ様はどう思われますか?」
「まあ、それも強ち間違ってはいない。仕方のないものは仕方ない、人生は往々にして虚しいものだ」
「確かに人生は苦痛の連続ですからね……そういうこともあります」
シエルに会話を振られたのはこれまた同じ2年の
「ああもう、うるさいなぁっ!? そんなこといったらあんたたちもみんな一緒じゃん! 私がバカならここにいる全員バカでしょバーカ!!!!」
「ただし、教育係である私は例外です」
「あはは……。えっと、それはその……」
不満を露わにするコハルを前に返事を詰まらせていたのは
「な、何も間違ってないでしょ? バカだからここにいるんでしょ!?」
「バカかどうかと言われたら、私も否定できませんね……。何せ、試験があるのを知ったうえで『お姉様』を優先したわけですから……」
「ちょっ、ステラは黙ってて!! あとその『お姉様』って誰なのよ!?」
話に加わってきたのは1年の
「それはそれとして、コハルさんはもう少し落ち着いた方がいいですよ……」
「落ち着いてなんていられないわよ! みんな仲良く退学になりそうな、こんな状況で……! もし退学になったら……せ、正義実現委員会のメンバーじゃ、なくなっちゃう……うぅ……」
「もちろん私も、退学になるつもりはない。何をしてでも、例え惨めな思いをしても、乗り越えてみせる」
「まあまあ、退学になったからといって何もかもが終わりというわけではありませんから、気楽に行きましょう。むしろ……」
「あ、あのっっ!!」
「……ヒフミ様?」
退学を恐れ神経質になっているコハルを落ち着かせるべく他の生徒達が必死になる中、補習授業部にヒフミの声が響く。あまりに突然だったので、シエル以外は言葉に詰まっているようだ。
「あ、えっと、その……。こうして集まっているのは、そもそも退学せずに済むようにするためですし……。取り合えずその、今はみんなで知恵を寄せ合って、何か良い方法を探さないと……。そうしないと、1週間後には本当に仲良く全員退学、なんてことに……」
「『知恵を寄せ合う』……なるほど、悪くないのですが、あまりグッと来る感じではありませんね。もう少しこう、何か……」
補習授業部の顧問をしばらく担当していた私には、これから何が起こるのか察してしまう。
「ここは例えば、そうですね……『弱くて敏感な部分を寄せ合う』、という形でいかがでしょう?」
「い、いきなり何言ってんの!? 下ネタはダメ! 禁止! 死刑! 敏感な部分って、何をどう寄せ合おうっていうわけ!?」
「口ではそう言ってますけど、本当は興味があるんじゃないですかぁ~?」
「ちょっ、ちがっ……とにかく、ステラも黙ってて!!」
そう、ハナコが卑猥なワードを口にし、コハルが過剰なまでの拒絶反応を見せるのだ。更にステラもその手の分野に詳しいらしく、こういう時に限って必ず絡んでくる。試験当日に『お姉様』の追っかけをしていたこともそうだが、その積極性を他のことに活かせないのだろうか?
「では、実際にやってみせましょうか。もう少しこう、脚を開いていただいて……」
「浦和ハナコ様、小壁ステラ様。流石にこれ以上は私としても見過ごせません。これからお2人に『教育的指導』を施しますので、巻き込まれたくない方は今すぐこの部屋から離れてください」
「シエルさん……?」「し、シエル先輩……!?」
2人が『行為』を実行に移そうとした瞬間、私の隣で立っていたシエルが
この
「……せ、先生ぇ……」
“うん、私も頑張るね”
「よ、よろしくお願いします……。このままだと、本当に……私たちみんな、退学に……」
問題児揃いの補習授業部、このままで大丈夫なのだろうか? そんなことを考えながら、私は補習授業部の5人―――正確にはヒフミを除く4人―――と初めて会った日のことを思い返した。
Tips:
憧れている『お姉様』の追っかけを実行するために試験を欠席、補習対象となった。