異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証- 作:とーふ@毎日なんか書いてる
何だかんだ。五日ほどの時間を掛けて私たちは商業都市ダキンに到着した。
そこは今までに私が見たあらゆる街よりも綺麗で輝いており、煌びやかな光に満ちた街だった。
「おぉー」
「あんまり離れるなよ。アメリア。それとそっちのクソガキもな」
「すげぇー。これがダキンかー」
「あぁ、そう言えばカーネリアンも大都市は初めてか。どうだ。凄いだろ」
「うん! 凄い! 人もいっぱいだ! あ! あそこ! 姉ちゃん! 姉ちゃん! 何か売ってるぞ!」
「なんですか? わぁー。綺麗ですねぇ」
私はカー君に手を引っ張られて、道の端にあるお店に向かった。
多くの人が行き交う通りは、せわしなく流れており、そのお店までたどり着くのは大変だったが、近づくと先ほどよりも大きな感動があるのだった。
「これは鉱物……水晶ですか。綺麗に加工されているんですね。とても綺麗なまん丸です。しかも魔術用でしょうか。中心に魔力が渦巻いていますし。こうして内部を循環させる事で魔術を効率よく発動できる様にしているんですね」
「お。お嬢ちゃん。お目が高いねぇ。そう。コイツはドワーフが造った水晶玉っていう魔導具さ。一級品だよ?」
「魔道具……ですか?」
「なんだ。魔導具は知らないんだな。魔導具ってのはな。魔術を補助する為に生まれたモンなんだよ。まぁなんといっても、シャーラペトラ様のお陰で精霊と契約出来る様になってから六百五十年も経ったが、俺らは未だに魔術を上手く使えねぇからな。そこで工房の連中がドワーフと協力して開発したのが、魔導具って訳だ」
「ふぅーん。なら俺でも魔術が使える様になるのか?」
「坊主は精霊と契約してんのか?」
「いや。全然」
「なら無理だな。コイツはあくまでサポート用だ。しかも自分が契約している精霊の属性にしか使えん。こいつは水の精霊用だな」
「なんだー。つまんねーの!」
「アメリアちゃんは魔術使えたよね? 何の精霊と契約してるんだい?」
「私は風と火と水と土ですね」
私が指を折りながらそう言うと、店のオジサンが勢いよくテーブルを叩いた。
「なんと!! お嬢ちゃん! 全属性と契約してるのかい!? シャーラペトラ様と同じじゃないか!」
「てへへ。頑張りました」
「いや、頑張って出来る事でも無いが……凄いな。握手して貰っても良いか?」
「はい。私で良ければ」
「くぅー! 感動だ! きっとお嬢ちゃんは将来有名人になるな! 俺は応援してるぞ!」
「ありがとうございます!」
両手を握り、フンスと息を吐く。
「あ、そうだ! 何か、何か記念に、そうだ! コイツに魔力を注いでみてくれないか? どうなるのか見てみたいんだ!」
「承知です!」
私はオジサンが置いたいくつかの水晶玉を手に取り、その中にそれぞれの属性魔力を注いでゆく。
「お、おぉー。本当に全属性だ」
「すげぇ。綺麗だな」
「ふふ。ではとっておきです! てりゃー!」
私は全ての精霊に力を借りて上手く調整しながら一つの水晶玉に全ての属性魔力を注ぎ込むのだった。
「「おぉー!!」」
「なんだ、これは……凄いな。何やったんだ? アメリアちゃん」
「これはですねー。全ての属性魔力を均等に注ぎ込んだんです。こうする事によって、魔力は互いに刺激し合い、より効果的な……」
「そろそろ行くぞ」
「あぁー。まだ説明が」
「いらん。お前らもさっさとしろ」
「ちぇー。じゃ、オッサンじゃあな」
「おい。待てよリアム!」
「あー。ではまたお会いしましょう!」
「え? あっ、待ってくれよ! こんなの受け取れないぞ! お嬢ちゃん!」
