異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証- 作:とーふ@毎日なんか書いてる
いつも通りの旅をして、いつも通り人助けをした後、リアムさんに抱えられつつ進んで、私たちは無事聖都のすぐ近くまで到着した。
四日ほど掛かったが、ここまでの旅路を考えると、かなりの速さで着いたと思う。
「これはつまり、私たちが成長したという事なのではないでしょうか?」
「んな訳あるか。遅れの原因その一。単純にダキンと聖都の距離が近かっただけだ」
「あぅー」
「ちょっとリアム。そんなにアメリアを責めないでくれる? 乱暴に言えば女が従うと思ってるのはどうかと思うわよ。アタシは」
「黙ってろ。遅れの原因その二。お前が飲み過ぎて動けなくなる度にこっちは進めなくなってんだぞ」
「しょうがないでしょ。気持ち悪かったんだから」
「飲み過ぎだ!! 少しは抑えろ!」
「あのね。アタシにとってこれはエネルギーの源なの。魔術における魔力と同じ。これがなきゃ何も出来ないのよ!」
「何を偉そうにダメ人間発言してやがる。体調崩す度にアメリアに頼りやがって」
「しょうがないでしょ! お酒を飲んで感じてた痛みを一度だけってアメリアに頼んだら、すっごく良くなったんだから。そしたら一時的に飲まずにいられるけど、すぐ飲みたくなるし。もう飲むしか無いでしょ! でも飲んだら頭が痛くなって、でもアメリアが治してくれるから……! 完璧! ここに完全なシステムが生まれたわ!」
「どこがだ!」
リアムさんとキャロンさんがここ数日で見慣れた言い争いをしているのを見ながら、私はお夕飯の準備をしていた。
いつも通り、レッドリザードくんに火はお願いしている。
最初はキャロンさんが火を付けると言って、何故かレッドリザードくんと争う様な事になったけれど、戦闘はキャロンさん。日常的な火はレッドリザードくんという事になった。
何ごとも役割分担は大事である。
という訳で、私は私の役割。料理を担当しているのだが……。
「今日は辛口ね。アメリア」
「あー」
「おいおい。何言ってんだよ。ここは甘めで頼むぜ。辛いのは得意じゃ無いんだ」
「女遊びばかりしているから、そういう口になる。大人しく辛いのを食え」
「俺は辛いのでも大丈夫だぜ!?」
「カー君。お前、そう言ってこの前も食べられなかっただろ」
「カー君言うな!! 俺はもう大人になったんだ! そのくらい大丈夫だ!」
「いや、あの。皆さん? 食べる人によって味を変えますから。大丈夫ですよ」
「それじゃアメリアに負担でしょ。文句言ってるのフィンだけなんだから、良いのよ味を合わせて」
「そもそもさ。アメリアちゃんは辛いの苦手なんだけど? その辺は無視か?」
フィンさんの言葉に視線が一気に私へ集まった。
しかし、別に私は辛いものが苦手ではないのだ。
まぁ、得意という程では無いけれど。
「私はどの様な味付けでも問題ありませんよ」
「ほら見ろ! 我慢させてるじゃないか!」
「今のをそうやって受け取るのは考えすぎでしょ」
「そもそもアメリアだ。嫌なら嫌だと言うだろう。急げと言ってるのに、イチイチ立ち止まる奴だぞ」
私は何故か争いが起きない様にと願って発した発言が、更なる争いを呼んでしまった事に困惑しつつ、ふむと考える。
争いを止めるには、共通の敵を作る事が大事と聞いた。
ならば!!
「そんなに争いを続けるのであれば、私にも考えがあります」
「マズイ! カーネリアン! アメリアを止めろ!!」
「っ! 姉ちゃん! 駄目だ!」
「激辛のお肉! そして激甘のシチューを作ります!!」
私は用意していた調味料を限界まで使い、焼いていたお肉を限界以上に辛くした!!
