異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証- 作:とーふ@毎日なんか書いてる
カー君を旅のメンバーに加えた私達は、次なる聖人の居る場所へ向かって突き進んでいた。
順調。順調である。
順調なのである!!
「何度言ったら分かるんだ? お前は」
「……はぃ」
「闇は日に日に力を増している。それはお前も理解しているな?」
「はぃ」
「だというのに、寝転がっているジジイが居たというだけで駆け寄り、道の途中で休んでいるババアが居たというだけで話しかけ、泣いているガキを見かけたら飛びつく。お前に学習能力は無いのか?」
「ありません!! あっ、いたい! いたい! あたまグリグリしないで下さい! 反省してます! 反省してますから!」
リアムさんはいつもの様に腰に手を当てながら私の頭に拳を当てて、強く押し付けていた。
しかし、負けない!
私は負けないぞ! 困っている人がそこに、って、いたたたたたた!
「痛い! 痛いです! 反省しているって言ったのに!」
「お前、最近ソレを言えば許されると思ってるだろ? 別に許されねぇからな? それに、目が反省してねぇって言ってんだよ」
「う、うぅ」
「俺だってこういう事は言いたかねぇが、こうも連続しちゃあ言わなきゃダメなんだ。分かるだろ?」
「……はぃ」
「最初。次の街に行くまでに三日の予定だった。どっかのガキのせいで三日間、完全に足止めされたが、これはもう良い。だが、そこからさらに三日が経って? 今、ここは何処だ!?」
「街までもうちょっとの所にある村ですね!」
「ほー。お前はそういう認識なんだな?」
「あ、いえ、その……ちょっとだけ街まで遠いかもしれませんね」
「ちょっと?」
「えと、だいぶ」
「良く聞けアメリア! この辺りから街まで歩いて二日かかるんだ! つまり、俺達は三日かけて一日分の距離しか進めてねぇんだよ! 分かってんのか!? あァ!?」
「ひぇぇ。ごめんなさい。ごめんなさい」
「……と、まぁ……これまではこうやって怒って終わりだった。しかし。俺も学んだよ。アメリア」
「え? という事は」
もしかして困っている人の所へ行ってもよくなったのだろうか?
私は希望に満ちた目でリアムさんを見つめる。
しかし現実は残酷だった。
「アメリア。お前の目を塞ぐ。そして腰にロープを付け、勝手に動かないようにする」
「えぇ!? そんなぁ!」
「もしこれでもまだお前の暴走が止まらない様なら次は袋に詰めて運ぶからな」
「ひぇ」
リアムさんの目は本気であり、これ以上怒らせたら、本当に袋へ入れられるであろう事が分かった。
恐ろしい話だ。
「しかし、俺もそこまでの事はしたくない。分かるだろう? アメリア」
「は、はひ」
「という訳で、今回だけ。今回だけは!! 許してやる」
「っ!」
「ただし!! 次は無い。良いな? 次は目隠し。その次は袋だ。覚悟しておけ!」
「分かりましたー!」
「以上だ」
私はリアムさんが去っていくのを確認して、息を小さく吐きながら火の前に座った。
今日も今日とてレッドリザードくんが頑張って火を起こしてくれている。
可愛い可愛いと燃えているのに熱くない背中を撫でながら、私は鍋の様子を見た。
うん。順調。
リアムさんのお説教が長すぎて焦げちゃうかと思ったけれど、レッドリザードくんが調整していてくれた様だ。
「よく撫でられるな」
「え?」
「ソイツさ。背中燃えてるのに」
「レッドリザードくんですか? 大丈夫ですよ。この子はお友達を燃やしませんから。私、レッドリザードくんと大親友なんです! えへん!」
不思議そうな顔でレッドリザードくんを見ていたフィンさんに私は自慢する。
家を出る時から一緒に付いて来てくれた大親友だ。
この子が居なければ寒い夜を過ごす事になっていただろう。
なるべく美味しい物を食べて貰おうと、私は鍋から良いお肉を取り出して、レッドリザードくんにあげた。
「美味しいですか? ふふ」
「しかし、よく懐いてるな。コイツが居れば火には困らないし。その辺にも居るんだろ? なら上手く捕まえれば、火を起こす手間が全部無くなるぜ。道具も要らないしな」
