ブルーアーカイブ 双翼のレクイエム   作:環星党

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今回は独自要素強めです。


第4話 天体観測部の生徒たち

 補習授業部の部員5人のうち、4人が私の下に集まった。ただし最後の1人が来ていない以上、補習授業部の活動を開始することはできない。そう思った私は、部室で待っていたシエルにステラのことを聞いてみた。

 

“ねぇシエル、ちょっと聞いてもいいかな?”

 

「何でしょうか? 先生に協力するよう、サナ様から指示を受けていますので」

 

“この『小壁(こかべ)ステラ』って子、どんな生徒なんだろう?”

 

「その程度のことであれば、私に聞かずとも自分で調べるべきですよね? 本来であればあなたの指示に従う義理はありませんが、サナ様からの指示がある以上、今回は特別に調べておきました」

 

「やけに仕事が早いな」

 

 私に聞かれずとも、彼女の方で事前に調べていたとは。アズサの言う通り仕事が早過ぎるのではないだろうか。まあ、ティーパーティーで元ホストの秘書を務めるには、それだけのスペックが必要だということなのだろう。そんなことを考えている私に構わず、シエルはこう続けた。

 

「小壁ステラ。トリニティ総合学園高等部に在籍の1年生で、誕生日は6月29日。前回の健康診断では身長157cm、体重―――」

 

「要点だけ教えて!!」

 

「失礼しました。小壁ステラは天体観測部所属の1年生で、試験を欠席したことにより補習対象となっています。詳細な情報はこのBDにまとめてあるので、後でご確認下さい」

 

“分かった、後で確かめておくよ”

 

 シエルが体重について言及しそうになったためか、センシティブな話題に敏感なコハルがすかさずツッコミを入れる。やはりキヴォトスにおいても、乙女の体重を口にするは禁則事項なのだろうか? そんな中、私はシエルの口にした『天体観測部』というワードが気になってしまった。

 

“天体観測部……?”

 

「エノク分校を拠点とする、『星を追いかける』ことが目的の部活動です」

 

「星を追いかける、か……考えたこともなかったな」

 

「あはは……私もよく知らないんだよね……」

 

「実際に行ったことはないですけど、夜の営みが盛んなところだとお聞きしていますね」

 

「ちょっと、『夜の営み』って何!? ……何度か会ったことはあるけど、昼間は暇そうな感じの人たちよ」

 

“うん……”

 

 天体観測部のことを知るためにも、実際に行ってみる必要がある。補習授業部の最後の1人が所属しているとなれば尚更だ。私は部員4人とシエルを連れ、エノク分校に向かうことにした。

 

***

 

 エノク分校はトリニティ自治区の北部、本校から少し離れた山の麓に位置している。『分校』とは呼ばれているものの、今では専ら天体観測部の活動に使われているようだ。

 シエル曰く、トリニティ総合学園は複数学園の統合によって誕生した歴史があるため、その名残として今でも数多くの分校がトリニティ自治区各地に残っているらしい。また、トリニティ総合学園に3人の生徒会長が存在するのも、トリニティ三大派閥の基盤となった『パテル』『フィリウス』『サンクトゥス』という3つの主要な学園に由来するそうだ。

 

“シエル、運転お疲れ様”

 

「礼には及びません。あなたはサナ様が信頼するに相応しいと判断したお方ですから」

 

“……この堅苦しい話し方、どうにかならない?”

 

「申し訳ないのですが、その要望にはお応えしかねます」

 

“そうなんだ……”

 

 寂れた雰囲気を漂わせるエノク分校の入り口では、青い目と灰色の翼、天体望遠鏡のレンズを思わせる形状のヘイローを持つ青髪ポニーテールの生徒が待ち構えていた。彼女も天体観測部の部員なのだろうか? そんな中、最初に口を開いたのはシエルだった。

 

「イサキ様、シャーレの先生と補習授業部の皆さんがお越しです」

 

「待っていたぞ、シャーレの先生よ。コハルも久方振りだな。私は3年の柳生(やぎゅう)イサキ、この天体観測部で部長を務めている」

 

“はじめまして、イサキさん……”

 

「はじめまして、イサキさん……補習授業部の部長、阿慈谷ヒフミです……」

 

「白洲アズサだ」

 

「はじめまして、柳生イサキさん。浦和ハナコです」

 

「……久しぶりね、イサキ先輩」

 

「話はシエルから聞いている、ステラのことだな?」

 

“そうだけど……”

 