そして、シチューにも薬草やら、果実やらを投入し、より甘くしてゆく!!
鍋をかき混ぜながら私は満面の笑みを浮かべた。
「今日はこれがお夕飯です! 美味しく食べて下さいね!」
「「「「……」」」」
私は無言で項垂れる皆さんに、聞こえなかったかなともう一度同じ事をいう事にした。
「今日は!」
「分かった。分かったから。反省している。だからもう許してくれ」
「……? はい。分かりました」
反省も何も、別に何も悪い事は言ってないと思うけれど。
味の好みが別れるのは仕方のない事だ。
だから、早く個人個人で味付けを変える様な流れになると良いなとは思う。
私はご飯を食べながら、チラリとコソコソ会話する皆さんの話に耳を傾ける。
これでも耳は良い方なのだ。
「だから言っただろうが。アメリアの目の前でやるなと。前にも同じ事になっただろうが」
「しょうがないでしょ! 忘れてたんだから!」
「バカ! 声がデカい! アメリアに聞こえたらどうするんだ」
聞こえてます。
リアムさん。しっかりと聞こえてますよ。
「大丈夫だろ。アメリアちゃんは食べ始めると周りの事に意識向けないし」
それがハッキリと向けてるんですよね。フィンさん。
「姉ちゃん結構ボーっとしてるもんな。この間も寝てると思ったら起き上がって、何か空中に向かって頷いてたし」
え!? 何それ!? 知らない!?
何をやっていたの私!!
「まぁ、それは良い。アメリアの事だ。考えてもしょうがないだろう」
しょうがなくはないと思うんですけどね!? 私! そのよく分からない行動は何とかしたいですよ!?
「とにかくだ。今後同じ過ちを繰り返さない為に、協議をする必要がある。良いな?」
「でもさ。それって話し合う必要なくない? フィン以外は全員辛いもの食べられるでしょ?」
「だから、何度も言ってるがカー君は無理なんだって」
「カー君言うな! 俺は食べられる。何故なら俺は大人だからだ」
「こう言ってるけど?」
「強がりだってすぐ分かるだろ。旅の途中で子供から無理に体力奪ってどうするんだよ。大人は好みだが、子供には死活問題だ。味は子供に合わせるべきだろ」
「子供子供ってフィンはうるさいんだよ! 俺は大人だ!」
「そうやって大人だ大人だと叫んでいる内は子供なんだよ。カー君」
「カー君言うな!!」
「つまりだ。フィンとしてはカーネリアンを中心に考えろ、そういう事か?」
「あぁ。そうだ」
「なら話は簡単だろう。今日みたいにシチューは甘く、肉は辛くすれば良い。肉は大人だけ食べる。これで良いだろう」
「でもそれだと足りなくねぇか? 肉も食いたいだろ」
「なら多めに魔物を倒せばいい。それだけの話だ」
「しかしな。魔物を狩るのだって時間掛かるんだぜ?」
「足りなきゃ食えん。それだけの話だろ。少なくともカーネリアン自身は大人を自称してるんだ。腕が足りず、飯が食えないという事くらいは覚悟しているはずだ。それともお前はそこまで甘やかすのか? フィン」
「それは、そうじゃないけどよ」
「んー。色々考えたんだけどさ。要するにご飯が足りないって訳でしょ? なら、魚でも釣れば良いんじゃ無いの?」
「「魚ぁ?」」
「そっか。すっかり忘れてたけど、魚捕る方が楽だよな」
そう言えばその手段がありましたね。とは言っても、私は料理を作る係なんで、捕る方はお任せだけれども。
「なんだ。その魚ってのは」
「え? 本当に知らないの?」
「あぁ。全く知らん」
「俺も知らないな」
「ったく。これだから楽して生きてきた連中は。しょうがないアタシが至高の魚釣りって奴を教えてやるわよ!」
かくして、聖都へ行く前の寄り道が始まったのであった。