霞「奴等のデカい顔も癪に障らないか?」 作:文才の無い本の虫
――うーん、Верныйが居なかった時の話かぁ
――じゃ、天津風と初めて会ったときのことを話そうか
大本営に報告書を送ってから、丸一日が経った。
膝の上で霞がイライラしてて大変怖い・・・・・。
「・・・・・」
「あー、上は無能だったみたいだねぇ・・・・・ハハハッ」
「笑い事では無いのだが?」
「すんません」
確かに笑い事じゃあ、無い。
引き続きの時に矩郎さんが『周辺海域の哨戒任務は一ヶ月程私の方で受け持とう。任一郎君は呉の立て直しを優先してくれ』と言ってくれたからまだどうにかなっている。
そんな状況。
流石に許可と資材が無ければ建造や哨戒任務すら覚束ない。
・・・・・時間も掛かることだし事後報告で建造だけやってしまおうかな?
「うーん、どう思う?」
「主語が無いが・・・・・どうせ
「おーうアウトロー・・・・・」
「お前も大概だよ」
スミちゃんならやりかねないのがなんとも・・・・・。
まあ、それはそうとして。
「妖精さーん」
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ぽんぽんと妖精さん達が至る所から現れる。
俺は妖精の『声』を聞きながら、言う。
「建造を頼んでも良いかい?」
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「資材はコレ位で・・・・・」
俺は妖精さん達に要望を伝える。
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「頼んだよ」
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そうして妖精さん達は消えて行く。
相変わらずメルヘンというか、摩訶不思議だね。
「さてと・・・・・建造が終わるまで数日あるし、その間はゆっくりしますかね」
「ふむ。では私がコーヒーを煎れてやろう」
「お、やったー。じゃ、俺はスミちゃんの好きな猫ちゃんクッキーでもお茶菓子に出しますかね」
「・・・・・大盛りだ」
「はいはい」
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「ん?」
霞が煎れてくれたコーヒーを置き、妖精さんが抱えている手紙を手に取る。
その手紙から、卵焼きの匂いがしたので誰からか一瞬で分かった。
俺はその手紙を丁寧に広げる。
『“任一郎君へ。どうやら呉は大変な様だ。私の同僚が済まないことをした。お詫びといってはなんだが、大本営にも掛け合って補填は約束させたので有効活用してくれると嬉しい――――
千文字くらいの惚気は置いておいて。
最後の方の文、少し嫌な予感がする。
「あちゃー・・・・・ちょっと雲行きが怪しいね」
「ふむ。お前がそう思ったなら急ぐべきだな。今直ぐ向かうぞ」
「え゛」
「今から向えば昼には着くだろう。準備をしろ、任一郎」
「・・・・・はーい」
「ハハハハハッ!!偶にはこう云うのも良いねぇ!!」
「ほう、余裕そうだな。なら速度を上げるぞ」
「おーっと失言。ていうか今40ノットは出てるよね??」
「機関出力上昇!!舌を噛むなよ!!」
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「あーーー、疲れた。帰りはもうちょっと安全運転して欲しいかな」
「ふ・・・・・考えておこう」
港に即席ボートを留め、俺達は横須賀の鎮守府の中を歩いて行く。
「久し振りだな!!主任!!」
「ハハハッ!!君も元気そうだね!!」
「おうよ!!」
見覚えのある艦娘が手を振ったり、声を掛けたりしてくれるのを返しながら進む。
暫くして、鎮守府の建物の入口に矩郎さんと瑞鳳さんが立っているのが見えてきた。
「久し振りですね、任一郎君っ!!」
「こうして面と向かって会うのは久し振りだね、任一郎君。相変わらず君と霞君は仲が良いね」
「ハハハッ!!矩郎さんと瑞鳳さん程ではありませんよ。それで、話というのは?」
「うん、中で話そうか」
「はいっ!!私はお茶とかの用意をしてきますね!!」
瑞鳳さんがぱたぱたと走っていき、俺達は矩郎さんの後に付いていく。
相変わらず此処は隅々まで清掃されている。
「任一郎君、霞君。座りたまえ」
矩郎さんは、執務室のソファーに座った。
「では、話をしようか」
何度やっても、慣れないなぁ。
こう云う真剣なのって性に合わないんだよね。
「で、矩郎さん。今回はどんな面倒事ですかね?」
「ふむ・・・・・面倒事といえば面倒事だね。まず、要件は三つある」
矩郎さんは指を三本立てた。
「一つは派閥争いについて。もう一つは次期大規模作戦について。最後は私の個人的な話だよ」
「瑞鳳さんとの惚気はやめて下さいよ?」
「ははは。それは後にするとも」
話すのかよ・・・・・。
そうして、矩郎さんは横から書類を取り出した。
「これを」
俺はソレを受け取って目を通す。
『建造許可』『次期大規模作戦概要』『艦娘異動届』・・・・・ん?
俺は「駆逐艦天津風」「移動先:呉」と記入された紙を抜き出して言う。
「この二つはわかりますが、コレは?」
「はじめに言った私の個人的な話だよ。取り敢えず派閥争いについてから話そうか。そろそろ瑞鳳も来るだろうしね」
そして執務室の扉が開かれ、瑞鳳さんが入って来た。
卵焼き片手に。
「提督ぅ、はい。どーぞっ!!」
「ありがとう、瑞鳳」
「任一郎君と霞ちゃんにも、どうぞ!!お茶請けに瑞鳳特製の卵焼きですっ!!」
「ハハハッ!!
