霞「奴等のデカい顔も癪に障らないか?」   作:文才の無い本の虫

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第六話「天津風との一日、朝」

 

 

 

 

 

「深夜0時。日付が変わったわ」

 

 

「あ、もうそんな時間か」

 

 

俺は作業を止めて、工廠の壁に掛かった時計を見る。

 

時計の針はちょうど真上を指していた。

 

天津風も律儀だねえ・・・・・。

 

 

「一旦休憩にするかな」

 

 

すると目の前に湯気を立てるカップが差し出された。

 

 

「はい、あなた。コーヒーよ」

 

 

「お、ありがとう天津風」

 

 

俺はそのカップを受け取る。

 

うん、良い香りだ。

 

天津風の座ってた椅子の横に可愛らしい花柄の魔法瓶が置いてあるから、きっと何時もの様に彼女が淹れてくれたものだろう。

 

 

「どう?」

 

 

「うん、美味しいよ」

 

 

「そう?よかった!」

 

 

そう言って天津風は花が咲いたような笑顔を見せてくれる。

 

あれから――天津風が来てからもう三ヶ月が経った。

 

駆逐艦や軽巡洋艦だけでなく、戦艦や重巡も増えて順調に呉は大きくなっている。

 

ま、艦隊運営に関しては霞と大淀にほぼ丸投げしてるから俺が提督だって事を知らない艦娘も結構いる。

 

寧ろ食堂の人とか、工廠の人とかが俺の通称だ。

 

 

「ふわぁ・・・・・あたしは少し眠くなってきたわ。あなたはまだ休まないの?」

 

 

「高雄姉妹の艤装の修理とかが残ってるから、それが終わったら休むよ」

 

 

俺は手を止めずに答える。

 

矜持・・・・・俺の提督としてのプライドの様なものかな。

 

俺は、命令することしか出来ない。

 

だから、最大限出来ることはやっておきたい。

 

そう思う事は傲慢なのかねぇ。

 

 

「・・・・・あなた、まさか()()()徹夜するつもり?」

 

 

「いやいや、終わったら休むのは本当だよ?」

 

 

「はぁ・・・・・程々にしなさいよ」

 

 

まあ、程々に(全力で)頑張るさ。

 

三日位なら寝なくても死なないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ・・・・・程々にしなさいって言ったのに・・・・・・・・・・そんな所も嫌いじゃないけど・・・・・また霞に怒られるわよ」

 

 

「あー、その時は一緒に怒られてくれるかな?」

 

 

「・・・・・仕方無いわね・・・・・ふわぁ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あの後椅子に座って寝てしまった天津風に毛布を掛けて作業を続けて一時間。

 

高雄姉妹の艤装の修理は終わったので予備の砲身や装甲板を作っていたら、霞が見回りに来た。

 

まあ、案の定・・・・・俺は冷たい工廠の床に正座させられている。

 

 

「任一郎、貴様は何時になったらその性根(ワーカーホリック)を直すんだ?うん?」

 

 

目の前には霞が腰に手を当てて仁王立ちしている。

 

うっかりスミちゃんなんて呼ぼうものなら鉄拳が飛んできそうだ。

 

 

「ま、直るわけないよね」

 

 

「ほう・・・・・久し振りに私と訓練がしたい、と?」

 

 

おっと失言。

 

ハハハッ・・・・・霞の額に青筋が浮かんで見えるね。

 

 

「ほら、霞・・・・・提督も悪気があった訳じゃないのよ?それぐらいにしてあげたら?」

 

 

「・・・・・はぁ。天津風、任一郎の秘書艦はお前だ。此奴の健康管理も業務の一環だぞ?」

 

「うっ・・・・・わかってるわよ」

 

 

すると霞は少し天津風の事を見てから言った。

 

 

「ふーん・・・・・なら良い。兎に角だ・・・・・任一郎、貴様は休め。働き過ぎだ馬鹿者。良いな?休めよ?次見回りに来て作業をしていたら手足を縛った後に布団に括り付けるぞ?わかったな、天津風」

 

 

「えっ?!」

 

 

「連帯責任と言うやつだ。妥当な案だろう?」

 

 

そう言って霞は帰っていった。

 

さて、休めって言われちゃったし何をしようかな。

 

 

「ねぇ、あなた。少し夜風に当たらない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「良い風ね」

 

 

「ああ・・・・・良い風だ」

 

 

俺と天津風は鎮守府の屋上に来ていた。

 

場所は違うが、あの時の様に二人並んで座り込んで風に当たっている。

 

月はまだ浮かんでいて、星が幾つも見える。

 

時間はゆっくりと流れて行く。

 

 

「あなた、少し寝た方が良いわ。保たないわよ?」

 

 

「まぁ、そうだね」

 

 

俺は頷く。

 

死なないとは言ってもパフォーマンスが落ちるし、いざとなった時にソレだと困るしね。

 

 

「私は寝たから少ししたら起こしてあげるわ」

 

 

「・・・・・天津風、お願いできるかな?」

 

 

「ええ。おやすみ、あなた。良い夢を」

 

 

「ああ、おやすみ」

 

 

そうして俺は壁に寄りかかって目を閉じた。

 

良い夢を、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――司令官』

 

 

「あー・・・・・久し振り、で合ってるかなВерный。ちょーっと聞きづらいんだけど・・・・・コレ、悪夢?」

 

 

『それは司令官が判断する事だよ。一つだけ・・・・・いや、二つ言いに来たんだ。()()()じゃ最後だからね』

 

 

「最後?ちょっと待て・・・・・Верный、君は」

 

 

До свидания(ダス ヴィダーニャ)・・・・・司令官、浮気は程々にね』

 

 

「結婚したことすら無いけど?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あなた、朝よ」

 

 

天津風の声で目が覚める。

 

・・・・・何か変な夢を見た気がする。

 

 

「あー・・・・・おはよう、天津風」

 

 

俺は続けて聞いた。

 

 

「で、何で俺は君に膝枕をされているのかな?」

 

 

「嫌だった?」

 

 

「いや、嫌では無いけれど」

 

 

寝心地は最高だし。

 

そんな性もない事を考えていると、天津風は少し心配そうに言った。

 

 

「あなたが少し魘されていたから・・・・・少しはマシになると良いなと思ったの」

 

 

・・・・・。

 

俺は手を伸ばして天津風の頭を撫でる。

 

 

「な、なっ、なぁっ?!」

 

 

「ありがとう、天津風」

 

 

「・・・・・どういたしまして」

 

 

暫くして、空が少しずつ明るくなっていく。

 

夜明け前の風が吹く。

 

天津風が水平線の向こうへ視線を向けた。

 

 

「あなた、今日が始まるわね」

 

 

「ああ」

 

 

俺は天津風の膝枕から起き上がって背を伸ばす。

 

 

「んじゃ、今日も一日頑張りますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はい、簡単な物だけど朝食は用意しておいたわ。和朝食でいいわよね?」

 

 

「お、ありがとう・・・・・・・・・・うん、良い味だ。この味噌汁も毎日飲みたいくらいだよ」

 

 

「毎日飲みたいっ?!な、なんてこと言うのよ!!・・・・・・・・・・それぐらい、毎日作ってあげるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・またやってるのか彼奴等は」

 

 

「ええ。微笑ましいですね、霞教官」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









天津風
任一郎の現秘書艦。無論、練度は最大(Lv99)。尚、呉鎮守府で秘書艦になれるのは霞の訓練に出なくてもいいと言われている艦娘のみ。



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