異界冒険譚シリーズ【アメリア編】-聖女の証-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第23話『残念ですが、ずっと一緒にいる事は出来ません』

水底へと沈んでいた私とレーニちゃんは、何とか周りで見ていたエルフさん達に助けられ、今度は溺れない様に浅瀬へと移動した。

 

そして水に下半身を沈めながらレーニちゃんと話をする。

 

「それで、レーニちゃんのアメリアというのは、どういう事でしょうか?」

 

「あのね。エルフはね。生涯でたった一人だけ心の底から愛するの。その人だけを想って生きてゆくの。だからアメリアもずっとレーニと一緒に居て欲しいの」

 

「……そうですか」

 

「どうかな!」

 

「残念ですが、ずっと一緒にいる事は出来ません」

 

「え!?」

 

「何故なら私には使命があるからです。この世界を救うという使命が」

 

私は右手を空に翳し、その偽物の証をレーニちゃんにも見える様にする。

 

そう、例え偽物であったとしても、リリィの代わりに征く以上、これは私の使命だ。

 

私がやらなければならない。

 

「聖人……?」

 

「そう。これは」

 

「違う。聖人の証じゃない」

 

「っ!?」

 

私は咄嗟に右手を隠そうとしたが、レーニちゃんは私の右手を掴み、強く抱きしめる。

 

そして私をジッと強い目で見据えた。

 

「アメリアは嘘を吐いてる」

 

「……レーニちゃん」

 

「レーニが本物の聖人を見つけて、アメリアを自由にする。そしたらレーニと一緒に居られるでしょ?」

 

「駄目!!」

 

「っ」

 

「それだけは駄目です。止めて下さい」

 

もはや睨みつける様に、私は目を細めてレーニちゃんを見つめた。

 

争いになったとしても、レーニちゃんを止める為に、覚悟を決める。

 

しかし、私が思っていた様な展開にはならず、私と視線を絡めていたレーニちゃんは、少しずつ顔を歪ませながら目尻に涙を浮かべ、やがて大きな声で泣き出してしまった。

 

「ご、ごめんなさいー、おこらないで」

 

「あ、いや。怒ってませんよ」

 

遠くからエルフの人たちやキャロンさんが心配そうに見ているのを感じながら私はレーニちゃんを抱きしめた。

 

生憎と泣いている子を慰める方法はこれしか知らないのだ。

 

「ごめんなさい。強く言い過ぎました」

 

「う、うん。ううん。わたし、が、いじわるなこと、いったから」

 

「いいえ。良いんですよ」

 

ポロポロと零れ落ちてゆく涙をそのままに、私はレーニちゃんが泣き止むまでその頭を、背中を撫でるのだった。

 

 

 

どれほど時間が経っただろうか。

 

レーニちゃんは泣き止み、落ち着いて話が出来る様になっていた。

 

私は落ち着いたレーニちゃんに旅の目的を話す。

 

大切な妹を危険な場所へ送りたくないのだと。

 

「リリィは、レーニより大事なの?」

 

「……」

 

「アメリア?」

 

「どう、なんでしょうか。私にとってはレーニちゃんも、リリィもそう大きくは変わりません。愛すべき家族、そして護るべくこの世界に生きている人です。同じ様な存在だと思います」

 

「それは、聖人として世界を護るために頑張ってるアメリアの言葉でしょ? 私は、アメリアの気持ちが知りたいの」

 

「私の、気持ち」

 

私は自分の胸に手を当てて、考える。

 

しかし答えは出ない。

 

当然だ。今考えただけで答えが出るのならば、長い間考えてはいないのだ。

 

「アメリアはさ。普通の人間じゃないんだよね」

 

「そう、ですね」

 

「なら、レーニと同じ様に、ずっと生きてる?」

 

「多分、そうなります」

 

「分かった。なら、全部終わったら聞かせて」

 

「全部終わったら、ですか?」

 

「うん。今のアメリアは世界とか、リリィとかが大事なんだよね。それを優先したいって思ってる。だから、レーニと一緒に来る事は出来ないんでしょ?」

 

「そうなります」

 

「だから、今アメリアが持ってる物がぜーんぶ終わったら、レーニと一緒になって欲しい」

 

真剣に、私を見ながら紡がれた未来の姿は、私の心に僅かな波紋を作った。

 