「あっ、ではその内受け取りに行きますー」
「その内って、いつなんだよー!!」
「ではー」
私は大きく手を振りながらお店を後にした。
まぁ、闇を封印した帰り道にまた寄れば良いだろう。
あんまり荷物をいっぱい持っていくのも大変だしね。
オジサンと別れた私たちは、とりあえず最後の仲間を探すべく、この広い町のどこから探すか考える事にした。
そして手分けをする事になったのだが。
「おい。やり直せ。なんだこの組み合わせは」
「そうだそうだ! やり直しだー!」
「えと」
「あんまり文句を言うなよ。二人とも。平等な方法だっただろ?」
「何が平等だ。運に任せただけだろうが」
「それが平等なんだよ。リアムクン」
「チッ」
私は怒るリアムさんと、カー君。そして二人を平然とした顔でかわすフィンさんを見ながらどうするべきかとオロオロしていた。
しかし、よくよく考えればいつもの事である。
そしてこうなった時の解決法も私は最近思いついていたのだった。
「私に良い考えがあります! こんな案はどうでしょうか!?」
「ん?」
「私は一人でその最後の方を探しますので、皆さんは三人で! お願いします!」
「さっさとやり直しをさせろ。フィン」
「何度も同じ事を言うようだけど、平等なやり方で分けただろ? それで? また違ったらまた文句を言うのか?」
「当然だ」
「あのね。いくらなんでもそれは横暴だろうに」
私の言葉はアッサリと流されて話を始めてしまう二人。
そして、そんな二人に話しかけるべく言葉を考えていた私の服が小さくクイクイと引っ張られた。
後ろを見ると、満面の笑みで立っているカー君がいる。
「カー君?」
「姉ちゃん。今のうちに二人で行こうよ」
「え? ですが」
「良いじゃん。良いじゃん」
「良い訳あるか! クソガキ!」
「いっでぇぇえええ!!」
私の腕を引っ張っていたカー君の頭に、リアムさんの拳が落ちた。
それは外から見ているだけで痛そうであり、私は咄嗟に癒しの力を使う。
しかし、そんな私の体を抱き上げて、フィンさんは空中に跳び上がったのだった。
リアムさんとカー君の叫びを背に聞きながら、屋根を伝って都市の中を走り回っていたフィンさんは、やや静かな通りに降りると私も下ろしてくれるのだった。
「いや。悪かったね。驚いただろう?」
「いえ。慣れてますから」
「そうか……あー。しかし二人きりになるのは初めてだけど、アメリアちゃんはどうかな。緊張とかする?」
「いえ。特には。フィンさんとも普段から話をしていますし」
「そう……」
どうしたんだろう。なんかフィンさんの元気が無くなってしまった。
私はフィンさんを励ますべく周囲を見渡した。
そして、それを見つける。
「あ、フィンさん! 見て下さい! 綺麗なお花がいっぱい飾ってありますよ!」
「ん? あぁ、そうだね。アメリアちゃんはお花、好きなのかい?」
「はい。だってとっても綺麗ですから」
「そうか」
フィンさんは柔らかく微笑むと、私の指さしたお店に向かう。
そして、小さなお花を一本買ってきて、渡してくれるのだった。
「これ。まだ旅の途中だからいっぱいは買ってあげられないけどさ。あの店で一番綺麗で、アメリアちゃんに似合う花を選んだんだ」
「わぁ……! ありがとうございます! 綺麗ですねぇ」
私は貰った花が嬉しくなり、それを色々な角度で見たり、香りを楽しんだりしながら、思わず楽しくなって笑う。
そして風の魔術を使って花を保護してから、懐に大事にしまった。
「大事にしますね!」
「あぁ。そうしてくれると嬉しい」
私は気持ちを持ち直したフィンさんと手を繋ぎながら、最後の聖人を探して大きな大きな街を歩き回るのだった。