「ふむ・・・・・お茶請けとは?」
俺は瑞鳳さんから受け取った卵焼きを軽くつまみ、卵の風味がする茶を飲んで矩郎さんを待つ。
「さて、話そうか。任一郎君の・・・・・いや、呉鎮守府の今後に関わってくる事だ。霞君も心して聞いて欲しい」
「ええ」
「・・・・・」
横で霞が頷く。
それを見た矩郎さんは話し始めた。
「まず、派閥は三つある。一つ目が私や柿崎君の様な艦娘を仲間として扱い、終戦を目指す『艦娘派』。
二つ目が青梅提督を筆頭にした艦娘を兵器として扱い、終戦ではなく深海棲艦を殲滅し、弱った外国を手中に収めようとする『兵器派』。軍部過激派も多いから『タカ派』とも呼ばれているね。
最後が何方とも言えない『中立派』。彼らは本土から遠かったり、前に任一郎君が居た鎮守府の様な哨戒任務だけの『灯台』に多い」
成る程。
続けて矩郎さんは言った。
「今なら戻れるよ」
・・・・・。
俺は茶で喉を潤す。
そして、立ち上がって矩郎さんを睨んだ。
「ハハハッ。矩郎さん、俺の事舐めてます?」
「任一郎君?!」
「良いんだ、瑞鳳」
ああ、俺は今
「俺は昔矩郎さんと瑞鳳さんに言ったことを曲げる気はありませんし、なあなあで甘んじるつもりも無い。派閥争い?知った事か」
俺は――分かり辛いが――少し不安気な霞の頭を撫でる。
あー、後で殴られそう。
「俺は
「青梅提督は君が思っているより手強い相手だ」
「あ、そう。で、それが何か問題・・・・・ですかね?」
おっと、危ない危ない。
霞の鋭い視線は無視しよっと。
「俺は、あのクソ野郎が上でデカい顔をしてるのが癪に障る。『タカ派』の敵に回る理由として充分でしょ?」
「・・・・・ははは、完敗だね。謝るよ、任一郎君。私は心の何処かで君を侮っていたのかもしれない。歓迎しよう、任一郎君」
矩郎さんは立ち上がって右手を差し出してきた。
俺はそれを握り返した。
――コレが、大きな転換点だった
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それから、次期大規模作戦に付いての話は簡単に終わった。
大本営の草案を要約すると『いや~最近色々厳しくなってきてさ〜だからもうちょーっと海域取り戻そうぜ!!』って感じらしいんだよね。
要するにまだ確りと決まってないから準備だけしておけってことらしい。
で、矩郎さんの要件の三つ目が問題だった。
「矩郎さん・・・・・正気ですか??」
「頼めるのは君だけなんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・わかりました。取り敢えず面会させてもらいます。それで駆逐艦「天津風」を受領するか考えます」
「済まない。頼んだよ、任一郎君」
そうして、俺はある駆逐艦の部屋の前に来ている。
俺はカウンセラーじゃないんだけどねぇ・・・・・。
えーっと、フランクな感じで行こうか。
「もしもーし。入っても大丈夫ですかー?」
・・・・・返事無し。
押し入るのもなぁ。
だがしかし、会わなきゃ始まらん。
俺は、ドアを開けた。
「君が天津風で合ってる?」
暗がりの中から、声がした。
「ええ・・・・・解体でも何でもすれば良いわ」
「うん?」
「戦えない私なんて、さっさと解体しなさいよ」
ツーサイドアップに纏めた白銀の髪に、弱々しい眼光。
彼女に何があったかは聞いた。
だからこそ、気に入らない。
俺は彼女に近づいた。
「何よ」
「俺は主宮任一郎。君を引き取りに来た、君の嫌いな提督さ」
「ッ!!」
彼女は、その瞳で俺を睨んだ。
その時、俺は息を呑みそうになるのを無理矢理抑えて笑った。
「ハハハッ!!良い目だ!!」
見惚れる程に、良い目だった。
彼女は、まだ立ち上がれる。
俺は彼女を――
お持ち帰りってやつだね。
「へ?」
「じゃ、行こうか!!」
「ちょ、何するのよ?!」
「はいはーい。暴れない暴れない!!元気があるのは良いことだけどね!!ハハハハハッ!!」
「可笑しいでしょ?!」
矩郎さんから書類も貰ったし、取り敢えず帰ろう。
霞も外に待たせてるしね。
「待たせたね、霞」
「この!!離しなさいよ!!」
「・・・・・・・・・・なんだ、誘拐犯か」
「酷くないかな?!」
主宮 任一郎
パワフル提督。戦艦の艤装等も整備していたのでかなりの力持ち&タフネス。
駆逐艦「霞」
無論、任一郎の腹筋を殴った。
「駆逐艦を辱めて喜ぶか・・・・・変態め」
駆逐艦「天津風」
任一郎にお持ち帰り(物理)されている艦娘。
東間 矩郎
横須賀の提督。嫁艦は瑞鳳。愛妻家(超重要)。
軽空母「瑞鳳」
矩郎の嫁艦。初期艦でもある。卵焼き狂い。