 イサキに連れられて建物の中に入ると、100人を軽く超える人数の生徒が思い思いの活動に取り組んでいた。これだけの数の部員がいるのは予想外というか、なんというか……。そう思っていると部員の1人、オレンジ系の髪と紫の瞳、雪の結晶を思わせるヘイローを備えたボーイッシュな生徒が話しかけてきた。

 

「驚くのも無理はないよ。この天体観測部はトリニティ総合学園で最も部員の人数が多い部活の1つで、今では200人近い生徒が所属しているからね。ただ、イサキ先輩が1年の頃は今ほど大きな部活じゃなくて、今でも3年は彼女だけさ。

―――おっと、自己紹介が遅くなったね。ボクはツボミ、鈴原(すずはら)ツボミさ。キミがシャーレの先生だね? 生憎ボクはキミを先生だなんて大層な肩書きで呼ぶつもりはないけど、他に相応しい呼び方がある訳でもないから、仕方なく『シャーレの先生』と呼ばせてもらうよ」

 

「なんか嫌な奴ね……」

 

「あはは……」

 

「……ああ、理解しているとも。キミがボクのことを『こいつは痛いヤツだ』と考えていることぐらいは。でもボクみたいな『高2の癖に中二病』の女の子なんて大抵そんなものさ。兎に角よろしく、シャーレの先生」

 

“うん、よろしく……”

 

 そんな調子でツボミと話していると、水色の髪をツインテールにまとめた生徒がツボミに注意を促した。眼の色は赤、ヘイローはシンプルなリング状で、中央には青い正八面体が浮かんでいる。

 

「ちょっとツボミ、初対面の相手に馴れ馴れしく話し過ぎよ! もう少し距離感とか考えたらどうなのよ?」

 

「レムの意見にも一理あるけど、こればかりは譲れないんだ」

 

「もう、何考えてるのよこの馬鹿! ……あたしは2年の屋島(やしま)レム、ここの副部長よ」

 

“はじめまして、レムさん。シャーレの先生です”

 

「あなたがシャーレの先生ね。ステラを呼んでるって聞いたから、さっそく連れてきたわ」

 

 どうやらレムの後ろに隠れている、金色の瞳と灰色の翼、二重円と六芒星を模った魔法陣を思わせるヘイローを持つ紫髪ショートの生徒が件の小壁ステラらしい。

 

「い、1年の小壁ステラ、です……よろしくお願いします……」

 

“よろしくね、ステラちゃん”

 

 シエルのまとめたBDによると、ステラは試験を欠席したことで補習対象になったようだ。だが、彼女がどんな理由で欠席したのかまでは分からなかった。より詳しい情報を得るために、私はステラと話をすることに決めた。

 

“ねえステラちゃん、どんな理由で試験を欠席したのかな?”

 

「それはもちろん、憧れの『お姉様』に会うためです! 『お姉様』のためなら試験の1つや2つ受けなくたって大丈夫ですから!」

 

「普段のステラは内気で引っ込み思案、でも『お姉様』が絡めば周りが見えなくなる悪い癖があるのさ。まあ、『お姉様』といっても実の姉妹じゃないんだけどね」

 

「あはは……」

 

「なるほど、ところでその『お姉様』というのは誰なのでしょうか?」

 

「ハナコ先輩……でしたっけ? ネタバレは厳禁ですよ?」

 

「あたしも他の部員に同じ質問をしたんだけど、誰も教えてくれなかったわ。ただ、天体観測部には『お姉様』の信者が結構な数いるみたい」

 

「そうですか……それならこっちで調べておきますね」

 

“うん……”

 

***

 

「兎に角、ステラにはやり直す機会を与えてやってほしい。それが部長である私の想いだ」

 

“ありがとうございます”

 

「勿論キミと離れるのが寂しくない訳じゃない。でもステラには、部室の角から夜空を見るだけでは見えない、もっと明るい世界を知ってほしいんだ」

 

「ツボミ先輩……」

 

 天体観測部の部員達との話を終えた私は、ステラも含めた5人とシエルを連れ、エノク分校を後にした。勿論、帰り道もシエルの運転だ。この調子なら、明日には補習授業に取り掛かれるだろう。

 

 これが私と4人、そして天体観測部の皆との出会いである。この出会いがどんな意味を持つのか、この時の私は気付いていなかった……




Tips:
天体観測部。『双翼のレクイエム』におけるオリジナル部活動。部長は柳生イサキ。
名前通り星を追いかけることを目的としているが、活動内容は夜空に浮かぶ星を見るだけに留まらないようだ。
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