「止めておけ。フィン。俺も最初はそう思ったが、そのトカゲはアメリアにしか懐かん。その辺にいる連中も同じだ」
「そうなのか。そりゃ勿体ないな」
フィンさんとリアムさんの言葉に私はんー。と考えた。
そして、火の中にいるレッドリザードくんに話しかける。
「では。お願いしてみましょうか。レッドリザードくん。お願いがあるのですが、良いでしょうか?」
「きゅい?」
「誰かにお願いされた時、火を付けてあげて欲しいのです。その人が休める様に。その代わり。美味しい物をレッドリザードくんにあげる様に皆さんにはお願いしておきますね」
「きゅい!」
「ありがとうございます。では、後で他のお友達にもお願いしていただけますか?」
「きゅ!」
「ふふ。ありがとうございます。では、レッドリザードくんには友情の証として、この美味しいお魚を差し上げます。どうぞー。お召し上がりください」
「きゅー」
「美味しいですか?」
「きゅきゅ」
「それは良かったです」
私はレッドリザードくんとの会話が終わり、フィンさんに向き直る。
「今、お願いしましたので、これからレッドリザードくんを見つけたらお願いしてみて下さい。でもご飯はなるべく美味しい物を上げて下さいね。一晩燃やしているのは大変ですから」
「お、おぅ。それは分かったよ。てか、今、もしかして普通に会話してた?」
「え? えぇ。していましたが?」
「えぇー」
「兄ちゃ……いや、フィン。気にし過ぎてもしょうがないぞ。姉ちゃんは家に居た時もこんな感じだったから」
「そうなのか。これも聖人の証で得た力って奴か?」
「あー。そうですね。アハハ」
「ふぅん。力が強くなる以外にも色々あるんだな」
「そうみたいですね!」
私は不意に証について話しが始まってしまった事に冷や汗を流しながら合わせる。
もし、もしだ。
私の証が偽物だとバレてしまえば、リリィが封印をしに行く必要がある。
それだけは避けなくては!
私は本物! 本物ですよー!
「リアムはなんか知ってんのか?」
「あー? いや、俺も多くは知らん。殆ど占い師の奴に聞いた話だしな。ただ……そうだな。アメリアの事はアイツも何か気にしてる感じだったぞ」
「えっ!?」
「何驚いてんだよ」
「そりゃ驚くだろ。特別何かあるみたいな事を占い師に言われてりゃさ」
「あー。いや。そういうんじゃねぇよ。ただ、何だろうな。占い師曰く、アメリアの存在が世界の形を大きく変えてしまう可能性があるとか何とか」
私が世界の形を大きく変える?
どういう事だろう?
「……つまり、私がとても大きくなって、こう手とか足で地面を削るという話でしょうか」
「んな訳ねぇだろ。抽象的な話だよ。抽象的な話!」
「ほえー。抽象的な話ですかぁ」
私は火をボーっと見ながら、やっぱり私が大きくなって、てりゃーと嵐とかを止める想像をした。
んー。何か強そう!
「正直さ。アメリアちゃんを見てると思うけど、そんな凄い人には見えんけどな。占い師がなんか勘違いしてるだけじゃないのか?」
「おそらくは、そうだろうな。しかし、今まで世界を見てきたが、手を翳すだけで怪我や病気を治す事が出来た奴なんて、アメリア以外には見た事がない。普通治癒と言えば、薬草飲ませるか、燃やして血を止めるかのどっちかだ。あり得んだろ。どうやったら傷一つ残さずに消し去れる」
「……一つ。これかなって言うのはあるんだけど」
「あん?」
「アメリア姉ちゃんって魔法使いなんじゃねぇかな」
「魔法使い?」
「あぁ、確か魔術が出来る前に居た魔法とかいう魔術を使う奴らか」
「そう。何かアメリア姉ちゃん見てると、そうなんじゃ無いかなって。だって魔法使いはそれこそ何でも出来たんだろ? 今の魔術じゃ出来ない様な事もさ」
「確かに伝説じゃそういう話だがな。でも、魔法使いはとっくの昔に滅んだって話だぜ。きっと気のせいだろ」
「そうかなぁ」
「ま。ガキが夢見がちなのはしょうがねぇだろ」
「俺はガキじゃない! このクソリアム!」
「そうやって噛みつくところがガキなんだ。ガキ」
「何を―!!」
頭の中で巨大アメリアがリリィに凄い凄いと喜ばれている想像をしていた私は、突然目の前で始まった争いに、あわあわとしながら、喧嘩は駄目ですよ! と二人に怒るのだった。
ただ、争いは止まらなかった。