異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第20話『私たちは悲しいすれ違いがありましたが、その事で誰か恨んだり、憎んだりする事は無いですよ』

占い師さんの言葉で酷く懐かしい事を思い出していた私は、小さく息を吐いて精神を落ち着かせた。

 

「それで、それを私に話して、貴方は何を求めているんですか?」

 

「……ふぅん。意外とすぐに持ち直したね。なるほど。長く生きているのは伊達じゃないって事か」

 

「さぁ。どうなんでしょうね」

 

「……」

 

「……」

 

互いに何も話さず、私たちは視線をぶつけ合ったまま無言になった。

 

このまま無言で居続けても私は問題ないのだけれど、向こうはそれほど気が長くないらしい。

 

大きく溜息を吐いて私から離れた。

 

そして、かつての王たちの様に私の心を覗こうとしているのか、目を細める。

 

「君の目的を知りたい」

 

「この世界の全てを記した書があるのでしょう? それを見れば私の目的も書いてあるのでは?」

 

「……分かった。分かった。降参だ。僕の負けだよ。とは言っても初めから勝負なんてする気は無かったけどさ」

 

「そうですか」

 

「正直に話そう。僕は君の事を恐れているんだ」

 

「恐れている?」

 

「そうさ。君は怒っているだろう? 世界の果てに僕達人類が魔王を封じた事を。恨んでいるハズだ」

 

私はかつて幼い頃に聞いていた魔王様の声と言葉を思い出しながら、笑う。

 

「残念ですが、私は誰も恨んではいませんよ。それは魔王様も同じです」

 

「バカな! あり得ない」

 

「何もあり得ない事はありませんよ。魔王様は人を愛していた。そしてそれは私も同じです。私たちは悲しいすれ違いがありましたが、その事で誰か恨んだり、憎んだりする事は無いですよ」

 

占い師さんは私の言葉は信じられないと言うように首を横に振っていた。

 

人は言葉で意思疎通をするけれど、その言葉の奥にある心は見えないのが欠点だと思う。

 

「今、ここでどれだけ言葉を尽くしても意味は無いでしょう。それほど不安でしたら、私の命を貴方に預けます」

 

「……は?」

 

私は自分の胸に手を当てて、光を放つガラスの花を占い師さんの手に乗せた。

 

「これは、私の命です。これを砕けば私の命はその瞬間に終わります。これで占い師さんも安心出来るでしょう」

 

「何故! 何故、貴女はこんな事が出来るんだ」

 

「何故と言われましても。ただの罪滅ぼしですよ」

 

「罪……? 貴女の人生に罪など」

 

「数えきれない程にありました。私の中には後悔しかありません。もし、私が間違えなければ多くの命は悲しみの中で失われる事は無かったでしょう。だからこそ、これから先に来る未来には悲しみが起こらない様に、闇の魔力は完全に封印しなくてはいけません。私の目的はただ、それだけです」

 

「それは王としての言葉だ。僕はずっと、貴女の心に聞いているんだ。人を救いたいという気持ちは、本当に貴女の心から出てきた物なのか!?」

 

「心……? 私の心は」

 

どうしたいのだろう。

 

私はどうありたいのだろう。

 

そういえば、かつて私の心を求めていた王も同じ様な事を言っていた気がする。

 

『アメリア。君の心はどこにある』

 

あの時は、何を言っているのだろうかと思っていたけれど、もしかしたら占い師さんと同じ様な事を聞きたかったのかもしれない。

 

アルマも、シャーラも、出会ってきた多くの人たちも、皆、私に何かを求めていた。

 

いや、違うのか。

 

私が、何を求めているのか気になっていた。

 

でも、私の心は変わらない。

 

私は……。

 

『アメリア。君は私たち人を恨んでいるだろう』

 

『いえ』

 

『そうか。それはそれで寂しい物だな』

 

『そうなのですか?』

 

『それはそうさ。知っているか? アメリア。心とは不思議な物でな。愛情に相対する感情は憎しみではなく、無関心なのだそうだ』

 

『無関心……』

 

『そうだ。つまり、これから私は君の心を反対側まで持っていかねばならないようだ』

 

『それは、大変ですね』

 

『く、はははは。本当に、涙が出るほどに悔しいよ。君が人であれば良かったと思わない日はない』

 

『人であれば……?』

 

『そうさ。例えどの様な生まれでも良い。君が人として生まれていたのであれば、同じ時間を共有出来た。同じ様に喜び、怒り、哀しみ、楽しんだのであろう。それが私は悔しく思うよ』

