ブルーアーカイブ 双翼のレクイエム   作:環星党

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第2話から少し時間が飛びます。
追記:内容の一部を大幅に変更しました。


第5話 水面下の陰謀

 補習授業部の結成から数週間が経ったある日のこと。私はサナに呼び出され、ティーパーティーのテラスを訪れていた。補習授業部の5人が受けた第一次特別学力試験、その結果を報告するためである。サナは私に気付くや否や、手に持っていたティーカップを机に置いてこう言った。

 

「調子はどう、先生? ……まあ、シエルから話は聞いてるんだけどね」

 

“残念だけど、上手くいかなかったよ”

 

「合格*1したのはヒフミちゃん*2とステラちゃん*3の2人。アズサちゃん*4とコハルちゃん*5は不合格だったけど、点数自体は順調に上がってるみたい」

 

 紅茶の注がれたティーカップを目の前で揺り動かす彼女の話を聞いていると、話題に出ていない生徒が1人いることに気付く。

 

“あれ、ハナコは?”

 

「ハナコちゃんは……1問以外全問不正解*6で不合格だったのよね? でも、実はそこだけ本来の試験範囲じゃないのよ」

 

“……えっ?”

 

「シエルからも聞いてると思うけど、前のハナコちゃんはとっても賢かったのよ。1年の頃から既に3学年全部の筆記試験を受けて満点合格、私たちティーパーティーも必死になってあの子のスカウトに向かったんだけど、断られちゃった……」

 

 確かにシエルはハナコについて『類稀な才覚を備えた優等生』と称していた。アズサやコハルに勉強を教えていることから、その頭脳は今でも失われていないのだろう。サナは紅茶を飲みながら話を続ける。

 

「でも2年に入ってから急に成績が落ち込んできて、今では補習授業部の仲間入り。その理由が知りたくなったから、1問だけとんでもなく難しい問題を仕込んでみたの。こう見えて私、頭はかなり回る方なのよ」

 

“そうだったんだ……”

 

 ハナコの成績不振の裏に何があるのか、私にはよく分からない。それでも彼女に何か困ったことがあるのなら、じっくり話し合ってみるのが先生の義務だ。私が決意を固めようとしたその時、眉を顰めながら紅茶を飲み終えたサナはこう言った。

 

「だとしても酷い話だと思わない? 三次試験までに全員が合格できなかったら、5人まとめて退学しろだなんて。ナギちゃんの考えも分かるけど、流石にやり過ぎよね……」

 

“……どういうこと!?”

 

「ナギちゃんが言うには、5人の中に『トリニティの裏切り者』がいるみたいなのよ」

 

“裏切り者?”

 

「その説明をする前に、まずは『エデン条約』の話をするわね」

 

 エデン条約。私がサナと初めて出会ったその日、ナギサが口にしていた言葉である。それが一体どのようなもので、『トリニティの裏切り者』とどう関係してくるのだろうか?

 

「エデン条約っていうのはトリニティとゲヘナ、2つの学園の間に結ばれる不可侵条約よ。このトリニティ総合学園はお隣のゲヘナ学園と昔から仲が悪いみたいで、何かあればすぐトリカスだの角付きだの言い合って銃撃戦になるのよ」

 

“だから、その争いを防ぐためにエデン条約を結ぶんだね”

 

「大雑把に言えばそんなところかな。正確に言うなら、トリニティとゲヘナの上層部が選出したメンバーで構成されたエデン(Eden)条約(Treaty)機構(Organization)、略してETOが中立のポジションで2学園間の争いを解決するのよ。でも生徒同士の小競り合いとかは防ぎようがないから、大規模なテロ事案とか学園に向けた敵対行為とかが対象になるんじゃないかな?」

 

“成程……”

 

「そしてエデン条約の締結を阻止しようと目論む『裏切り者』が、このトリニティ総合学園の何処かにいるみたいなんだよね。これは飽くまで噂なんだけど、セイアちゃん……本来のホストだった『百合園(ゆりぞの)セイア』も、その『裏切り者』に襲撃されて意識不明みたいだし」

 

“襲撃……!?”

 

「当事者のセイアちゃんが行方不明だから、噂の真偽は確認できてないんだけどね。 ……まあ、そのことでナギちゃんが疑心暗鬼になってるのは理解できるけど、5人の中に裏切り者がいなかったらどう責任を取るつもりなんだろう? それに、もし裏切り者がいたとしても、巻き添えを喰らった他の子たちは―――」

 

 

「これ以上文句があるなら、ロールケーキをぶち込みますよ!?」

 

 

 声がした方を振り返ると、ロールケーキを構えたナギサがテラスの入り口付近に立っていた。

 

「……少し取り乱してしまいましたね。補習授業部の裏の事情に関しては、サナさんの仰った通りです。そのことを踏まえて、私からも頼みたいのですが……」

 

“それって……?”

 

「……補習授業部にいる裏切り者を、探していただけませんか?」

 

「ちょっとナギちゃん、その裏切り者が補習授業部にいると決めつけるのはまだ早いんじゃないかな? ……まあ、先生が生徒を疑いたくない気持ちは分かるけどね」

 

“だからこそ、5人の潔白を証明してみせるよ”

 

「それなら私たちティーパーティーも先生に協力するね。もし困ったことがあれば、お姉ちゃんに任せなさい!」

 

 

 

「お姉ちゃーん! もうすぐ時間だよー!」

 

 

 

「……でもごめんね、今からミカとお出かけの約束があるの。だから私は先に帰っておくね。さよなら!」

 

 テラスの真下から声が聞こえたので覗いてみると、ミカが手を振りながらこちらを見上げていた。サナはすぐさまテラスから飛び降り、ミカを連れて何処かに去っていった。

 

「サナさん……」

 

 残されたナギサは呆れたような顔でそう言うと、テラスから去っていった。時間が時間なので、そろそろ私も帰るとしよう。

 

“サナ、ナギサ、さよなら。また今度ね”

 

 さて、明日からは補習授業部の合宿だ。一体どんな内容になるのだろうか? だが、先程サナが口にしていたティーパーティーの本来のホスト、百合園セイアについて調べておいても良いかもしれない。

*1
100点満点中60点以上で合格

*2
阿慈谷ヒフミ:78点

*3
小壁ステラ:69点

*4
白洲アズサ:49点

*5
下江コハル:37点

*6
浦和ハナコ:2点




Tips:
オリジナル生徒のイメージCVは以下の通りです。
聖園サナ:生天目仁美
粟国シエル:水瀬いのり
小壁ステラ:和泉風花
柳生イサキ:井上麻里奈
屋島レム:相坂優歌
鈴原ツボミ:青木志貴
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