そして、その波紋がいくつかの波紋を起こし、心に広がってゆく。

 

「そうですね。それも良いかもしれません」

 

「っ! ホント!?」

 

「はい」

 

「やったぁ!!」

 

レーニちゃんは勢いよく私に抱き着いて、そのまま湖に押し倒した。

 

空には満面の笑みを浮かべるレーニちゃんの姿でいっぱいになる。

 

「アメリア……アメリア」

 

「レーニちゃん。落ち着いてください。レーニちゃんの所へ行くとは言いましたが、すぐに行けるとは限らないですよ? 少なくともリリィが大人になって独り立ちするまでは一緒にいるつもりですし」

 

「良いの。それで良い。だって、最後はレーニの所にくるから」

 

スリスリと顔を寄せながら嬉しそうな声で話すレーニちゃんに私は苦笑しながら、水の流れに乗って、湖を中を進んでゆく。

 

そして、嬉しそうなレーニちゃんと抱き合いながら湖の中心部付近まで流された時、それは起こった。

 

『はい、尊いー!!!』

 

「わっ」

 

「きゃっ!?」

 

「アメリア!!」

 

湖の中央から巨大な人の形をした何かがいくつも現れ、それが両手を広げながら叫び始めたのだ。

 

『抱けー! 抱け―!!』

 

『チッ。まどろっこしいな。俺、ちょっとエッチな雰囲気にしてきます!!』

 

『てぇてぇ。そう呟くと私は灰になって消えた』

 

『ここに塔を立てよう』

 

『百合が咲きます。大切にしましょう』

 

言っている言葉の大半は意味が分からないけれど、現れた存在が水の精霊だという事は分かる。

 

しかもとんでもない数だ。

 

どうしてこんなにも強い精霊が居るのかと思えば、多分エルフがこの湖に通い続け、魔力を流し続けたからだと思う。

 

魔力の濃い場所には強い精霊が住み着くから。

 

『お、おぉぉおおおお。聞こえますか。美しき者たち。私は今感動に震えています。数百など見えず、数千などではなく、数万でも届かず、数億でも足りない時の果てから水の中に残された我らの想いが、満たされてゆくのを感じる。感謝します。美しきもの達。アメリア。レーニよ』

 

「い、いえ」

 

『はぁー!! 満たされた! 私は初めて満たされた! これが頂点!』

 

『この百合はまだ未熟。故にまだ万病に効く事は無いが、いずれ全ての病を癒せるようになる』

 

『ユニバース!!』

 

またウネウネと動きながらあらぶり始めた水の精霊たちに、私はレーニちゃんを守るべく背中で隠しながら、魔術を準備する。

 

敵意は無いけれど、何かされたら危険だからだ。

 

しかし、そんな私を見て、水の精霊たちは更に激しく蠢いているのだった。

 

『お前……消えるのか?』

 

『止まるんじゃねぇぞ……』

 

『我が生涯に一遍の悔いなし……!』

 

「……?」

 

「アメリア! 大丈夫?」

 

「はい。キャロンさん。敵意は無いと思うのですが、どうにも行動が読めなくて」

 

「ちょっとエロフ。アンタらのせいで精霊までおかしくなってるじゃない」

 

「はて? この様な現象が起きるとは思っていなかったが。水の精霊よ。我らに何か用があるのか!?」

 

エルフの長が水の精霊たちに呼びかけた事で、水の精霊はいったんその動きを止めた。

 

そして、私に向かってその大きな手を伸ばす。

 

咄嗟にキャロンさんや、レーニちゃんが護ろうとしてくれたが、私は二人を止めて、魔術を使いながら水の上に立ち、その手を受け入れた。

 

「これは……最上位契約?」

 

『はい。水の精霊と契約する美しき魔術の使い手よ。貴女と我ら水の精霊は最上位契約を結びます』

 

『曇らせとか最悪だかんね。求めるのはハピエンだけよ』

 

『貴女の旅に幸多からんことを』

 

『苦労とかしなくて良いですから。サクっと世界を平和にしてください。古き友。アメリア』

 

「……! 分かりました。私、頑張ります!」

 

私は水の精霊が作り出した手の上で、拳を握り締めながら世界を平和にする誓いを新たに立てるのだった。

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