 

『……同じ様に』

 

『しかし、まぁ君が女神であったからこそ、こうして出会う事が出来ているのだから、そこに文句を言うべきでは無いな』

 

『はぁ』

 

『という訳だ。せめて私が死ぬまでに君の記憶に残れるくらいには努力してみせよう。人とはこの様に良い物なのだと知ってもらう為にね』

 

暗い闇に閉ざされた部屋の中で、私にそう言った王はどの様な人であっただろうか。

 

独特な人だった様に思う。

 

顔も、名前も思い出せないけれど……それでも、あの王の言葉があったからこそ、私はアルマを抱きしめようと思ったのだ。

 

それだけは間違いない。

 

だから……。

 

「私は、私の気持ちは変わりませんよ。大切な人が生きていた、そして生きてゆくこの世界を護りたい。ただそれだけです。それ以上の何かなんてありませんよ」

 

「……」

 

「お話はこれで終わりですか?」

 

「……あぁ、そうだね。僕は、ただそれだけだ」

 

「では元の部屋に帰りましょうか」

 

「そうだね」

 

そして私は、占い師さんに再びリアムさん達が居る部屋に転移してもらうのだった。

 

 

 

「それで? 本当は何があったんだ」

 

「えと、本当に何も無かったですよ。ただお話をしていただけです」

 

「おはなしだぁ? なら、ここで話せば良いだろう。何をコソコソ隠す必要があった」

 

「何でもお話出来る事ばかりじゃないですよ。リアムさん」

 

「アメリアの癖に分かった様な事を」

 

「まぁまぁ。落ち着けよ。リアム」

 

「あァ!?」

 

「だから落ち着けって。なぁ、アメリアちゃん。俺たちに言わなきゃいけないような事は、何も無かったんだよね?」

 

「はい。そうですね。昔の事とか色々とお話しただけで。後は封印を頑張ります! って私が言っただけですね」

 

「ふーん」

 

フィンさんがジッと私を見つめる。

 

同じ様にリアムさんや、カー君、そしてキャロンさんも無言のまま私を見つめた。

 

そんなみんなの視線に笑顔を返しながら、私はテーブルの上に置かれたお茶を一口飲むのだった。

 

「そんなに見つめられても、何も出ませんよ」

 

「分からないだろう」

 

「そうですか? では、どうぞ」

 

ニコニコと笑いながら、見つめ返して、私はこの時間を楽しんだ。

 

シャーラは笑っている姿が好きだと言っていた。

 

アルマは私が楽しいか日々気にしていた。

 

だから私は日々を笑って楽しもう。

 

そうあるべきだ。私は、そうあるべきだろう。

 

「はぁー。分かった。信じよう。んで? これから先はどうするんだ? リアム」

 

「それについては、ネイサンから聞く。おい」

 

「ネイサン?」

 

「占い師の事だ。おい。聞いてるんだろ。さっさと出て来て説明しろ」

 

「まったくもう。乱暴な言い方だなぁ」

 

先ほどまでの会話など無かったと言わんばかりに、最初に会った時と同じ雰囲気で占い師さんは部屋に転移してきた。

 

そして、私たちの前に椅子を転移させて座る。

 

「さて。長い話になる。座りたい人は座った方が良いよ?」

 

 

 

占い師さんの話をまとめると、闇の力を封印する為には精霊の力を借りる必要があるらしく、各地を巡って力の強い精霊と最上位契約をして欲しいとの事だった。

 

一応私は全ての精霊と契約しているし、最上位契約も問題なく出来るだろう。

 

もしもの時を考えて、私も最上位契約をしておくべきだろうなと私は頷く。

 

「おい。アメリア。ちゃんと分かってるか?」

 

「はい! 精霊さんと仲良くなって、闇の力を封印するんですよね!?」

 

「……間違ってはいないが、精霊ってのは、性質やら何やらを見て契約するかどうか判断するって話だ」

 

「はい! 頑張ります!」

 

「いや、頑張ってどうこうなる問題じゃあ……まぁ良いか。俺らで何とかすりゃ良い話だ」

 

「そうだねぇ」

 

「俺、頑張るよ姉ちゃん!」

 

「頑張るかぁ」

 

「あれ? あれ? 皆さん? 私も居ますよ?」

 

「おーおー。期待してる期待してる」

 

「もう! リアムさん!」

 

私は怒りながら、お茶をまた飲むのだった。

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